こんにちは。大好きな柿ピーを18年間毎日食べ続ける、柿ピー研究家・中倉隆道です。もともとはNHKでアナウンサーとして勤務していましたが、現在は柿ピー研究家・フリーアナウンサーとして活動しています。
今回は皆さんが気づいていないかもしれない「柿ピーの奥深さ」を、じっくり紹介します!
- 柿ピーは“最も売れているお菓子”
- 柿の種の進化を知っていますか?
- 食感:「しっとり」まで来た食感の進化
- フレーバー:期間限定商品で季節が分かる
- 形状:柿の種の「形」はいろいろ
- 食感:「しっとり」まで来た食感の進化
- おすすめの柿ピー3選
- 1. ビールが飲みたくなる「横濱ビア柿」
- 2. 材料はもち米だけの「素焼き」
- 3. ごはんと一緒に「柿の種のオイル漬け にんにくラー油」
- 1. ビールが飲みたくなる「横濱ビア柿」
- 応用編・柿ピーは料理にも使える
- 1. もちもち柿ピーご飯
- 2. 柿ピー“だし”ご飯
- 1. もちもち柿ピーご飯
- 沼の先には「柿ピー仲間」との出会いがあった
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柿ピーは“最も売れているお菓子”
「柿ピー好きですか?」と聞くと、おそらく多くの方が「好き」と答えてくださると思います。しかし、「お菓子といえば何を思い出しますか?」と聞かれたら、すぐ思い浮かぶのは、「ポテトチップス」「チョコレート」あたりでしょうか。
その現実が、柿ピー研究家の僕としては悲しいのです。
スーパーやコンビニには、スナック菓子、チョコレートなど、たくさんのお菓子が並びます。その中で実は、柿ピーは、全国のお菓子売上データによると「月間で最も売れているお菓子」*1なのです(過去2年分データより。バレンタインシーズンの2月を除く)。
ですが、おそらく「柿ピーってそんなに売れてるの?」と思った方が多いのではないでしょうか。
柿ピーを愛する僕は、この“地味な存在”の日本の伝統菓子「柿ピー」の地位が今より少しでも向上し、もっと多くの種類の柿ピーが世に出て、たくさんの柿ピーファンができればいいなと思い、さまざまなメディアや講演会などで、柿ピーの魅力を伝え続けています。
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柿の種の進化を知っていますか?
18年間大量の柿ピーを見て、味わっているうちに、柿の種の変遷・進化に気づくようになりました。1923年(大正12年)の誕生以来、柿の種そのものも進化を遂げているのです。その進化の中でも、食感・フレーバー・形状について解説します。
食感:「しっとり」まで来た食感の進化
製造方法や仕上がりの違いから、食感は大きく3つの変遷を経ていると考えています。
<1. 「プレーン系」>
米などの生地を焼いて仕上げたオーソドックスな柿の種。ほとんどのメーカーの柿の種がこのジャンルに区分けされます。代表例としては、多くの人が連想するであろう亀田製菓の「亀田の柿の種 プレーン/わさび/梅しそ」の御三家。食感は「パリパリ」「カリカリ」。
<2. 「揚げ系」>
生地を作る工程まではプレーン系とほぼ近い製法ですが、焼くのではなく揚げています。小麦やポテトなどのスナック菓子に近い、サクサクフワフワした食感。代表例はアイデアパッケージ製の「大阪紅ショウガ天柿ノ種揚」。
<3. 「濡れ系・しっとり系」>
ここ数年、各メーカーさんが取り組み始めた「濡れ系・しっとり系」の柿の種。濡れせんべいに近いものから少ししっとり感があるものまで、数は少ないですが確実に新しいジャンルとして確立し始めています。そのうちの1つが、紅ショウガの「揚げ系」と同じアイデアパッケージ製の「京都生八ツ橋風柿ノ種揚」。
生八ツ橋のしっとりもっちりした食感を柿の種で再現したチャレンジングな製品。最初の食感は軽めでサクサク。その後食べ進めていくと何とももっちりとした食感に感じられます。
フレーバー:期間限定商品で季節が分かる
“季節は柿ピーで知る”
こう感じている柿ピー愛好家は少なくないはずです。というのも、柿ピーには期間限定フレーバーがたくさんあるんです!
1年を柿ピーの味で例えてみると、春は「さくら味」「アスパラ味」、夏は「レモン味」「スパイシー味」「アイス味」「パイン味」、秋は「チーズ味」、冬は「チョコレート味」。季節を代表する食べ物のフレーバーが頻繁に登場します。
中でも初夏はレモン味とスパイシー味がアツい! ので、その中から3つの製品を紹介します。
<夏の代表的フレーバー「レモン味」>
ここ数年、毎年発売されているレモン味の代表といえば、最近お菓子でよく使われる瀬戸内産レモンを打ち出したでん六の「塩レモン柿ピー」。
塩とレモンの酸味が、柿の種の香ばしさと相まってあってサッパリした仕上がり。おつまみにはもちろんぴったりですし、夏のおやつとしても良いと思います。
<ビールに合う「スパイシー味」>
レモンと並ぶ夏の定番となったフレーバーがスパイシー味です。辛さの種類にもいろいろありますが、お菓子にはよく麻婆豆腐などに使われる花椒(ホアジャオ)や唐辛子などが使われていますね。もちろん柿の種でも各メーカーから発売され、人気商品となっています。
その中でも抜群の人気を誇るのが、亀田製菓の「亀田の柿の種 シビ辛ラー油味」。期間限定商品です。
花椒のピリリと痺れる辛さ、ガーリックがたっぷり入ったラー油をイメージさせる濃厚な味わいが、お酒のおつまみに最高。香りがとってもいいんです。
<もはや定番といっていい「カレー味」>
夏の代表的な味が「カレー味」です。一部では通年販売しているメーカーも。亀田製菓では2010年からカレー味が期間限定として登場し、今年で9年目を迎える夏の定番商品になりつつあります。
人気カレーチェーン店の「CoCo壱番屋」とコラボした亀田製菓の柿の種は、2017年5月に期間限定で販売されて以来毎年登場しているため、夏の楽しみの1つとなっています。
形状:柿の種の「形」はいろいろ
柿の種の大きさや形もさまざまで、各メーカーの個性が光ります。柿ピー研究家たるもの、柿の種の計測は欠かせません。さまざまな柿の種を計ってみたところ、柿の種の標準サイズはおよそ2.5cm~2.8cm。その中でさらに形状が大きく4種類に分けられます。柿の種の形だけでどこのメーカーのものか判断できる人はかなりの柿ピー上級者です。
B:幅が広く両端が切れているもの
C:三日月型で端がやや尖っているもの
D:三日月型ではなく朴とつとしたもの
実はこれら、全てバラバラのメーカーさんなんです。形が微妙に異なるだけでも口当たりや食感が変化します。ご自身が食べている柿ピーがどのメーカーさんのものか、観察しながら食べ比べしてみるのも楽しいですよ。
B……三幸製菓
C……阿部幸製菓
D……王様製菓
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おすすめの柿ピー3選
このように非常に多くの柿ピーに触れていくうちに、おすすめ、かつ印象的だった柿ピーとの出会いがありました。その中から3つを紹介します。
1. ビールが飲みたくなる「横濱ビア柿」
NHKへ入局して最初の勤務地は福岡でした。東京勤務になるまでは、半年に1度のペースで実家のある横浜へ帰っていました。
その時に、横浜ならではの柿ピーに出会いました。美濃屋あられ製造本舗の「横濱ビア柿」です。
美濃屋あられ製造本舗は、創業90年になる横浜の老舗あられメーカー。横浜は国産ビール発祥の地といわれており、「ビール発祥の地らしい商品を作りたい!」ということから「横濱ビア柿」が開発されたそうです。まさにご当地らしさを表現した素晴らしい柿ピー。そして何といってもビールが飲みたくなる柿ピー!!
- 一般的な柿ピーと色が全く異なる。柿の種は赤味噌のような赤黒い色
- 味付けに特製の濃口醤油、白醤油などをベースにしたタレを使用
- ビーフエキスなどが入っているため肉のコクがしっかりある
- まろやかなシチリアの海塩、辛味としてのハバネロを使っており、味の広がりがいい
- かなりしっかりとした歯ごたえ
- 熟成した甘くて美味しいピーナッツは、味が濃い柿の種と相性抜群
- 封を開けたときの香りは、醤油の香ばしさとローストされたピーナッツの香りが強め
- “ビールに合う柿の種”のコンセプト通り、とにかく味が濃い。後からピリリと辛味がくる!
2. 材料はもち米だけの「素焼き」
日本有数の米どころで柿の種の故郷でもある新潟では、数え切れないくらい柿ピーのバリエーションがあります。その中でも僕が一番驚いたのが、長岡市にある星六の「玄米柿の種 素焼き」です。
星六の屋号は「味噌星六」。実は、手造りみその専門店なのです。農薬や添加物を使わず、原料も国産100%にこだわり抜き、昔ながらのみそを製造・販売しているメーカーです。その商品の幅は広く、みその原料である大豆や米を使用した商品も多数扱っています。
「玄米柿の種 素焼き」は、とにかくシンプルで、原材料表記には「もち米」の記載のみ! ここまで原料を最小限にして作られるものは他のメーカーにはありません。唯一無二の素朴な柿の種。
- 原料にはこだわり抜いた国産もち米のみ使用
- 業界でも珍しい“素焼き”で、味付けは一切なし
- 玄米の状態で製造しているため表面にツブツブがある
- 素朴な製造過程ゆえに味のインパクトには欠けるものの、じっくり味わうと玄米の香ばしさと甘みが楽しめる
- 自分の好きな味にアレンジできる楽しさがある。カレーパウダー、オリーブオイル、ケチャップ等を付けて食べるのがおすすめ
3. ごはんと一緒に食べたい「柿の種のオイル漬け にんにくラー油」
新潟にある大手柿の種メーカーの中でも異彩を放っているのが、小千谷市の阿部幸製菓です。
柿ピーといえば、きっと皆さんは亀田製菓の「亀田の柿の種」を第一に思い浮かべますよね。
確かに米菓全体の売上データで見れば亀田製菓のシェアは明らかに大きいのですが、個人消費者にはなかなか知られていない、業務用として圧倒的なシェアを誇っているのが阿部幸製菓の製品。そしてここ数年、個人消費者向けに新しい柿の種を発売し始めているのです。
2018年に発売した「柿の種のオイル漬け にんにくラー油」は業界でも話題になりました。
柿の種をオイルに漬けたら、パリパリ感が失われてしまう!……と思っていたのですが、なんと! たっぷりのラー油に漬けてあるにもかかわらず、パリパリサクサクで軽やかな食感が生きていたんです。もうオイル漬けを食べた時の驚きったらなかったですね。見た目と食感の差が面白過ぎて、そして美味し過ぎて思わず笑っちゃいましたもん。
阿部幸製菓の阿部幸明専務や商品開発担当の方にお話を伺ったところ、次のように語ってくれました。
まさにその狙い通り、消費者が驚く逸品になり、柿の種の幅に広がりを持たせてくれた商品だと感じています。
- 柿の種がフニャフニャにならずに済む独自の製法で作られている
- オイルに漬かっているのに、予想を超えるパリパリ軽やかな仕上がり
- 原材料にフライドガーリック、フライドオニオン、コチュジャン、粉末醤油などが入っていて味の深みが抜群
- ガッツリと効いた、香ばしくて食欲をそそるガーリックの味とラー油の辛さが、素材である米の甘さを引き出している
- 白米に乗せて食べるのが一番うまい! その他、白身魚や肉、サラダ、豆腐に乗せても美味しい
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応用編・柿ピーは料理にも使える
柿ピーを研究する者として、誰にでも簡単に作れるものから凝ったものまで、柿ピーを使ったアレンジ料理のレシピを作成しています。そのレシピ作りの背景には、実は悲しい事実がありました。
友人宅に遊びに行くと、僕の「柿ピー好き」を知っている友人は柿ピーを出してくれます。僕はあっという間に完食するのですが、柿ピーの小袋を開けた友人が食べ切れなくなり、残してしまうことがありました。そんな「封を開けた柿ピーが余ってしまう」状況を知った時、どうにか柿ピーを救えないか……!? と考えたのが、柿ピーの料理への転用でした。
今まで食べ切れずに湿気らせてしまっていたあなたに朗報です! 簡単柿ピー料理を2つご紹介します!!
1. もちもち柿ピーご飯
柿ピーと米、ご家庭によくある材料を炊飯器に入れて炊くだけで、美味しい柿ピーご飯ができます!
- 亀田の柿の種:2袋
- 白米:2合
- えのき:半分
- ショウガ:少量
- めんつゆ:大さじ3
- みりん:大さじ1
- ごま油:小さじ半分
- 小ネギ:適量
<作り方>
- えのきを食べやすい大きさ(幅3cm~5cmくらい)に切り、ショウガは千切りにする
- 炊飯器に白米、1、めんつゆ、みりん、ごま油を入れ、水(分量外)を通常の目盛りよりやや多めに入れる
- 2へ柿の種を入れ、軽くかき混ぜる
- 炊飯器のスイッチを入れて、炊きあがったら小ネギを散らして完成
※さらに柿の種を何個かトッピングとして乗せても美味しい
2. 柿ピー“だし”ご飯
山形の郷土料理「だし」をベースにした、野菜もたっぷり摂れるレシピです。
- 「かきたねキッチン 山椒と醤油合わせ」:適量
- ナス:1本
- キュウリ:1本
- オクラ:2本
- ミニトマト:4個
- ミョウガ:1/2個
- めんつゆ:大さじ4(具材によって調整)
- ごま油:適量
- 炊いた白米:適量
<作り方>
- ナス・キュウリをさいの目切りに、オクラを輪切りに、ミニトマトを1/4に、ミョウガを千切りにそれぞれ切って、めんつゆであえ、5分程度なじませる。この時に、味がしっかりした柿の種を使うため、めんつゆは具材の量を見ながら全体的になじむ程度になるよう調整する
- 「山椒と醤油合わせ」柿の種を食べやすい大きさ(半分程度)に割っておく
- 1と2を軽く混ぜ、ごま油をかけてさらに軽くかき混ぜる
- 柿の種が少しだけ水分を吸ったら完成。炊いておいたご飯にかけて食べる
◆
沼の先には「柿ピー仲間」との出会いがあった
多くの柿ピーを見ていると、ただ買って食べる段階から一歩進み、メーカーや地域による独自性に興味を持つようになります。取材や出張などの仕事、個人的な旅行でさまざまな場所を訪れるたびに「“ご当地柿の種”を探す!」という使命を持ち始め、それが出かける楽しみの1つになっていきました。そして、地元のメーカーが製造している柿の種が見つけられるようになりました。
柿ピーへの愛が深まると共に広がっていったのが、柿ピーを愛する「柿ピー愛好家仲間」の輪です。北海道から沖縄まで全国に仲間がいて、最新の柿ピー情報を交換し、製品について論じ合っています。
自社のサイトを持たないような地方のメーカーで新しく発売される製品は、店頭販売を中心としているため製造量そのものがそこまで多くありません。
なので「柿ピーを愛する」という点でつながっている仲間たちが、それぞれの地域でしか手に入らない柿ピーや旅先で見つけた柿ピーについて、「この柿ピー知ってる?」「愛媛で売っているんだけど東京にもある?」というように僕に連絡してくれるのです。そして僕が知らないものや手元にないものについては、買って送ってもらうようお願いしています!
◆
長々と柿ピーについて書いてきましたが、これでもまだ柿ピーの魅力は書き尽くせていません。それくらい奥の深い世界が柿ピーにはあります。それでも、この記事を読み終わった後に、「久しぶりに柿ピーが食べたくなったなー!」「今日のつまみは柿ピーに決定!!」なんて思っていただけたら、あなたはもう柿ピー愛好家です!
100年あまり脈々と食べ続けられている、日本を代表する米菓・柿ピーのファンが、少しでも増え、そしてもっと多様なジャンル、多様な味の製品が登場してくるが僕の一番の願いです。そしていつか、全国の個性あふれる柿ピーを集めたイベント“柿ピーフェス”を開催してみたいですね。柿ピー研究家として、ブログやTwitter、Instagramなどで柿ピー情報を発信しているのでよかったらご覧ください。最後まで読んでくださってありがとうございました!
著者:中倉隆道(なかくら りゅうどう)
柿ピー研究家/アニメ研究家/フリーアナウンサー。18年間、柿ピーを毎日食べ続けている『柿ピー研究家』として活動。元NHKアナウンサー。2017年11月、TBSテレビ「マツコの知らない世界」に柿の種の世界を紹介するゲストとして出演。その他、日本テレビ「スッキリ!」「ワケありレッドゾーン」、テレビ朝日「オスカルはな金リサーチ」などテレビやラジオ、Webメディア等に出演。ブログ:中倉隆道オフィシャルブログ「アニメと柿ピー時々りゅーどー」
Twitter:@nakakuraryudo
Instagram:@ryudo.tokyo
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