
はじめまして。わたくし、ソーメン二郎と申します。「そうめん復権」を合言葉に、2014年ごろからそうめんを使ったレシピ本の執筆やそうめん売り場の開発などに従事し始め、今年はそうめんをテーマにした絵本の企画を行うなど、幅広く活動させていただいております。

ポプラ社から発売された『そうめんソータロー』。絵本内に登場する楽曲の作詞もわたくしが手がけました
今回は、そうめんを愛して40年のわたくしが、これまで食べてきたそうめんの中から、特におすすめの「激ウマそうめん」をご紹介させていただきます。
読者の皆さまの中には、「そうめんなんてどれも同じでしょ?」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、それは大きな間違いです。製麺方法、素材、産地、太さなど、そうめんを特徴付ける要素はたくさんあります。広大かつ深淵なそうめんの世界をご案内します。
製麺方法や産地によって千差万別なそうめんの世界
まずは、簡単に自己紹介させていただきます。
わたくしソーメン二郎は、そうめん発祥の地と言われる奈良県桜井市で生を受けました。実家のすぐ近くには、親類の経営する三輪そうめんの製麺所「亀屋 植田製麺所」があり、幼いころから当たり前のようにそうめんに親しんできました。夏の繁忙期には、大量のお中元の発注に応えるため、一家総出で手伝いをしたものです。

しかし、そんなそうめん黄金時代は昔の話。お中元文化は急速に廃れていき、そうめんの売上は減少。しかも、全国の手延べそうめん職人は70歳を超える高齢の方々が多く、後継者不足に直面しました。

「亀屋 植田製麺所」の製麺の様子
このままでは、幼いころより愛してきたそうめんが廃れてしまう!
そんな危機感と、そうめんの聖地・桜井市に生まれたという使命感を胸に、2014年から活動を始めたというわけです。
活動を通じて改めて気付いたことは、そうめんとは代々“コミュニケーションツール”であった、ということ。1200年もの長きにわたり、あるときは天皇陛下への献上品として、あるときはお世話になった方々へのお中元として、そうめんは人と人のご縁をつないできました。大勢でワイワイ楽しむ「流しそうめん」なんてスタイルも、まさにその一つ。孤食を志向しがちな他の麺類とは、この点が大きく異なり、そして魅力だとわたくしは思っています。
そうめんを購入するときのチェックポイント
さっそくご紹介といく前に、皆さまがそうめんを購入されるときにぜひチェックしてほしいポイントを2点だけお伝えさせてください。
- 製麺方法
伝統的な製法でつくられた「手延べ麺」は、数本の麺をより合わせて1本の麺にしているため、食感に明らかな違いが生まれます。しかも、職人が時間をかけて熟成を行うため、「機械麺」ではなかなか難しい強靭なコシを実現。
食べ比べてみると、その違いは歴然です。これからそうめんを購入されるときは、パッケージに「手延べ」の表記があるか確認する習慣をつけましょう。
- 産地
ビールやウイスキーと同じように、そうめんもブランドにより特徴が大きく異なります。例えば太さだけを取っても、三輪そうめんは極細なのに対し、半田そうめんは極太だったりします。
好きな産地が見つかれば、あなたのそうめんライフが充実すること請け合いのため、こちらもぜひ注目してみてください。
それでは、おすすめそうめんの紹介に移らせていただきます。定番から知られざる逸品まで、とくとご堪能ください。
激ウマ手延べそうめん10選
そうめんの原点「三輪素麺 三輪」奈良県|株式会社池利

そうめんの元祖・三輪そうめんの聖地として知られる奈良県桜井市の老舗「池利」の逸品。最上級の小麦を使用し、創業の嘉永3年(1850年)より続く伝統的な手延べ製法によりつくられるそうめんは、極細なのに強靭なコシが何よりの特徴。いつも食べているそうめんと食べ比べてみれば、どなたでも明らかな違いに気付くと思います。

江戸時代に刊行された、日本各地の名産品を紹介する『日本山海名物図絵』(著・平瀬徹斎)には、その圧倒的なおいしさについて以下のような記述があります。
まさに歴史が証明しているおいしさ。まずは、麺のみをじっくり味わうために、オリーブオイルと塩だけでご賞味ください。めんつゆも薬味もなしで、おいしくいただけることが分かると思います。もちろん、お中元用にもぴったりのお品ですね。
定番そうめんの最高峰「揖保の糸 特級品」兵庫県|兵庫県手延素麺協同組合

600年の歴史を誇る播州(ばんしゅう)そうめんの一大ブランド「揖保の糸」。読者の皆さまの中にも、「そうめんと言えばコレ!」という人が多いのではないかと思います。

そんな全国区で超有名なブランドの特級品であるこちらは、12月から2月の最も寒い時期にだけ製麺、熟成される逸品。一般に広く流通している赤帯のものと味比べしてみると楽しいと思います。
シンプルにめんつゆでももちろんOKですが、そうめんチャンプルーにしたり、お稲荷さんに包んでお子様にそうめん弁当として持たせたりするのもおすすめです。
目にも鮮やか! 緑のそうめん「島の光 手延オリーブ素麺」香川県|小豆島手延素麺協同組合

そうめん作り400年の歴史を有する、瀬戸内の恵の国・香川県小豆島。こちらの「島の光」というブランドは、小豆島特産のごま油を使用しているのが特徴なのですが、こちらはさらにオリーブ果実を練りこんだもの。マイルドな喉越しと色鮮やかなグリーンが、いっそうの清涼感を演出します。
めんつゆで召し上がるよりも、小豆島産のオリーブオイルに、瀬戸内レモンをかけて、さらに粉チーズをふりかけてイタリア風に召し上がるのがいいでしょう。
「島原素麺 涼風の絲(すずかぜのいと)」長崎県|有限会社島原創互物産

手延べそうめんにおける生産量のシェア30%を誇る長崎県南島原市のそうめん。諸説ありますが、先に紹介した小豆島の方が島原に移住してつくられたのが島原そうめんの始まりと言われています。

特徴は、マイルドな食感。炒め物によく合い、沖縄で食べられるそうめんチャンプルーの多くに、島原そうめんは使われているといいます。ツナやニラと一緒に、やはり炒めて食べるのがおすすめです。
太さが特徴の希少品「半田そうめん」徳島県|有限会社白滝製麺

昨年開催された「第2回 The 乾麺グランプリ in Tokyo 2018」にて、見事優勝を果たした半田そうめんの一つ。なんといっても極太の麺が特徴で、「これがそうめんなのか!」と驚くこと間違いなしの歯ごたえと喉越しは一度食べたらやみつきになります。

お肉と合わせたり、ガーリックで炒めたり、がっつりいただくのがおすすめ。徳島名産のすだちを薄くスライスし、冷やしで食べるのも夏の清涼感を楽しめていいでしょう。
完全手仕事100%「南関素麺」熊本県|片山製麺所

数あるそうめんの中でも最長レベルの長さを誇るこちらは、全ての工程を手仕事で行う絶滅危惧種とも言えるそうめん。その長さは、通常の3倍程度。
茹でる前に、あらかじめ1/3くらいにカットしておくと食べやすくなりますが、大勢でやる流しそうめんなどに使う場合、あえてそのままの長さで茹でてみると、そのあまりの長さに盛り上がること請け合い。

南関町生まれの詩人・北原白秋は、この南関そうめんを愛したことで知られ、幼年時代を懐かしみ、歌にも詠んでいます。
ハーフサイズで食べやすい「金だるま白石温麺(しろいしうーめん)」宮城県|白石興産株式会社

通常のそうめんの半分のサイズで、油不使用が特徴。今から約400年前、病気がちな親のためを思った一人の青年が、たまたま旅の僧から油を使わない麺の製法を聞き、食べやすいようにと半分にしてつくってみたのが誕生のきっかけと言われています。

ハーフサイズのため、他の料理に簡単にちょい足しできるのが魅力。味噌汁や豚汁に具材として入れれば、にゅうめんのように楽しむことができますし、野菜と薬味に混ぜ合わせ、仕上げにごまドレッシングをかければそうめんサラダにもなります。現地・宮城では、あんかけにゅうめんとして食べる方も多いようです。
インスタ映え間違いなし?「手延五色そうめん」愛媛県|株式会社森川


愛媛県松山市の名産品として非常に有名なそうめん。それぞれ赤は梅、緑は抹茶、黄色は卵、茶色はそば粉と、自然の色素を使って作られています。参勤交代のときに、徳川吉宗公に献上されたという逸話を持つ歴史的な品。

少し手間がかかりますが、5束まとめて茹でるのではなく、バラバラに茹で、色ごとに盛りつければインスタ映え間違いなし。食べるときは、生姜やネギなどの薬味も5つ用意し、さらにごまドレッシング、チョレギサラダドレッシング、オリーブオイル、ごま油などのつけだれを用意すれば、それぞれの麺の風合いとつけだれの組み合わせを存分に楽しむことができて、おすすめです。
四角い包みが特徴「大門素麺」富山県|となみ野農業協同組合

生産者が少なくなってきてしまっている富山の名産品。パッケージも特徴的で贈答用としても喜ばれます。


封を開けると、麺が4つ入っていますが、この麺は長さ約1.7mと非常に長いため、2つに割ってから茹でるとあとが楽。小麦感の非常に強いそうめんのため、めんつゆに薬味だけでシンプルに召し上がると、このそうめん本来の味わいを感じることができます。
茹でるのすら面倒な人へ「マグカップにゅう麺」奈良県|株式会社坂利製麺所

夏でも温かいにゅうめんを食べたいという方、そうめんを茹でるのも面倒という方におすすめ。お湯をかけるだけで奈良の手延べそうめんのおいしさを味わえるフリーズドライにして本格即席麺。

一つのパッケージに「担々麺」「玉子」「和風あごだし」の3タイプが封入。

担々麺スープ
ランチに良し、夜食に良し、二日酔にも良し! ごま油をたらしたり、麻婆豆腐や担々麺に使う四川花椒(ホアジョー)を少しかけても、味が変わっておいしくいただけます。
◆
以上、おすすめのそうめんを紹介させていただきました。今回はあくまで入門編として10点に絞りましたが、もちろんこれ以外にも日本全国にさまざまなそうめんが存在します。最近では健康志向の高まりにより、油を使わず吉野葛や全粒粉を用いたそうめんなんていうのも登場しています。
また食べ方やシチュエーションも多様化が進んでおり、都内を中心にそうめん専門店も登場しています。いずれのお店もご当地のそうめんを使った新たなメニューを提案しており、家庭で食べる「内そうめん」の次は、ぜひ「外そうめん」にもチャレンジしてみてくれるとうれしいです。
著者:ソーメン二郎

そうめん研究家・ソーメン二郎の「そうめん道」ブログ
今回紹介した商品
【楽天市場】 三輪素麺 三輪 池利
【楽天市場】 揖保の糸 特級品 兵庫県手延素麺協同組合
【楽天市場】 島の光 オリーブ素麺
【楽天市場】 島原素麺 涼風の絲
【楽天市場】 半田そうめん 白滝製麺
【楽天市場】 南関素麺
【楽天市場】 金だるま 白石温麺
【楽天市場】 手延 五色そうめん
【楽天市場】 大門素麺
【楽天市場】 マグカップ にゅう麺