〜アツい戦いの火ぶたが、今、切られるッ……!!〜
こんにちは、それどこ編集部です。そんなわけで今回は料理対決をやっていきましょう。対戦するのは、「それどこ」料理記事でたびたびご登場いただいているこのお二人!
餃子会や低温調理の記事でおなじみ! 作る料理も過程も食材も写真もすべてが美しい!! 美しさの圧倒的暴力に私たちはひれ伏すしかない!!!
\赤コーナー! ぶぅうううううううちねこおおおおおおおおおお〜〜〜〜ッッッ!!!!/
はい。
\青コーナー! こおおおおばやしいいいどうむうううううううう〜〜〜〜ッッッ!!!!/
完成形の見た目や過程の違いはあれど、使う食材や豪快さなど、どこか共通点があるぶち猫さんと小林銅蟲さんの料理。本記事は、どちらも大好きなそれどこ編集部が興味本位でお二人を戦わせてみました、という企画です。
今回の料理対決のルール
料理対決に先立ち、お二人には以下のルールをお伝えしました。
- 「夏バテを吹き飛ばすメニュー」というテーマのもと、それぞれ自由に料理を作ってもらう
- 予算は1万円。予算内に収まれば、品数などの指定は特になし
- 制限時間は1時間。ただし「事前に仕込んだもの」を一品だけ持ち込んでOK
- 5人の審査員がそれぞれの料理を食べ、勝敗をジャッジする
低温調理や手作り調味料など創意工夫を凝らした料理を作られるお二人なので、これまた興味本位で「持ち込み」のルールを設けてみたところ……。
- 今回は、最近導入した家庭用の小野式製麺機を使って、自家製麺を作りました。「焔神(えんじん)」というかっこいい名前の中華麺用粉をベースに、添加したのは塩、かんすいと水のみ。加水率は38%です。タレに絡みやすいよう少し太めに仕上げて、2日ほど寝かせました。
- 中華料理のベースになるスープ的なものです。豚ひき肉2kgと鶏ひき肉2kgとねぎの青い部分としょうがのスライスを静かに3時間くらい煮て濾(こ)しました。ひき肉の量については、大は小を兼ねるということでいくら濃いスープが取れても薄めればいいので困らないです。薄めないですけど。
うん、期待通りです。
いよいよ料理対決当日! 豪華審査員が集結
今回の勝負は、関東近郊の料理スタジオで実施しました。写真から伝わる通り、とてもきれいな料理スタジオのため、いわゆるパルみはやや減少気味ですが、諸々いつも通りですのでご安心ください。
そして、この料理対決の行方を見守ろうと、ぶち猫さん、小林銅蟲さんと親交の深い5人の審査員が駆け付けてくれました!
- 「日本一のニート」ことphaさん。小林銅蟲さんとはギークハウスの仲間で、料理もしょっちゅう食べているとのこと。ぶち猫さんの料理を食べるのは初めて。
- ブログ「マンガ食堂」の梅本ゆうこさん。某テレビ番組で小林銅蟲さんのマンガの料理を再現したほか、ぶち猫さんがたびたび催す「料理会」にも参加経験あり。それどこでも連載中。
- 宝島社「このマンガがすごい!」の編集長、薗部真一さん。小林銅蟲さん、ぶち猫さん双方とお付き合いがあるが、小林銅蟲さんの料理を食べるのは今回が初めて。
- マンガ「めしにしましょう」の担当編集者で、イブニング編集部のIさん。ぶち猫さんとは初対面だが、小林銅蟲さんの料理は食べたことがある。ところで『めしにしましょう』は7月に3巻が発売されました。
- ライターの玉置豊さん。お二人それぞれと一緒に料理したことがあるという稀有な方。製麺好きで、ぶち猫さんの製麺機は玉置さんから買い取ったものだそう。著書『捕まえて、食べる』絶賛発売中!
審査員のみなさまにはテーマとルールのみ伝えており、何が出来上がるのかはまったく知らない状態(読者のみなさまにも内緒ですので、これからの調理過程をお楽しみください)。某ビストロ◯マップのようなものとご理解ください。
果たして豪華な審査員たちの舌をうならせることはできるか……!? お二人が当日用意した食材はこちらです。
<本日の材料:ぶち猫さん>
事前に仕込んだ中華麺をはじめ、骨付きのラム肉、アメーラトマトや島オクラなどの夏野菜、各種スパイスといった材料がズラリ。ちなみに真ん中で煌々と輝く夕張メロンは、「お中元でもらって冷蔵庫(魔窟)にあったので、おまけで持ってきました」とのことで予算外。小林銅蟲さんが「ずるい」と言っていました。
<本日の材料:小林銅蟲さん>
そんな小林銅蟲さんが用意したのは、大量のハマグリ(5パック)。そしてジップロックに入っているのは、2匹の金目鯛。あとはトマト、パクチー、米など。事前に仕込んだスープが後ろで輝いています。
【楽天市場】 ハマグリの検索結果
【楽天市場】 金目鯛の検索結果
果たしてこの材料からどんな料理ができるのか。料理対決、いよいよスタートです!
\オーダー! 夏バテを吹き飛ばすメニュー!!/
【1】まずは下ごしらえ
- まずは、持ち込みの麺に合わせる具の下ごしらえ。
きゅうりは、水っぽくなりやすい種部分をスプーンでこそいだ後にスライスし、塩もみをして、醤油、ごま油であえます。島オクラは、塩もみした後に熱湯でさっとゆで、ミョウガはスライスして水にさらす。トマトは食感をよくするために湯むき(熱湯に20秒ほどつけてからすぐ冷やすと皮がつるりとむける)してからスライス。日進のホワイトハムは短冊切りにして、全て冷蔵庫で冷やしておきます。
- 全体の工程としては用意したスープにハマグリと金目鯛の出汁をさらに積んで、それで粥を炊いた的な感じです。包丁と鍋の工程に分かれて、それが同時進行で一人でやるもんだから鍋のことを絶対忘れます。なのでハマグリも金目鯛も思い出した頃にはガンガン煮立ってて風味がいまいちですが味がバカみたいに濃いのでオーライというかなんというか。
【2】肉は焼く、魚はさばく
- メインの骨付きラム(ラムラック)は、室温に戻した後、表面に切れ目を入れて塩を強めにふってから、フライパンでソテーします。表面に焦げ目がついたら、ホールのナツメグをゼスターグレーター(スパイス削り)でたっぷりと削りかけ、200度に予熱したオーブンで10分焼き、温度を160度に下げてさらに10分焼きます。
- 金目鯛は魚屋で価格と大きさが手頃だったので買いました。なにより対決的に見栄えがいい。アホみたいに暑くて、でも事前調理枠が埋まってるから先にさばけないし、とにかく痛まないよう入念に冷却運搬しました。三枚おろしがヘタなので玉置さん(多分うまい)にガン見されて胃が痛くなったし、ウロコ取りをぶっ刺して豪快に身がもげた。
【3】夕張メロンとハマグリが「汁」に
- よく熟れた夕張メロンの種を取り出し、茶こしで果汁を搾り取ります。果肉部分は皮を傷つけないようにスプーンでくりぬいて、ハンドミキサーでジュース状にした後、搾り取った果汁と合わせて皮の中に戻して冷やします。
- ハマグリを当日に買い込んで、そういえば砂出しどうするんだみたいになって、ググったらハマグリは砂あんまり噛まないから大丈夫的なことが書いてあったのでそういうことにしようと思いました。砂は入ってなくてよかった。人生で一番貝をむくのが速かったし、耳の奥で変な音がした。
【4】特製スパイスを仕込む、ひたすら出汁を取る
- ラムラックのローストに添える薬味を作ります。フライパンに、刻んだナッツ、干し海老、ホールのクミン、塩を入れて、香りが立つまで弱火で温めます。火を止めてから、砕いたフライドガーリック、チリペッパー、ミルで削った花椒(かしょう)を加えます。
- 魚のアラは露骨な出汁がでるのでこういうとき重宝します。あと見栄えがする。煮ると崩壊するのであらかじめ水切りネットで縛ってから投入すると取り出す時ラクです。アクもわりと取ってくれます。そのまま粗熱を取って冷凍してしまうこともできるので、冷凍庫に大量にそういうのがあります。米をといだかどうかは記憶から消えました。
【5】かき混ぜられるタレ、刻まれる金目鯛
- 麺に添えるタレは、信州みそ、甜麺醤、練りごま、醤油、米酢、すりごま、砂糖、ごま油などを適当に混ぜ合わせて作ります。ごま系を多めに入れ、米酢で酸味を付けると、食欲をそそる味わいになります。
- 金目鯛の身に熱湯をかけていい感じにします。熱湯がまな板に残ると身まで煮えてしまうので、まな板を傾けてから行うんですがそれは完全に忘れました。皮目が熱で変性したらただちに氷水に入れて急冷しますが氷なんてものはないので水です。こういう細かいことが雑になり積み重なっていくのがよくないですね。いつもですが。
【6】麺をゆでる、米を潰す
- 自家製麺はたっぷりのお湯でゆでます。ゆで時間は麺の水分量や太さによって変わるので、麺の変化を目視しつつ、ときどき一本食べてみてゆで上がりを決めます。ゆで上がったら、水にさらしてからごま油を絡め、麺同士がくっつくのを防ぎます。
- 汁が濃いとかなんとかいろいろあり、今回は米をかき混ぜないと焦げます。もっとこう丁寧な粥の作り方があるけど無理なので、米を20分煮たらハンドブレンダーで粉砕していきますが、やりすぎると完全に液になって飲むことになります。最後ちょっと焦げてやばかったけど誰も気付かなかったのでシカトしました。
【7】そろそろタイムアップ!
- 焼き上がったラムラックは、温かい場所(一度扉を開けて熱気を逃がしたオーブンの中など)で10分ほど休ませてから切り分けます。骨が多いので、包丁とあわせてキッチンばさみを駆使するとスムーズに切れます。
- 予算上限がキツかった(それで干し貝柱は半分にした)のでパクチーは激安のやつ買いました。トマトを入れたのは中国のサイト見てたらハマグリとトマトの組み合わせがあって、夏っぽくていいなということで。トマトの湯むきしたことなくて意味不明になりました。予熱で金目鯛をレアに仕上げて提供したかったのでボウルに金目鯛入れて粥を注ぎました。
\タイムアップ!!/
ここで制限時間が来てしまいました! 果たしてお二人が作ったのはどんな「夏バテを吹き飛ばすメニュー」なのか。いよいよ審査タイムです!
【先攻】小林銅蟲さん
小林銅蟲さんが作ったのは……。
「中華粥」です! 豚肉、ハマグリ、金目鯛の出汁がこれでもかと溶け込んだパンチのある一品。夏バテ対策メニューということで、塩分も強めです。
作った料理のプレゼンもします。
記念撮影も忘れずに。それでは\いただきまーす!/
5人全員が「強い」「強い」「強い」「強い」「強い」と、みんな同じ感想しか言ってくれません。それくらい「強い」中華粥。
あと、写真では伝わりづらいですが、あの寸胴鍋で作った中華粥をほぼ5人で分けているので、一人頭の量がものすごいです。食べても食べても減らないので、いったん中華粥は下げて、後攻のぶち猫さんの料理を出しました。
【後攻】ぶち猫さん
後攻のぶち猫さんは、なんと三品も用意!
一品目。審査員の目の前にスッと登場する、夕張メロン。
果汁がたっぷり入ったメロンの器にスパークリングワインを注ぎ、冷凍庫でとろみがつくまで冷やした山椒や柚子の香りのするジン「NIKKA COFFEY GIN」を合わせます。
それぞれの器に注いで……「夕張メロンのスパークリングカクテル」の完成です。ぶち猫さんいわく「小林銅蟲先生が対戦相手ということで、叶姉妹を意識してインスタ映えするビジュアルを目指しました」とのこと。
まさかの食前酒の登場に、驚きを隠せない審査員たち。そして口に含むと広がる、夕張メロンの芳醇な香り、濃厚な甘み。
「これ、ものすごくいいメロンでは……」とビクビクしていました。
二品目は「ラムラックのスパイシーロースト」。フライパンとオーブンを使ってミディアムレアに焼き上げたラムラックに、クミン、ガーリックや花椒が効いたチップをたっぷり振りかけています。柔らかいラムにピリ辛でスパイシーなチップが合わさり、食欲をそそる一品です。
締めに登場したのが「夏野菜たっぷり胡麻ダレまぜそば」。自家製麺に香ばしい胡麻ダレを絡めながらいただきます。
夏野菜とてっぺんに添えた卵黄から、たっぷり栄養を摂取できる一皿。審査員のみなさまは、ぶち猫さんの勧めで辣油をかけたり、ラムラックのローストに添えたスパイスのチップをかけたりと、アレンジを楽しみながら食べていました。
自家製麺はツルツルで口当たりがよく、製麺マスターの玉置さんも「これはいい麺」と太鼓判。小林銅蟲さんは「生卵はやりすぎ」とライバルをたたえていました。
勝敗はいかに!?
残っていた中華粥も食べ終え、いよいよ審査タイム。しかし、どちらもインパクトがあっただけに、なかなか勝者を決められない様子。写真からも伝わると思いますが、リアルでみなさん「う〜〜〜〜〜〜ん」とうなってました。
キリがないので、テンカウントののち、より「夏バテを吹き飛ばせそう」と感じた方の札を上げてもらうことにしました。
10……9……8……7……6……5……4……3……2……1……!
「それでは、札をお上げください!!」
\ジャン!/
\マジか〜!/
というわけで、小林銅蟲さん3、ぶち猫さん2で、今回は小林銅蟲さんの勝利となりました!
審査員のみなさまにお話を伺ってみました。
小林銅蟲さんの札を上げた方々
- ぶち猫さんの料理もすごくおいしくて、とくに夕張メロンが最高だったんですが、金目鯛とハマグリを一皿で一緒に食べることはないなと……。元気になりました(薗部さん)
- 私、いまリアル夏バテしているので、その視点から考えて「より夏バテを吹き飛ばせそう」なのは小林さんの料理かなと思いました。ホスピタリティは断然、ぶち猫さんの方が上です(イブニング編集部・Iさん)
- 基本みなさんと同じ意見なのですが……。夏バテしそうなときは何皿も食べられないと思うので、一皿で食べられるお粥かなと思いました。あと、ぶち猫さんの料理を普段から食べていたら夏バテしないと思います(玉置さん)
ぶち猫さんの札を上げた方々
- 両方ともおいしかったんですが、個人的に単品でドン!より、少しずつちょっと食べるほうが好きなので、ぶち猫さんの札を上げました(梅本さん)
- 銅蟲の料理は食べ切るのにパワーがいる。ぶち猫さんの料理はさっぱりしていて、バランスもとてもよかったです(phaさん)
続いて、対戦したお二人に本日の感想をお伺いしたいと思います!
- 自宅以外のキッチンで一から調理するのがほぼ初めてだったので段取りに苦労しましたが、思っていたよりも善戦できてよかったです。「夏バテ解消」というお題に対して、栄養満点のお粥という解を出すセンスはさすが小林先生と感服しました。
調理中、面白い事態が発生するたび歓声が上がっていましたが、作業で見られずもどかしい思いでいっぱいでした。次回は審査員のポジションで参加して、小林先生の調理をじっくりと観察したいです。 - 戦略としては、ぶち猫さんが絶対気の利いたものをしかも複数種用意するはずなので、バトル料理マンガ的には粥みたいなシンプルで、かつ狂っているものをぶつけるのがよかろう的な感じです。
当初は粥を冬瓜に入れて蒸すみたいなのを考えていましたが試作したら超無理だったのでやめて金目鯛になりました。ルールがマジきつくて頭がぶっ壊れていたので、よくなったのは偶然という印象です。料理の鉄人は本当に鉄人ということがよくわかります。
薗部さんが味濃いのめっちゃ喜んだ一方でphaが味が強すぎと評価したのがバランス取れててよかったんじゃないでしょうか。というかphaが夏に動いていてびっくりした。
以上をもちまして「ぶち猫VS小林銅蟲 炎の料理対決」を終了したいと思います!
最後は「友情」「努力」「勝利」的なアツい握手を交わしました。
余談
会場にあったホワイトボードで、ライブペインティングをする様子です。
撮影協力:odekake kitchen
対戦者:ぶち猫 (id:buchineko_okawari)
ぶち猫二匹と暮らしています。趣味は料理、お菓子作りと写真。主に食べ物にまつわるあれこれをブログに綴ったりもしています。猫のイラストは金沢詩乃( @shinop_k)さんに依頼して描いていただきました。
ブログ:ぶち猫おかわり
対戦者:小林銅蟲 (id:negineesan)
1979年神奈川県生まれ。横浜市在住。漫画家。
著作「ねぎ姉さん」「さいはて」「寿司虚空編」「めしにしましょう」など、よくわかんない内容の作風で知られている。
ホームページ:http://negineesan.com/
Twitter:https://twitter.com/doom_k
ブログ:http://negineesan.hatenablog.com/
連載中:めしにしましょう|イブニング公式サイト - 講談社の青年漫画誌 / https://comic.pixiv.net/works/1218