こんちくわぶ。製麺好きのライター玉置です。最近、ちょっと思うんですよ。「ちくわぶ」って、一体なんなんだろうと。
ちくわぶといえば竹輪(ちくわ)のように穴が開いた角の多い星形をしている食べ物で、埼玉県出身の私にとってはおでんの具としてよく食べられているという認識です。好きか嫌いかというと、「出されれば食べる」くらいの存在で、好きなおでんの具ランキングでいえば……失礼ながらワースト3に入るかもしれません。
※この記事を書き上げた頃にはトップ5へと大躍進しました!
そんなちくわぶですが、好きな人は絶対に欠かせない存在らしく、「ちくわぶが入っていないおでんはおでんじゃない!」という人が多いのも事実。そこであの白い塊に秘められた謎を、ちくわぶに対しては平熱ですが小麦粉(主に麺)については人並み以上に関心のある私が本気で調べてみました。結論からいうと、材料がシンプルであるがゆえにものすごく沼が深い食べ物でした。研究しまくった成果をここで発表したいと思います。
調べるのに時間が掛かりすぎて、すっかりおでんの時期を過ぎてしまいましたが、これからの時期にこそ合う食べ方もご紹介しますよ!
【ちくわぶ研究 もくじ】
主原料は魚ではなく小麦粉! ちくわぶの基礎知識
まず、ちくわぶとは何ぞやという話をしたいと思います。ちくわぶ好きの方も意外とその正体を知らないのでは。まずはざっくりと要点をお伝えします。
- 関東のローカルフードで、主におでんの具として食べられている
- 主な材料は小麦粉で、ちくわよりもうどんやマカロニに近い食べ物
- 歴史は意外と古いらしく、少なくとも明治・大正期にはあったよう*1
ご存じの方も多いと思いますが、魚のすり身から作られる「ちくわ」と違い、ちくわぶは小麦粉の塊です。そのため、ちくわなどの練り物の味を期待して食べると、残念な気持ちになるかもしれません。
原材料は小麦粉と食塩のみ!
ちくわぶを漢字で書くと「竹輪麩」。「竹輪型の麩」となりますが、細かいことを言うと「麩」は小麦粉から取り出したグルテン(タンパク質)が主原料。それに対してちくわぶは小麦粉そのものなので、どちらかといえば「竹輪型をしたうどん」と言える食品のようです。いや極太のマカロニかも。
こうやってじっくりみると、あまりちくわに似ていないですね
食べる食べないの割合は半々! 衝撃のちくわぶアンケート
東京だったらおでんの蓋を開ければ当たり前に存在しているちくわぶですが、さて日本ではどれくらいの人が食べているのでしょうか。私のTwitterで「ちくわぶ、食べますか?」というアンケートを軽い気持ちで実施してみたところ、なんと一日で2,884票が熱いコメントと共に集まったのです。本当にありがとうございます!
その結果、「食べる」が46.2%、「食べない」が43.4%、「知らない」が10.4%となりました。私が埼玉在住なので、フォロワーが東日本に多少偏っているであろうことを含めて考えると、ほぼ半々と言えるのではないでしょうか。ちくわぶの存在を知らないという人が一割以上いるというのも興味深いですね。
「ちくわぶ」についてアンケートです。ちくわぶ、食べますか?出身地や思い出、食べ方などもレスいただけると幸いです。※結果は某記事で使用します。
— 玉置標本 (@hyouhon) March 22, 2020
「食べる」「食べない」「知らない」、それぞれアンケートに答えていただいた方のコメントからその特徴を確認していきましょう。私はこのコメントと会話をしながら、うまい酒が飲めますね。
「食べる」人のコメント
やっぱり東京を中心に、神奈川、埼玉、千葉にちくわぶファンが多いようです。他の地域の出身者が東京に引っ越してきて好きになるパターンも。ちくわぶ好きから熱い声がたくさん集まりました。
- ちくわぶが入っていないとおでんとは呼べない
- ダシを吸ってぐだぐだになっているのが好き / 歯ごたえが残っているのが好き /両方好き
- 好きだったのに他の地域に引っ越して入手できず(あるいは家族から拒絶され)辛い思いをしている
- すき焼きや煮物に入れたり、トッポギ(韓国の餅を甘辛く炒めた料理)にしたり、唐揚げにしたりするとおいしい
東京生まれです。小さい時からずっと好きでおでんにちくわぶが入ってないと寂しい気持ちになります。カウンターのおでん屋さんでも最初の方、中盤、最後らへんと何回か頼みます。
— linn (@RyKbysh) March 22, 2020
私も両親、祖父母も東京出身です。金沢に来て、福井出身の夫と結婚してからはちくわぶをディスられ、スーパーでも購入できず、毎冬つらいです。
— Nahr Khandaq (@NKhandaq) March 22, 2020
ここまで熱く推薦されたら食べないわけにはいかないだろうと、たっぷりとちくわぶを入れたおでんを作ってみました。
タコでうっすらピンクに染まったちくわぶがセクシー
さまざまな具から出たダシを吸ったちくわぶ、改めて味わってみるとおいしいですね!
おでんを夕食として食べるとき、おかずにならないからご飯が進まないという問題が個人的にあったのですが、主食にご飯ではなく、ちくわぶをたくさん食べることで、無事解決を果たしました。
ちくわぶは煮込む時間によって食感が大きく変わりますが、お好みの具合は人それぞれ。ある友人は、なじみのおでん屋にいくときは予約をしておき、2日間煮込んだちくわぶを出してもらうそうですよ。
出身:埼玉県
— 佐野まいける (@_maicos_) March 22, 2020
実家のおでんには必ず入っており、くっっったくたになるまで煮込んで食べるのが好きでした。すき焼きに入れても美味しい。
大人になってからは唐揚げにして食べたりしています。カリもちっとしていて美味しいです。
また、すき焼きにちくわぶという組み合わせを推薦するコメントが多数ありました。まったくピンとこなかったのですが、実際にやってみると、これが見事に合います。おでんとは正反対の甘じょっぱくて濃い汁が染みたパンチのある味に衝撃を受けました。ちくわぶにこんな強引な一面があったとは。「どんな鍋にでも入れる」という意見があったのですがそれも頷けますね。
終盤になって味が染みまくった頃がうまい!
「食べない」「知らない」人のコメント
ここまではちくわぶを食べる側の意見を紹介しましたが、日本人の半分はちくわぶを好んで食べない、あるいはその存在すら知りません(私のTwitter調べ)。食べない側の声を地域ごとにピックアップしてみました。
- 食感が苦手(粉っぽい、ねちょねちょ)
- ちくわでいいじゃん
- マンガや本で存在は知っているが、見たことも食べたこともない
- ちくわの言い換えだと思っていた
北海道出身です。
— あずき (@dulfer_2222) March 22, 2020
食べたことなかったですし、関東に引っ越し後も食べないです。
味が染みても食感が苦手なので美味しさがわからない。。
大阪出身です。見たこともなかったです。小説なんかで出てくる「ちくわぶ」、ちくわの関東風の言い方なのだと思ってました。「丸太→丸太んぼう」みたいに語尾にリズムをつけるものだと…
— 長嶋祐成 (@kuroNYU) March 22, 2020
24歳くらいまで見たこともありませんでした。火の通りの悪いうどんが嫌いな自分には苦手な食べ物です。
— 前田 圭一 (@keke2003) March 22, 2020
以上、ちくわぶを食べない側から寄せられたコメントでした。なかなか言いにくいことを正直に言っていただき、ありがとうございます!
一度でも食べた上で、食感を含めて「味が苦手だから食べない」という人よりも、そもそも食べたことがないから食べないという人が多いようです。言い方を変えると、ちくわぶを食べる必要がないから食べないのでは。
その成り立ちが、魚の練り物であるちくわや、小麦粉から抽出したグルテンで作る麩のオマージュであるといわれるちくわぶなので*2、かまぼこやさつま揚げ、あるいは角麩*3といったオリジナルのローカルフードが盛んに食べられている地域では、どうしても分が悪いのでしょう。そもそも食べる理由がないし、食べてみるとイメージと味が違うという二重苦。
北関東や山梨・長野では東京から近いのにそれほど広まらなかったようです。小麦粉から手作りするうどん類を日常的に食べる食文化なので、主な材料は小麦粉という点が同じで(この話はあとでたくさん出てきます)、生地の塊みたいなちくわぶを、わざわざ買ってまで食べようと思わなかったのかもしれません。
ちくわぶはあくまでちくわぶであり、ちくわ(練り物)でも、麩(グルテン)でもない、オリジナルの存在として試してみてはいかがでしょうかとオススメしたい気持ちもありますが、地域ごとの伝統的な食文化を守るという意味では、あえてちくわぶのような東京発の食材を認めないという考えもアリだよなと思ったりもします。日本中どこでも同じおでんだったら、それはそれでつまらないですからね。
ちくわぶのパッケージから正しい食べ方を確認する
ちくわぶを食べない人の中に、「粉っぽい」「ねちょねちょ」という意見が見受けられました。ちくわぶ好きにとっては「そこがいいんだよ!」と褒め言葉ともなる感想ですが、これが苦手という気持ちもよく分かります。
この水分が「少なすぎ」と「多すぎ」という相反する結果となるのは、もしかしたら正しい食べ方をしていなかったのかもしれません。そこでスーパーで市販されていたちくわぶのパッケージや各社のサイトを、今一度確認してみましょう。
確認したのはこちらのちくわぶ。
- 紀文食品のちくわぶ(左の写真)
- 堀川・タカトーのちくわぶ(右の写真上)
- カネ久商店のちくわぶ(右の写真下)
それぞれの違いを表にしてみると、こうなるでしょうか。ちくわぶに対して独特の臭みがあるイメージを持っている人もいるかと思いますが、気になる人向けに対策が書いてある商品もあります。
あと私が言いたいのは、どのメーカーもパッケージが真空パックされているため、注意書きが読みにくいぞということですね。
ぜひ商品を取り出してから、じっくりと読み直してみてください。そこに新しい発見があるかもしれません。
調理前の下茹では重要なのか検証してみる
全社で共通して言えることは、特有の臭いがするかもしれないこと。それに対して、気になるなら水洗いや下茹でをすればいいようです。試しにちくわぶを3分間下茹でしてみました。ちくわぶの下茹で、人生初です。
左からカネ久商店の茹でる前と茹でたもの、堀川・タカトーの茹でる前と茹でたもの
あえて茹でる前を食べてみると、粉っぽくボソボソとした食感で正直おいしくありません。それでいてネチネチしているという謎の存在。もしやちくわぶが粉っぽいと思っている人は、ちゃんと加熱していないものを食べたのかも。もしこれがちくわぶとの出会いであれば、私も嫌いになっていたことでしょう。第一印象って大事!
続けて3分間茹でたものを食べてみると、弾力があってモチモチしておいしい! この大きな食感の変化は、市販の「茹でうどん」をイメージしてもらえると伝わるかと思います。あれの茹でる前と茹でた後と同じ変化です。
茹でる前は、まるで消しゴムのような硬さ(左)だったのが、3分下茹でしたことによってフニャンと柔らかくなりました(右)
下茹での有無で、煮物の味は変わるのか
下茹でしたものと下茹でしなかったものを、薄味の出汁で別々に20分間煮てみたところ、味の差はほとんど感じられませんでした。どちらもしっかり煮えています。「粉っぽい」こともなく、「ねちょねちょ」することもありません。これがメーカー推奨の茹で具合なんですね。
あえて違いを探してみると、結果的に長く加熱している「下茹であり」の方(3分+20分)が、逆に煮崩れていないかもしれません。断面から確認できる出汁の染み込みは、「下茹であり」に利があるように見えます。下茹でしないと煮汁が濁るということは、ほぼないようです。
ちくわぶを下茹ですることで、煮崩れしにくくなり、味が染み込みやすくなる可能性はありそうですが、この微妙な差が味にどこまで影響するのかは、さらなる検証が必要でしょう。
おでんや煮物のように煮込む料理であれば、下茹でをせずに、そのまま調理して問題なさそうです。調理後に開封時の匂いが残るということは、ほぼないと思います。あえてサッと煮るだけの調理なら、下茹での効果が出てくるかも。あるいは柔らかくはしたいけれど、味は染み込ませたくない時とか。
茹でないちくわぶはボソボソ気味なので、そのまま食べることはおすすめしません。それは言われなくても分かっているよと思われそうですが。ちくわぶは「極太の茹でうどん」だと思って調理すると、間違いないかもしれませんね。
あえて「ねちょねちょ」にしたい場合は、炊飯器で保温すると煮崩れないので良さそうです
一晩保温すれば、ねちょーっとしたちくわぶが完成。私は歯ごたえのある方が好きかも
ちくわぶの新しい食べ方を考えてみる
ちくわぶ料理といえば、おでんかすき焼きが定番のようですが、私が知らない調理方法があるのではと、この機会にいろいろ試してみることにしました。煮込むだけがちくわぶ料理じゃなかったのです!
ちくわぶの唐揚げ
まずはアンケートのコメントにもあった唐揚げにチャレンジ。輪切りにしたちくわぶに醤油、生姜、ニンニクで鶏の唐揚げと同じ下味をつけて、片栗粉をまぶして揚げてみました。
アツアツを食べてみると、鶏ささみとイカの中間みたいな食感でなかなかです。今回は下茹でなしでしたが、しておけばモチっとした食感になりそう。ちくわぶ自体に味がないので、下味をしっかり付けるか、あとから塩などで味を足すのがポイントのようです。
ちくわぶの唐揚げは厚みのある方(左)が好みでした
ちくわぶの天ぷら
続いてはちくわぶの天ぷらですが、これはやめておいた方がいいでしょう。
小麦粉の塊であるちくわぶを小麦粉の衣に包んで揚げるという、炭水化物と油によるハイカロリーな共演ですが、衣と中身にメリハリがなく、悪い意味でシームレスな食感となり、結果として衣の塊を食べているような虚しさがあります。食べ盛りの若者にはいいかもしれません。
唐揚げだとおいしいけど、天ぷらにすると微妙という結果に
焼きちくわぶ
続いてはちくわぶをシンプルに焼いて食べてみましょう。斜めにスライスして、軽く下茹でしたものと、下茹でしなかったものを、多めのゴマ油で焼いてみました。
分かりにくいですが、左2つが下茹でしたもの
食べ比べてみると、下茹でしたものは表面がパリッとしつつ中はモッチリ。でも餅ではないので粘りません。そのアッサリ具合が後を引きます。
下茹でなしはボソボソする感じがありますが、それが嫌かと言われると意外と好ましい素朴さ。小麦粉の乾物という詰まった食感、私は好きです。
ちくわぶの磯辺焼き
焼いたちくわぶは歯ごたえだけの食べ物であり、味こそありませんが、だからこそ無限の可能性を感じます。ここに名パートナーが加わることで、一気に化けるのでは。そこで磯辺焼き風に海苔で巻いて醤油を垂らしたところ、これが見事に大正解。焼いたちくわぶに感じる物足りなさを、海苔がしっかり補ってくれました。
ちくわぶの磯辺焼き、簡単でうまい!下茹での有無は食感のお好みで
そこからさらにチョイ足しを試してみれば、ちくわぶ1本があっという間に胃袋へと消えてしまいます。いろんなおにぎりや手巻き寿司を試すような楽しみ方ですが、量が少ないので酒のつまみに最適。
もし私が居酒屋をやっていたら、「本日のちくわぶ磯辺焼き5種盛り」が毎日メニューに並ぶことでしょう。これぞ和風オープンサンド。
明太子、塩辛、ツナマヨ、キーマカレー、チャンジャ、カラスミ、鶏皮焼きなど、想像するだけでよだれものです。あ、よだれ鶏(ピリ辛の四川風茹で鶏)を入れるのもいいですね。
麻婆ちくわぶ
続いては麻婆豆腐、いや麻婆ちくわぶを作ってみましょう。ちくわぶを茹でて柔らかくするか、焼いて硬くするか迷うところですが、あえて豆腐との違いを出すために、焼くパターンで攻めてみました。
今や私にとって万全の信頼がある焼きちくわぶ
香ばしく焼き目を付けたちくわぶを豆腐代わりにして、市販の合わせ調味料で豚肉、ネギと仕上げていきます。豆腐と違って煮崩れる心配がないので気楽に作れますよ。
あっという間に出来上がり
麻婆ちくわぶ、これはうまい。どうしてもおでんのイメージが強く、薄味で長時間煮込むことがちくわぶの正解だと思いがちですが、すき焼き同様に濃い味を纏わせることで、その汁を程良い濃度に薄めて楽しませてくれます。
濃いタレで少し煮込んだちくわぶは、焼いただけとも違うクニュクニュ感が味わえるのもポイント。そしてなんといっても豆腐と違って箸で簡単につまめるのが最高。これはビールのつまみに最適なのでは。冬はおでん、夏は麻婆で決まりかも!
ちくわぶのなめろう(タタキ)
ちょっと変わったところで、ちくわぶで千葉県の郷土料理であるなめろうを作ってみたいと思います。本来は鮮度の良いアジやイワシなどを、生のまま味噌や薬味と叩いた漁師料理ですが、魚をちくわぶに置き換えるという試みです。白身魚ならぬ白い塊で成り立つのでしょうか。
下茹でしたちくわぶ、タマネギ、大葉、生姜を刻み、味噌を加えて包丁でさらに叩きます
これだけだとさすがに物足りなさそうなので、鰹節と胡麻油を加えて、魚と油の要素をプラス。
食べてみると、もちろん魚のなめろうとは別物ですが、これはこれで私としてはアリな味。蒸し暑い日なんかには最適でしょう。さまざまな歯ごたえのコントラストが楽しく、ご飯のお供や焼酎のアテにもぴったり。さらにシンプルに攻めるのであれば、茹でたちくわぶの刺身がいいかも!
白いご飯とよく合いました
ちくわぶを手作りしてみる
ちくわぶの食べ方や魅力を知り、距離が近くなってくると、今度はちくわぶはどのように作られているのかも気になりますよね。そこでちくわぶを手作りする会を開催してみることにしました。もしかしたら店には売られていないような、理想のちくわぶが作れるかもしれません!
製麺機篇
まずは家庭用製麺機というかっこいい機械を使って作る方法から。ちなみに製麺機についてはこちらの記事でも紹介しています。
▶自家製麺は簡単にできる! 料理好きの友人を「製麺沼」に落とすプレイで実証してみよう
この試作会は2月に行われました
用意した小麦粉は強力粉(カメリヤ)、中力粉(うどん専用の「金斗雲」という商品)、薄力粉(バイオレット)。これらを、
- ニーダーという生地こね機で捏ねて
- 家庭用製麺機で薄く伸ばし
- 鬼すだれ(あの星型をつける道具)で巻いて加熱する
という、できるだけ業務用の作り方に寄せた方法で試します。
左から強力粉、中力粉、薄力粉
今回は塩を入れず、粉に対して45%の水分量で試作。ニーダー(生地こね機)でませながら水を加える。混ぜる時間は10分間としました
生地をまとめて寝かせてから、家庭用製麺機という機械で均一に伸ばしていきます。ここまではうどん作りとほぼ同じ
割りばしを芯にして生地を巻き付けます。本来は羅宇(らう)というステンレスの筒を使うそうです
生地の厚さを変えてみましたが、これによる味の違いは出るのでしょうか。市販品でもちくわぶの断面をよくみると、層になっているのが分かりますよ
ギザギザした鬼すだれで巻いて、あの独特の形を再現。これによって味の染み込みがよくなります。工場ではステンレスの型で挟むようです
輪ゴムで止めて、40分間茹でます
茹でるのではなく、蒸す方法も試してみましょうか
加熱が終了したら、すぐに水で冷やします
芯の割りばしを抜いたら出来上がり
かなり硬めに仕上がったかも。左側が中力粉、右側が強力粉。薄力粉は生地が柔らかくなりすぎて製麺機で伸ばせず挫折
蒸したちくわぶ(各左側)は茹でるのに比べて外から吸う水分が少ないためか、かなりガチガチ。削って使うチーズくらい硬い。手裏剣や歯車として使えるかも
市販品の多くは水に一晩浸して、程良く吸水させて伸ばしてあるとか。自分で作ってみると、この工程の必然性がよく分かりますね
このように理想のちくわぶを求めて手作りをしてみたところ、小麦粉と塩と水だけで作るシンプルな食品だからこその難しさを痛感。
小麦粉の種類、塩の有無、加水の加減、巻く生地の厚さ、ちくわぶの直径、加熱方法と時間、吸水時間と、試すべき選択肢がいくつもあり、その組み合わせは無限大でした。
まさかちくわぶ作りに、ここまでの沼要素があったなんて。理想のちくわぶを実現させるには、人生の全てを掛けないと無理そうです。そもそも「理想のちくわぶ」が、自分の中にまだ存在しないという罠。それでも素材や作り方を変えることで、ちくわぶの味が変わることはよく理解できました。大収穫です。
そしてちくわぶを作ってみたことで、その存在が、竹輪よりも、麩よりも、やっぱりうどんに近い食べ物だという事実を確認。ちくわぶを最初に作った人、うどん屋さんなんじゃないですかね。
さまざまな硬さの手作りちくわぶをふんだんに入れたおでん。最初がガチガチだからこそ、煮込むことでの変化が長く楽しめます
すき焼きは良質な牛脂と歯ごたえのあるちくわぶがあれば、あとはネギくらいでいいかもしれません
しっかりと茹でて(それでもかなり硬いですが)、黒蜜を掛けたデザートもおいしかった
手打ち篇
この記事を読んで、自分でもちくわぶを手作りしたくなったけど、製麺機や鬼すだれを持っていないよという方も多いかと思います。そこで手に入りやすい道具だけで、ちくわぶを作り直してみました。この日は手打ちうどんの会でこっそり作ったのですが、うどんを打つよりも簡単でしたよ。
粉はうどん用の中力粉が使いやすいと思います
粉100:水45:塩2の配分にしました。麺ではなく塊なので、茹でるときに塩分が抜けにくいため、うどんよりも塩分を減らすのがコツ。塩5で作ったら、かなりしょっぱかったです
粉と塩水を混ぜて、オカラのような状態にします
これをまとめたら、少し休ませます
体重を掛けて、しっかりと捏ねます
捏ねて休ませる工程を何度か繰り返して、モチモチツルツルの生地に育てました
麺棒で適当な薄さに伸ばします。なければワインのボトルなどでも大丈夫。もっと薄くして、細く切ればうどんになります
鬼すだれと羅宇の代わりに、手巻き寿司用の巻きすと竹のストローを使ってみましょう。芯は割りばしでもいいですよ
クルクルと巻いていきます。強く巻きすぎると、生地と巻きすがくっついてしまい、剥がす時にちくわぶが壊れるので注意(やった)
このサイズなら家庭用の鍋でも茹でられます。蒸すよりも茹でる方が簡単かな
40分くらい茹でました
水で冷まして芯を抜いたら、手作りちくわぶの出来上がり。お好みで水に浸けて柔らかくしましょう
なかなかの完成度。これを出されても、誰もちくわぶが手作りだとは思わないでしょう
正直にいえば「手作りだからすごくおいしい!」というタイプの食べ物ではないですが(うどんにした方がうまい)、心に充実感が得られることは間違いありません。おすすめします、手作りちくわぶ!
変わったちくわぶを作ってみる
手打ちのちくわぶ、特別な道具を使わなくても、意外と簡単にできました。このように手作りちくわぶのノウハウが溜まったところで、せっかくなので店では買えない変わったちくわぶを作ってみましょう。……なんだかちくわぶに対する特別な感情が、変な形で爆発してきましたね。
ちくわぶのゴボウ巻き
ようこそ、ちくわぶの向こう側へ。例えばおでんの具で、ゴボウを芯にして魚のすり身を揚げた「ごぼう天(ごぼ天)」がありますが、あれのちくわぶ版はどうでしょう。
作り方は簡単。芯をごぼうにしてちくわぶを作るだけ
好きなものを巻いて、あなた好みのちくわぶを作ってください
これを茹でたら出来上がり。その断面を確認すると、まさにちくわぶの芯がごぼうになった食べ物ができました(そのままですね)。ごぼうの風味が生地に移ることで、独特の風味がある唯一無二のちくわぶが味わえます。さっと出汁で煮たらおいしそう。
ちくわぶの穴にごぼうを詰めたのではなく、ごぼうを巻いたちくわぶなのがポイント
ただ大きな欠点が一つあって、加熱によってごぼうが縮んでしまうため、輪切りにするとごぼうが抜けやすいのです。ごぼうの香りはすでにちくわぶに移っているので、調理前にごぼうは抜いてしまい、それぞれ別の料理にするのがいいかもしれません。これが本当のごぼう抜き……
なると風ちくわぶ、「鳴門麩」を作りたい
最後にもう一つ、全力でふざけてみましょうか。ちくわぶの生地をちょっと分けて、食紅を練り込んで真っ赤に染めます。それを薄ーく伸ばし、白い生地と一緒に巻けば、なると風のちくわぶにならないかという実験です。
竹輪風の麩が「竹輪麩」なら、鳴門(なると)風の麩は「鳴門麩」ですかね。
着色料、生地を捏ねる前に入れればよかったか
駄菓子っぽい強烈な赤さになりました
なるとに穴はないので、芯は使わずに生地を巻いていきます。うまくできるか不安でしたが、意外と問題ありませんでした。
それにしても「私は一体、何を作っているんだろう」と、悩むヴィジュアルです。和菓子?
赤い生地は白生地より長さを短くするのがポイント
どんな断面になるでしょうか?
茹で上がったなると風のちくわぶ、さてどんな断面を見せてくれるのでしょうか?
ババーン!
すごい、想像以上にナルトだ!
これは想像以上の出来栄えです。もうなるとにしか見えません。ちょっと生地が薄すぎて、巻く回数が多くなりすぎたため、「の」の字になるはずが蚊取り線香みたいになっていますが。国産の黄色っぽい小麦粉を使ったので、真っ白にならなかったのも反省点。次はもっとなるとらしく作る自信があります。
せっかくなので、ラーメンにのせてみましょうか。輪切りにした「鳴門麩」を麺と一緒に茹でて、トッピングした結果がこちら!
はい、どう見てもなると! さすがにネギだけは本物です。
これはもう鳴門麩ではなく、なるとということでいいでしょう。扱いが難しそうな魚のすり身ではなく、慣れ親しんだ小麦粉の生地で作ったからこそのクオリティ。見事なまでのオール炭水化物。緑色の着色料があればネギすら作れるかも。この技法、精進料理に応用できるかもしれません。
今年一番の達成感
このラーメンをTwitterに投稿したら、多くの人がなるとを手作りしたと思ってくれたようです。そりゃそうですね。
きれいにできた!#自作ラーメン #それは手作りしなくていい pic.twitter.com/vMCf3B1fVL
— 玉置標本 (@hyouhon) May 6, 2020
後半は余談ばかりになりましたが、ちくわぶはおでんの具としてはもちろんのこと、さまざまな料理で「汁」や「調味料」の持ち味を引き立てる名脇役として活躍できることが分かりました。
皆さんもぜひ、小麦粉でなるとを作ってみてはいかがでしょうか。
著者:玉置標本
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。
Twitter:@hyouhon ブログ:私的標本、趣味の製麺
ソレドコでTwitterやってます!
今回紹介した商品
「ちくわぶ」を詳しく見る
「すき焼き」を詳しく見る
「ちくわ」を詳しく見る
「角麩」を詳しく見る
「うどん」を詳しく見る
「マカロニ」を詳しく見る
「炊飯器」を詳しく見る
「麻婆豆腐の素」を詳しく見る
「家庭用製麺機」を詳しく見る
「強力粉」を詳しく見る
「中力粉」を詳しく見る
「薄力粉」を詳しく見る
「鬼すだれ」を詳しく見る
「牛脂」を詳しく見る
「黒みつ」を詳しく見る
「麺棒」を詳しく見る
「巻きす」を詳しく見る
「食紅」を詳しく見る
*1:その歴史をwikipediaで確認してみると、明治・大正期には落語の「時そば」に登場していることから、少なくともその頃には存在していたようです。その落語には、「最近は蕎麦の具にちくわじゃなくてちくわぶを出す屋台が多い」というような会話が出てきます。ちなみにちくわといえば焼き目のついた茶色い姿をイメージしますが、当時は蒸したり茹でたりして作る白いちくわも多かったようです。
*2:電気冷蔵庫も外国産の安いすり身もない時代、高価だったすり身で作るちくわの代用品として、比較的安価な小麦粉で作るちくわぶが生まれたのではと推測されます。また京都の「生麩(茹でた麩)」をヒントにして、関東で生まれたという説もあるようです。
*3:岐阜・愛知を中心に愛されている波型の平たい麩。見た目は平らなちくわぶですが、小麦タンパクのグルテンが主原料のため、食感は全く違います。