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自宅キッチンでできる手軽な燻製料理。行楽の秋に持っていきたい燻製づくしの山弁当を作る

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秋といえば美味しい食べ物に美しい紅葉が楽しみなシーズン。登山に写真が趣味な私も、この時期は頻繁に山に出掛けます。しかし、せっかくいい時期に山に出かけるなら、お弁当も一ひねり加えたいところです。ということで、ちょっと趣向をこらし、香り高い燻製づくしの山弁当を作ってみました。

ご紹介が遅れました。私「SpaceFlier」という写真とたまに料理のブログを書いているタケル(id:sfTKL)と申します。

燻製という調理法を身近にするSOTOのスモークポット

一般的に燻製と聞くとベーコンなどの長期保存食をイメージするかと思います。そしてそのような調理はハードルが高いとも。

かつては私もそう思っていた時期がありました。実際に長期保存を目的とした燻製料理は手間も時間も掛かりますし、家屋内であれば、煙という問題もあります。料理の基本といえば「煮る」「焼く」「蒸す」の3つですし「燻(いぶ)す」というのはキッチン回りではなかなか出てこないワードです。(ホームセンターなどでの燻製機器のコーナーはキッチン用品ではなくキャンプ用品のコーナーですしね)

私の燻製に対する「難しそう」というイメージを変えてくれたのは、SOTOのスモークポット(燻製鍋)という製品です。

私自身、SOTOのスモークポットはスポーツ用品店のキャンプ用品コーナーで見つけたのですが、棚でこれを見た時「これだ!」と閃きました。というのも、いわゆるスモーカーというのはブリキや段ボールでできた箱で、とてもじゃないですが家の中で使えそうではありません。

それがスモークポットならばご覧のとおり、鍋という形で目の前にあるのです。「鍋ならば家の中でできるんだ」と勝手な思いを巡らせていると、気が付けばスモークポットは手の中でした。

自宅へ帰り実際に燻製を試してみると、気になる煙の量は鍋とフタの隙間や温度計を差す穴からひょろひょろと出る程度。空気清浄機や換気扇を全開にしておけばマンションでも十分に使える程度の煙と匂いです。豚バラのベーコンに始まり、ショルダーベーコンにスモークチキンと、あっというまに燻製にハマったのは言うまでもありません。

特に自家製ベーコン(冒頭の写真のものです)の深い味わいは他に代えがたく、スモークポットを購入してからは市販のベーコンはほとんど買わなくなってしまったほどです。

ただ、ベーコンは作るのに10日〜半月ほど掛かってしまうのが、たまにきず。そうそう頻繁に作れるものではありません。我が家でもベーコンを作るのは一大イベントです。

自家製スモークを食べたい、でもベーコンは手間がかかる。そんな時はスモークチキンを作ります。

ソミュール液(15%ほどの濃度の塩水とスパイスを煮詰めた液)に1〜2日漬け込んだ鶏肉(ササミ・胸・モモ)を一晩乾燥させてスモークすればできあがりです。1週間ほど日持ちするので週末に作って翌週のビールのお供や、朝食で楽しめます。

もっとライトに、日持ちしなくていいからすぐ食べたい! という時は、下味を付けた肉や魚をスモークポットで30分ほど熱乾燥(チップなしで加熱)して水分を飛ばし、その後2〜30分ほど燻製して食卓に出すことも。

「燻製」というのは遠い世界の話ではないのです。最近ではキッチンで使える燻製機器も増えてきていますし、中には煙を気にせず調理できるものもあるようです。

加熱時間が短くて済み、さらに煙も少ないというサーモスの「イージースモーカー」などは、私もとても欲しい一品です。

hb.afl.rakuten.co.jp

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保存とフレーバー、燻製のさまざまな効果

さて、キッチンでも燻製できる器具があることはお分かりいただけたかと思いますが、続いては燻製といっても、さまざまな効果があるということも説明しておきたいと思います。

燻製は温度によって大きく“熱燻・温燻・冷燻”という3つに分類されます。おおよそ80℃を超える温度で燻すのが“熱燻”、60〜80℃の間が“温燻”、25℃未満で燻すのが“冷燻”と呼ばれ、一般的に温度が下がるほど調理のハードルは上がります。

また燻製する時間によっても、効果が変わります。燻製時間が短ければフレーバー(香り付け)の要素が強くなり、逆に長ければ、食材を長期保存のするための要素が強くなります。今回は作った翌日には食べてしまうお弁当ということで、主にフレーバー効果を目的に、温燻にチャレンジします。

ちなみに、下の記事にあるように、温燻(70℃前後)で数時間燻して作った自家製ベーコンは保存料などを使っていませんが、2ヶ月程は特に変化もなく食べられました。(あくまで個人的な経験です!)


完成イメージ(とメニュー)

燻製づくしの山弁当というだけではどんなものかイメージがしづらいと思いますので、まずは完成予想図をご覧ください。

ぱっと見は地味なお弁当ですが、漬け物以外はおにぎりも含めて全て燻製。登山やピクニックなど旅先での気分を、より盛り上げてくれる香ばしい香りが楽しめるはずです。なお、今回のお弁当のメニューは以下のとおりです。

【燻製弁当メニュー】
・サンマの炊き込みご飯にぎりの緑茶いぶし
・鶏モモ肉の醤油漬けスモーク
・燻製たまご
・野沢菜とたくあん

今回は登山で食べるお弁当ですので保存期間は1日保てばOK、出発前夜に仕込みきるという段取りを想定しています。

調理1:鶏モモの醤油漬けの燻製、ついでにくんたまも

肉を仕込む

最初は仕込みにもっとも時間の掛かる鶏モモ肉から始めます。必要なものはこちら。

【用意するもの】
・鶏モモ肉……約400g
・すり下ろしたニンニク……1片
・すり下ろしたショウガ……ニンニクと同量程度
・コショウ……適量
・醤油……保存バッグに入れた際肉が浸る程度
・ジッパー付きの保存バッグ
・燻製用の乾燥フィルム
・スモークチップ or スモークウッド
・アルミホイル


まず、燻製前に1〜2日かけて素材をタレに漬け込み、その後、塩抜きし、さらに一晩素材を乾燥させ、登山前日に燻製といった工程が必要です。つまり、土曜に食べるとなると、火曜か水曜の夜あたりには漬け込み始めることになります。

漬け込む時間の長短は乾燥前の塩抜きで調整することができますが、お肉を漬け込むのはなるべくお肉を買ってきたその日のうちに始めましょう。(1日置いただけで塩漬け中に肉を腐らせてしまったことがありますので、できる限り衛生面に配慮してください)

もう一つの注意点は食べやすさに関する話です。骨付き肉にするとゴミとして骨を持って帰らなければならないので、あらかじめ骨のない肉を使うか調理前に骨を外してしまうことをおすすめします。

さて、肝心の漬け込み用のタレですが、鶏モモ肉とすり下ろしたニンニクとショウガ、コショウ適量をジッパー付きの保存バッグに入れ、肉が浸かる程度の醤油を注ぎ作ります。酸化防止のためにビニールから空気を抜いて冷蔵庫へ。ちなみに保存バッグから空気を抜くときは、水を張ったボールに沈めながらやると綺麗に空気が抜けてくれます。ただし、袋の口から水が入らないようにご注意を。

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塩抜き(水洗い)

1日漬け込んだら次は塩抜きです。と言っても今回はたったの1日、へばりついた香辛料を洗い流す程度で十分でした。

肉を乾燥させる

洗い流したらキッチンペーパーで表面の水気を拭き取り、燻製用の乾燥フィルムにくるんで一晩冷蔵庫で乾燥します。この工程で余分な水分が抜け旨味が増し、燻したときに余計な酸味が付くのを避けられます。(水気があるまま燻すと、いやな酸っぱさが付いてしまうのです)

燻製する

冷蔵庫で一晩乾燥させたらいよいよ燻製開始です。いつもはサクラチップ3にヒッコリーチップ1ぐらいの比率で混ぜたスモークチップ(煙を出す燻煙材)で燻します。

このチップのブレンドの比率について深い意味はありません。基本的なところで肉や魚にはサクラが合う、ヒッコリーは肉に向くという傾向はありますが、私の場合は完全に好みです。サクラのみではパンチが弱いと感じるときにヒッコリーを混ぜますが、ピートパウダー(地中に堆積した植物が炭化したものを粉状にした燻煙材)を使うという方も多いようです。

しかし、今回はちょっと試してみたくてブレンド済のスモークウッド(板状の燻煙材)を使ってみました。ちなみに今回使ったものには「照り」を出すためのザラメも付いていたので、ウッドの周りに少量をふって、しっかり照りを出してみました。

肉に隠れて見えにくいですが、スモークポットを使う際は肉から落ちた油でチップやウッドが濡れてしまわないように、アルミホイルで油受けを作ってあります。油受けを作っておくことで安定的に煙が出てくれるので温度管理も掃除も楽です。

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さてさて、最も大事なのは燻製時の温度と時間。このような温度計でポット内の温度と煙の出方を注視します。SOTOのスモークポットにはアナログ式の温度計が標準で付属しています。私も最初は付属の温度計を使っていましたが、鍋の上部の温度や食材の温度などを細かく計るのに向いていませんので、反応が早く複数箇所の温度を計りやすいデジタル式のものを使っています。

今回は70℃前後で90分(スモークウッドが燃え尽きるまで)燻しました。ついでなので最後の30分ぐらいでポットの空いたスペースにゆでたまごを入れました。

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調理2:サンマご飯おにぎりの燻製

鶏モモ肉をスモークしている間に、メインのおにぎりを作ります。こちらもまずは材料をご紹介しましょう。

【用意するもの】
・米……2合
・餅米……1合
・サンマの水煮缶……1缶
・千切りにしたショウガ……適量
・塩昆布……適量
・酒……大さじ2
・みりん……大さじ2
・醤油……大さじ1
・緑茶葉……約10g


季節的にサンマが食べたいのですが、お弁当に持っていくということもあり、衛生面を考慮し水煮の缶詰を使うことにしました。

炊き込みご飯はお米、餅米にサンマの水煮缶1缶を汁ごと入れます。そこへ臭み消しのショウガの千切りと出汁代わりの塩昆布に、酒とみりん、醤油を入れ、水は白米炊きの目安で4合のラインまで入れています。

準備ができたら後は炊飯器のお仕事。炊き込みご飯モードで炊きあげて、粗熱をとったらおにぎりにして鶏モモの燻製が終わるのを待ちます。

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鶏モモのスモークが終わったら、ささっとスモークポットを洗っておにぎりの燻製の準備です。おにぎりはスモークチップの代わりに緑茶のお茶っ葉を使いました。鍋底にアルミホイルを敷いて、その上にお茶っ葉をまいたらコンロに着火。香ばしい煙が立ち始めたらおにぎりを載せて蓋を閉めます。ポットの温度が60〜70℃になったら火を止めて10分程置けば完成です。

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さぁ、山へ行こう!

手間暇かけて作った山弁当、しっかり山で試食してきました。登ったのはロッククライミングのメッカとしても知られる埼玉県日高市の日和田山(ひわださん)。山頂から遠く筑波山を眺めながら、燻製弁当を楽しみます。

感想は「うまい!」のひとこと。サンマと出汁という旨味のかたまりを香ばしい香りが包むおにぎりに思わず頬が緩みます。水煮の缶詰を使ったことでサンマの小骨もまったく気にならずに食べられますし、我ながらこれは妙案でした。

続けてつまんだ鶏モモの燻製。仕込みから燻製まで手間がかかっただけあって冷めてもぷりぷりと柔らかく、ショウガとニンニクの効いた味わいが、登山で疲れた身体に沁みわたります。

一緒に食べた子どもの感想はと言えば、緑茶の燻したおにぎりより試作の時に作ったほうじ茶で燻したおにぎりの方が香ばしくて美味しかったそうです。もしかすると子どもにとっては緑茶の苦みが気になってしまうのかも知れません。

一方、鶏モモの燻製はとても好評で濃い味で元気が湧いたと言っていたので、改良を加えて我が家のお弁当の定番にしていきたいですね。

燻製づくしの山弁当は予想以上のうまさに大満足! ではあったものの、山で食べるお弁当なら、もう少しブラッシュアップできそうです。

例えば、登山というアクティビティを前提にすると全体的にもっと塩気を強くしてもいいかもしれません。もうひとつ欲を言うならば、ストーブ(アウトドア用の火器)も持参し、温かいお茶とともに食べたらより楽しめたかもしれません。

山はもちろん、燻製は家で食べるのもオススメ

さて、最後に。今回は行楽の秋に山へ持っていく燻製づくしのお弁当ということで、一気に3品を燻製にしたのでお弁当づくりとしてはちょっと大変でした。

ですが、燻製は本来は保存食。冒頭でご紹介したスモークチキンなら数日〜1週間は日持ちしますので、普段のお料理のついでに作っておけば、お弁当づくりの手間を分散できたり、サラダチキンとして常備しておくということもできます。

我が家では朝食のトーストにスモークチキン(ササミ)を目玉焼きと一緒にのせて楽しんだりしています。山での食としてはもちろん、燻製は家でも楽しめるオススメの調理法なのです。

著者:タケル

タケル

写真と猫と山が好きなデザイン・制作の仕事をしているおじさんです。冬は自家製ベーコンを作り、池波飯のことをブログに書いていたはずが、すっかり写真とカメラの話ばかりになっています。
ブログ:SpaceFlier
Twitter:@TKL