かろやかに、ひとり呑みができる人になりたい。
ひとりご飯はわりと平気だけど、「呑み」となると途端にハードモードに感じておじけづいてしまいます。おそらく自意識過剰なのでしょう。
「ひとり呑み」の楽しさを教えてくれるマンガ「ワカコ酒」
『ワカコ酒』(コアミックス)
【楽天市場】ワカコ酒の検索結果そんな私にとってマンガ「ワカコ酒」の主人公・ワカコは、まさにヒーロー。
ワカコは昼は普通のOLですが、「酒呑みの舌を持って生まれた」がゆえに、あちこちでひとり酒を楽しめるスキルの持ち主。必要以上にしゃべらず、泥酔せず、お酒と肴のあるひとりの時間を楽しんだら、さっと店を出る。
(C)新久千映/コアミックス
彼女のように自然にひとり呑みできたら……というのは長年の夢ですが、前述のとおり自分は“内弁慶な呑兵衛”だし、所帯持ちなので会社帰りに突発的に一杯やるのも気が引けます。
そこで思いついたのが「自宅で居酒屋気分を味わう」というもの。
「ワカコ酒」に出てくる居酒屋メニューを再現して、ひとり居酒屋ごっこをしたら楽しいかもしれない……!
「あまり家では作らないもの」「好物」などを基準にチョイスした料理は、下記の3品。
炙り〆さばと冷酒(1巻第6話)
(C)新久千映/コアミックス
手作りざる豆腐と熱燗(1巻第7話)
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お好み焼き(府中焼き)とビール(2巻第43話)
(C)新久千映/コアミックス
自宅酒が「外呑み」風になる、業務用食器の魅力
今回、ひとり居酒屋ごっこの雰囲気を盛り上げるために購入したのは業務用食器です。
普段食器を買う場所って、案外限られていますよね。手近に済ませるなら100円ショップやスーパーの日用品売り場、ちょっとこだわるなら百貨店やセレクトショップ、あとは陶器市などでしょうか。
業務用食器は「第三のジャンル」といっていいほど種類も豊富です。
裏印もない「焼き人知らず」だけど、使い勝手のよさそうな角皿とか。
珍味用の小鉢や塗り箱とか。
料理が格段に映える、笹の葉や紅葉などの「つまもの」とか。
何より「お店で見たことのあるやつ」が自宅にあると、気分も盛り上がります。
こういう業務用食器がそろう場所といえば、東京なら合羽橋、大阪なら千日前道具屋筋が有名ですが、今ならネットショッピングですぐに手に入るので便利。
「炙り〆さば」は、ガスバーナーのひと手間で本格的に
それではさっそく「ワカコ酒」の料理を再現していきます。
まずは1巻の「炙り〆さば」から。鮮魚店で生の真さばを買いましょう。その際、店員さんに「〆さばを作りたい」と伝えると安心です。今回はあらかじめ3枚におろしてもらいました。
- 1. 真さばは骨を取り除き、砂糖を全体に振って1時間寝かす
- 2. 次に、身が隠れるほど塩をたっぷり振って、さらに1時間寝かす
- 3. さばに付いた塩を酢で洗い、バットに酢と昆布を入れて1時間~半日(お好みで)漬ける。生のさばは寄生虫(アニサキス)の心配があるので、酢で締めたあとはラップに包み、冷凍庫で48時間以上寝かせる
- 4. 冷蔵庫で自然解凍し、薄皮をゆっくりはいで、切り分ける
最後は、この方にご登場いただきましょう。家庭料理をひと手間でお店っぽくしてくれる最終兵器、ガスバーナーさんです。一台あれば、寿司でもピザでもプリンでも、なんでも炙りで楽しめます。
お気に入りの食器だと怖くてできないけど、お値段が手ごろ&丈夫な業務用食器なら遠慮なく皿の上で炙れます。
お酒は冷酒で。受け皿にこぼれるほど、なみなみとグラスに注ぎます。お店だと嬉しいパフォーマンスだけど、自宅だと「あ、もったいない……」とケチくさい気持ちになることに気付きました。
練りがらしとレモン、ワカメを添えていただきます。
脂ののった濃厚な〆さばを、きりっと冷えたお酒で流しこむと……。
(C)新久千映/コアミックス
ぷしゅー。(「ワカコ酒」名物、酒と肴のマリアージュがキマッた時の効果音)
至福。しかし、〆さばにからしを最初に添えたのは誰ですか? 個人的にお礼を言いたいです。
シンプルな自家製ざる豆腐と熱燗で、小料理屋風に
作中では、お店の手作りとして出てくる「ざる豆腐」。無調整豆乳とにがりさえあれば、自宅でも手軽にできちゃいます。
鍋に無調整豆乳(300cc)を入れて温めます。75度まで温めたら豆乳の1%分のにがりを加え、静かに混ぜます(1)。フタをして15分ほど放置すると、おぼろ豆腐が完成します(2)。
ボウルの上にガーゼを敷いたザルを置き、おぼろ豆腐を1時間ほど水切りします。重石かわりに皿などを上に置くと、早く水が切れます。
ザルに移し替えて完成。
塗り箱に薬味(塩、かつお節、ゆず胡椒、酒盗、小ネギ)を入れた小鉢を並べます。
シンプルなざる豆腐も、小料理屋風の食器だと気分が上がりますね。熱燗と一緒にいただきます。
ぷしゅー。
作りたての豆腐は豆の味が濃くて、いつもの冷奴とは別物。いろいろな薬味で、熱燗と一緒に少しずつ大切に食べたくなる味。いろんな薬味があっても、最後に結局しょうゆをあわせたくなるのは、ワカコと同じですね。
若いころは「ビールとから揚げ」みたいにパンチの効いた組み合わせが好きだったけど、「熱燗と豆腐」のシンプルな組み合わせで十分満足できる今、自分が大人(=中年)になったことを悟ります。
6ミリの極厚鉄板で焼く「広島風お好み焼き」とジョッキビール
シメは2巻に登場するお好み焼きです。
「ワカコ酒」の舞台は広島なので、たびたびご当地フードが登場します。この「お好み焼き」も、いわゆる関西風ではなく広島風お好み焼きです。さらに、今回のエピソードに登場するのは、広島県内ローカルの「府中焼き」。
文字通り広島県府中市の名物で、大きな特徴は豚バラのかわりに背脂ミンチを使うところ。外はパリパリ、中はふんわりな食感もポイントだそう。ワカコがオーダーしたのは、この府中焼きをアレンジした「ネギマヨ焼き」。いかにもカロリーが高そうですが、おいしそう。
関西風に比べて、焼くのが難しそうな広島風お好み焼きですが、調べてみると広島の家庭でも普通にホットプレートで作るようです。
ただ、それじゃ外呑みの気分が出ないな……ということで、厚さ6ミリの極厚卓上鉄板を用意しました。めっちゃ重いです。ル・クルーゼや南部鉄器と同じく、ほぼ凶器といってもいいキッチンツールです。が、その厚さが頼もしい。
近所では背脂ミンチが手に入らなかったので、豚の背脂をフードプロセッサーでひいてミンチ状に。
熱した鉄板に油を薄くひき、なじんだらさらに油を足し入れて弱火にします。薄力粉100g、水180cc、卵1個をダマがなくなるまで混ぜた生地(※これで3~4枚分焼けます)をお玉1杯分流し入れ、直径20センチくらいに薄く広げます。
生地の上にかつおぶし、どっさりの千切りキャベツを乗せ(1)、中央に卵を落として崩します(2)。焼きそば用の麺を生のままほぐしながら乗せ(3)、最後に背脂ミンチを乗せます(4)。
ここで火を強めて鉄板の温度を上げ、2本のヘラでひっくり返します。生地を持ち上げるとき、鉄板のやや奥側にヘラを持っていき、思い切りよく返すのがコツ。
ひっくり返すと具が散乱しますが、ヘラで周囲を整えれば無問題。
府中焼きは麺をパリパリにするのがポイントなので、ヘラでぎゅーっと押さえつけながら焼きます。
底面がキツネ色に焼けたら火を弱め、お好み焼きソースを塗り(1)、青ネギをたっぷり乗せ(2)、マヨネーズをビーム(3)。
ここでも仕上げのガスバーナーが登場します。鉄板の上だから、豪快にいけますね。
表面にいい感じの焼き目がついたら完成です。
このまま鉄板ごと卓上に持って行ってもいいけど、
せっかくなのでコンロの上で、ジョッキビール片手にそのまま宴に突入します。
なにこれウマ……!!
下はパリッパリの麺、中はキャベツがしっとり、上はシャキシャキのネギにこってりソース&マヨ。溶けた背脂ミンチの肉汁とうまみが麺にしみこんでいて、赤身の肉が入っていなくても満足感あります。
もともと関西風より広島風お好み焼きのほうが好きな大阪出身者なのですが(地元では大きな声で言えない)、個人的に府中焼きはさらに上をいくかも。
ジョッキビールを飲みながら、鉄板で焼き立てのお好み焼きを頬張るなんて、控え目に言って最高。
ぷしゅー。
今回、一番の「買い」は、この鉄板だったかもしれません。さすが保温力も高くて、食べ終わるまで熱々でした。わが家では、いまだにコンロに出しっぱなしで、焼きそばや炒めものを作るのに活躍しています。
小さいお子さんがいるなど、事情があってなかなか気軽に居酒屋へ行けないご家庭もたくさんあると思います。いつもの自宅呑みに、ちょっと居酒屋演出をして楽しんでみてはいかがでしょう。
「マンガ食堂それどこ店」アーカイブ
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