キンパ(韓国海苔巻き)のレシピを詳しく解説。本場のオーソドックスな具材はほうれん草ナムル、きゅうり、にんじんナムル、カニカマ、魚肉ソーセージ、玉子、たくあんなどを使ったもの。これらの準備から、誰でもできる巻き方の解説、さらに最後は韓国で食べられている多様なキンパも紹介します。
こんにちは。韓国料理研究家の本田朋美です。
みなさん「キンパ」をご存じでしょうか。キンパは韓国式の「海苔巻き」です。コンビニでもキンパが買えるようになったり、2020年ごろから専門店が徐々に増えてきたりして、日本でもキンパが流行し始めています。
最近は、新型コロナウイルスをきっかけに、自炊の回数が圧倒的に増えた人も多いのではないでしょうか。外食もままならず、自炊ばかりをしていると「自分の手料理に飽きたな……」なんて感じることはありますよね。 自分で作る料理って、似たような食材や味付けになってしまいがちです。そこでマンネリを打破するために、「キンパ」をご自宅で作ってみませんか?
韓国でのキンパは、日本のおにぎりのような定番の存在。さまざまな韓国料理の中でも、キンパは以下の点でおすすめです。
- 日本人にもなじみやすい、やさしい味
- それでいておうちごはんに新しい風を吹かせてくれる
- アレンジしやすく具材が自由
「最近、ちょっと食卓がマンネリ気味……」なんて思っている人はぜひ挑戦してみてください。
著者:本田朋美
韓国料理店のアドバイザー、企業へのレシピ提供・イベントの企画開催、 ツアーの企画開催、執筆、商品製造販売、メディアへの出演などを通じ、韓国料理の魅力を伝える活動を行っている。ブログ「本田朋美(ほんだともみ)のコリアンワールド」、YouTube「こりあんふーどチャンネル」を運営。2020年12月『韓国ドラマ食堂』を出版。
Twitter:@tomomi0308
※先に作り方を知りたい方はこちらからどうぞ
基本的なキンパの構成
まずは「キンパとは何か?」を説明します。さまざまなアレンジが可能なキンパですが、基本は以下のようなイメージです。韓国語でキンパとは「キン(正確にはキム)=海苔」、パ(正確にはパプ)=ご飯」を意味します。
ご飯はゴマ油と塩で味付けがされています。この味付けが日本人にとってなじみやすくも新鮮に感じられるのではないでしょうか。
キンパに使う海苔は味付きの韓国海苔と思われがちですが、実際は普通の焼き海苔です。日本で「普通の海苔」とされているものが、韓国では「キンパ用の海苔」として売られているんです。
韓国料理には古くから「陰陽五行説」の概念があります。栄養素が解明されていなかった時代に、青(=緑)、赤、黄、白、黒の色の食材をバランスよく食べることで、満遍なく栄養素がとれると考えられていました。基本的なキンパの材料にも陰陽五行説の考えが取り入れられています。
- 青(緑)……ほうれん草ナムル、きゅうり
- 赤……にんじんナムル、カニカマ、魚肉ソーセージ
- 黄……卵、たくあん
- 白……ご飯
- 黒……海苔、ごぼうのしょうゆ煮
この中でも、たくあん、カニカマ、ハム、ごぼうのしょうゆ煮にはキンパ用として細長い形状のものが販売されています。
材料の販売のされ方からも、韓国でキンパが「定番」の食べ物である様子がうかがえますね。
かんたんな「しずくキンパ」の作り方
それでは、キンパの作り方に入ります。本来は日本の海苔巻きのようにキンパも巻きすを使って作りますが、日本の家庭で海苔巻きを作る機会が少ないので、ちょっとハードルが高いかなと思います。
そこで、今回はキンパ初心者にも手軽に作れる「しずくキンパ」をご紹介いたします。巻きすの代わりにラップを使い、巻かずにパタンと手軽に折りたたむだけです。上記写真のように、切ったときに「しずく」のような形になります。かわいいので、おもてなし料理として出すと喜ばれること間違いなしです。
また今回紹介するレシピでは、日本のスーパーで手に入るもので作れるように材料を調整しています。
ところで、これから説明する一連のレシピを見てみると「工程が多いな……」と感じる方も多いかもしれません。確かに具を全て一から作ろうとするとちょっと大変ですよね。
ただ、韓国では作り置きのおかずをキンパにすることもよくあります。単に冷蔵庫で残り物になっていた、きんぴらごぼうなどをキンパの具として使うこともあるんです。また、市販のお惣菜などをキンパにしてもいいでしょう。こうすると手間は大きく省けます。
材料(2本分)
具材
玉子焼き
- 卵……1個
- 塩……ひとつまみ
- サラダ油……小さじ1
ほうれん草のナムル
- ほうれん草……2株
- 塩……ひとつまみ
- ゴマ油……小さじ1/2
にんじんのナムル
- にんじん……1/4本
- サラダ油……小さじ1/2
- 塩……ひとつまみ
塩味のきゅうり
- きゅうり(縦に長いもの)……1/2本
- 塩……小さじ1/2
その他、切るだけ(または、そのまま)の具材
- 魚肉ソーセージ……1~2本
- たくあん……40g
- カニカマ……6本
材料の下ごしらえ
玉子焼きを焼く
1. ボウルに割った卵と塩ひとつまみを入れてよく混ぜます。
2. フライパンにサラダ油小さじ1を入れてキッチンペーパーで満遍なく広げます。
3. 中火にして卵液を流し入れ、表面が乾いてきたら巻いていきます。
4. フライパンから玉子焼きを取りだして冷まし、縦に2等分に切ります。
ほうれん草のナムルを作る
1. ほうれん草を洗い、水気のついたまま耐熱容器に入れてラップをふわっとかけます。
2. 500ワットの電子レンジに2分かけ、水に取り水気をよく絞ります
3. ボウルにほうれん草を入れ、塩ひとつまみとゴマ油小さじ1/2で味付けします。
にんじんのナムルを作る
1. にんじんを長さ5cmくらいの千切りにします。
2. フライパンにサラダ油小さじ1/2を引いて中火で炒めます。
3. しんなりしたら塩ひとつまみで味付けします。
きゅうりに塩味を付ける
1. きゅうりを縦に半分に切り、種の部分をそぎ落とします。
2. 塩小さじ1/2をまぶして10分ほど置き、キッチンペーパーで水気を取ります。
魚肉ソーセージとたくあんを切る
- 魚肉ソーセージを縦に1/2または1/4に切ります。
- たくあんをきゅうりと同じ太さに切り分けます。
ご飯に味付けをする
- ご飯に塩小さじ1/2、ゴマ油大さじ1、ゴマ小さじ1を加えて、しゃもじで切るように混ぜたら、人肌くらいの温度になるまでうちわで冷まします。
この時点ではご飯にちょっとしょっぱさを感じるかもしれませんが、冷めたときにちょうど良い塩梅になります。
キンパを巻く
1. まな板の上にラップ(海苔よりも大きめ)を敷き、海苔をのせ、ご飯の半量を全体に広げます。
2. 海苔の中央部に玉子焼き、ほうれん草ナムル、にんじんナムル、きゅうり、魚肉ソーセージ、たくあん、カニカマのそれぞれ半量をのせます。
(横から見るとこんな感じです)
3. ラップの手前を持ち上げ、具を巻き込むように半分に折り、巻き閉じ(赤く囲ってあるあたり)をしっかりと押さえます。
4. 巻き終えたらラップの上から形を整えたらラップをはずし、ゴマ油を海苔にまぶします。使い捨て手袋をはめ、手にゴマ油をまぶし、キンパを包み込むように塗るときれいに仕上がります。ゴマ油をぬると照りが出るのでおいしそうに見えます。ただ、これはお好みで構いません。
5. キンパを食べやすい大きさに切ります。キンパをきれいに切るためには、包丁を前後にギザギザと動かさず、滑らせるように動かしてください。また、一回切る度に包丁をぬれ布巾で拭くと断面が美しくなります。
改めて、「しずくキンパ」の完成です。
イベント等でキンパを用意するとき、このようにしずくの形にすると、巻く時間を節約できる上に、ご参加者から形がかわいいとほめてもらえます。私も何度もしずくキンパを作っています。
YouTube動画も参考にしてみてください。ただし、動画の中ではラップではなくて巻きすを使っています。
ここまではかんたんな「しずくキンパ」の説明をしてきました。巻きすを使う丸い形のキンパの巻き方のコツを知りたい方は、著書『あの名シーンを食べる! 韓国ドラマ食堂』を参考にしてみてください。
『あの名シーンを食べる! 韓国ドラマ食堂』を詳しく見る
冷蔵庫の残り物で。ポテトサラダキンパ
先ほど紹介した作り方で、具をサンチュとポテトサラダに変えてみました。クリーミーなポテトサラダに、ゴマ油の香ばしさが加わります。味のアクセントとして、ポテトサラダに七味唐辛子を振るのもお勧めです。またナッツ類を入れるとポリッとした食感も楽しめます。
ポテトサラダをたくさん作ってしまって残ってしまったときに、キンパにしてもいいですね。もちろん、市販のポテトサラダを使っても問題ありません。
さまざまなキンパのバリエーション
キンパにはいろいろなバリエーションがあります。実は具材も巻き方も自由なんです。コマキンパ
韓国語でコマは「小さい形、ちびっこ」という意味です。日本の手巻きずしに近く、1枚を4等分に切った海苔の上に味付けしたご飯を薄く敷き、細切りのたくあん、にんじんナムル、きゅうり、ハムなどを巻きます。食べるときに酢じょうゆを付けるのが特徴です。
ソウルの広蔵市場(カンジャンシジャン)にあるコマキンパ専門店は、韓国旅行好きの日本人の間で有名で、ガイドブックに掲載されているほどです。広蔵市場(カンジャンシジャン)のコマキンパの具は至ってシンプルで、にんじんナムルとたくあんだけなのですが、買い物ついでにつまむと程よく小腹が満たされます。
生ハムアボカドチーズのコマキンパ
コマキンパを生ハム、スライスチーズ、アボカドで作りました。濃厚でまろやかなアボカドに、生ハムとチーズの塩味が加わり、バランスの良い味になります。従来のキンパとは異なる目新しさがあります。
さっぱり感を出したいときには、千切りのきゅうりを少し入れてもいいと思います。アボカドにレモン汁をたらすと、変色を防ぐことができます。
忠武(チュンム)キンパ
コマキンパに近い形で昔から存在するのが「忠武(チュンム)キンパ」です。忠武(チュンム)は韓国の港町の名前に由来しています。味付けしたご飯を海苔で巻いただけのキンパとイカ等が入った辛い和え物を一緒に食べます。十分に食事の時間が取れない漁師さんのお弁当が、忠武(チュンム)キンパのはじまりです。
折りたたみキンパ
「折りたたみキンパ(または、四角キンパ)」は今年に入りSNSで話題になりました。日本で話題になった「おにぎらず」のように巻かないスタイルで、一枚の海苔を4つのスペースに分けて、ご飯、具材をそれぞれのせて、パタンパタンと折りたたむだけで完成です。折りたたみキンパの流行で、日韓共にキンパ人気がさらに高まっているようです。
ヌードキンパ
反対にちょっと難しい巻き方として「ヌードキンパ」があります。通常のキンパは外側が海苔ですが、ヌードキンパは海苔が内側になり外側がご飯になります。口に入れた瞬間、ご飯のふわっとした食感が伝わり、通常のキンパと同じ具材でも別物のようです。
プレミアムキンパ
「プレミアムキンパ」は、ご飯少なめ、具材多めのキンパです。いままでのキンパには使われなかったようなエビフライやトンカツなどが入っていることもあります。2010年ごろに登場し、キンパの可能性がさらに広がりました。
チーズキンパ
「チーズキンパ」は、キムチやコチュジャンで味付けしたご飯にとろりとしたチーズが入っています。ちょっと酸味のあるキムチご飯とチーズの相性はバツグンです。また、チーズがとろける様子はSNS映えするようですね。日本でも流行中です。
キトキンパ
「キトキンパ」は、ご飯の入らないキンパです。ご飯の代わりに卵がたくさん入っています。糖質が少なく、タンパク質とビタミンをとることを目的としています。近年の日本と同様に、韓国でも糖質制限が大きな関心事となっています。韓国語の「キト」は糖質制限したときに体の中で生成される「ケトン」のことです。
キンパは韓国でどのように食べられているか
キンパは韓国でどのような食べ物なのでしょうか。最後に説明いたします。キンパの由来
キンパは、統治時代に日本から伝わった海苔巻きが原形になっています。そのときにご飯の味付けは韓国風のゴマ油と塩になり、具材は韓国の常備菜中心になりました。キンパの定番の具の一つに「たくあん」がありますが、これも日本から伝わった漬物です。
韓国では外食文化が発達しています。そのため、お弁当を食べる機会が日本に比べて少ないのですが、お弁当や軽食としてのキンパは韓国中に浸透しました。韓国は、ビビンバのようにいくつもの具材を混ぜて食べる文化が根強い国です。そのために、口の中で材料が混然一体となるキンパが韓国の方の味覚に合い、受け入れられたのだと考えます。
外食のキンパ事情
キンパは外食でも人気のメニューの一つです。
街にはハンバーガー屋よりもキンパの専門店が多く立ち並んでいます。またコンビニでも当たり前のように販売されています。
最近のお店では、キンパをおしゃれな紙に包んでくれることが多いです。ちょうどファーストフードのハンバーガーのようです。
昔ながらの専門店では注文と同時にお店の方が作り、アルミホイルに包んで渡してくれます。アルミホイルのお陰でご飯がほのかに温かく、お店の方の心遣いが感じられます。
近年は、パン屋さんのように好きな具材のキンパを選んでトレーにのせ、レジで会計をする専門店のスタイルも登場しました。
韓国には粉食(プンシク)といって粉物料理を中心とした軽食屋さんがあります。粉物料理といえば、日本ではお好み焼きが思いつくと思いますが、韓国ではチヂミやトッポッキが粉食料理です。そして、この粉食にはキンパも入るのです。韓国の方はトッポッキとキンパを別々に食べたり、トッポッキの甘辛いタレをキンパに付けて味変したりして楽しみます。
お弁当の定番はキンパ
子どもたちが遠足に持っていくお弁当は、ほぼ全員がキンパです。日本と同様に韓国も共働きの家庭が多いので、お弁当を作る時間のない親たちは、キンパ専門店に駆け込んで遠足に持たせることもあるようです。
私が韓国の地方へ行く際は、ソウルの高速バスターミナルでキンパを購入し、バスの移動中に朝食にすることが多いです。
映像の中のキンパ
また、韓国映画やドラマが好きな方は、きっとどこかでキンパをご覧になったことがあると思います。
韓国でヒットして、日本でも人気になった韓国ドラマ「トッケビ~君がくれた愛しい日々~」にはキンパが出てくる印象的なシーンがあります。
主人公のウンタクが冷蔵庫にあった乏しい材料でキンパを作り、叔母たちとのいざこざから家を飛び出して、海辺でひとり泣きながらキンパをほおばるのです。
他にも韓国映画やドラマのさまざまなシーンでキンパは出てきます。作ってみたら、ぜひ気にかけてみてください。
◆ ◆ ◆
基本的にキンパは自由な発想で作れます。文中でご紹介した陰陽五行説は、若い世代はとらわれていませんので、キンパに使われる具材が増えたのだと思います。本日ご紹介したレシピを元にいろいろな組み合わせでキンパを作ってみてください。新しい風が食卓に吹くこと、間違いなしです。
自分の手料理に飽きてしまったら
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