こんにちは、玉置標本です。みなさん、きのこは好きですか。
私は年に数回きのこ狩りを楽しむくらいはきのこが好きなのですが、天然のきのこは毒があったり、険しい山を登らなければいけなかったり、虫が先に食べていたり、収穫のタイミングが合わなかったりで、売られているような立派なきのこと出逢うことは超大変(だからこその喜びがあるのですが)!
市販のきのこはほとんどが栽培です。冷静に考えると、安いし、きれいだし、間違いがないし、年中あるし、おいしいし、すごいんですよ!
ならば市販の栽培きのこをもっと知ることで、今以上に充実したきのこライフを楽しめるかもしれません。
今回きのこについて教えてくれるのは、きのこ問屋に長年勤めていた露木啓さん。私の友人でもあります。
露木さんいわく「市販きのこの味わいは、その色や大きさだけではなく、栽培方法や、生産者のこだわりによっても変わってきます。意外と広くて深いのが、栽培きのこの世界なんです!」とのこと。
露木さんには、きのこのプロという視点で
- 知っているとよりおいしい。身近な栽培きのこの知識
- 身近な栽培きのこのおいしい食べ方
- 希少だけどおいしいきのこ紹介&食べ方
- ディープな最近のきのこ流通事情
を教えてもらいます。
本日の講師:露木 啓(つゆき けい)さん
22歳できのこ問屋に就職し、昨年まで15年間営業マンとして活躍した。別業界に転職した今も、関東きのこの会というサイトを立ち上げて情報を発信中。
【きのこ もくじ】
【1】ややこしい! 4種類もある「シメジ」
スーパーなどでも見かけることの多い「シメジ」。そもそも現在「シメジ」として売られているきのこは4種類あるって知ってましたか?
- ブナシメジ
シメジの中で一番メジャーな存在。おすすめ調理法は唐揚げ。 - ホンシメジ
栽培が不可能だと思われていたが、近年可能になった。「香りマツタケ、味シメジ」はこれのこと。おすすめ調理法は網焼き、アヒージョ。 - ハタケシメジ
「大粒丹波シメジ」という商品名で売られる。おすすめ調理法はナムル、炒め物全般。 - ヒラタケシメジ(ヒラタケ)
ヒラタケをシメジの形に栽培したもの。分類上シメジの仲間ではない。おすすめ調理法は、汁物、鍋、すきやき。
それでは一つ一つ聞いてみましょう。
〈ブナシメジ〉意外なレシピ「唐揚げ」がうまい
ブナシメジ。二日酔いに良いとされるオルニチンをシジミの約7倍も含有しているとか
4種類のシメジの中で、スーパーで一番よく見かけるのはブナシメジです。
ブナシメジは万能食材。いろいろな料理に合いますが、あえて1つ選ぶなら唐揚げです。
衣はサクッとして、素材のブナシメジはほどよい柔らかさになります。味付きの衣と一緒に食べてもブナシメジの風味はハッキリと感じられます。
露木さんイチオシのブナシメジ料理は意外にも唐揚げ。塩、胡椒、醤油で軽く下味をつけて、小麦粉と片栗粉をまぶして揚げてみました。
さっそく作ってみましたが、外はサクサク、中はジューシーで、食べるほど旨味が舌に積み重なります。
ブナシメジを甘辛く炒めて白いご飯に混ぜてみました。安定のおいしさです。
〈ホンシメジ〉ジューシーさが魅力。「炭火焼き」がおいしい
スーパーなどでも目にすることが多くなった栽培種のホンシメジ。大黒様のお腹を思わせる軸の太さがすごい!
ホンシメジはぷりっぷりの食感が良く「網焼き」「天ぷら」「炒め物」「汁もの」など、いろいろな料理に合います。
加熱すると旨味を含んだ汁が出てきて、噛むとジューシー。なので炭火焼きにしたらおいしいと思います。
昔、ホンシメジを網焼きして食べるCMを見たことがあって、それがとても印象に残っています。
以前は栽培不可能と言われていた貴重なホンシメジが、まさかの量産栽培に成功して流通するようになりました。「大黒本しめじ」といったブランド名で売られています。
二つに割いて炭火でじっくりと焼き、旨味たっぷりの汁がジュワっとにじんできたところで醤油をタラリ。
「ホンシメジの栽培に成功してくれてありがとう!」と叫びたくなる味わいです。ちょっとだけ高いですが、天然物を採りに行く手間を考えれば格安。
〈ハタケシメジ〉鶏肉のような食感がおもしろい
ブナシメジよりも一回り大きなハタケシメジ
ハタケシメジは歯ごたえが良く、旨味もかなり強くて、栽培きのこの中では一番好きです。見かけたらぜひ試してみてほしい!
ハタケシメジという名前が耳慣れないかも知れませんが「大粒丹波しめじ」というブランド名などで販売されていますよ。
食感が鶏肉に似ているので英語では「フライドチキンマッシュルーム」と言います。
露木さんのイチオシ調理法はナムル。電子レンジでチンして、醤油、ごま油、塩で味付けするだけ。
どう料理してもおいしいきのこ。簡単ナムルも、好ましい野趣があって最高!
〈ヒラタケシメジ〉本当は「シメジ」じゃない!
そもそも、ヒラタケシメジはヒラタケというきのこをシメジのような形に栽培したものです。
それに「味しめじ」や「香りしめじ」というブランド名が付けられ、名称からヒラタケが抜けて「シメジ」と呼ばれるようになりました。つまり、まったくの別物なんです。
最近では本来の大きな形で「ヒラタケ」として売られていることが多いです。それでもまだヒラタケシメジを「シメジ」と呼ぶ人は多いので、買うときにはちょっと注意が必要ですね。
ややこしいですね。ヒラタケは分類上シメジの仲間ではないのだけど、慣習としてそう呼ばれることがある、と理解しました。
ちなみに、この記事の後半でさらに詳しく解説しています。
ヒラタケはよいダシが出るので汁物、鍋、炊き込みご飯などにするとよく合います。
特におすすめはホクトさんの「霜降りひらたけ」。きのこって、煮込むとグズグズになってしまうことが多いのですが、「霜降りひらたけ」は煮込んでも食感がよく保たれていておいしいんです。シコシコのプリップリ。また少しプラムや若いリンゴといった、フルーツを思わせる香りがします。
露木さんおすすめの調理法は、ホクトさんの「霜降りひらたけ」を使ってのすき焼きです。
存在感のあるヒラタケが牛肉の旨味をしっかり受け止めますね。こんなにおいしいならもっとたくさんヒラタケを入れればよかった!
【2】マイタケは黒だけじゃなくて白もあるって知ってましたか
天然しかなかった頃は超高級きのこだったマイタケも、栽培が可能になったことで手軽に食べられるようになりました。
天然のマイタケは山奥の巨木に生えるので、採るのはものすごく大変。ありがとう、人工栽培!
スーパーなどで売られているマイタケは、たいてい黒っぽいと思います。しかし、マイタケには白いものもあるんです。
- マイタケ
一般に出回っているのは黒っぽいもの。おすすめ調理法は揚げ餃子。 -
シロマイタケ
名前の通り真っ白なマイタケ。普通のマイタケの栽培時に偶然生まれたものをメーカーが培養した。おすすめ調理法はお吸い物。
マイタケは
- ビン型の菌床で栽培するタイプ
- ブロック型の菌床で栽培するタイプ
が市場に出回っています。
ビン型で栽培すると1株が100~130gくらいの小さい株になり、そのまま割らずにパックして販売できます。ブロック型は1株が400~600gくらいの大株になり、それを100gに割って販売していることが多いです。
どちらを使うかは好みによって分かれますが、私は大きく育てるブロック型の方が香りを強く感じるので好きです。
店先でビン型とブロック型を見分けるには、包装に着目してください。ブロック型はトレーに乗せてラップで包装されていることが多く、ビン型はトレーなしでの包装をされていることが多いです。
他に、天然に近い環境で育てた原木マイタケもあります。ダシも香りも強く人気ですが、一年で秋の3週間しか発生せず、市場にもほとんど出回りません。
〈マイタケ〉意外にも「揚げ餃子」にするとうまい
ブロック型の菌床で育てられたと思われるマイタケ
マイタケは炊き込みご飯や天ぷらといった定番料理もおいしいですが、揚げ餃子が忘れられない味。パリッとした皮とマイタケの食感がおもしろく、風味も強く感じます。
山形の生産者さんに教えてもらった芋煮も、牛肉のダシとマイタケやサトイモなどの旨味が効いたスープが絶品です!
露木さんのおすすめ調理法は揚げ餃子。小さめに手で裂いたマイタケをマヨネーズと和え、餃子の皮に包んで揚げます。
どうぞ想像してください。皮で包むことで封じ込められたマイタケの味と香りが、噛んだ瞬間に爆発する様子を!
今度は具を増やして、ベーコン、チーズ、ルッコラ、マイタケにしてみましょう。
具を欲張り過ぎたので二枚の皮で挟む形になりましたが、これもうまい! 揚げ餃子というか揚げピザですが。
芋煮も作ってみました。マイタケが持つ大地の風味がベストマッチ!
〈シロマイタケ〉白さが映える料理に使われる
ウエディングドレスのような純白のマイタケ
黒いマイタケはスープに入れると煮汁が黒っぽくなるのですが、これは旨味や栄養が染み出た証拠。
気にしない方は良いのですが、これを嫌う方もいますよね。白いマイタケならそのデメリットを克服できるので、お吸い物などに使ってあげるのがオススメ。天ぷらにしても美しく揚がりますよ。
生産量が少なく、こだわりのレストランのシェフなどに好まれる食材です。
炙ったタチウオの骨と昆布で出汁をとり、白いマイタケとお吸い物にしてみました。白さがお椀に映えます。
【3】おなじみの小さいナメコ、天然に近い大きなナメコ
ちょっと前までナメコといえば、パチンコ玉くらいの小さなものしか見かけませんでしたが、最近は天然に近い大きなものも売られています。
倒木にびっしりと生えた天然のナメコ
大きなナメコと小さなナメコについて聞いてみました。
〈足きりナメコ〉やっぱり定番「赤だしの味噌汁」
おなじみの足きりナメコ
他のきのこと同様に、炒めたりホイル焼きにしてもおいしいですが、やっぱり赤だしの味噌汁で食べるのが一番好きですね。
このタイプのナメコ、足きりされていて脱気した袋に入って売られていますよね。
ときどきこれをレトルトのような加熱済みの商品だと思う方もいますが、生鮮品です。必ず新鮮なうちに加熱して食べてください。
ぬめりに酸味が出ている場合もあるので、軽く水洗いしてから調理します。
豆味噌を使って赤だしの味噌汁にしてみました。いつもの合わせ味噌よりもナメコに合いますね。
〈大きいナメコ〉小さいタイプよりもぬめりマシマシ!
他のきのこと同じように、足がついたまま株採りされています
大きなナメコは、小さなサイズのナメコより4日くらい長く栽培して大きくした株採りタイプです。
生産者さんによってその大きさは違い、「ジャンボなめこ」「オッキーなめこ」「万能なめこ」など、個性的な名前がついていますので注目してみてください。
足切りナメコは収穫からパック詰めの過程で水洗いされているため、実は若干ぬめりが落ちています。ぬめりをたくさん味わいたいなら株採りタイプがオススメ。一見ぬめりがないように見えますが、加熱するとどんどん出てきますよ。
某アプリゲームの影響で子供の「好きなきのこアンケート」で1位になることもある人気のきのこなのですが、「お味噌汁以外の利用方法が分からない」という意見も。
大きいナメコなら天ぷらや鍋にも使いやすいし、レンコンと合わせてキンピラ風のおかずにしてもおいしいです。いろいろ試してみてください!
露木さんのおすすめはナメコとレンコンのきんぴらという意外な調理法。薄切りにしたレンコンをごま油と唐辛子で炒めて、ナメコを加えて全体に火が通ったら、酒、醤油、みりん、砂糖で甘辛く味付けしてみました。
煮詰まったナメコの旨味、ぬめりと歯ごたえが混然一体となった食感、これはぜひお試しください!
【4】マッシュルームは特性を知れば普通に使える
マッシュルームには、ブラウンマッシュルームとホワイトマッシュルームの2種類があります。なかなか日本では浸透していないきのこですが、特性を知っていれば普通に使えそうです。
- ブラウンマッシュルーム
味が強く香り高い。おすすめ調理法は味噌汁。 - ホワイトマッシュルーム
上品でまろやか。おすすめ調理法はポタージュ。
〈ブラウンマッシュルーム〉煮物や鍋にはこれ!
日本だとカサが開く前に収穫されたものが好まれるようです
ブラウンマッシュルームの特徴は、味が濃く香りが強いこと。ダシもよく出るので、シチューや煮物、スープに向いています。味噌汁に入れるのもおすすめ。
海外では「煮物や鍋をするなら、とりあえずマッシュルームを入れておけ!」と言われるほど、ダシのよく出る食材です。
人生初のマッシュルーム味噌汁です。
しっかりしたブラウンの旨味が味噌の風味と合う! 言われないとマッシュルームだとわからないほど溶け込んでいます。
ちなみにマッシュルームのヒダが黒くなっているのは、痛んでいる訳ではなく、しっかり成熟した証。
日本では「ヒダが黒い=痛んでいる」と思われてしまう事も多いですが、海外ではヒダが黒いマッシュルームの方がおいしいとされているくらいです。ただし、新鮮なものを選んでください。
〈ホワイトマッシュルーム〉まろやかで上品な味わい
ホワイトマッシュルームを私はカブと間違えたことがあります
ホワイトマッシュルームはまろやかで上品な味が特徴です。あっさりした料理にはホワイトの方が向いています。
国内ではエノキやブナシメジに比べて、まだまだ消費量が少ないのですが、世界に目を向けてみると一番食べられているきのこなんです!
きのこの中では珍しく生食も可能なので、鮮度の良い物はスライスしてサラダにも使えます。
ただし、シイタケやエノキなどの生食は、皮膚炎や食中毒の原因になることがあるので、絶対にやめてください!
露木さんおすすめの調理法はポタージュです。ホワイトマッシュルーム、タマネギ、ニンニク少々をたっぷりのバターで炒めて、牛乳を加えてミキサーにかけ、鍋に移して顆粒コンソメと塩で味付け。
作ってみると意外と簡単ですね。スッキリしつつ濃厚でクリーミー、とても贅沢な味がします。
定番料理のアヒージョを、左がホワイト、右がブラウンで作り分けてみました。鍋にオリーブオイルをたっぷりと入れ、真ん中をローズマリーで分割し、色違いのマッシュルームを入れて、エビ、ニンニクも加えてじっくり加熱します。
食べ比べると食感や風味が違いますね。
この油で作ったパスタがうまいんだ。
【5】まだまだある! レアなきのこを通販で取り寄せてみよう
ここまではスーパーなどで簡単に手に入る栽培きのこについて教えてもらいましたが、最近は珍しいきのこもいろいろと栽培されているようです。
詳しくは最後にまとめてお話を聞こうと思いますが、珍しいということはそれだけ生産者数も少ないということ。販売の難しさもあるようです。
ひとりのキノコ好きとしては、多少高くても珍しいきのこが手に入れられる状況が続いてほしいところ。がんばっている生産者さんを応援する意味も込めて、珍しくておいしいオススメのきのこを紹介していただきましょう! ネット通販で簡単にお取り寄せできるようですよ。
〈ジャンボマッシュルーム〉大きくなって味も香りも濃厚に
同じ生産者のマッシュルームとジャンボマッシュルーム。元々は同じきのこで、栽培期間が違うだけだそうです
まずジャンボマッシュルームなんてどうですか? 通常のマッシュルームを大きく育てたものです。
マッシュルームが小さい段階から、大きくなりそうな株をプロの目で見抜きます。そして、その周囲のマッシュルームを間引くことで、養分を一極集中させて大きなマッシュルームに育てるんです。そのため、通常サイズより栽培日数がかかり、生産効率は下がるんですよね。
大きさはメーカーによってさまざまですが、大きいものほど栽培日数がかかります。もちろん間引く手間も発生します。
しかし、その分栄養をたくさん蓄え、味も香りもずっと濃厚なマッシュルームができます。傘の裏のヒダは真っ黒ですが、ちゃんと成熟している証なので安心してください。
原宿のマッシュルーム料理専門店「マッシュルーム・トーキョー」で食べたステーキは本当においしかったです。
オーブンで焼いた豪快な料理で、カサの内側にマッシュルームから出た旨味のスープが溜まっていて、そこにオリーブオイルと黒コショウを少し掛けていただきます。濃厚過ぎる旨味にびっくりしました!
マッシュルームステーキを再現してみました。ジャンボマッシュルームをオーブンで焼き、オリーブオイルと黒コショウを少しかけます。
カサの裏に染み出たスープの量と味の濃さにびっくり。これぞきのこ好きのための料理ですね。
〈バイリング〉別名・陸のアワビ!
取り寄せたバイリング。恐竜の卵みたいです。ボリューム感がすごい!
バイリングもぜひ食べていただきたいきのこですね。
食感が良く、ほんのり甘みがあります。中国料理と相性抜群で、炒め物に使われるほか現地ではスープにされることも多いようです。調理中に型崩れしにくいのも特徴です。
バイリングはエリンギと同じヒラタケ属のきのこで、カサの裏側などもよく似ています。エリンギと同様にいろいろな料理に使っていただければと思います。
シコシコした食感がアワビと似ているため、別名「鮑茸(アワビタケ)」。他にも「白霊茸(ハクレイタケ)」や「雪嶺茸 (ゆきれいたけ)」など、生産者さんによって違うブランド名で販売されています。
露木さんおすすめの調理法はバターソテー。スライスしたバイリングをシンプルにバターで焼き、塩、コショウ、醤油で味付けします。
カサはブリンブリンで、軸に近づくとコリコリ。エリンギに似ているけれど繊維っぽさがなく、よりギュッと詰まっているので食べごたえがすごい!
ソーセージ、ニンジン、レンコン、大根などと一緒にコンソメで煮てみました。
煮込んでもブリンとしたままの食感、存在感が抜群です。
まずサイコロステーキを焼き、その脂を吸わせてオイスターソースで味付けして合わせてみました。
肉とバイリングを交互に食べると、箸が止まらないんですよ。
アワビタケという別名があるくらいなので、アワビのしゃぶしゃぶ風はどうでしょう。
昆布と干し貝柱のダシで海の成分を足したところ、ツルンとした舌触り、薄くてもコリコリの歯ごたえ、びっくりするくらいアワビっぽくなりました。アワビのシャブシャブを食べたことはありませんが……。
〈ハナビラタケ〉和洋中どんな料理にも合わせやすい
取り寄せたハナビラタケ。これだけ状態の良いものは天然だと一生見つけられないかも。見た目よりもずっとしっかりしています
高地に生えるハナビラタケも、美しくておいしい人気のきのこです。意外と硬質な手触りで、手で簡単に割ることができます。加熱しても柔らかくなり過ぎず、コリコリした食感が楽しめます。
生産者さんいわく、クセが無くて和洋中どんな料理にも合わせやすいきのこなので、あまり悩まずいろんな料理に使ってほしいとのこと。
ハナビラタケはβ-グルカンという成分が豊富なので、サプリや健康食品にも利用されています。
微妙に収穫時期から遅れていた天然のハナビラタケ。自然の中でベストのタイミングで出逢うのって本当に難しいんですよ!
露木さんおすすめの調理方法は醤油バターソテー。
花びら状の部分をバター醤油炒めにしたところ、コリコリかつ複雑な形状が歯と舌を大喜びさせました。
スープにしても煮崩れが全くなく、コリコリの食感とその形を保ったまま!
軸に近い塊の部分は、細切りにして牛肉、ピーマンと炒めてみました。これもまたうまいんですよ。
〈タモギタケ〉驚くほど鮮やかな黄色! ダシがうまいきのこ
驚くほど鮮やかなタモギタケ。粉石鹸を思い出させる爽やかな香りがします
鮮やかな見た目で、香りが良く、魚介のような上質のダシの出るおいしいきのこです。北海道で特に認知度が高いですね。
加熱すると鮮やかな黄色は乳白色に変わってしまいますが、「色が落ちるということは旨味や栄養がしっかり溶けだした証拠。そのくらいまで加熱した方がおいしいんですよ」というのが生産者さんの弁で、僕もそう思います。
ダシが出るので味噌汁がオススメ。歯ごたえもあるので、唐揚げ、バターソテー、シチューなど、いろいろな料理に利用できますよ!
露木さんおすすめ調理法は味噌汁。
色こそ抜けてしまいましたが、歯ごたえの良さと爽やかな香りが際立ちます。
バターで炒めると、滑らかなカサとシャクシャクする軸という二段構えの歯ごたえが楽しめます。食べれば食べるほど好きになる味!
バター炒めをちょっと高いレトルトのカルボナーラソースに加えたところ、独特の旨味と歯ごたえが加わって、ちょっとびっくりするくらいおいしくなりました。
〈キヌガサタケ〉レースをまとったきのこの女王
レース状のカサが美しいキヌガサタケ。似た名前のアミガサタケは全然違うきのこなのでご注意を!
キヌガサタケもおもしろいきのこですよ。
昔の貴婦人が外出する際に差しかけた絹張りの傘や仏像の天蓋を、衣笠(きぬがさ)と言います。キヌガサタケには、レースのようなカサがあり、そこからこう名付けられました。その美しい姿から「きのこの女王」と呼ばれています。
きのこといえば、乾物も魅力の一つ。キヌガサタケも流通しているのはほとんどが乾物です。
スポンジのような軸部とレースのカサを主に食材として使います。乾燥キヌガサタケは30分ほど水に浸け、流水で洗ってから調理してください。
中国料理ではスープや鍋の具に使われることが多いですね。
軸はスープをよく含みシャキシャキとした独特の食感です。中が空洞なので詰め物に利用することもありますよ。
レース部分は同じくスープに入れたり、食材を包む飾りに使ったりします。
露木さんによると、中国料理ではスープや鍋の具に使われることが多いとのこと。鶏ガラスープでトウガンと煮てみました。
軸はザクザクとした噛み応えが特徴的で、スープの染み込みは抜群。カサの部分は油揚げの裏側みたいな食感です。
せっかくなので空洞部分にアスパラガスを突っ込んで、生姜を効かせた中華スープと挽肉で煮込んでみます。仕上げにごま油とコショウを掛けて完成。
最初は使いこなせるか不安でしたが、意外と丈夫で調理しやすい食材ですね。
キヌガサタケの網目状の繊維と、アスパラガスの縦に走る繊維の組み合わせが最高の食感を生み出しました。そして旨味が溶け込んだスープがうまい!
【6】奥が深いきのこの世界。最近の流通事情は?
身近なもの、ちょっと珍しいもの、ここまでいろいろなきのこを紹介してきましたが、そもそも以前と比べてスーパーなどで売られているきのこの種類が増えているような気がします。
シメジの栽培事情
まずはこの記事の冒頭でも取り上げた「シメジ」。4種類あることは紹介しましたが、それぞれに栽培事情が違うようです。
すでに説明したとおり、「シメジ」として流通している栽培きのこは上の写真の4種類。
この中では「ヒラタケシメジ」が最初に栽培されました。これも先ほど説明しましたが、ヒラタケという別のきのこをシメジ状に栽培したものです。
その後、栽培しやすく日持ちも良い「ブナシメジ」が登場します。ヒラタケシメジを栽培していた農家さんが次々とブナシメジに切り替え、今では生産量が日本で2番目に多いきのこにまでなりました。
天然のブナシメジには独特の苦みがあり、昔は栽培されたものもちょっと苦かったのですが、最近は品種改良によってほとんど苦みを感じなくなりました。ちなみに、真っ白いホワイトブナジメジ(ブナピー)も、品種改良されたブナシメジの一種です。
きのこ栽培は天然物に近づけることこそが最大の目標かと思いきや、品種改良で天然とは違う魅力を引き出すことで、栽培品種ならではのブナシメジとして人気が出たとは、意外です。
ホンシメジは「栽培不可能と言われていたのにまさかの量産栽培に成功した」と先ほど伺いましたが、これはなぜでしょう?
きのこの育ち方から説明しますね。
そもそもきのこというのは、育ち方で大きく3つに分類できます。
-
木材腐朽菌……木を分解することで育つきのこ。シイタケ・ヒラタケ・エノキ・マイタケ・ナメコ・ハタケシメジなど
-
菌根菌……木と共生関係を持ち、土から生えるきのこ。マツタケ・ホンシメジ・コウタケなど
-
腐生菌……落ち葉や堆肥などで育つきのこ。マッシュルームなど
多くの木材腐朽菌と腐生菌は人工栽培できますが、菌根菌はとても難しく、現在も人工栽培にほとんど成功していません。
だから菌根菌のマツタケは天然物しか流通せず値段が高いんです。
松林で天然のホンシメジを見つけたことがあります。おそらく一生に一度の幸運でした
ホンシメジは菌根菌(土から生えるきのこ)だから栽培が難しいんですね。では、なぜ栽培ができるようになったのでしょうか。
近年、ホンシメジの中に、人工栽培できる木材腐朽菌(木を分解して育つきのこ)の性質を持った菌が発見されました。そのため他の木材腐朽菌と同様に栽培が可能となりました。
ちなみに、残る1種類のハタケシメジは人工栽培できる木材腐朽菌のようですが、一見、土から生えている菌根菌のように見えます。
一見すると土から生えているようにしか見えないハタケシメジ
ハタケシメジは土に生えているように見えますね。しかし、実際は地中に埋まっている木材を栄養にしている木材腐植菌です。
そのため、昔から栽培は可能なんです。
珍しいきのこを売るにはセンスが必要
シメジ以外にも、近年はお店で珍しいきのこをよく見るようになった気がします。これも、珍しいきのこの栽培が成功しているからでしょうか。
実は栽培自体は昔から行われていたものが多いです。
最近は生産者さんたちや関係者の方々が、ホームページやSNS等の媒体を通じて情報発信しやすくなっています。
知名度が上がると、テレビなどにとりあげられ、販売するお店が増えていきます。それで目にすることが増えてきたのだと思います。
発生から一晩と持たずに傷んでしまうササクレヒトヨタケ。こちらもだいぶ前から生産されているそうです
ただし、生産者側からすると、珍しいきのこを売っていくにはセンスが必要です。一時的な引き合いはよくあるんです。
スーパーが「テレビで取り上げられたのを見たから今だけ扱いたい」と言ってきたり、大手外食チェーンが「秋の限定メニューに使いたい」と言ってきたり……。でもそのために生産体制を整えてしまうと、大量の在庫を抱えてしまうことになるんです。
必要なのは、通年同じくらいの量で売れる仕組みです。例えば定期宅配や、野菜に強いネット通販などに卸せる生産者さんでないと珍しいきのこを継続して生産するのは難しいと思います。
もちろん、消費者の立場ではネット通販などで変わったきのこを買うことも、生産者さんを支えることにはなりますね。
なるほど! 今回の企画できのこが持つ奥深さが分かったので、定番きのこに加えて個性豊かなきのこたちも、もっと積極的に活用していこうと思います。
🍄
露木さんからアドバイスをもらいつつ、毎日のようにさまざまなきのこを食べまくったのですが、見た目も食感も違うので全く飽きませんでした。
そしてきのこの素晴らしいところは、冷凍しても味があまり変わらないことと、そして組み合わせることで新たな味が生まれること。
調理で残ったきのこを冷凍しておき、最後にまとめて「記事の締めのきのこ鍋」にしたところ、恐るべき旨味のスープとなりました!
きのこって楽しいですね!
山へ行ってきのこ狩りをするのは大変ですが、スーパーやネット通販でおいしそうなきのこを探すのも広義のきのこ狩り……と言えるかもしれません。
食べ慣れた定番きのこを変わった料理法で食べてみたり、今まで買ったことのないきのこに手を伸ばしてみてはいかがでしょうか。ちょっとの冒険で意外なおいしさに出逢えますよ!
ソレドコでTwitterやってます!
今回紹介した商品
「ブナシメジ」を詳しく見る
「本しめじ」を詳しく見る
「大黒本シメジ」を詳しく見る
「ハタケシメジ」を詳しく見る
「大粒丹波しめじ」を詳しく見る
「ヒラタケ」を詳しく見る
「霜降りひらたけ」を詳しく見る
「マイタケ」を詳しく見る
「シロマイタケ」を詳しく見る
「ナメコ」を詳しく見る
「ジャンボナメコ」を詳しく見る
「ブラウンマッシュルーム」を詳しく見る
「ホワイトマッシュルーム」を詳しく見る
「ジャンボマッシュルーム」を詳しく見る
「バイリング」を詳しく見る
「ハナビラタケ」を詳しく見る
「タモギタケ」を詳しく見る
「キヌガサタケ」を詳しく見る