ここ数年で定番となった「クラフトビール」について、識者のおすすめをもとにランキング形式で紹介します。
どれも通販で購入できるので、気になった種類を飲み比べたり、ギフトとして贈ったりするのにもぴったりです。
今回、ランキング以外の部分でお話をうかがったのは、2008年からクラフトビールを愛好し始め、ビールに関する書籍などコンテンツを多く手掛けている長谷川小二郎さん。
クラフトビールについてもっと詳しくなれる解説をはじめ、オンラインで買える長谷川さんおすすめのクラフトビールもまとめています!
教えてくれた人:長谷川小二郎
執筆、編集、英日翻訳。国内唯一の独立系・定期刊行のビール専門ZINE『ビールの放課後』発行人。クラフトビア・アソシエーション、日本ベルギービール・プロフェッショナル協会の講師。日本ビール検定1級は7回連続合格、2022、2023年は首席合格。ビール専門ウェブメディア「My CRAFT BEER」に外部識者としても寄稿。著書・訳書に『今飲むべき最高のクラフトビール100』『ミッケラーの「ビールのほん」』など。
- そもそも、クラフトビールとは?
- クラフトビールの分類
- 識者がおすすめするクラフトビール12選
- スーパーやコンビニでも買える定番のクラフトビール3選
- ギフトやお試しにもぴったり。クラフトビールの飲み比べセット3選
- ビールには「友人をつくる」力がある
そもそも、クラフトビールとは?
Q.そもそもクラフトビールの定義とは何でしょうか?
Q. 味や作り方で定義されているわけではないんですね。
Q.最近、大手メーカーでも、名前やパッケージがクラフトビール風のビールを出していますが、そういったビールもクラフトビールのひとつですか?
クラフトビールの分類
Q. クラフトビールの分類と、それぞれの特徴について教えてください。
前述の通り、クラフトビールとは経営のあり方に結び付いている概念なので、「ビール」の製法や味わいの分類とは違いがありません。ですので、ビールの分類を説明しますね。
ビールは、酵母の種類・発酵方法によって「ラガー」「エール」「自然発酵」の3つに大きく分けられます。
ラガーとエールの特徴は、例えば10年ほど前までクラフトブルワーだったヤッホーブルーイングの井手直行社長が著書『ぷしゅ よなよなエールがお世話になります』の中でうまい表現をしています。
ラガー酵母はひとことで表すと「クールなヤツ」で、比較的低温・長めの発酵をさせ、出来上がりはおおむねすっきりしている。エール酵母は同じく「陽気なヤツ」として、比較的高温・短めの発酵をさせ、複雑な香りがある。自然発酵をこのセンスで表すなら「ワイルドなヤツ」です。自然発酵で活用される酵母は野生酵母とも呼ばれます。ワイルドには「野生の」の意味もありますね。野生酵母は文字通り、自然の中に存在している酵母を取り込んで用い、一風変わった香りに仕上がります。
この「クール」「陽気」「ワイルド」の3語を覚えていろいろ飲むと、印象を定着させやすいでしょう。
- ラガー:比較的低温・長めの発酵をさせ、出来上がりはおおむねすっきり
- エール:比較的高温・短めの発酵をさせ、複雑な香りがある
- 自然発酵:自然の中に存在している酵母を取り込んで用い、一風変わった香り
ただ、ラガーの中でも華やかなものや、エールの中でもさっぱりしたものはあるので、大体の傾向だと思ってください。
Q.クラフトビールをおつまみと一緒に楽しむという人も多いかと思います。例えば「苦味が強いビール」と「苦くないビール」それぞれで、どんなおつまみが合うのでしょう?
おすすめとしては、こちらです。
- ビールの苦みを生かしたい場合
- 苦いおつまみと合わせる
- 苦味によってうま味を強く感じる法則があるので、うま味成分が入っているものを合わせる。うま味を重視する和食との相性は、工夫次第で良いと言える
- ビールの苦みを緩和したい場合
- 甘いおつまみと合わせる
また、ビールの飲み物としての最大の特徴は「苦い」なのですが、中には全く苦くなかったり、最大の特徴が甘味や酸味だったりするビアスタイル・銘柄もあります。例えば甘いビールなら、酸っぱい食べ物と合わせると甘酸っぱさをつくり出せます。塩味が効いた食べ物と合わせると、ビールの甘味を強調させることができます。
食後に飲むならフルーツビールがおすすめ。そのままデザート感覚で楽しめますし、特に低アルコールで甘味が強い銘柄にすれば、飲みごたえたっぷりでシメに向いています。最後だからといって高アルコール度数の銘柄でなくてもいいんですよね。
Q. 長谷川さんが個人的に、「このシチュエーションでこういうビールを飲むのが好き」といった例はありますか?
長谷川さんによると、「ラガー」「エール」「自然発酵」には実にさまざまなビアスタイル(種別)があると言います。ここでは、今回長谷川さんに教えていただいたクラフトビールの種別について紹介します。
- IPA(India Pale Ale)
- ホップの香りが強く、もともとはホップの苦味も強かったが、さまざまな派生スタイルが生まれる中で苦味の弱いものも出てきた
- ペールエール
- IPAの特徴を弱めて成立した。IPAほどではないがホップが効いている
- スタウト
- コーヒーやチョコレートのような香ばしさが特徴。数種の派生スタイルが生まれ、軽めのものから重めのまでさまざま
- ピルスナー
- 爽やかな香りとさっぱりした後味が特徴
- セゾン
- 香りは「農家の庭」と例えられるほど独特だったり、フルーティーだったり、両方が混じり合っていたりする。さっぱりしていて苦味がきいていることが多く、酸味が感じられることも
- フルーツ・スパイス
- 果物や香辛料を使ってそれらの特徴を持たせている
- ヴァイツェン
- バナナやクローヴ(チョウジ)のような香りがあり、甘味とほのかな酸味が中心で、苦味はほとんど感じられない。甘味と発泡性、タンパク質が豊富で飲みごたえたっぷり
- ベルジャンヴィット
- 小麦の他、コリアンダーとオレンジの皮を使用し、甘酸っぱさと複雑な香りが楽しめる
この8種類のビアスタイルを、編集部独自の視点でまとめてみました!
※こちらの図は各スタイルの特徴の平均を取ったものです。「フルーツ・スパイス」は基となるビアスタイルによって位置が大きく変わります
※一般的に、ビールの色は濃いほど香ばしさが強くなります
識者がおすすめするクラフトビール12選
数多くのクラフトビールを愛飲してきた長谷川さんに国内外のおすすめクラフトビールをピックアップしていただき、その情報をもとに「飲みやすさ」を重視してソレドコ編集部がランキングにまとめました。クラフトビールを購入する際はぜひ参考にしてみてください!
(※価格は2023年12月現在、公式ショップのもの。全て税込み。一部のみ送料込み価格)
1位:松本ブルワリー Awesome!PaleAle(オーサム!ペールエール)
- 産地(都道府県または国、以下同):長野
- アルコール度数:5%
- ビアスタイル:ペールエール(香りと味の特徴を確認)
- 価格:550円(1本)
数種類の米国品種のホップを使用し、フルーティーな香りと豊かな味わいを楽しめます。バランスが非常に良いビールです。
2位:箕面ビール スタウト
- 産地:大阪
- アルコール度数:5.5%
- ビアスタイル:スタウト(香りと味の特徴を確認)
- 価格:451円(1本)
世界最高クラスの審査会でも受賞多数の、正真正銘の「世界レベルのスタウト」。スタウトの中でもやや甘く、食後の甘いもの感覚でも楽しめます。
3位:COEDO 瑠璃
- 産地:埼玉
- アルコール度数:5%
- ビアスタイル:ピルスナー(香りと味の特徴を確認)
- 価格:2,475円(6本)
ボヘミア(チェコ西部)風のピルスナーらしく、ホップの香りと苦味に加えて、麦芽からの甘味もしっかりあります。キュウリと合わせると青い香りがふくらむのでおすすめです。
4位:六甲ビール セゾン
- 産地:兵庫
- アルコール度数:5%
- ビアスタイル:セゾン(香りと味の特徴を確認)
- 価格:2,400円(6本)
白ワインやマスカット、ライチのような香りがする、セゾンの中でもフルーティーな部類のビールです。缶内発酵もしているので、買ってすぐ飲まずに熟成を楽しむのもおすすめです。
5位:小樽ビール ピルスナー
- 産地:北海道
- アルコール度数:4.9%
- ビアスタイル:ピルスナー(香りと味の特徴を確認)
- 価格:2,700円(12本)
ホップの香りと苦味がはっきり感じられ、麦芽からの甘味は控えめなため、さっぱり爽やかに楽しめます。わざと泡を立てて、苦味を和らげて飲むのもおすすめです。
6位:ファイアーストーンウォーカー ユニオンジャックIPA
- 産地:米国
- アルコール度数:7%
- ビアスタイル:IPA、ペールエール(香りと味の特徴を確認)
- 価格:785円(1本)
7種のホップを使用し、グレープフルーツ、パイナップル、ミカン、アンズといった香りを持たせています。
7位:エチゴビール スタウト
- 産地:新潟
- アルコール度数:7%
- ビアスタイル:スタウト(香りと味の特徴を確認)
- 価格:7,286円(24本)
スタウトの中でもアルコール度数が高め。焦げたような香ばしさだけでなく、甘味やアルコール感もしっかり感じられる濃厚な1本です。
8位:いわて蔵ビール ジャパニーズスパイスエール山椒
- 産地:岩手
- アルコール度数:5%
- ビアスタイル:フルーツ・スパイス(香りと味の特徴を確認)
- 価格:638円(1本)
山椒が使用されていて、柑橘類の香りが特徴。ビールにはよく柑橘類の香りがするホップが使われるので、違和感のないおいしさになっています。
9位:オリエンタルブルーイング 湯涌ゆずエール
- 産地:石川
- アルコール度数:5%
- ビアスタイル:フルーツ・スパイス(香りと味の特徴を確認)
- 価格:3,000円(6種類6本セット)
地元産のゆずを使用。ゆず使用ビールは海外でも人気があります。ゆずの特徴がビールとよく調和しており、ビールらしさもしっかり感じられる1本です。
10位:ビアへるん ヴァイツェン
- 産地:島根
- アルコール度数:6%
- ビアスタイル:ヴァイツェン(香りと味の特徴を確認)
- 価格:594円(1本)
「バナナフルーティー」を謳うにふさわしい、バナナの味わいがいっぱいのビール。さらに甘味もしっかりあって、全体的に濃厚な印象です。
11位:ヘリオス酒造 沢内醸造所 メーテルのヴァイツェン
- 産地:岩手
- アルコール度数:5%
- ビアスタイル:ヴァイツェン(香りと味の特徴を確認)
- 価格:2,142円(6本)
ヴァイツェンといえばよく「バナナの味わい」と言われますが、これはクローヴ(チョウジ)の味わいが中心。甘味を想起させる香りが特徴ですが、実際の甘味はさっぱりしています。
12位:忽布古丹醸造 haskap(ハシカプ)
- 産地:北海道
- アルコール度数:7%
- ビアスタイル:セゾン(香りと味の特徴を確認)
- 価格:2,035円(3種類3本セット)
富良野産ハスカップを使ったセゾン。セゾン特有の風変わりな香りとフルーティーな香りが絡み合います。意外とアルコール度数が高いので、じっくり楽しめますよ。
- さっぱりとした味わいが好きな方に
- 一風変わった味わいを楽しみたい方に
- バランスの良さを味わいたい方に
- 濃厚な味わいが好きな方に
スーパーやコンビニでも買える定番のクラフトビール3選
ネットだけでなく、スーパーやコンビニで比較的手に入りやすい商品も長谷川さんにピックアップしていただきました。
(※価格は2023年12月現在、公式ショップのもの。全て税込み)
1位:伊勢角屋麦酒 ペールエール
- 産地:三重
- アルコール度数:5%
- ビアスタイル:ペールエール(香りと味の特徴を確認)
- 価格:396円(1本)
世界最高レベルの審査会で複数の賞を受賞したビール。「伊勢角屋麦酒」を日本を代表するブルワリーに押し上げた、まさに世界レベルの銘柄です。クラフトビールはまずはこれから飲んでみるのがおすすめです。
2位:箕面ビール おさるIPA
- 産地:大阪
- アルコール度数:6%
- ビアスタイル:IPA(香りと味の特徴を確認)
- 価格:484円(1本)
5種類の米国品種ホップを使ったIPAで、苦味と爽快さを兼ね備えています。当初は限定銘柄でしたが、人気につき、2020年から定番銘柄になりました。
3位:常陸野ネストビール ホワイトエール
- 産地:茨城
- アルコール度数:5.5%
- ビアスタイル:ベルジャンヴィット(香りと味の特徴を確認)
- 価格:435円(1本)
一般的にベルジャンヴィットに使われるオレンジピールとコリアンダーだけではなく、ナツメグも使っているため、軽快ながらまろやかで複雑な味わいが特徴です。ゆっくり飲んで、温度変化による味わいの変化を楽しみましょう。
ギフトやお試しにもぴったり。クラフトビールの飲み比べセット3選
複数のクラフトビールが入った飲み比べセットは、ギフトにもぴったり。ビールが好きな友だちと集まって、まだ飲んだことがなかったクラフトビールを試すのもよさそうです。
(※価格は2023年12月現在。全て税込み)
1位:ベアードビール 定番全12種飲み比べセット
- 産地:静岡
- 価格:6,000円
ベアードビールは世界的にも珍しい12もの定番銘柄を持っています。それら全てが詰まったセットです。
2位:九十九里オーシャンビール 6種飲み比べセット
- 産地:千葉
- 価格:3,998円
2020年に製造体制やブランド名を一新したブランドの定番セット。ほぼ伝統的なスタイルのみで構成されています。
3位:チョコレート麦芽 黒ビール 4種 飲み比べセット
- 産地:神奈川
- 価格:2,840円
「チョコレート麦芽」を使った銘柄のセットという、原料も意識できる珍しいセット。さっぱりした銘柄から濃厚な銘柄までそろっています。
- まずはいろいろな味わいを試したい方に
- 珍しい銘柄を試したい方に
ビールには「友人をつくる」力がある
「さんざん香りや味を紹介しましたが、結局ビールは、好きな人たちと楽しく飲むのが最高です。味わいはどうでもよくなってしまいがちですが(笑)、楽しめていることの証しと捉えています。さらには、イベントなどで初めての人と仲良くなって友人になる、なんてことが珍しくありません。その魅力にあやかれたからこそ、さほど社交的でない私が全国、いや世界中のビールのプロ・愛好者とつながれていると思っています」と長谷川さん。
大好きな人たちと一緒に飲むクラフトビールは、よりおいしく感じられそうですね。年末年始のこの機会に、今回紹介したおすすめから気になるものを購入して、友だちや家族と一緒に好みのクラフトビールを見つけてみてはいかがでしょうか?