(写真提供:新潟県観光協会)
こんにちは。福岡県出身&在住のライター、大塚たくまです。
ビールがおいしい季節になりました。ビールのおつまみといえば、枝豆ですよね。
ぼくも居酒屋でビールを飲むときにはよく食べていますし、結構好きだとは思います。
でも好きだとはいっても、食べるのは居酒屋のお通しで出てきたものか、近所で購入した冷凍枝豆くらい。「おいしい」とは思うものの、感激したことはありません。
そんな中、「新潟県民は枝豆を溺愛しているらしい」という情報を聞きました。しかも、「県民が食べ過ぎるので、県外にはあまり出てこない」とも。
なんでも、枝豆の作付面積では日本一なのにもかかわらず、出荷額だと7位にまで落ちてしまう。
その差は、好き過ぎて県民が消費してしまうからだと。
……そんなことってあります? え、本当に? もしかして新潟の枝豆ってめちゃくちゃおいしいとか……?
気になって仕方がないので、まずは新潟の枝豆を食べてみて、新潟県の人に新潟の枝豆愛について聞いてきました。
🌿もくじ🌿
まずは新潟の枝豆を食べてみた
本当に県外になかなか出ないぐらい県民が食べ過ぎてしまうほどおいしいのか、実際に枝豆を食べ比べてみます。新潟産のものを含め、いろんな種類の冷凍枝豆を購入してきました。
左から海外産、国内産、新潟県産の「くろさき茶豆」です。海外産の枝豆は極端にサイズが大きいことが分かります。
さやの中身もそれぞれで違っています。海外産の枝豆は大きいけど色が薄い。国内産は粒が小さいけど、鮮やかな緑色。新潟県産の「くろさき茶豆」は「茶豆」というだけあって、色もちょっと茶色っぽい色になっています。
食べてみると、海外産のものが一番なじみのある味でした。おそらく、居酒屋などでもこのような枝豆を多く食べているのでしょう。豆の味は淡白で、はっきりした塩味を感じます。
一方、国内産の粒が小さいものは塩味よりも枝豆の風味を感じます。そして、とりわけ風味が濃いのは、やっぱり「くろさき茶豆」なのです。
海外産と比べると、豆の大きさと味がぜんぜん違うので、「別の種類の豆かな?」と思うほど。
食べ進めると、とうもろこしに似たような甘い風味がしてきます。マイルドで濃厚な旨味があり、塩味とよく調和していておいしい。こんな枝豆は食べたことがありません。新潟の枝豆おそるべし!
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より詳しく新潟の枝豆について知りたくなったので、新潟県農林水産部食品・流通課の服部さんにお話をうかがうことにしました。
お話を聞いた人
服部 瑛介さん
新潟県農林水産部食品・流通課販売戦略班主任。新潟県の農林水産物のブランド化等の取り組みを行う。海外への輸出も含め、首都圏などに向かって情報発信、認知向上にも取り組んでいる。
※取材はリモートで行いました
枝豆を溺愛し過ぎて自分達で食べ尽くしてしまうって本当?
── 新潟県民が枝豆を愛していると聞いたんですが、本当ですか?
本当ですね。愛しています。
── いきなり愛が暴発しているじゃないですか……。県外に出さずに食べ尽くしてしまうというのも本当なのでしょうか?
食べ尽くしてしまうというのはちょっとオーバーですが、県内でかなり食べているのは事実です。例えば令和2年のデータよると、作付面積は全国1位です*1が、出荷量は全国7位なんですよ。
── 噂は本当だったんですね。ちなみに出荷量1位はどこになりますか?
1位は北海道で6,690トンです。新潟県は2,610トンでして……。
── めちゃめちゃ離されてるじゃないですか! なぜ、そんなに出荷量で差をつけられているのでしょうか?
おいし過ぎてですね……。いっぱいつくっても、出荷せずに自分たちで食べてしまうんですよ。農家の家族や親戚、知人の間で大量に消費してしまっていますね。そうした分は「出荷」には反映されていないので、出荷量が7位になっているんです。
── やっぱり食べ尽くしているんですね!
「JA全農にいがた」でもこんな動画が作られるぐらい、自分たちで食べているのが新潟では当たり前なんですよ。
── 新潟県民、枝豆を愛し過ぎでは。
新潟県は全国的に見ても枝豆をよく食べているんです。市町村別のデータでも、新潟市が枝豆などの「さやまめ」というジャンルの支出額が全国1位*2なくらいです。そのぐらい、枝豆文化が根付いているんですよ。
農家じゃない人たちも枝豆が大好きだし、枝豆を買って食べているんですね。だからいくら生産をしても新潟県内で消費されてしまい、他県にはほとんど枝豆が出ていかないのだと思います。
── それだけ食べているって、一度にどれぐらい食べるんでしょうか?
基本的には、大きなザルに山盛りですね。
── えっ、山盛り……?
毎日大きなザルに山盛りの枝豆を食べる(この写真はだいたい3〜4人前くらいらしい)(写真提供:新潟県観光協会)
はい。夏は基本的に毎日このぐらいの量を食べています。
── 想像以上に一度に食べる量が多いんですね……。
なので、少量の枝豆を出されても、どうしたらいいんだろう……と困ってしまうんです。
私は新潟から東京の大学に進学したのですが、初めて東京の居酒屋に行ったときに、お通しとして枝豆が出てきたんです。それが、一人ひとり、小鉢に5〜6サヤくらいの量で。「たったこれだけ出てきて、どうすればいいんだろう」と唖然としてしまいました。
これでは唖然
── 枝豆で唖然とすることがあるんですね……!
普通は山盛りで食べるんじゃないの? と思っていたのでびっくりしましたね。そして食べてみると味わいが違う。小ぶりで味が濃い、新潟の枝豆を当たり前と思っていたのでカルチャーショックでしたね……。量と味で二度衝撃を受けたんです。もちろん今では違いについて分かっていますので、納得した上で枝豆を注文しています。
── もはや、異世界に来た感じですね……。
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「ザルに山盛りの枝豆」が夏の風物詩
── この山盛りの枝豆を、どういうシチュエーションで食べるのでしょうか。
例えば、夏休みにおじいちゃん、おばあちゃんの家に行くことがありますよね。すると、ごはんの時間には大きなザルに山盛りの枝豆が「ドーン!」って置いてあって。それをみんなでつまむんです。
── 見たことがない光景ですね……。それが普通なんですか?
夏の風物詩みたいな感じですね。山盛りの枝豆が乗ったザルの横に、新聞紙を折りたたんで作った「殻入れ」があって。喋りながら食べるんです。
── ぼくの枝豆のイメージと全然違いますね。キンキンに冷えたビールとか、居酒屋の店員さんの威勢のいいかけ声とかが聞こえてくるイメージなんですけど。
キンキンに冷えたビールと枝豆は最高!
ぼくは実家の畳とか麦茶、おじいちゃんやおばあちゃんの顔、扇風機とかが浮かんできますね。
── のどか過ぎる……! では、新潟では枝豆と一緒にビールを飲んだりはしないんですか?
もちろん、飲んでいる人もいます。でも、お茶請けとしてもいいので。冷たい麦茶と枝豆でも断然アリです。
── そんな枝豆の付き合い方は聞いたことありませんでした……。もしかして、冬の「こたつとみかん」みたいな感じに似ていますか?
ああ! 似ていますね。夏場はスーパーに山のように枝豆が置かれていて、各家庭で品定めして買っていき、常に食卓の上に山盛りの枝豆があるんですよ。
── 完全に冬で言う「みかん」だ……。
逆に冬は枝豆、まったく食べませんよ。
── なんだか、(他県の)我々が食べている枝豆とは、まったく違うものの話をしているような気にすらなります。どうして、新潟だけこんなに特殊になったんでしょう。
そもそもの話なんですが、新潟はお米どころで米農家も多いのですが、田んぼをやるかたわらで、あぜ道で枝豆を栽培していたんです。それが広まったので、枝豆を食べるようになったという説があります。
── なるほど、お米農家さんがつくっていたんですね。
農作業の合間に収穫して、たくさん湯がいて食べていたわけです。それが、枝豆があって当たり前という新潟の枝豆食文化の始まりなんじゃないかと思います。
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毎日大量に食べても食べ飽きないほどのおいしさを生むこだわりとは
── 新潟の人たちの枝豆愛は分かりました。ぼくもそれなりに枝豆が好きなつもりですが、毎日食べたり山盛りで食べたりしたことはないんですよね。新潟の人は、枝豆がおいしいからたくさん食べている、ということですか?
まさに、おいしいからなんですよ。新潟の枝豆は他のどこにも負けないおいしい枝豆だという自負があります。
── 確かに、新潟の枝豆を食べてみたんですが、風味がよくておいしくてびっくりしました。いままであまり枝豆の「おいしい」を考えたことがなかったんですが、そもそもおいしい枝豆ってどういうものなんでしょう?
おいしい枝豆は、香りがよくて、とうもろこしのような甘い香り・味がします。そして新潟の枝豆は、そうなるようさまざまなこだわりを持っているんです。主に、この3つが味わいに影響しています。
こだわり1:旨みが最大になるタイミングで収穫している
そもそも、新潟の枝豆は見た目から違います。
── えっ、違うんですか?
実がパンパンに詰まっていないので、枝豆そのものが小さいんです。
── 確かに小さめだったような……。どうしてなんでしょう?
だいたい八分くらいの小ぶりの段階で収穫するからです。そのタイミングで収穫することで、糖分やアミノ酸(うま味)の含有量が最大になるんですね。
育ちきってパンパンに実がつまっている方が見栄えもいいし、食べごたえもあります。でも、あくまで新潟の枝豆は「味重視」なんです。だから小ぶりの段階で収穫するんですね。
パンパンな枝豆は小ぶりなものに比べて味がやや淡泊に
── 収穫のタイミングでそんなに味が変わるんですか?
それが変わるんですよ。「トウモロコシのような甘さと香りがある」とお伝えしましたが、実が大きい枝豆になるとそういった味わいが失われてしまうんです。
── 確かに食べ比べをしたときに、味が違うと感じました……!
そうなんですよ。そのぐらい、収穫のタイミングが大事なんです。
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こだわり2:収穫時から徹底して低温で管理している
他には温度にもこだわっています。枝豆の品質管理には低温での温度管理が重要なんです。
── それはどうしてでしょうか?
温度が上がると鮮度が落ちて、味も落ちてしまうんですね。そのため、収穫を外気温が上がらない深夜から早朝にかけて行ったり、収穫後や流通時には低温で移送できるようにしたりなど、温度管理を徹底しています。
── おいしい枝豆のために、そこまでこだわっていたとは……。
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こだわり3:いつでも旬を楽しめるよう、40種の枝豆を栽培
あとは品種ですね。新潟県では現在40種ぐらいの枝豆が栽培されていると言われています。
── 40種!? 多過ぎませんか。
そのうち、小売店で販売されているのは10種類とちょっとですね。
── それでも多い……。人気があるのはどんな品種なんでしょう?
新潟で人気があるのは「茶豆」です。その中でも特に人気があるのが、「くろさき茶豆」です。
── くろさき茶豆! ぼくが食べたのもそれです! 確かにおいしかった……!
ありがとうございます。くろさき茶豆は8月ぐらいに登場する枝豆ですね。それ以外の時期はというと、6月下旬から10月中旬にかけては、どのタイミングでも旬を迎える品種があるんです。いわば、旬の枝豆でリレーをしているんですよ。
── リレー……?
どのタイミングでも旬を迎える品種がある(参考資料:新潟県「8月の旬 えだまめ(茶豆)」ページ)
例えばこんな感じです。
- 6月下旬〜7月下旬:「新潟えだまめ(早生)」が旬
- 7月中旬〜8月中旬:「新潟茶豆」が旬
- 8月中旬〜9月中旬:「新潟あま茶豆」が旬
- 9月中旬〜10月中旬:「新潟えだまめ(晩生)」が旬
さらに最近では、5月中旬から6月下旬が旬の枝豆も登場していますね。
── 本当だ! 順番に旬を迎えていくのは、まさにリレーのようですね。
その通りです。むしろ、夏はいつでも「旬の枝豆」を食べられるよう、さまざまな品種を栽培しているし、また新しい品種を探求していると言ってもいいかもしれません。
── これだけ種類があるということは、新潟にはけっこう品種について語れる方は多いのでしょうか?
枝豆好きの方だったら「私はこの品種が好き」と話せる人は多いと思います。くろさき茶豆に関しては人気なので、指名買いも多いですし。
── いつどの品種が出る、ということも把握されているんでしょうか。
そうですね。例えばくろさき茶豆は8月に出てくる品種なので、見かけると「夏だなあ」と感じます。それと同時に「そろそろ夏も終わりかなあ」という気分にもなったりしますね。
── 枝豆の品種で季節を感じるんですね……!
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とにかく買ったらすぐ茹でる! 枝豆を美味しく食べる方法
枝豆はとにかく早く茹でよう
── そんなこだわりの新潟県産の枝豆をおいしく食べるには、何に気をつけると良いのでしょうか。
気をつけるべきは「鮮度」です。枝豆はもいだ瞬間から鮮度が落ちていきます。極端に言えば、朝もいだものを即湯がいて食べるのが一番おいしいです。
── とにかく早く茹でるのがいいんですね。じゃあ、通販で枝豆を買うときも、配達日を湯がく日に指定した方がいいですか?
そうですね。届いたその日に湯がいて食べるのがベストなので、ぜひ食べたい日に届くようにしてください。買うときも「朝どれ(朝採れ、朝採り)」と謳ってるものがいいでしょう。
── なるほど。大事な情報ですね。ちなみに、大量に購入した場合の保存方法はどうすればいいでしょうか?
その場合も到着したら即茹でたほうがいいです。茹であがった状態で冷凍しましょう。
── それほど「即茹で」が重要なんですね。ちなみに、実はぼく枝豆を茹でたことがないんですが……。
えっ!!!……え? 本当に……?
── いや、意外といると思うんです。冷凍の枝豆しか食べたことがないという人。どうやって茹でたらいいでしょうか。
そうなんですね……。自分が当たり前のように枝豆を茹でていたので驚いてしまいました。茹で方は、こちらの手順を見てください。
- ボールに水を溜めて、流水で洗います。
- 塩でもんでサヤのうぶ毛を落としてから、流水で洗います。
- たっぷりの沸騰した湯に塩を入れてゆでます。
参考目安 水:1000cc 塩:10~15g えだまめ:100g - 一番大きいサヤの豆を食べてゆで加減をみて、ザルにあげます。
目安:えだまめを鍋にいれて、再沸騰した後で、硬めなら4分程度、軟らかめなら7分程度ゆでます。 - お好みで塩をふって広げ、なるべく早くさまします。水はかけずにうちわであおぐのがポイント。
(早くさますと、緑色がきれいになります)
── 枝豆って、茹でる前に塩でもむんですね。知らなかった……。
茹でてざるに上げた後、うちわで扇ぐのも重要です。
── たぶん、何も知らなかったら氷水とかで冷やしちゃうと思います。どうして、水で冷やしたらだめなんでしょうか?
水っぽくなってしまって、おいしくなくなるからです。自分が子供の頃もあおぐのが仕事だったし、今は自分の子供にもやってもらっていますね。ちなみに、扇風機の前やエアコンの前に枝豆を置いて冷ます人もいますよ。
── よーし、ぼくも今年の夏は新潟県産の枝豆をたくさん食べようと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました!
新潟県産の枝豆を食べると、県民が溺愛するのもよく分かる
普段は枝豆にはビールだけど、今年は麦茶のお茶請けにもしてみたい(写真提供:新潟県)
まさか枝豆にこんな奥深さがあるとは……。全然知りませんでした。でも、確かにくろさき茶豆は今まで食べた枝豆とは風味が違いました。これは溺愛するのもよく分かります。
夏に旬の枝豆を食べるの、いいですよね。スナック菓子がとまらなくなるよりヘルシーで良さそう。
新潟県産の枝豆は、県民が食べ尽くしてしまう(?)ので、全国のスーパーではなかなか手に入らない模様。ぜひ通販で新潟の枝豆を注文してみてください!
地元民がこよなく愛するグルメ話からしか摂れない栄養素がある
著者:大塚たくま
福岡に住む、九州を愛するライター。ライター活動の傍ら、テレビやラジオ出演、クラファンの企画などを行う。地元の食文化を応援するため「福岡めんたいこ地位向上協会」を立ち上げ、めんたいこを楽しむ食文化の創造に取り組み、YouTubeなどで活動中。Twitter:@ZuleTakuma
ソレドコでTwitterやってます!
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*1:令和2年度 農林水産省 野菜生産出荷統計より https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0001922242
*2:家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(2019年(令和元年)~2021年(令和3年)平均)より https://www.stat.go.jp/data/kakei/5.html