——ここは都内某所にある、「悩み」を肴に美味い酒が飲めると評判の店「スナック貴子」。夜な夜な美人ママを目当てに常連客が集う。
川崎貴子ママ(以下「ママ」):あら、いらっしゃい。ヨウちゃん、お久しぶりね。
桐谷ヨウ(以下「桐」):ママ、ご無沙汰だね。ちょっといい酒が入ったから美人さんと一緒に飲みたくてさ。
ママ:まあ、嬉しい♪ でもツケはちゃんと払ってね。
桐:まぁまぁそんなこと言わずにさぁ。この日本酒、IWCっていうお酒の大会でGoldメダルもらってるくらい旨いんだよ! 女性でも飲みやすいスッキリとした口当たりだからちょっと飲んでみてよ。
ママ:じゃ、いただこうかしら。うん、とっても美味しい! これは何杯でも飲めちゃうわね。飲みやすいのに芳醇な日本酒、私大好きよ。ピンクのラベルも可愛いし。
桐:でしょ? さて、今日はどのお悩みカードからにしようかな。
——「スナック貴子」は、迷えるアラサー女子がカードを書いて置いておくと、常連が答えてくれるというちょっと変わったスナックなのです(※設定はフィクションです)
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♥お悩み1
2つ年上の彼が結婚に興味なし……。子どもも欲しいのでそろそろプロポーズしてほしいのですが、かといって自分からは言い出せず……。どうすればうまくいきますか?(28歳・メーカー)ママ:うーん。私この件はスナックの外でも中でも、要はあちこちで言ってるんだけど、ちゃんと「確認」をした方が良いと思ってるの。「あなたはあと1、2年後に結婚する気はある? 私は早めに子どもが欲しいのだけれどあなたはどう?」って聞けば良いだけの話だと思うのよ。みんなやっぱりこだわるよね。男性からのプロポーズに。
桐:するんじゃなくて、されたいんだろうね。男の人って漠然と結婚を考えているんだけど、言葉として言っちゃうと責任が発生するし、大ごとになっていく感じが嫌で、心に秘めてたりするんだよね。彼が「気持ちはありますよ」みたいなタイプなら良いんだけどなぁ。
ママ:そうだね。一生懸命逃げてるみたいな人じゃなければ良いよね。28歳と30歳のパートナーで結婚するって全然おかしくないことだし。私は主催している婚活塾で女性達に「(結婚)したい方が提言しよう!」って言ってるの。
桐:それ素晴らしいね!
ママ:現実的に結婚への道のりが見えているほう、希望があるほうが言う。相手は、もしかしたら転職したいとか、留学したいと考えているかもしれないし、今の年収じゃ厳しいから結婚や子どもとかを考えられないのかもしれないしね。
そういった結婚に踏み切れない理由が明確になると「え? 私、仕事辞めないよ? 全然ダブルインカムでやっていこうとおもっているから平気だよ」とかでクリアになることかもしれない。「転職? 全然良いんじゃない? じゃ私が産休とるのは転職してから1年後ぐらいが理想だね」と確認をとることでいろんな代替案が出てくるから、話が前に進みやすいのよ。
桐:自分の勝手な想像が前提になっている場合が多いよね。
ママ:そうそう。もしかしたら彼は不妊かもしれないしね。それで自分から言いだせないかもしれない。自分の子じゃなくても里親制度を利用して子育てしている人もいるし、確認できればいろんなルートが二人の前に開けると思うの。でもプロポーズはどうしてもロマンチックに彼からしてほしいのかな?
桐:俺は「結婚と結婚生活どっちしたいの?」ってよく聞く。プロポーズが欲しいのか、彼と生活をしたいのか。この文面からは後者ではなさそうだなって思って、そこは気になるな。
ママ:そうだね。本当に切実で、今28で30までに子どもを産みたい! そして結婚するなら彼!と決めていて、だからはやく結婚したい!であれば早く確認すれば良いと思うけど。でももしプロポーズも式場もドレスも含めて、「ロマンチックなこと♡」と思っていて、それをもらえると考えていたらむずかしいかもしれないわね。
桐:バッドニュースも伝えておくと、男は基本、単細胞。見栄っ張りの単細胞が男の本質。だからびっくりするくらい何も考えてないことも結構多くて。おまけに結婚には漠然と窮屈なイメージを持っていたりする。だから、彼女のことが好きでも、結婚というイシューになった途端、思考停止している可能性はあるかもなぁ。
ママ:なるほどね。既婚者から聞くのは、小遣い制だとか、嫁の実家に行ってとか、趣味を取り上げられたとか、ロクな話を聞かないからね。男性たちは縛られるだとか、翼がもがれるみたいな圧を感じているかも。
桐:転職しづらいとか、独立しにくいだとか男は考えているけど、女性にそれを伝えてみると、意外と「全然良いよ!」と言ってくれることもあるから、男性も確認したほうが良い。パートナーになるのに、そういうことも確認できないのは、悲しいもんね。
ママ:もう男の人からプロポーズっていう慣習をやめたほうが良いんじゃない。ビジョナリーな人から提案したほうが絶対良い。
桐:ビジョナリー・カンパニーならぬ、ビジョナリー・ピーポーのほうが積極的に……。
ママ:結果的に男の人も「あぁあの時、うまいことプレゼンされて、良い子と結婚できてよかったな。俺だったら決心できなかったなぁ」っていっぱいあると思うのね。あと、プロポーズをしてもらって「すごい愛情をもらった。だから一生頑張れる!」じゃなくて、その先をお互いにあわせられるのかが大事。
桐:うんうん。幸せになれる人となれない人の違いって、どっかで自分の価値観を柔軟にパートナーにあわせられるかってことだって最近思うんだよ。それができない人は結構世の中にいるんだよ。幸せのために自分を変えられる人が増えると良いよね。
ママ:バリキャリになって役職がある女子が増えている現状、自分にあわせてくれる男性のニーズは高くなっていくでしょうね。管理職の女子が言うのは「癒やされたいし、母性が欲しい」という弱音。虚勢を張っていたりもするし、部下の目や上司の目にさらされて疲れちゃうんだよね。
桐:隙を見せられる相手だよね。そんな仕事に関しての悩みのカードもあるね。
【貴子ママの総括!】結婚とか、出産とか、キャリアとか、「自分の人生の一大事」を他人(*彼)のジャッジに委ねちゃだめよ
◆お悩み2
直属の上司(男)とのソリがことごとく合わない。嫌いな職場の人間との上手な付き合い方を教えてください。(27歳・メーカー)
桐:仕事も恋愛も忙しいアラサー女子あるあるな悩みだ。
ママ:私は転職支援の会社をやっているんだけど、どの会社に行っても嫌な上司とか合わない上司は必ずいるのよ。だからスキルアップの機会だと思ったほうが絶対にお得。苦手な上司をどういった角度から攻めようか、と考えてうまく攻略していくと、いろんな人とうまくやれるスキルがどんどん溜まってくから。嫌な上司は、ただのボスキャラ。それを倒すイメージね。
桐:人間関係で逃げるような転職をしている人は、新しい環境に行っても人間関係で苦労しそうだよね。
ママ:違うタイプの嫌なオヤジがいるだけだから(笑)
桐:俺が言えるのは、「仕事に好き嫌いを持ち込むな」だな。結局会社って結果だしてナンボの世界だから、上司を味方につける方がはやいんだよ。俺は上司に可愛がられるのがめちゃくちゃうまいのね。
ママ:うまそう(笑)
桐:ボクなんでもやります!ってキャラで、夜の飲み会とかも全部付き合ったり、上司にとっての重要人物にも丁寧に接待したり。それで自分の評価が上がるのなら、それは投資だよね。自分がすごい頑張っても評価につながらなくなるのは割に合わないから、好き嫌いじゃなく自分の損得で考えるべき。
ママ:これは結局ゲームなんだよ。その上司を攻略することやその会社や業界のルールを把握して戦ってみる。そうして自分のレベルが上がってくると仕事が楽しくなるのよ。ヨウちゃんはゲームの攻略方法を知ってるんだよ。
桐:そこまで言ってもらうと恥ずかしいけど。でもまさしくそんな感じだね。
ママ:ゲームのやり方を知っていれば、報酬も上がるし、人からも認められる。ゲームのやり方を知らない人と比べて、おなじ時間プレイしてもアプローチの仕方も結果も全然違うから面白さが違うよね。
桐:(ママってRPGうまそうだなぁ……)うんうん、本当に。
ママ:でも日本のサラリーマン社会で良いことは、部署移動があるってことだよね。まあ、あんまり思い詰めずに表面上うまくやっておくのが良いんじゃないかな。異動するかもしれないしね!
【貴子ママの総括!】仕事も人間関係も、ルールを把握しながら参戦すればストレスが減り、楽しみが増えるわよ
♠️お悩み3
現職に不満がある! でもなかなか転職に踏み切れない。これからやりたいということもないし……。チャレンジする勇気が欲しいのですがアドバイスをください。(30歳・WEB関連)
ママ:現職の不満ってなんなんだろう? 頑張って結果を出してるのに女の人だから評価されない職場とか、産休のような制度が整っていないとか。そういう会社なんだとしたらキャリアアップにつながらないし転職すべきだよね。それとも今の仕事がつまらないとか、刺激がないのが不満なのかな?
桐:後者だったらプロポーズを待っている女の子と似てるね。青い鳥症候群みたいな。
最近よく考えているのは、主体的で自立している人間ってどうやったら育まれるのだろうってこと。いわゆる面倒くさい依存体質な女性や男性って本当に多いんだよ。彼ら彼女らには「自立せよ」って本当に思う。楽しさとか喜びは、自分から動いて初めて得られるもんだよって言いたんだよね。
ママ:転職する前に、例えば土日だけでも、何かやってみれば良いかもね。学校に通ってみるとか、友人の仕事を手伝ってみるとか。パッと転職して全部リセットするんじゃなくて、試しにやってみるのが良いと思うの。
ネットでもいろいろと調べればたくさん情報がでてくるから、もっとリサーチして、ガンガン片足つっこんでみるべきよ。体験してみて、魅力的だなぁと感じて、マネタイズできそうなら転職すれば良い。
桐:自分から行動することはほんと大事だよ。ママが言っていることはリスクも少ないし、現実的だよね。
ママ:ただ、仕事はお金を得ることだから、「素敵だから」とか「流行っているから」で選ぶとまずいかも。AIが人間の仕事を奪うんじゃないか、なんて話が話題だけど、自分の選んだ道が10年後も通用する仕事なのか考えられると良いよね。もしかしたら10年後につながる仕事を今の会社でやっているかもしれないじゃない。
先を見る目を持つって難しいけど、調べたり、聞いたり、自分の頭で考えなくなると危険だよね。なんとなく不満だから転職しようかな、でも面倒くさいし、今の会社よりもダメだったら……ってモジモジしてるのが、きっと人生で一番のリスクよ。
桐:10年後の自分を考えたとき、現状を維持した自分と、新しい世界に踏み出した自分を比較する目を持てると、視点が変わるんじゃないかな。いまいまで考えるんじゃなくてさ。
ママ:確かにそうよね。ただ、特に女性は若いころ、真面目さゆえに視野が狭いの。自分から近い距離だけ見てて、一生懸命そこに向かって走っちゃう。それでもういっぱいいっぱいになっちゃって。「来年の昇進試験受けてみなよ」って言われても「今の仕事でいっぱいいっぱいなのになんで来年のことを考えられるのか?」ってテンパってしまうのよ。
男の人は長期ビジョンで見てるから、休むところは休むし、サボるときはサボる。でも女子はきっちり200%の力でやるから燃え尽きちゃって辞めちゃう。女性管理職が育たない理由はそこに大きな原因があると私は思っているの。一生働くんだという覚悟が決まれば、「今の会社に不満」っていうフワフワした問題じゃなくて、もっと自分の人生とキャリアについて具体的に考えられるよね。
【貴子ママの総括!】「一生働く」という覚悟が決まれば、今自分が何をすべきか、何をしないのがリスクなのかが見えてくると思いますよ
♣️お悩み4
ハイスペック男子を落としたいけどなかなかうまくいきません。どうしたら好かれるようになりますか?(29歳・事務)
ママ:ハイスペ男子ってわかりやすい格好よさなのかな。ハイスペ男子を狙うのは、そんな彼や夫を持つと、自分が格上げされたような気分になるからなのか、それともそういう立場の男性を尊敬するからなのか?
桐:相手の価値で自分の価値が上がるっていう考え方は相当ヤバいね。でもなんだかんだそういう人って多いんだよなぁ。自分は合コンとかで実感してきたんだけど、社名を言うと、食いつきが変わる……みたいな。
話しててタメになる! とかこの人から色んなことを吸収して、自分がワンランク上を行こう! みたいな人は少なかったね。
ママ:合コンっていう場だとそうかもしれないね。でも女も歳をとると、男の人の尊敬できるポイントが無数に広がるのよ。高学歴で有名企業にお勤めって、そりゃあわかりやすいけど(笑) 。「あ! この人は、さっと話題を変えられる人なんだ」「この人は、こういう場でみんなを盛り上げて、笑いも取れるんだ!」とか、スペック以外の能力に目が届いて素敵だなって感じるようになってくるの。
桐:へぇ〜。なんでだろう?
ママ:マネージメントや子育てを経験するとそうなるのかしら(笑)。男の人はみんな一律じゃなくて、女性に無い色々な優しさや強さを持ってるなぁという、当然のことがわかるっていうか、いろんなツボが愛おしくなってくるのよ。立場が人をつくることもあれば、歳が人を変えることもあるし、子育てしてもそうなるのだから、女子はとっとと役職者を経験すると良いのよ。常に立候補する前のめりの姿勢でポジション狙ってね。
だって、「こいつハイスペだけど嫌なやつだな」とか「チームプレイできないやつだ」とか「結婚というチームに向かない男性」がどういう男かわかるようになるから。別にハイスペじゃなくても、自分にぴったりなパートナーが見つかりやすくなる。選べる男性の分母も広がるし(笑)
桐:自分の中に良いと思える感受性が広がらないと、わかりやすいものに行きがち。だけど自分の感性が広がれば色んなものを愛せるようになるよね。
ママ:ラベルだけで人のことを好きになっても、実はサイコパスかもしれないじゃん。だけどこのラベルを持ってるからっていう理由だけで好きになっちゃうわけ。
桐:サイコパス(笑)。あ〜苦しむパターンだ。
ママ:この人は公務員だから大丈夫。じゃなくて公務員だって変な性癖持っている人もいるかもしれないし。公務員試験、そこまで網羅してないし(笑)。嫌なのに、そこに目をつむって「私は公務員の彼をゲットした」で満足すると、本当に幸せなパートナーシップってつくれないから。その人の内面を見て好きになれば、コミュニケーションだって円滑になるしね。
桐:やっぱり人は役割なんだよね。潤滑油になれる人、手綱を引ける人、聞き上手な人。人間関係って良い意味でも悪い意味でも役割がどうしてもできちゃうから。「その人がどんな役割がうまいのか」をちゃんと見抜けたり「この人はこの役割は下手クソだけど、愛せるなぁ」っていう目線で見ることができると、もっとみんな幸せになれると思うなぁ。
ママ:それには自分がどういう役割が得意なのかをわかっていなきゃいけないよね。コミュニケーション能力が高い人同士が、タッグを組んでもしょうがないじゃない。この人はコミュニケーション能力が低いけど、すごく細かいことに気がつく。私は気がつかないけど外へ発信することが得意。だからパートナーとして成り立つのよね。
自分の足りないところが、相手の持っているバリューズや考え方だったら良いよね。
【貴子ママの総括!】男をスペックで見る女は、男に都合の良いスペックを要求されるわよ。気を付けて。あと自分の戦闘力が高い分野で、同じレベルを相手に求めるべからず。「パートナー」とは、互いに補いあえるから人生で組む価値があるのよ
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桐:いや〜うまい酒と女子の悩みは合うね。ママもう一杯ちょうだい。
ママ:ハイハイ。悩みはお酒の最高のツマミだものね。
——今宵も、「スナック貴子」の夜は長い……
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今宵のお酒
出演
出演:川崎貴子
1972年生まれ。埼玉県出身。1997年に働く女性をサポートするための人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を展開。女性誌での執筆活動や講演多数。著書に「結婚したい女子のためのハンティング・レッスン」「私たちが仕事を辞めてはいけない57の理由」「愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。」「上司の頭はまる見え。」がある。2014年より株式会社ninoya取締役を兼任し、ブログ「酒と泪と女と女」を執筆。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。10歳と3歳の娘を持つワーキングマザーでもある。 Facebookはこちら
出演:桐谷ヨウ (id:fahrenheitize)
ブロガー・コラムニスト。
国内大手メーカーグループ~外資コンサル系企業在籍中に、自身の豊富な恋愛経験をもとにブログを開設。開始早々月間20万PVを獲得し、一躍人気ブロガーに。
"人それぞれの恋愛"を考えてもらうきっかけにしてほしい、初の著書『仕事ができて、小金もある。でも、恋愛だけは土俵にすら上がれてないんだ、私は。』(ワニブックス)が好評発売中。
ブログ:My Favorite, Addict and Rhetoric Lovers Only
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写真:小高雅也