自宅の食事でこだわっていることはありますか? 今回は料理好きのブロガーやライターの皆さんに、いつもの料理で使っている「推しの調味料」を聞いてみました! 紹介してくださったのはこの方々。
- <テッパン編>毎日の食卓でマネしたい、本格料理家たちの調味料
- だし料理の梅津有希子さん
- 手間をかけない本格レシピの河瀬璃菜さん
- 醤油研究家の杉村啓さん
- <パンチ編>こだわり料理愛好家(麺・鮨・豪快料理)の調味料
- 製麺料理の玉置標本さん
- 自宅鮨のnanoha3さん
- 本能に訴えかける豪快料理の小林銅蟲さん
「推しの調味料3つ」とあわせて、「その調味料のうち、いずれかを使った簡単レシピ(複数使用可)」を教えてもらいました。
どの人も自信を持ってすすめする「我が家のスタメン調味料」の数々。明日からの献立にぜひご活用ください!
玉置標本の推し調味料:麺料理の味を引き締める!
左から四川風辣油(ヱスビー食品)、味マルジュウ(丸十大屋)、ペコリーノ・ロマーノ(チーズ)
ここしばらく、自家製麺を使った汁なし担々麺作りにハマっていたのですが、そこで大活躍してくれたのが、ヱスビー食品の「四川風辣油」です。ウナギのかば焼きなどに振りかける日本の山椒とはちょっと違う、花椒(ホアジャオ)と呼ばれる華北山椒の香りとピリッとした辛みが、普通の辣油では味わえない風味を与えてくれます。これを出来上がった担々麺に一垂らしすることで、味が一気に引き締まるのです。汁ありの担々麺や味噌ラーメンにもバンバン使っています。これからの季節なら、ゴマダレの冷やし中華なども絶対に間違いない組み合わせですね。
もちろん麺類だけではなく、麻婆豆腐や麻婆春雨、麻婆茄子に麻婆カレーなどの麻婆シリーズとも相性抜群。一度でも使うと、もうこれを垂らさないと物足りない鼻と口になってしまうのです。さらには餃子にチャーハン、みそ汁に卵かけご飯など、なんにでも垂らしてみてください。
2.味マルジュウ(丸十大屋)
全国各地にうどんやそばを使った独自の麺料理があります。その中でも、店に行って食べるような外食料理ではなく、家庭の台所で作られるおふくろの味を再現する場合に使いたいのが、その地域で愛されているローカルな「だし入り調味料」です。いわゆる「めんつゆ」とか「本つゆ」の系統ですね。地方のスーパーを覗いてみれば、全国展開している大手メーカーの商品と並んで、きっと見覚えのないラベルのボトルが並んでいることでしょう。
私が大学時代に住んでいた山形の友人は、丸十大屋の「味マルジュウ」という山形市のローカルなだし醤油を水で割り、鯖缶や納豆を入れて、そばやそうめんを食べさせてくれました。旨味と甘味のガツンと濃い味マルジュウこそ、私にとっては当時を思い出させてくれる山形の味です。
3.ペコリーノ・ロマーノ
最近になって手作りする生パスタの魅力に気が付いたのですが、その味をさらに高めてくれるのが、ちょっといいチーズの存在です。これまでは筒状の容器に入った普通の粉チーズを使っていたのですが、友人から「あの庶民派イタリアンレストランでも使われているチーズで、塊から削って使うと全然違うよ!」と教えてもらい、それ以来愛用しているのがこの「ペコリーノ・ロマーノ」です。これは牛ではなく羊の乳を使って作られるハードタイプのチーズで、イタリア最古のチーズとも言われています。
羊のチーズというと癖が強そうですが、しっかりとした塩気があり、ほのかな酸味と相まってパスタに合うんです。パルミジャーノ・レッジャーノよりもちょっと安いのもうれしいポイント。ミートソースやカルボナーラなどにたっぷりと削って食べてください。市販のソースでもグッと味が引き立ちますよ。またパスタ以外にも、塩ラーメンに加えたり、熱々のご飯にかけたりするのもいいですね。ちなみにチーズを削る道具は、大根おろし器でも大丈夫です!
推し調味料を使ったレシピ
「味マルジュウで作る芋煮」と「ペコリーノ・ロマーノ&四川風辣油入りの芋煮カレーうどん」
(左)味マルジュウで作る芋煮 (右)ペコリーノ・ロマーノ&四川風辣油入りの芋煮カレーうどん ※画像クリックで拡大表示味マルジュウで作る芋煮
これらの調味料を使って今回作る麺料理は、山形(村山地方)スタイルの芋煮です。もちろん芋煮自体は麺料理ではないのですが、締めにうどんを入れ、さらにお好みでカレーうどんにする食べ方があるんです。
- サトイモ、牛肉、コンニャク、キノコ、ゴボウ、長ネギなどを適当に切る
- 味マルジュウと酒と砂糖で味付けした甘じょっぱい汁で煮る
以上です。
芋煮は地方によって味付けや具材が違うのですが、私が学生時代に食べ親しんだものを紹介しました。芋煮はシンプルな料理だからこそ、調味料のセレクトで味は変わります。そこで普通の醤油ではなく、だしの効いた味マルジュウを使うのがコツだと山形の友人が教えてくれたのです。材料の分量はお好みでどうぞ。
ペコリーノ・ロマーノ&四川風辣油入りの芋煮カレーうどん
芋煮の具をだいたい食べ終えたところで第二部のスタートです。
- 牛肉のだしが出ている汁にカレールーを適量溶かし、ゆでうどんを煮込む
- 器に盛り、お好みでガリガリとペコリーノ・ロマーノを削り掛け、ピョピョっと四川風辣油を垂らして完成
この締めのカレーうどんがうまいんだ。こちらも分量はお好みで。
もはやどこの国の料理か全く分からなくなりましたが、チーズのコクと辣油の刺激が加わって、ただでさえうまい芋煮カレーうどんが大幅にレベルアップ。芋煮会に誘われたときは、ペコリーノ・ロマーノと四川辣油を忍ばせて、締めのカレーうどんが出てきたときに差し出すと、ちょっとした人気者になれるかもしれません。
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nanoha3の推し調味料:自宅鮨が格段にうまくなる相棒
左からすし酢(すきやばし次郎)、魯山人醤油(湯浅醤油)、雲丹
すきやばし次郎の酢は非常に酸味の強い、ドライな酢です。他の酢にありがちな雑味や甘さ、はたまた旨さがほとんどありません。比較的フラットな酢として使われている千鳥酢ほどまったり柔らかいわけでもなく、ピシっとした味筋です(好みによっては、最近では鮨屋で使われなくなった砂糖が必要になるほどです)。
言うなれば美しい酸味のみを料理に付け足してくれる調味料で、それにより「お米の味わい」を引き立たせる、コントラストのマリアージュをします。購入は公式サイトなどから可能です。
2.魯山人(湯浅醤油)
醤油は沼なので、まだあまり探索できていないのですが、現状選んでいるのは湯浅醤油さんの魯山人醤油です。醤油自体の味わいとしては、味が深く旨味が強いです。この醤油自体がかなり美味しく、そして濃さをやや感じさせる強さがあるため、ほどよく強いネタを合わせる必要があります。
和食は繊細だとよく言われますが、実のところ食材を良くすればするほど、味わいが強くなります。例えば回転寿司の海老は、ほんわかとした味わいですが、いい車海老は甲殻のニュアンスをより強く主張しながらも柔らかい味わいです。カルピスを1:4で作るか、1:2で作ってちょっとレモン垂らすかといったような……?
そしていい食材は基本的に味の強さと繊細さを合わせ持つため、そこに調味料の味を調和させる場合は、その調味料にも強さが必要です。いい昆布だしには強めの塩が必要なのと同様に、いいネタには強い醤油が必要です。お鮨屋さんでは煮切り醤油を作っていますが、そこまで手を出せていないのと、十分美味しいのでこの醤油を愛用しています。
いいシャリで鮨を握るとふんわりパラリとした口溶けになるため、醤油皿を使って醤油をつけるとそこで鮨が分解しがちです。そのため、刷毛を使ってネタの上に醤油を塗るのがおすすめです。
3.雲丹
調味料とは何でしょうか。大辞林第三版には「飲食物の味をととのえ、よい味にするための材料。塩・砂糖・醬油・酢など」と記載があります。であれば、いろいろな食材に使うことができ、その食材を美味しくすることができるもののことを、調味料と呼んでも差し支えはないのではないでしょうか……?? (ツッコミの声も聞こえてきそうですが)
というわけで、雲丹は調味料です。素材に要素を足し、新しい味を作るマリアージュです。牛肉、烏賊(イカ)、まぐろ大トロ、伊勢海老、そうめん、しゃぶしゃぶ、卵かけごはんなど、最近はさまざまな食材に雲丹が使われて美味しいと評判です。
雲丹は馬糞雲丹(赤)と紫雲丹(白)があります。馬糞は味わいが濃く、ぎゅっと美味しさが詰まっているので、味わいのアクセント付けに最適です。紫はふんわりとした繊細な味わいの中に広く旨味があり、溶けます。素材に寄り添いながら味わいを足す使い方に向いています。最上級のものは非常に大きいです(鶏卵の7割くらい)。
~2万円程度の価格帯では馬糞の方がおすすめで、予算が3万円以上あり仕入れルートを持っているのなら紫雲丹がいいです。ネットであれば塩水雲丹(馬糞)を、豊洲等市場(神奈辰/カナタツさんがお勧め)であれば箱雲丹を買うのがおすすめです。ちょうどこれから、7~8月は馬糞が旬なので、ぜひお試し下さい。
推し調味料を使ったレシピ
「烏賊(イカ)雲丹」「牛雲丹」「雲丹そうめん」
(左)烏賊雲丹 (中央)雲丹そうめん (右)牛雲丹 ※画像クリックで拡大表示烏賊雲丹
- お米(新米は避ける)を1合研ぎ、すぐにザルにあげて15分置く
- 通常の85%の水分量で炊き、炊き上がりと同時にご飯をかき混ぜて15分寝かせる
- ご飯を飯台に移し、グラニュー糖1gと、このすし酢を30ml振りかけて混ぜると、美味しいシャリの完成
- 白烏賊を数日寝かせて、烏賊そうめん状にして握り、その上に雲丹を載せ、ポン酢を垂らす。ポン酢はMILDポン酢がおすすめ
雲丹そうめん
- いい昆布だしを用意し、魯山人醤油を数滴垂らして味をととのえる。そうめんを茹でて、上から雲丹を載せる
牛雲丹
- 56度で低温調理した牛三角バラを極薄切りにして握り、上に雲丹を載せて魯山人醤油を垂らす
紹介した調味料を使えば、自宅でも贅沢な鮨を味わえます。
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小林銅蟲の推し調味料:本能に訴えかける料理をより暴力的に
左から有機ゆず果汁(光食品)、ハラペーニョソース(タバスコ(R))、トリュフパウダー(サバティーノ)
人工的な香りがせず、まんまリアルのゆずっぽいと思います。ゆずの香りと酸味が欲しいけどゆずを調達して絞るのがだるいシーンはわりとあり、またゆず汁を使うとだいたいゴージャスになります。ゆず汁界隈はいろいろあるので全部試したわけではありませんが、これはなんかあったので買って使ってみたら良かったので継続してご利用しています。
2.ハラペーニョソース(タバスコ(R))
タバスコです。ただしちょっと青みのある香りがあります。だからなんなのかというと、肉、とくに牛肉と相性がいいです。チンジャオロースがピーマン入っててうまいというのと同系統の理屈です。これを大量にぶっかけるとみんな大好きメキシコです。行ったことはありませんが。辛さはそこまでめちゃくちゃではないと思います。普通。
3.トリュフパウダー(サバティーノ)
これは自宅鮨でおなじみのnanoha3さんに教えてもらった物体で、要するにトリュフ粉です。それだけなのですが、香りの強さがすごい。狂っている。トリュフとか嗅いだことないしわかんねーよ、という人にも蓋を開けて嗅がせたら「げっ」となると思います。香りの質もそこまでケミカルだと思わないし、使うと明確に料理の質(暴力度)が変化して面白いです。強烈なので使う量が少なくて済むのもいい。
推し調味料を使ったレシピ
「大水炊き展」「牛肉切れ端スープ」「牛ヒレ肉ロッシーニ風的な」
有機ゆず果汁を使った「大水炊き展」
- 切った白菜を少なめの水で茹でる
- 切った鶏もも肉をたくさん入れる
- 水加減をひたひた程度に調整する
- 沸いたらアクをおおまかに取り15分強火で煮立てる
- 取り分けて塩とゆず果汁で食う
ハラペーニョソースを使った「牛肉切れ端スープ」
- 牛肉の切れ端とかスジとか内蔵とか、とにかく煮てよさそうなものをよく煮る
- 浮いている脂を取り除く
- 塩コショウとレモン汁、ハラペーニョソースで味を整えて食う
トリュフパウダーを使った「牛ヒレ肉ロッシーニ風的な」
- 牛ヒレのブロックをがんばって焼く(むずい)
- フォアグラをがんばって焼く(むずい)
- 塩コショウとバルサミコで味を決めて、トリュフゼストをぶちまける
分量とかは各自やってください。
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<テッパン編>毎日の食卓でマネしたい、本格料理家たちの調味料はこちらから
今回紹介した商品
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