こんにちは。ライターの梅津有希子と申します。
だし愛好家として、書籍『だし生活、はじめました。』で、簡単なだしのとり方や手軽なだし料理を紹介したり、レシピ本『終電ごはん』で毎晩のように終電で帰る“終電族”のための簡単メニューを紹介したりしています。
前回は“プチ贅沢”な深夜飯をご紹介しましたが、今回はどどんと豪華に「カニ」がテーマです。パーティーや年末年始など、家に人が集まる機会の多いこの時期は、1年で最もカニが食べたくなる季節でもあります。
ところで皆さんは、食べ終わったカニをどうされていますか? おそらく多くの方がそのまま捨てているのではないでしょうか。ですが、だし愛好家としては、食べたあとの殻もフル活用したいところ。
そこで今回は「食べ終わったカニの殻でとる『カニだし』を使った簡単レシピ」を3品ご紹介します。水の代わりにカニだしを使うだけで、ちょっと豪華なカニ風味になりますよ。せっかくのカニですから、最後の最後まで楽しみ尽くしましょう。
まずはカニを取り寄せよう
北海道出身のわたしは、子どもの頃から毛ガニをよく食べていました。味が濃く、身も味噌(みそ)もとてもおいしい! のですが、さばいて身をほじくり出すのが正直ちょっと面倒……。長年、しゃぶしゃぶしてそのままかぶりつけるタラバやずわいガニの脚に憧れがありました。
というわけで、殻をむかずに済む「かに本舗」の「超特大8〜7L生本ずわい蟹半むき身満足セット」を注文してみました。
「かに本舗」を詳しく見る
さっそく開けてみると
どーんと1kg超え! 圧倒的な迫力にテンションが上がります。昆布だしでさっとしゃぶしゃぶしたら、大口を開けてそのままぱくり。いやー、甘い。とろける。大満足!
お腹がいっぱいになったところで、いよいよ今回の肝となるカニだしを殻でとっていきます。
カニだしのとり方
【材料/1500cc分】
- カニの殻……約1kg分
- 水……1500cc
- 昆布……1枚 10cm×10cm(10g程度)
※あくまでも目安になります。水に関しては毛ガニやズワイガニなど、カニの大きさによっても分量が変わるため、「カニの殻がかぶるくらいの水」を入れてください
【作り方】
- 食べ終わったあとの殻を、トースターか魚焼きグリルで軽く焼く
- 殻に焼き色がついたら、キッチンバサミで適当に切る。特に肩肉(カニの脚の付け根)は、切ったほうが断面からよくだしが出る
- 殻を鍋に入れたら、ひたひたになるくらいの水と昆布を入れ、点火。そのまま30分ほどコトコトと煮込めばできあがり
殻をそのまま煮るだけでもだしは出ますが、焼いたほうが香ばしさが加わり、断然おいしくなります。並べて焼くだけなので、ぜひこのひと手間を惜しまずに……。
焼いていると、まるで浜で食べる焼きガニを彷彿とさせる、めちゃくちゃ香ばしいカニの香りに包まれます。カニというよりも、まるで「かっぱえびせん」の香りそのもの。甲殻類好きにはたまらない、しあわせの香りです。
そしてもう一つのポイントが、昆布を一緒に入れて煮込むこと。昆布のうま味も加わって、カニ単体のだしよりもグッとおいしくなります。
熱々をそのまま飲んでもおいしい極上のカニスープは、雑炊や味噌汁に使ってももちろん美味。ですが今回はもう少し趣向を凝らして、3つのアレンジ料理を考えてみました。
【1品目】濃厚でまろやか。「カニだし味噌バターコーンラーメン」
「味噌バターコーンラーメン」だけでもテンションが上がるというのに、さらに濃厚なカニだしで追い打ちをかける一品です。
ラーメンといっても、スープをイチから作るのは大変なので、今回はこちらを使います。
【材料/1人分】
- サッポロ一番みそラーメン……1袋
- カニだし……500ml
- コーン缶、小ネギ、バター……適量
- 煮玉子……1/2個
【作り方】
- 通常の作り方で、水をカニだしに代えるだけ。前日のカニしゃぶ時によけておいたズワイガニの殻付き爪をのせると、見た目も豪華に
もう、食べる前から想像がつきますが(笑)、叫びたくなるほどうまい。おなじみの「サッポロ一番」が、カニだしでさらにグレードアップ。もともとしっかりと味のついたパンチのあるラーメンスープに、香ばしいカニのだしと風味が加わり、さらにバターのコクもあわさって、より濃厚な1杯に。このラーメンを作るためだけにも、カニだしをとりたいくらいです。
わが家では、小さい頃からインスタントラーメンは「サッポロ一番」派だったので、今回もなじみのある同製品を使いましたが、ほかの袋麺でもおいしく作れると思います。
<覚えておくと便利な小ワザ>
すりおろし生姜を入れるとさらに体がポカポカに。生姜を買ったら一度に全てすりおろし、ラップの上に平らにならして冷凍。板状に凍るので、バキバキ折ってみそ汁やスープ、紅茶など、いつでも手軽にすりおろし生姜が使えて便利です。皮の近くに辛味や香りの成分があるため、皮ごとすりおろすのがおすすめ。
【2品目】あつあつ、とろとろ。だしと身をダブルで使う「カニかに茶碗蒸し」
濃厚なカニだしで作る、なめらかな口あたりのふるふる茶碗蒸しは、まるで熱々のカニプリンです。「茶碗蒸しなんてハードルが高すぎる」「蒸し器がないから無理」と拒絶反応を示されたみなさん、ちょっとお待ちください。わたしもつい最近までそう思っていました。が! 蒸し器がなくても、フライパンとふたさえあれば作れるんです!
【材料/2人分】
- 卵……2個
- カニだし……1カップ
- カニのほぐし身……適量
- 三つ葉……適量
- 塩……小さじ1/3
- みりん……小さじ1/2
- 薄口醤油……少々(風味付け程度)
【作り方】
- 冷ましたカニだし1カップに、塩、みりん、薄口醤油を溶かしておく
- 卵2個を溶きボウルに入れ、(1)のだしを加えてザルで濾(こ)し、カニのほぐし身を入れた茶碗に注ぐ
- 2cmほどの高さに水を張ったフライパンに、茶碗を入れてふたをし、中火にかける
- 沸騰後、ごく弱火にして約7〜8分蒸し、竹串に刺して澄んだ汁が出たら完成。彩りに、ほぐし身と三つ葉をのせてできあがり
この作り方で、今ではわたしもすっかり茶碗蒸しマスターです。プツプツと「す(表面の細かい穴)」が入ってしまうのは「高温で蒸すから」なので、弱火でコトコト蒸すことで解消できます。ぜひ試してみてくださいね。
<覚えておくと便利な小ワザ>
「それでも難しい!」と感じたら、もっと手軽に、電子レンジでも茶碗蒸しが作れます。ポイントは、200Wでゆっくり加熱すること。500Wや600Wだと急激に温度が上がってしまうため、すが入る原因に。目安は200Wで7分程度。茶碗の大きさや厚さ、レンジ庫内での置き場所によっても熱の入り方が変わるので、まずは5分加熱し、いったん固まり具合を見てから再加熱するのがおすすめです。
【3品目】休日に食べたいコクうまブランチ。「カニチーズトースト&カニときのこのチャウダー」
カニの身をマヨネーズであえ、とろけるチーズをオン。子どもも大人もみんな大好きなボリューム満点のトーストに、カニだしとミルクで作る、まろやかなうま味のスープを添えてどうぞ。
【材料/1人分】
<カニチーズトースト>
- 食パン……1枚
- カニのほぐし身……適量
- マヨネーズ……適量
- とろけるチーズ……好きなだけ
- 黒胡椒……適量
<カニときのこのチャウダー>
- カニだし……1カップ
- 牛乳……1/2カップ
- カニのほぐし身……適量
- お好きなきのこ……適量
- クリームシチューのルー……大さじ1程度
【作り方】
<カニチーズトースト>
- カニのほぐし身をマヨネーズであえる
- 食パンに(1)のカニの身ととろけるチーズをのせ、こんがりと焼く
- 仕上げに黒胡椒をたっぷり振る
<カニときのこのチャウダー>
- カニだしできのこを軽く煮たあとに、カニのほぐし身を加える
- 火を止めてルーを溶かし、牛乳を入れて軽く煮込めばできあがり
カニときのこのチャウダーは、シチューほどとろみをつけずスープ状に仕上げるため、ルーを入れすぎないようにご注意くださいね。
<覚えておくと便利な小ワザ>
ルーは、顆粒やフレーク状だと溶けやすく、量も調整しやすいので便利。固形タイプよりも、スープに使いやすいのでおすすめです。
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だしまで楽しむことを前提としたカニ選びの場合、タラバガニだと少々淡白だと思います。ずわいガニや花咲ガニ、カニ味噌が残っている毛ガニなどが、特にだしがよく出るのでおすすめです。
だしを使った熱々の料理がうれしい季節。ぜひカニの殻も捨てずに、最後の一滴まで楽しんでくださいね。
著者:梅津有希子
編集者・ライター、だし愛好家。12/24に発売される『もっとおいしい、だし生活。』では、「だしむすび」「あごだし湯豆腐」「だし巻き卵風フレンチトースト」など、うま味たっぷりの簡単だしレシピを紹介。だし自慢のお店や、だしにまつわる謎など、だしのトピックスが満載の1冊となっている。
公式サイト:umetsuyukiko.com
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