こんにちは。ソレドコ編集部です。
簡単なレシピからレトルトカレーの紹介まで、ソレドコはスパイスカレーをさまざまな切り口で取り上げてきました。記事を読んだことがきっかけで、スパイスカレー沼に足を踏み入れた人もいると思います。
そんな皆さんがいざスパイスからカレーを作り始めた時、最初にぶちあたる壁は「収納」のはず。編集部員も無計画にスパイスを買いそろえた結果、ただでさえ狭い家のキッチンがさらに狭くなってしまいました……。
クミンにコリアンダー、ターメリック……そもそもスパイスって、ものすごくたくさんの種類がありますよね。カレーを作るためにそうしたスパイスを買いそろえ、初めて気付いた人も多いでしょう。「置く場所がない……」と。
皆さんの家のキッチンはスパイスに侵食されていませんか? 匂いも強く、数も多く、賞味期限もある。そう、スパイスは案外収納に困るのです。
では、カレー作りのプロはスパイスをどのように収納しているのでしょうか。
そんな疑問を解消すべく、今回カレー作りの達人3人に寄稿をお願いしました。
- 写真左から
- スパイス料理研究家、一条もんこさん
- 初心者のためのスパイスショップ代表、印度カリー子さん
- 人気南インド料理店の“中の人”、稲田俊輔さん
3人が実践する収納テクニックを「入れるテク」「使うテク」「置くテク」に分けると、こんな感じ。
【入れるテク】
- 片手で開けられる容器に入れる
- 葉物スパイスは「ガラス容器」に入れる
- パスタケースに入れる
【使うテク】
- ”使う頻度”で容器の大きさを分ける
- BBQに持っていく
- 口の広い容器にプラスチックスプーンを入れる
【置くテク】
- 玄関に置く
- マグネット付き小物入れで冷蔵庫にくっつける
- あらかじめブレンドして保管する
三つのテクニックを具体的にどう使い分けているのか、長年カレーを作り続けてきた達人ならではのアイデアを一緒に学んでいきましょう!
作業性最強の「片手持ち容器」、使う頻度で容器を分ける(スパイス料理研究家・一条もんこさん)
紹介者:一条もんこ
- 作業性を重視し、「片手で開けられる容器」を選ぶ
- 使う「頻度」によって、容器を変える
- スパイスは生き物。「冷蔵庫に入れる感覚」で保管する
こんにちは。一条もんこと申します。今まで6店舗の飲食店でカレーやスパイス料理を作り続けてきました。
現在は料理教室を運営するかたわら、カレーマニアとしてレトルトカレーを研究しており、アレンジレシピ本も書かせていただきました。
レシピ本が届きました。
— 一条もんこ (@monko1215) 2019年5月15日
涙がでました。
たくさんたくさん失敗してきたからこそ作ることができました。
誰が作っても失敗がない、美味しいレシピ本。
ずっと大切にしてきたレトルトカレーのアレンジ料理。
厳選した約70品をお届けします(*^_^*) pic.twitter.com/4ZAdhdYFTo
スパイスは「生き物」
まず、スパイス収納を収納する上で心がけていただきたいのは、スパイスは生き物だということ。
収納する時は、とにかくスパイスの状態が変わらないようにします。できるだけ温度や湿度の変化を抑え、日光が当たらない場所に置くのが鉄則。
生鮮食品と同様とまでは言いませんが、冷蔵庫に入れる感覚で保存期限や状態を気にすることが大切です。
購入日、開封日をシールで貼り付ける
その上では、賞味期限や購入日、開封日は一目で分かるようにしなければなりません。
収納法とは少し違いますが、私はスパイスのパッケージにある賞味期限表記の近くに、開封日を書いたシールを貼り付けています。
賞味期限が書かれていない場合は、開封日の代わりに購入日を書き、半年以内を目安に使い切るようにしましょう。
よく使うスパイスは「片手で開けられる」容器へ
ここから収納方法を紹介していきます。スパイスは、主宰する料理教室のキッチンスタジオに置いています。収納の方法はメインの調理場(自分が日常的に使う場所)と、生徒さんとのレッスンに使う教壇で分けています。
調理場では、使う頻度が最も高いスパイス(パウダー6種、ホール6種)は片手で開けられるプラスチック容器に入れ、手を伸ばしたらすぐに届く場所に置いています。
作業の効率を考えると、両手で容器の蓋を開けることはしたくない。右手でスパイスを出し入れし、左手で調理をするような、作業に無駄がなく手も汚れない状態が理想です。
”使う頻度”で容器の大きさを分ける
一方、レッスン用のスパイスは教室内の収納スペースに保管しています。使う頻度が高い6種類(前述と同様)はお弁当箱サイズ(12cm×16cm)のタッパーに収納。
出張料理教室やイベントのときも、このタッパーを持ち運んでいます。
毎回使わないスパイスはミニサイズ(5cm×7cm)の小さいプラスチック容器に入れ、ラックに重ねるように収納。都度持ち出して使います。こちらのスパイスには、それぞれスパイスの名前を書いてシールで貼ってあります。
葉物スパイスは「ガラス容器」へ
使っている容器の多くはプラスチックですが、ハーブやカスリメティなどの葉物のスパイスは種や実の形をしたスパイスに比べて湿気を吸収しやすいため、密閉性の高いガラス容器に入れています。
容器に入りきらないスパイスは、通気性の良い収納ボックスに入れて保管してあります。
今はプライベートでも仕事でもほぼ毎日料理をしているので、収納は分かりやすさと清潔感重視です。そのために、なるべく汚れにくく開けやすい容器、掃除しやすい容器を選んでいます。
スパイスは色合いも綺麗ですから、以前はインテリア的に並べていたのですが、この仕事を始めて、使いやすさや品質の保持を意識するようになりました。
数多くの失敗をもとに収納方法を調整
……とスラスラ書いてきましたが、理想の収納方法を見つけるまでに、数えきれないほど失敗をしています。
例えば、小さなタッパーに収納したスパイスがふたを開けた勢いで飛び出して、“全かぶり”したことが10回以上。マスタードシードの場合、床に散らばって最悪なんです。
また、ミックススパイスについては、作成日や購入日を記載せず、使う優先順位が分からなくなったことも数知れず。
あと、色合いの似ているパプリカとチリペッパーをお互い逆の容器に入れ、甘口のカレーを作ったはずが激辛になったことも。これは皆さんやったことがあると信じています……。
こうした失敗をもとに、スパイスの容器や詰め替えのタイミングを調整してきました。
繰り返すようですが、スパイスは鮮度が命。スパイスにとってベストな状態で使うことで初めて、本来の美味しさや香りを引き出せるのです。ここでお伝えしたことを参考に、毎日のお料理を充実させてくださいね。
軽くてかさばらない、最高の「持ち運びケース」(スパイスショップの代表・印度カリー子さん)
紹介者:印度カリー子
- “密封性”と“持ち運びやすさ”を重視し、ハードケースを選ぶ
- 軽くて、重ねられて、少しずつ入る容器を選ぶ
- 友達の家やキャンプに持ち込み、料理の幅を広げる
こんにちは。印度カリー子と申します。毎日カレーを食べながら、スパイス初心者のためのレシピ本を書いています。
初出版から11ヶ月強。
— 印度カリー子 (@IndoCurryKo) 2020年3月11日
学生のうちにレシピ本を書きたいという夢を抱いて、ふと気付くと6冊(+1冊監修)も書いておりました。
どれもスパイス初心者向けなのでお気軽にお使い頂けたら幸いです。
読んで下さった方に感謝御礼申し上げます。お陰様で書き続けられております。
本日、新刊が届きました。 pic.twitter.com/e8iB1GokMt
”いろんな種類のスパイスを少しずつ収納したい
現在の収納方法は「Slim Spice」。カレーが3~4回作れるくらいのスパイスを5種類保存できるケースです。
市販のスパイスはたいてい小瓶に入って売られており、重ねることができません。そのため、種類をそろえると、結構場所を取ります。また、小瓶の一つ一つは小さくても、カレーを作るくらいの種類を持ち歩くと、案外重く、袋の中でかさばって持ち運びにも不便です。
私は仕事で出張料理をする機会も多いのですが、美味しいカレーを作るときには、何か一種類のスパイスの量がたくさん必要、というより色んな種類が少しずつ必要になります。
重ねられる、スペースを取らない、持ち運びができる、軽い、少量で色んな種類がそろう……。そんなスパイスケースが欲しい、と思いながら、ある日何気なくパッケージのカタログを読んでいたら、Slim Spiceの原型となったケースを発見しました。
その後、改良を重ねて商品化したのですが、今では印度カリー子のスパイスショップの大ヒット商品になっています。
薬ケースやジップロックが「不便」な理由
以前は、100円ショップの薬ケースを使っていました。しかし、密封性が低く、パウダースパイスがこぼれてしまったり、隣同士のスパイスが混ざってしまったりと使い勝手がよくありませんでした。また、おしゃれな見た目でもないので、持ち歩いていても「代用!」「便利グッズ!」という感じで、気分も上がりませんでした。
小さめのジップロックに入れていたこともあるのですが、ハードケースではないので、持ち歩いていると袋やカバンの中でごちゃごちゃになり、不便でした。
以上のような紆余曲折があり、Slim Spiceの形に落ち着きました。
容器に入るスパイスは、毎日カレーを作るには少ないかもしれませんが、月に1、2回本格的なカレーを作るのであれば十分な量ですね。今はスーパーに袋詰めのスパイスが売られているので、なくなったスパイスの段だけを詰め替えれば場所も取りません。
キャンプにも持って行ける
Slim Spice3本で15種類のスパイスがそろうので、基本的にどんなカレーでも対応できます。また、軽いので持ち運びも楽。カバンに入れておけば、どこでもカレーが作れます。友達の家にも持っていきやすく、自分でプロデュースした商品ながら重宝しています。
キャンパーの友達も使ってくれているようで、キャンプ先で荷物を減らしたいけどスパイスカレーを作りたいときやBBQで味変をしたいときにも役立っているとの話を聞きます。嬉しいですね。
玄関に置き、冷蔵庫にくっつける(南インド料理店の総料理長・稲田俊輔さん)
紹介者:稲田俊輔
- とにかく「手で持って使いやすいケース」を選ぶ
- 戸棚にしまわず、パパッと取り出せる場所に置く
- カレー以外にも使えるよう、置き場所を工夫する
稲田俊輔です。南インド料理専門店「エリックサウス」などの中の人として、業態プロデュース、メニューやレシピの開発から各種雑用までなんでもこなしております。
新著『南インド料理店総料理長が教える だいたい15分!本格インドカレー』(柴田書店)では、缶詰やチューブにんにく(しょうが)を使ったアイデアレシピをご紹介しました。
家から出られず、しかし時間だけはあるぞ!という方、今こそカレーを作りましょう。
— イナダシュンスケインド料理専用サブ垢 (@inamasalasuke) 2020年3月30日
15分カレー本の最終章は、15分完全無視、数時間がかりの本格レシピが満載です。 pic.twitter.com/77tqwV1zGE
市販の小瓶は「使い勝手良くない」
自宅では、試作やレシピ作成、そして日々の食事に、お店とほぼ同じ種類のスパイスをストックしています。もちろん一種類あたりの量はぐっと減って、各スパイスがだいたい50〜100g程度。
容器は軽くて中身が確認しやすく、かつスクリューキャップでしっかり密封できるものが望ましい。僕は写真のようなふた付きプラスチックボトルを使用しています。
補足すると、スプーンが入れやすいように、ある程度口の広い容器を選ぶことも重要です。市販のスパイスは通常、細めの瓶で販売されていますが、これはスプーンを入れられないため計量しづらく、使い勝手があまり良くありません。
常に乾いたスプーンを用意して、使用後にそれをいちいち洗うのは面倒。だから、よく使うスパイスのボトルの中にあらかじめスプーンを突っ込んでおくと便利です。自分はプラスチックのスプーンの柄を程よい長さにポキっと折って、ボトルに入れています。
あらかじめブレンドして保管
特に使用頻度の高いスパイスは、あらかじめブレンドした状態でも保管しています。
写真は、コリアンダー ・クミン・チリ・ターメリックをブレンドした「基本のミックススパイス」(写真左)と、カルダモンやクローブ、シナモンなどの個性の強いスパイスを中心に6種類をミックスした「オリジナルガラムマサラ」(写真右)。
ベーシックなカレーは、極論この二つえあればだいたいできてしまいます。
なお、各スパイスの調合やそれを使ったレシピは拙著『南インド料理店総料理長が教える だいたい15分!本格インドカレー』をご覧ください!
冷蔵庫にくっつける
ホールスパイスは、マグネット付きの小物入れで冷蔵庫の扉などに貼り付けておくと便利です。
本格的にカレー作りをスタートすると、ホールスパイスは一通りそろえたくなってしまう反面、ついつい戸棚の奥で埋れさせてしまいがち。こうやって保管すると、場所を取らないだけでなく、カレー以外のいろんな料理にも気軽に使えます。
角煮を作る時にスターアニスやシナモンを少しだけ入れたり、ビーフシチューにクローブを足したり、ひき肉料理やサラダにクミンシードを足したり、普段の料理に気軽に活用していくのもまたスパイスを楽しむ極意です。
玄関に置く
ホールスパイスに限らず「スパイスを戸棚にしまい込まない」というのはある意味スパイス保管の最大のコツなのかもしれません。
僕が家でスパイスを置いているこの場所は「玄関」。使いたいときにすぐ使う、という意味では戸棚の中よりむしろ便利な上、日中も薄暗く、鮮度管理の点でも問題ありません。カラフルなスパイスはそれ自体がインテリアにもなり得ますから、直射日光さえ入らなければ、リビングやダイニングにディスプレイを兼ねて置いてみたりするのも良さそうです。
店舗では「パスタケース」を採用
ちなみにお店では、スパイス屋さんから仕入れたスパイスを、本来パスタなどを入れるための乾燥食品容器に移し替えて使っています。インド料理店ではスパイスはたいてい厨房の奥にしまい込まれているのですが、エリックサウスではあえてお店の一番目立つところに色とりどりのスパイスをディスプレイし、なおかつそれを計量・調合するシーンを見せることを意識しました。
スパイスはだいたい500g〜1kgの袋で納品されるので、それがほぼそのままどさっと入るサイズです。ガラムマサラなど店内で調合するミックススパイスもこの容器に入れて一緒に並べています。もっと量が少ないサフランなどのスパイスは、小容量のジップロックのスクリューロックで保管することもあります。
インド料理店の仕込みは「スパイスの計量と調合」がかなり大きな部分を占めます。そのため、とにかく手で持って扱いやすい容器で、かつ、それをいつでも取り出しやすい場所に置いておくことが重要。
お店では1日に使うスパイスの量がかなり多いので、必然的に保管による鮮度劣化はほとんど気にする必要はありません。
スパイスは「コレクション」ではない
スパイスの収納はとにかく「思い付いたらパパッと使えるようにしておく」のが大事だと思います。スパイスはコレクションではなく生鮮食料品! しまい込んだままだと何の意味もありません。保管方法は、容器も場所もとにかく「使いやすさ」を最優先にするのが重要。
毎日の生活に気軽にスパイスを取り入れて、おうち料理を華やかに、刺激的に彩ってみてください!
以上、3人のスパイス収納術を学びました。スパイスをコレクションやインテリアではなく「食材」として扱う、というのは、つい忘れがちな側面ではないでしょうか。
香り高いスパイスカレーは、正しいスパイス収納なくして生まれません。湿気と気温(室温)が急上昇するこれからの季節、3人のアイデアをぜひ参考にしてみてください!