こんにちは、鹿児島県在住で九州のおいしいものや「沼」にハマっている人を取材している横田ちえです。
さて皆さん、今「九州産のチーズ」がアツいことはご存じでしょうか。……と言われても、九州×チーズの組み合わせにピンとこない方は多いと思います。
それもそのはず。九州では約30年前まで、大手乳業メーカーや農協などをのぞいてチーズ作りをしている工房はほぼありませんでした。しかし、現在は九州中に20軒以上の工房が!
私は仕事で九州各地を行ったり来たりしているのですが、最近は「ご当地チーズ」を扱っている道の駅がとても増えています。オーソドックスなものもありますが、他ではあまり見ないような個性的なチーズもたまに見かけます。
そんな九州産チーズのパイオニアと言われているのが、大分・由布院でチーズ職人として働く浦田健治郎、通称「うらけん」さん。チーズ作りの面白さに魅了された「チーズ沼」の住人です。
浦田健治郎(うらけん)さん……大分・由布院にあるチーズ工房「由布院チーズ」の職人。酪農家を志し、北海道の専門学校入学・アメリカ留学を経て、大分で酪農を始めたあと、搾りたての牛乳を使ったチーズ作りに取り組む。9年目で優れた国産チーズを表彰する「オールジャパン・ナチュラルチーズ・コンテスト」に出品したウォッシュタイプのチーズが農林水産大臣賞を受賞。全国のチーズ生産者と情報交換しながら日々チーズ作りに励み、チーズ作りを学びに来た人には情報を惜しまずに公開している。
\うらけんさんが手がけるチーズはこちら/
🧀 「由布院チーズ工房」を詳しく見る
今回は、うらけんさんにおすすめの「九州産チーズ」を紹介してもらったほか、そもそもなぜ九州ではチーズがあまり作られてこなかったのか、現在九州チーズ業界に何が起きているのかなど、じっくりお話を伺いました。
チーズは好きだけど産地はあまり意識したことがなかった……! という方も、ぜひこの記事をきっかけに九州産チーズに興味を持ってもらえたらうれしいです!
● 沼人おすすめの九州産チーズ
🧀 【1】これぞ王道!なモッツァレラ
🧀 【2】“1日干す”ことでキュッと引き締まったモッツァレラに
🧀 【3】ふわふわ〜なめらか〜なリコッタ
🧀 【4】“皮”までおいしい醤油粕漬チーズ
🧀 【5】あの「蘇」をベースにした甘乳蘇
● チーズ作りは大変。だからこそ面白い
九州はもちろん、全国的にチーズ工房が増えている
——今日はよろしくお願いします! ところで、チーズというと北海道など涼しいところで作られるイメージがあるのですが、なぜ温暖な九州でチーズ作りが盛り上がっているのでしょうか。
まずおいしいチーズ作りに土地の気温は関係ないんですよ。何よりも重要なのは、原材料である牛乳が近くにあることなんです。
——えっそうなんですか! なぜか、寒冷地の方が適しているんだと思い込んでいました。
そもそも、チーズ作りがさかんなイタリアでは、比較的温暖な南部にもたくさんのチーズ工房がありますからね。日本国内だと、沖縄にもチーズ工房がありますよ。
——そう言われてみると確かに……。
チーズ作りで扱う乳酸菌は20数℃~40℃で活発化するから、温かい方が発酵もしやすいですしね。しかも現在のチーズ作りは、温度や湿度が管理された屋内の環境で行うので、作ろうと思えばどこでも作れます。
搾った生乳は、人口が多いところであればそのまま出荷すればいいんだけど、そうでない場合、昔は保存も輸送するのも難しかった。だから北海道はチーズやバターなどの加工品作りにいち早く取り組むようになったんです。
だけど現在は北海道以外でも乳製品がつくられるようになり、九州はもちろん、全国的にチーズ工房が増えていますよ。
——なるほど! では、九州産チーズの特徴を一言でまとめると?
うーーーーーん、一言では言い表せないかな。ワインでいう“テロワール”のように、その土地の気候や風土、空気、牛の状態や育て方によって、いろんな特徴が出てきます。そして、そもそも同じ材料や製法、温度・湿度管理でチーズを作っても、完成したチーズは職人ごとにまったく別のものになるんですよ。
だから“九州ならではのチーズ”というよりも、作り手一人ひとりの個性やチーズに掛ける思いが反映されているという感じかな。なんでもそうだけど、いいものを作ろうと探求心を持って取り組むからこそ、おいしいものができるんです。今回紹介するチーズたちも、それぞれの職人が思いを持って取り組んでいるものばかりですね!
というわけで、まずは、九州中のチーズを知り尽くしているうらけんさんに、一目置く工房のチーズたちを教えてもらいました。いずれも工房などがある市町村でふるさと納税の返礼品になっているので、気になるものがあればぜひチェックしてみてください。
うらけんさんおすすめの「九州産チーズ5銘柄」
【1】ジューシーで弾力がある、王道のモッツァレラ
(ダイワファーム/宮崎県小林市)
画像提供:ダイワファーム
モッツァレラチーズは日本人にもなじみ深いチーズの一種だと思いますが、本場のモッツァレラを楽しみたいなら、ダイワファーム(宮崎県小林市)のものがオススメ。
モッツァレラの本場・イタリアの系統を汲んだオーソドックスなタイプで、まさに「王道の味」。弾力とジューシーさがしっかりあるし、ミルクの甘みも残っていておいしいです。何かの料理に合わせるより、モッツァレラそのものを味わってほしいですね。
\“王道モッツァレラ”のほか、さまざまなチーズをセットで/
【2】“干す”ことで独特の食感と甘みを実現したモッツァレラチーズ
(ミルン牧場/佐賀県神埼市)
ミルン牧場(佐賀県神埼市)のモッツァレラチーズは、「モッツァレラ」という名前が付いてはいますが、オーソドックスな柔らかいモッツァレラとは少し違ってチーズを「1日だけ干して」作られています。こうすることで、ミルクの甘みや風味をしっかり残しつつ、水分が飛びキュッと締まった食感が楽しめます。
またチーズ工房で作るモッツァレラはだいたい賞味期限が1週間程度なんですが、こちらは水分を飛ばしている分、賞味期限が3週間程度と比較的長めなのも特徴。クセがなくてパスタやサラダなどいろんな料理に合わせやすいし、普段から冷蔵庫にストックしておくといいんじゃないかな。
\「モッツァレラチーズ」を含めた3種のチーズが楽しめる/
【3】絹豆腐のように柔らかく、口溶けなめらかなリコッタチーズ
(Kotobuki cheese/鹿児島鹿屋市)
画像提供:Kotobuki cheese
Kotobuki cheese(鹿児島鹿屋市)の「リコッタチーズ」は、ミルクのさっぱりとした甘みが感じられる、とても食べやすいチーズです。絹豆腐のように柔らかくて、口溶けもふわっとなめらかなのが特徴。そのまま食べてもいいですし、ワサビや柚子こしょう、しょう油、塩などでちょっと味付けしてもおいしいですよ。
デザートとしてメープルシロップ、はちみつ、フルーツなどをトッピングしても◎
画像提供:Kotobuki cheese
あとKotobuki cheeseは鹿児島の工房ということで、地元の芋焼酎を使ったチーズも作っています。焼酎のいい香りがして独創的ですし、酒のつまみにぴったりです。
「カノヤウォッシュ‐芋焼酎熟成」
\リコッタチーズも楽しめる「Kotobuki cheese」の詰め合わせ/
【4】卓越したチーズ職人が作る“皮”までおいしい「醤油粕漬チーズ」
(糸島ナチュラルチーズ製造所TAK/福岡県糸島市)
画像提供:糸島ナチュラルチーズ製造所TAK
糸島ナチュラルチーズ製造所TAK(福岡県糸島市)には、デンマークでの修行経験もある、日本でトップクラスのチーズ製造技術を持つ職人がいます。コクがあって食べやすい「コハク」というデンマーク系のチーズをメインで作っていて、どれも本当においしい。
そのコハクをしょう油粕に漬け込んで作るのが「醤油粕漬チーズ」。麹のフルーティーな香りとチーズのコクで絶妙なおいしさに仕上がっています。
画像提供:糸島ナチュラルチーズ製造所TAK
セミハード系のチーズの外皮は固いものもあったりして、僕はあんまり食べないんですけど、TAKのはおいしく食べられます。
\糸島市のふるさと納税に「TAK」のチーズ、たくさんあります/
【5】日本古代の乳製品「蘇」を再現した「甘乳蘇」
(ミルククラブ中西牧場/宮崎県都城市)
日本古代の乳製品である「蘇(そ)」を再現しているのが、ミルククラブ中西牧場(宮崎県都城市)の「甘乳蘇(かんにゅうそ)」。中西牧場の方が奈良で「蘇」の基本的な作り方を学んだのち、独自で作り上げたそうです。
生乳を7〜8時間ほど煮詰めており、牛乳の甘みやうま味が凝縮されています。またほんのりとした苦みや香ばしさもあり、滋味深い味わいが楽しめます。色合いも味も、少しキャラメルに似ているかな?
実は最近日本ではホエイ(牛乳に含まれる固形成分を固めたあとに残る液体。乳清ともいう)を煮詰めて作る、ノルウェー発祥の「ブラウンチーズ」がはやり始めています。蘇は全乳を煮詰めて作るのでブラウンチーズとはまた異なるのですが、1,000年以上も昔からこういった乳製品が作られていて、今も食べられているというのは非常に興味深いです。
\「甘乳蘇」どんな味わいなんだろう……?/
あと注目しているのは熊本県阿蘇市で昔から酪農をやっている阿部牧場。
画像提供:阿部牧場
「ASO MILK」という牛乳が有名なところですね。牛を阿蘇の地下水と牧草で育てているほか、“搾りたての味わい”にとてもこだわっています。去年からチーズ工房も始めていて、職人がイタリアに勉強に行くなど情熱を持って取り組まれています。これだけおいしい牛乳があって職人さんも熱心となると、これからのチーズ作りが楽しみですね。
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チーズ作りは難しいからこそ面白い
——どれもおいしそうなチーズばかりで、九州には優れたチーズ工房がたくさんあることを改めて知ることができました! ところで、九州で初めてチーズを作って販売したのはうらけんさんだったとか……。
大手の乳製品メーカーなどではすでにチーズ作りを始めていましたが、個人で初めて販売したのは僕ですね。2001年だったかな。
——まさにパイオニアですね。実は、九州のチーズ関係者とお話すると、必ず“先駆者”としてうらけんさんのお名前が挙がるんです。
いやいや、そんな大層なものじゃないですよ。
そもそも僕よりも先に、九州でチーズ作りに取り組んでいたのは、さっきも紹介した佐賀県のミルン牧場なんです。でも当時ミルンのチーズ職人さんはゴーダチーズの完成度を追求していて、販売にまで至っていなくて。
その横で僕が牛乳を固めて水分を抜いたシンプルなフレッシュチーズをさっさと売り出してしまったから、販売は僕が先になってしまっただけなんです。
——さっさと(笑)。
僕はそういった既存のチーズに近づけるのではなく、自分なりのチーズを「うらけんチーズ」として売ればいいと考えたんですよ。その話をしたら、ミルンさんもすぐ自分なりのチーズを売り出し始めましたね(笑)。
うらけんさんの「由布院チーズ工房」。併設レストランCafe&Kitchen Daijuでは、チーズ料理の提供も
——そういった柔軟な考えから九州産チーズのムーブメントが始まったからか、作り手が伸び伸びとチーズ作りを楽しんでいますよね。かつて取材したダイワファームさんやkotobuki cheeseさんも、とても楽しそうにチーズ作りについて語っていたのが印象的でした。ところで、そもそもうらけんさんがチーズを作ろうと思ったきっかけはなんだったのでしょう。
僕は元々酪農をやっていたんです。借金を抱えて新規で酪農を始めたものだから、牛乳を絞るだけだと経営的に大変で。この状況を打開したいな、と思い加工について考え始めました。
あとは牛乳ってそれぞれの酪農家が搾ったあとは、乳業メーカーの工場に移送されてほかの牛乳と混ぜて出荷されるんです。なので、消費者の顔が全然見えなくて。生産する楽しみや消費者に届ける喜びを自分も感じてみたいと思ったのも理由の一つです。
——牛乳の加工品というとアイスやバター、ヨーグルトなどもありますが、チーズを選んだのは?
チーズなら初期投資が抑えられると思ったんです。アイスやバターは機械が必要だけど、ヨーロッパではチーズは日本の“漬物”のように身近な存在で、一般家庭でも作られているし。
でも、当時はチーズのことを何も知らなくて。結局、何をするにも設備にお金はかかるので、思惑は外れましたね。チーズは原材料となる牛乳をたくさん使うから利益率もよくないし。アイスのほうが儲かったんじゃないかな(笑)。
——そうやって始まったチーズ作りは、やはり苦労しましたか。
そうですね。でもチーズは難しかった分だけ、逆にやっていて楽しかったです。
そもそも作り方すら知らないから、東北や北海道の酪農仲間でチーズ作りをしている友人を頼ったり、他県のチーズ教室で学んだりとゼロからのスタートで苦戦してばかりでしたけど。
九州を含め国産チーズはまだまだ。もっといいチーズを作るために
——うらけんさんは、チーズ作りを学びにきた職人たちに、自分の技術や環境をすべて公開されているのだとか。以前ダイワファームの職人さんに取材したとき「うらけんは何でも教えてくれた」と話されていて、同業者にそんなに惜しみなく情報公開されているのかと驚きました。
僕も多くの人からチーズ作りを学んできましたからね。自分一人で知識を抱え込んでるだけでは、進歩できないんですよ。
他のチーズ職人とコミュニケーションを取ることで、僕がそれまで気付かなかったことに気付ける。周囲の人の経験を教えてもらうことは、2倍、3倍経験できるのと同じ。
だから九州のチーズ職人同士で定期的に集まって情報交換をしたり、研修を受けたりといったことは長年続けていますね。最近だとコロナ禍をきっかけに、イタリアやイギリスのチーズ学校がやっているオンライン授業を全国のチーズ職人たちで受けたりしています。割り勘で(笑)。
——すごい……!
最近は増えてきた日本の国産チーズも、海外産に比べるとまだまだ少ないんですよ。それ以上のライバルが海外にたくさんいるわけで、そういったチーズに負けないためには、みんなで一丸となって“いいチーズ”を追求する必要があるんです。
僕も、今作っているチーズをもっとおいしく作りたいですね。
——すでに十分おいしいと思うのですが、まだまだ上を目指されているんですね。
自分のチーズばっかり食べていると舌が慣れちゃうから、世間の求めるものから外れちゃっても意外と気が付かないんですよ。だから、いろんなチーズを食べて、自分はどんなチーズを目指したいのかを常に確認しながら作っていくことが大切なんです。
うらけんさんが作るデザートチーズ「萌」。クリームチーズにドライフルーツをまとわせた華やかな見た目と、食べやすい風味で人気が高い
\「萌」とヨーグルトがセットになった商品も/
今回紹介したようなナチュラルチーズは、ワインやチーズに合わせたり、クラッカーと一緒に食べたりといった“身構える”イメージが強いですが、うらけんさんいわく「自由に、好きに食べていい」とのこと。うらけんさんもカップラーメンにチーズを入れてみたらおいしかったそう。そのくらいカジュアルに楽しんでいいんですね!
ぜひこの機会に九州産のおいしいチーズたちを楽しんでもらえるとうれしいです!
\楽天市場で「九州」のチーズを探そう/
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今回紹介した商品
「由布院チーズ工房」を詳しく見る
「ダイワファーム 奇跡のチーズセット」(宮崎県小林市 ふるさと納税)を詳しく見る
「ミルン牧場オリジナルチーズセット」(佐賀県神埼市 ふるさと納税)を詳しく見る
「kotobuki cheese ナチュラルチーズセット」(鹿児島県鹿屋市 ふるさと納税)を詳しく見る
「糸島ナチュラルチーズ製造所TAK」(福岡県糸島市 ふるさと納税)を詳しく見る
「甘乳蘇」(宮崎県都城市 ふるさと納税)を詳しく見る
「萌&由布院ヨーグルトセット」を詳しく見る