日本国内に存在する「きのこ」は4,000〜5,000種類とも言われ、そのうち食用とされているものだけでも100種類はあるそう(林野庁のサイトより)。
つまりスーパーに並んでいるものは、全体のうちの本当にごくごく一部。私たちは「きのこ」に普段親しんでいるつもりで、実は何も知らないのだ……と、宇宙の広さを知ったときのような途方もない気持ちになります。
アグレッシブなきのこマンガ「きのこくーちか」
(C)新國みなみ/小学館
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そんな奥深い「きのこ」の世界をテーマにしたグルメマンガが、新國みなみ先生の「きのこくーちか」です。
主人公は、きのこアーティストの「ゆん太」と、雑貨店で働くロシア人の「ワーニャ」。京都で同居するふたりのゆるゆるな日常の中に、さまざまな「きのこ」とそれらを使った料理が登場します。この京都・ロシア・きのこ、という“メジャーから一歩ハズした”取り合わせも魅力的。
なお、きのこ漫画といっても、シメジやエノキといった定番きのこはほとんど出てきません。
オニフスベ、タマゴタケ、アミガサタケ……と、あまりなじみがないきのこのオンパレード。なかには一般的に毒キノコとされる品種まで、調理法含めて紹介されているからスゴい。下痢や嘔吐を引き起こすと言われる「ベニテングタケ」って、うま味調味料の10倍のうまみがあるらしいですよ(作中にも「自己責任で」と注記されていますが……)。
今回再現するのは、バウルーで焼く「なめこのホットサンド」
そんなアグレッシブな料理マンガですが、安心してください。今回使う食材は「なめこ」です。単行本1巻の第5話に登場する「なめこのホットサンド」を再現します。
なめこ狩りに出かけたゆん太とワーニャ、そしてきのこマニアの女子高生・ベニちゃんがピクニックで楽しんだ、天然なめこ尽くしパーティーメニューの一部です。
(C)新國みなみ/小学館
たっぷりのなめこ、チーズ、炒り卵を食パンではさんで焼いています。
なめこといえば、みそ汁や大根おろし和えなどが一般的。あの独特のぬめりは、おいしいけれどレパートリーを広げにくい一因でもあります。なので「ホットサンド」にする、というのは意外すぎるアイデア。
そして「死ぬほどうまいホットサンド」を作るための必需品が「バウルー」いう調理器具。長い柄(え)のついた、直火タイプのホットサンドイッチメーカーです。
(C)新國みなみ/小学館
説明書によると、ブラジル・サンパウロ州のバウルー村(現在はバウルー市)出身の青年がパンを焼くために使っていた、という由来があるそう。日本では40年前から新潟県燕市の田巻金属さん(製造)と横浜のイタリア商事さん(販売)がタッグを組んで、メイドインジャパンのバウルーを送り出し続けています。
フライパン部分は熱伝導に優れたアルミダイキャスト製で、フッ素加工が施されています。
手に持ってみると「あ、思ったより軽い」というのが第一印象。後片付け含めて扱いやすそうで、海外製品を思わせるロゴもかわゆい。
なお、本家日本産バウルーは残念ながらIHでは使えませんが、ほかのホットサンドメーカーであれば、対応している製品もあります。
こちらは杉山金属さん(こちらも新潟県燕市)の「スマイルクッカーDX」。本家バウルーに比べるとやや重めですが、フライパン部分が上下で取り外しできるなど、工夫が心憎い。
作者の新國先生が愛用しているのもこちらの商品らしく、せっかくなので両方使って食べ比べしてみました。
貴重な「天然なめこ」その味は……
さて、マンガと同じくなめこ狩りに出かけるぞ! と思ったのですが、天然なめこのシーズンは、一説によると10月中旬~11月中旬と意外に短いことが判明。今回はスケジュールが合わずお取り寄せしてみました。
しかしそこは天然モノ。「いつ届くかは、なめこの生育状況と天候次第」ということで、予約したのち指折り数えて待つこと数週間。ようやく発送の連絡が届きました。
こちらが山形県からやってきた採りたての天然なめこ。かさが開いた状態の大きなサイズと、小さなサイズのものが別に袋分けされています。袋を開けると、森のなかの木々や土の匂いまで含んだような、なんともいえない芳醇な香りがします。
でかい。
(C)新國みなみ/小学館
まずはその実力を見せてもらおうか、とマンガにも登場する「なめこのバター醤油焼き」を作ってみます。
熱したフライパンにバターを溶かし、なめこを炒めて醤油を回しかけます。これ、絶対おいしいやつだー! と調理中から期待度マックス。
盛り付けたら、仕上げに「追いバター」も。
バターしょうゆがなめこのぬめりと絡み、とろっとしたソースに変身していて別格。バゲットにつけて食べてもよさそうです。かさが開いた状態のなめこは、つるん、シャクシャクと歯触りよく、スーパーで売られているものとは見た目も味も別物。
天然なめこのおいしさに期待が高まったところで、いよいよ本題のホットサンド作りへ!
2種類のホットサンド用フライパンで作り比べてみる
- 8枚切り食パンの外側(バウルーで焼く面)にバター or マーガリンを塗る
- チーズをスライスする。新國先生から「チーズは濃厚なタイプがおすすめ」とアドバイスいただいたので、今回はレッドチェダーとエメンタールをダブル使いしてみる
- 卵1個分で炒り卵を作る
- なめこは塩コショウをしてさっと炒める
材料の準備が終わったら、両面を弱火で温めたバウルーにパンを敷き、その上にチーズ→炒り卵→なめこの順に重ね……
さらにパンをのせ、はみ出ないように注意しながらプレスし、片面1~2分ずつ焼き上げます。バウルーは熱伝導率が高いので、焼くときの火力は弱火~中火で。途中でフタをあけて焼き上がりを確認してもOKです。
焼けました。こんがり。
カットして、熱々のうちにいざ試食。
こんがり焼けたトーストはサクッ、ふわっと、高級トースターにも負けない仕上がり。中身をこぼさず食べるのに苦労しますが、トロトロになったなめことチーズに、ふわふわの炒り卵が合わさり、未体験のおいしさです。
今度は「スマイルクッカーDX」で焼いてみます。
説明書によるとそのままフライパンがわりにも使えるようなので、炒り卵を作ってみたら案外うまくできました。
こちらは重さがある分、コンロの上でも安定します。閉じたときに上下のフライパンのズレを防ぐストッパーもかっちり閉まるし、扱いやすさではこちらに軍配が上がるかも。本家バウルーは軽い点にメリットがあるので、アウトドア向きかな。
フライパンに凹凸がついているので、ランチパック風の「耳」ができます。
ホットサンドメーカーといえば電気式のほうがメジャーですが、今回使ってみて感じたのは「直火式も意外に手軽で便利」ということ。電源コードのわずらわしさもないし、アウトドアで使えるのも魅力。何よりコンロでこれを操ると、屋台の職人になった気分で楽しいです。
ホットサンドの作り方は、動画にもまとめています。
シメは「なめこと鮭の炊き込みおにぎり 野沢菜入り」
ホットサンドの再現は終わりましたが、なめこはまだまだたくさんあるので、作中に登場する炊き込みごはんも作ってみます。
(C)新國みなみ/小学館
飯盒(はんごう)に2合分の米と塩鮭、なめこ、刻んだ野沢菜を入れて炊き、
鮭をほぐして混ぜて、
おにぎりにします。
洋風もいいけれど、やっぱり和食のなめこはほっとする味。
おまけで定番のなめこ汁も。今まで食べたなめこ汁は何だったんだ……というくらいおいしい。
来年の秋のために「なめこ栽培」にも手を出してみる
なめこについて調べているうちに、家庭用の栽培キットもあると知り、取り寄せてみました。キノコの人工栽培には菌床栽培と原木栽培がありますが、天然の味に近いのは後者らしいです。
ベランダのプランターでもOKのようなので、赤玉土を敷いて原木を埋めてみます。直射日光はNGなので、遮光ネットをかぶせました。
相手は「菌」だけに、野菜よりも「生き物を飼ってる」感が強く、だんだんと愛着がわいてきます。いつの間にか家人までそわそわと「ベランダのなめこ、大丈夫?」と気にする状態に。
無事に成長してくれれば、収穫できるのは来年の秋。なめことの付き合いはまだまだ続きそうです。
「マンガ食堂それどこ店」アーカイブ
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