お世話になっております。兼業ライターの赤祖父と申します。
今まで幾つか「子供と遊ぶこと」をテーマに寄稿させていただいております。
https://soredoko.jp/archive/category/%E8%B5%A4%E7%A5%96%E7%88%B6soredoko.jp
今回は4歳半になる私の息子と、それどこ編集部の皆さまにご協力いただき、4歳児vs大人で論理的思考力を競って遊んでみている。
その玩具はコレ。
このサイコロのようなもの、「ローリーズ・ストーリー・キューブス」という。
9つのキューブ6面にそれぞれイラストやマークが描かれ、合計54のイラストで構成されている。キューブを転がし、出た面に描かれているイラストを組み合わせ、即興でストーリーを作っていく……というのが基本的な遊び方。
例えば……
あなたなら、この4コマに配置された絵で起承転結のストーリーをどう考えるだろうか?
そういう即興ストーリー作り遊びを息子、それどこ編集部の方、そして筆者(赤祖父)でチャレンジしてみた。
……というのも、今回のテーマは2020年に義務教育において必修化されるという「プログラミング教育」が関係しているのである。
プログラミング教育必修化を見据えて
2020年に義務教育においてプログラミング教育が必修化されるという。記事執筆時4歳半の息子はちょうど2020年に小学生になるのでプログラミング教育必修化の1期生と言える。
ところで私、普段はいわゆるSIerの会社でエンジニアをしている。この分野は一応のプロではある(プログラミングはもうしていないが…)。
今の時代、システム専門の会社でなくてもコンピューターシステムなしに仕事は成立しない。
プログラマーとして飯を食っていくエンジニアとしてのプロフェッショナルにはならないにしても、コンピューターは魔法の箱でも万能選手でもないので、どうやって動いているか、システムでできることできないこと程度の基礎的なところは分かっていないとうまくいかない。なので、プログラミング教育が必修化される、というのは必然の流れだと思う。
そこに必要なのはコンピューターシステムへの理解と、プログラミングそのものというより、本質としては「プログラミング的思考」、すなわち論理的思考力を育むものが中心になるだろう。
Aという入力データをB処理をし、Cという出力を得る……。そんな筋道立てた考え方ができるようになるのが重要なのだ。
そういった背景を踏まえ、息子の論理的思考力を早めに育んでいきたいなというのも親心だ。
そして色々と調べて見つけたのが、今回扱うローリーズ・ストーリー・キューブス。いわゆる「知育玩具」と呼ばれるジャンルのものになる。
選んだイラストを元に、自分自身でストーリーを組み立てていく。これは、想像力だけでなく、論理的思考力も養えそうだ。また、遊び方を自由に変えられる点も、息子の論理的思考力がどんなものか見極めつつも鍛えていきたいと考えていてた私にとってまさにうってつけである。
以下、具体的な遊び方をご紹介したい。
大人と子供が混じってワイワイと楽しく遊ぶことができましたよ……!
4歳児 VS 大人!実際に遊んでみる
それでは実際に遊んでいきたい。
ローリーズ・ストーリー・キューブスは9つのキューブを転がし、出た目に描かれた9つのイラストを使って物語を作るのが定番の遊び方とされるが、最初から9つすべてのキューブを使って物語を完成させるのはなかなか難しい。
そこで今回設定したルールは、4歳児が架空のお話を即興で考えられるかどうかを考慮して難易度を低めに設定してみた。
★ルール★
・振って出た面のイラストを使う
・9つ中4つのキューブを使って「起承転結」のストーリーを作る
・話の出だしで悩まないよう「むか〜しむかし…」から始める
・チョイスしたキューブはストーリー上に必ず使う
・キューブの絵の解釈は自由。自分がそう見える、と思えばOK
・話に口を挟まない。話が終わるまでは肯定する
各コマに一つずつキューブを配置し、4コマのようにして起承転結を考えるようにした
★参加者★
(左から)息子(4歳)と筆者(赤祖父)、それどこ編集部Kさん、Nさん、Sさん
(左から)Voyage、オリジナル
なお、今回はそれぞれ描かれているモチーフやイラストが異なる「オリジナル」というパッケージと「冒険(Voyage)」パッケージを用意した。
流れを見ながら以下の3ターンを全員1ストーリーずつ披露するということにした。
1周目:オリジナルパッケージを使用
2周目:冒険パッケージを使用
3周目:全部を使用して、8コマで実施する
全員3周実施したが、今回は都合上、いくつかピックアップしてのご紹介となる。
【1周目】「オリジナル」のキューブでストーリーを考える
まずはベーシックなオリジナルのキューブを使用。
こんな感じでサイコロと同じように振って使います。
- 息子が考えたストーリー
見たところ磁石や時計、月のようなものを選んだようだ。キューブを振ってから4つ選ぶまでのスピードも早かった。
このキューブの組合せでどう話が出来上がるか……!
むかしむかしあるところに磁石が落ちていました。
おうちの中に誰か住んでいました。
時計が何時間も早く動いていて(←時が早く進むイメージ)
磁石がピラミッドになりました。
夜になりました。 【おわり】
★コメント★
- 「磁石がピラミッドになるというのがすごい(でもなんで?)」
- 「一応、"かなり時間が経って変化した"と時計を論理的に使ってますね!」
続いて大人の番。
- それどこ編集部・Nさんが考えたストーリー
こんな組合せのキューブに。
かなり時間をかけてキューブを選んでいた。息子は直感で選び、まさしく「即興」でストーリを考えていたが、Nさんはストーリーを発表するまでの間もかなり悩んでいるようだった。
さて、どう出る……!?
むかしむかしある街に噴水がありました。
ここになぜか魚が一匹迷い込みました。
助けてあげないといけないなということで、村の凄い人が携帯電話を開発している人で、その人に協力を要請しました。
無事に魚を川に流してあげ、その魚を応援するために橋をかけました。【おわり】
★コメント★
- 「急に携帯電話の開発者が!?」
- 「普通に魚を助ければいいのに……」
- 「いや、いや、これはムズい……マジでムズいっす…(汗)」
そう、「無から生み出し」た、「即興のフィクション」を「論理立てて」話す。これ、実はかなり難しいのだ。「いやいやいや、イケるよ……」って思うかもしれないが、やってみると分かるのだ。いや本当に。
【2周目】「冒険(Voyage)」のキューブでストーリーを考える
一巡したところで今度は冒険(Voyage)パッケージを使用。キューブの絵柄が全て違うものになっており、またひと味違う遊びになる。
- それどこ編集部・Kさんが考えたストーリー
どうでもいいけど海外生まれのゲームなのにご飯茶碗がある……!?
Kさんのターンで印象的だったのは3コマめにまず鳥が描かれたキューブを配置したこと。どうやらこの鳥を軸に思い浮かぶストーリーがあるようだった。どんなストーリーになるのだろうか?
むかしむかし、1970年代のとある家の話……。
家から人が出たところ、外にカラスが沢山いました。
カラスは、突然変異で人を襲うようになりました。
カラスは人間を食べ尽くしました。そう、人間はご飯にされたのです……。【おわり】
★コメント★
- 「こわいよ」
- 「“ご飯"のキューブの使い方がすごい。そうくる!?」
- 「そういう有名な映画をイメージしたんですよ…フフフ」
- 「Kさんのキャラが読めない」
Kさんによると即興でストーリーはまったく思い浮かばず、映画のストーリーを再現できそうなキューブをとにかく選んだそうだ。
後攻は息子のターン。
- 息子が考えたストーリー
パッと見だと脈絡がないようなイラストばかりな気が……。
1周目のときと同様、今回もキューブを選ぶスピードがとにかく早かった。ランダムで出てくるイラストに、我々大人は「どれが使えそうかな?」と四苦八苦してしまうのに……! 息子はどんなストーリーを考えたのだろうか。
むかしむかしあるところに波が来ました。
大波だったので卵が海におとされました。
潜水艦が来て、海の上で卵を発見しました。
卵を薬箱に入れたら、薬箱からニワトリが出てきました。【おわり】
★コメント★
- 「ちゃんとつながってますねえ…!」
- 「先ほどのKさんの話と比較すると、まったく話に原型が無いのが特徴かもですね」
- 「あと、ストーリーを考えるのが早い!とにかく早い」
- 「私たち大人は結構長考するのに、息子さんはキューブを並べた瞬間ストーリーができますよね」
- 「薬のマークを薬箱、と解釈しているのも応用力があっていい」
……そう、息子はまだ既存の映画や小説、漫画といったフィクションの先行作品をまるで知らない。
だからこそ、大人と違って「どこかで聞いたことあるような話」にならないのかもしれない。そして、即興力がとても高い。大人が長考するのに対して息子からは即興のストーリーがポンポンと出てくる。
アタマをひねる大人を尻目に、/もう余裕すぎるよ\という感じ
【3周目】キューブをミックスし、8コマのストーリーを作る
3周目は「オリジナル」「voyage」計18個のキューブを振って、8コマに当てはめていく。
起承転結が2コマずつでも良いし、起承転転転転転結のような使い方もアリだ。かなりの難易度だが……!?
- それどこ編集部・Sさんが考えたストーリー
こんなキューブの組合せに。
倍選ばなければいけないということもあり、Sさんはかなり悩んでいた。
その結果は……!?
むかしむかしあるところに、自分の家にいる人がいました。
その人は、割と幸せなんだけど何か満ち足りない思いでした。
「何が足りないかわからないから探しに行こう!」
アフリカに行ったり、
洞窟に行ったり、
海の底に行ったり…
しかし何の進展もなく、
結局近所の灯台にのぼり考えていたところ、星が見えました。
「こ、これがぼくの探していたものだったのか…!」【おわり】
★コメント★
- 「どうかな? このお話」
- 「全然面白くないよ〜」
- 「ひどい」
- 「途中の要素を並列に語って消化する手法ですね…!」
なお息子は逃亡(このへんで飽きた)。キューブ8個のストーリーはさすがにまだ難しいようだ。
しかし大人でも難しく、他のメンバーも割とグダグダしてしまいました。とにかく脳が疲れた。
元々は幼児の発想力と論理的思考力を伸ばすつもりでこの「ローリーズ・ストーリー・キューブス」に挑戦してみたが、結果としてはむしろ大人の不甲斐なさを思い知らされることになった。
まずキューブに描かれたイラスト、という断片的かつ少ない素材をダイナミックなストーリーへつなげていく、という点においては大人から見て素直に驚いた点でもある。
また、論理的思考に関しては息子はそれなりにつながったストーリーを構築していたことに驚かされた。
何より、大人の話はどうしても「どこかで聞いたことあるようなストーリーや題材」に寄っていってしまっているのに対して、子供の話は真にオリジナルなストーリーがすぐに出てくるのにはビックリした。
(大人が長考するので飽きてる息子)
「考える」クセづけに、知育玩具は有用だった
「ローリーズ・ストーリー・キューブス」は遊び方の決まった玩具と違って、大人と子供が対等に楽しめ、想像力の広がり、発想の瞬発力、そして論理的思考力を鍛えるにはとても有用なツールであると実感した。また、普段接しているだけではなかなか見られない、息子の能力や成長を垣間見ることもできたように思う。
もちろんツールとしての論理的思考(ロジカルシンキング)やプログラミングそのものの力が付くわけではない。
しかしながら大人が「なぜそうなったのか」「そうした結果どうなるのか」という問いを加えてあげることで、より対話の中で論理的にものごとを考えるクセづけができていくかもしれない。
息子ともまたタイミングを見て遊んでいきたい。
なおルールの決め方次第でいろいろな遊び方もできるので、ボードゲームと同様に大人だけでの遊びにも良いだろう。持ち運びにもかさばらないサイズなので、何人かで集まるときは「ローリーズ・ストーリー・キューブス」を持っていっても盛り上がるかもしれない。何より、これほど大人がダメな様子を晒すのは面白かった。
著者:赤祖父(id:akasofa)
1980年群馬県生まれ東京在住。
三流情報サイト「ハイエナズクラブ」編集などをはじめ
私生活のほぼ全てをネットに捧げているサラリーマン。
好きな食べ物はコロッケそば。
ブログ:光景ワレズANNEX
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