それどこ

低温調理の世界をAnovaで楽しむ 牛肉や鴨肉、サーモンを使って「おうちでごちそう」

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こんにちは。ぶち猫と申します。料理と写真を趣味に、猫2匹と暮らしています。

今日は、最近話題の「低温調理法」で、肉や魚などいろいろな素材を調理してみたいと思います。

“ちょうどいい火入れ”ができる低温調理法

最近、低温調理法という言葉をよく耳にしませんか?

低温調理法とは、タンパク質が変性・凝固する温度(大体55度から68度)に着目した調理法です。肉や魚などタンパク質を多く含む食材を、凝固温度より低い温度で長時間(1時間〜)加熱することにより、素材全体を最適な温度で均質に加工します。

※ 広義では、野菜なども対象に含め、通常加熱する温度(80度)よりも低い温度で長時間加熱する調理法全体を指す場合がありますが、分かりやすくするためここでは狭義に定義しました。

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少々時間はかかりますが、家庭でも「焼きすぎてパサパサ」と「中心部が生焼け」の中間の“ちょうどいい火入れ”をほとんど失敗なく実現できます。

専用の調理器具「Anova」で気軽に低温調理

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低温調理の基本は「真空パックした素材を適切な温度に保った湯に長時間浸けておくこと」です。手動で温度を維持・調節したり、炊飯器を使用したりといろいろ方法がありますが、今回は「Anova Precision Cooker」という低温調理用の機器を使いたいと思います。

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中央にある筒状の機器を水中に立て、加熱温度と加熱時間を設定すると、指定した時間中、水温を指定した温度に保ってくれます。手動でやる場合、頻繁に水温を測ってお湯を足して……と大変な作業になるところ、Anovaがあればスイッチひとつで簡単に本格的な低温調理ができてしまうのです。



専用のアプリケーション( iPhone用アプリAndroid用アプリ )をインストールすれば、スマートフォンやタブレットからAnovaを操作することもできます。アプリには「Time and Temp Guides(温度と時間のガイド)」や「Recipes(レシピ)」が掲載されているので、加工したい素材を何度でどれくらいの時間加熱したらよいかも調べられます。

前置きが長くなりましたが、ここからはAnovaを使った低温調理レシピを紹介します。

ふんわり柔らかく、ジューシーな「和牛のタリアータ」

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手始めに牛肉を調理したいと思います。これは和牛のザブトン(肩ロースの芯)という部位で、250gほどあります。厚さは4.5cm! そそりたつ崖感。この厚さの肉をオーブンかフライパンでミディアム・レアに調理するには、それなりの経験と技術が必要ですが、Anovaがあれば心配ありません。

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この後の加熱が均一になるよう、牛肉は調理を始める1時間ほど前に冷蔵庫から出しておき、あらかじめ室温に戻しておきます。あとは、にんにく1〜2かけ、牛肉の重さの0.8%の塩、あれば牛脂を用意します。

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叩き潰したにんにくと塩をまぶした肉をジップ付きのポリ袋に入れます。このとき、なるべく真空にするのがポイント。写真のように素材を入れたポリ袋を水中にゆっくりと沈めると、空気が追い出されて真空に近い状態になります。



さて、加熱です。厚手の鍋など保温性のよい容器にお湯を張り、Anovaを差し込みます。

今回は肉の内部全体をレアからミディアム・レアに仕上げたいので、ステーキをレアに焼く場合の中心温度が55度〜65度であることを参考に、55度に設定しました。加熱時間は肉の厚みも勘案し、2時間に。

アプリ経由で温度と時間を設定し、スイッチを入れてしまえば、あとはAnovaが勝手に加熱してくれます。

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2時間の加熱が完了したお肉です。オーブンやフライパンで加熱したときよりも表面の色が薄く、ところどころ表面に赤みが残っている状態。

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表面を滅菌するとともに焦げ目をつけて旨味を増すために、厚手の鉄フライパンをよく熱してから牛脂を滑らせ、フライパンでソテーします。すでに低温調理での火入れが終わっているので、余計な熱が入り過ぎないよう、肉を入れてからは高温短時間で加熱し、表面をカリッと焼きます。

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焼き上がり。強めの焦げ目がつくくらいがおいしいです。

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10分ほど落ち着かせてから、5mmの厚さにスライス。肉の表面近くから芯部まで均等にミディアム・レアに加熱できているのが分かります。

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ルッコラとミニトマトを添え、スライスしたパルメザンチーズ、塩胡椒、オリーブオイルを適当に散らしたら、和牛のタリアータの出来上がり。きっちりと芯まで火の入った牛肉は、食感がふんわり柔らかく脂がジューシーで、野性味のあるルッコラととてもよく合います。ほんのりとしたにんにくの香りがアクセント。

このままでも充分おいしいのですが、たくさん作った場合に備えて、ご飯と合わせるアレンジレシピも紹介します。味付けは塩だけなので、和風にも洋風にもアレンジできるのがうれしいところ。

バリエーション1~和牛カルボナーラ丼~

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お肉といえば、ご飯。そして、卵! 温かいご飯の上に薄めにスライスしたお肉を並べ、温泉卵を落とし、削ったパルメザンチーズと胡椒を散らします。これにポン酢をかけたら、和牛カルボナーラ丼のできあがり。

半熟の黄身をポン酢と一緒にご飯に混ぜて、お肉でくるっと包んで食べます。和洋折衷のジャンクな味付けですが、癖になるおいしさ。

バリエーション2~雲丹(うに)和牛丼~

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もうひとつは贅沢なハレの日のどんぶり。スライスした低温調理肉に、生雲丹と山葵を添えた雲丹和牛丼です。

しっとりした和牛に雲丹とご飯を巻いて食べると、背徳の味がします。人間がとろけてしまう。お店で食べれば高価なこと間違いなしですが、おうちごはんなら“ちょっとした贅沢”の範囲で実現できます。ぜひみなさんにも一度とろけていただきたい!

日本酒と一緒に楽しみたい「鴨ロース煮」

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次は鴨です。今回は合鴨の胸肉(ロース肉)を用意しました。1枚で250gほどです。

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鴨ロースは脂身が厚いので、身からはみ出した部分を切り落とし、さいの目に切り込みを入れてから、牛肉と同じようにジップ付きポリ袋に入れます。味付けは加熱後に行うので、この段階では塩もふりません。加熱温度と時間については、Anovaアプリのレシピを参考に、57度/2時間に設定しました。

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加熱が終了したお肉。牛肉と同じく薄い褐色になっており、ところどころ赤みが残っている部分もあります。

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厚い皮を香ばしく仕上げるため、皮目からフライパンに入れ、中火でじっくりと脂を出しながら焼きます。焼き目がついたらひっくり返して、身の方は軽く焼色がつくくらいに。直接フライパンに触れない部分には、表面を滅菌するため、鴨から出た脂をスプーンですくってかけるとよいです。

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並行して、だし汁50cc、醤油・みりん・料理酒各25ccを合わせたものに、低温調理で鴨から出たドリップを合わせて軽く沸騰させ、漬け汁を作ります。これを少し冷ましてジップ付きポリ袋に入れ、焼き上がった鴨を加えて粗熱を取り、冷蔵庫で一晩寝かせます。



翌朝、冷蔵庫から出してスライスしたところ。全体に均一に火が入り、上品なピンク色に仕上がっています。一晩寝かせたことで落ち着いて、きめ細かく瑞々しい質感に。

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きゅうり、水に晒した茗荷と紫蘇の千切り、和辛子を添えれば、鴨ロース煮のできあがり。

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低温調理で仕上げたしっとり鴨ロースで夏野菜の薬味をたっぷり巻いて食べると、日本酒が進んで困ります。

バリエーション~鴨ロースそうめん~

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鴨の漬け汁がもったいない!という方に、鴨ロースそうめんをおすすめします。そうめんを袋の表示通りに茹でて器に盛り、スライスした鴨ロース、きゅうり、水に晒した茗荷と紫蘇の千切り、ミニトマトをのせ、余った漬け汁をかけるだけ。仕上げにすりごまをひとふりします。鴨の旨味が贅沢な変わりそうめんです。

ハーブの風味がたまらない「ラムラック」

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牛、鴨ときて、次はラムをやりたいと思います。ごちそう感のある骨付きラム(ラムラック)を用意しました。火入れの難しい骨付き肉も低温調理なら余裕です。

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材料は、ラムラック450gほど、ラム肉の重さの0.8%の塩、お好きなハーブ。ハーブはぜひ、香りがいい生のものを探してください。今回は、肉料理と相性がよいタイムを使用しました。ラムの脂が厚い場合は、鴨肉と同じように表面にさいの目の切り込みを入れておきます。

加熱温度と時間は、Anovaのレシピを参考に57度/2時間としました。

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できあがり。これまでで一番まがまがしい雰囲気になってしまいました。骨と脂身とハーブの相乗効果ですが、進捗には問題ありません。

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厚手の鉄フライパンで、表面を強火でこんがりと焼きます。フライパンに触れない部分には、肉から出た脂をスプーンですくってかけましょう。



切り分けたところ。骨の周りまでムラなくロゼ色に火入れができているのが分かります。

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ラムにはおいも。ということで、タイムで風味をつけたオーブンポテトも用意しました。一緒にプチトマトとズッキーニも焼いておきます。



もちろんこのままでもおいしくいただけますが、余力があればワインの一種マディラ酒を使う簡単なソースもおすすめ。マディラ酒50ccを半分になるまで鍋で煮詰め、市販のフォン・ド・ヴォー25ccと低温調理時に出たラムのドリップを加えて軽く煮立てるだけ。ラムには甘いソースが合います。

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切り分けたラムに、オーブンポテト、焼きプチトマトとズッキーニを添え、全体に胡椒をふってから生ハーブをあしらえば、ハーブ風味のラムラックの完成です。低温調理をしたラムラックは、すごく柔らかい上に全くぱさつきがなくて、ラム肉のおいしさを最大限味わうことのできる調理法なのでは? と思います。

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まずはそのまま食べた後、マディラ酒のソースをかけてふたつ目の味を楽しむという贅沢。ラム風味のソースで焼き野菜ももりもり食べられます。

肉厚のサーモンも、低温調理ならしっとり

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さて、最後は目先を変えてサーモン。300gほどのサーモン一切れ*1とサーモンの重さの0.8gの塩、オリーブオイル少々を用意します。

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これまでと同様にサーモンに塩をまぶして、オリーブオイルとともにできるだけ真空になるようにジップ付きポリ袋に入れます。盛り付けのことを考え、この段階でふたつに切りました。火入れは45度/1時間。肉類よりも低温です。

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火入れ後のサーモン。生っぽい雰囲気も残しつつ、全体に色が薄くなってタンパク質が変性している様子も伺えます。今回はこれを北欧風に仕上げていくので、生のディル(ハーブ)、そしてサーモンにコクを加えるためにバターを用意しました。

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厚手の鉄フライパンでバターを温め、サーモンを入れます。低温調理後のサーモンはとても崩れやすくなっているので、慎重にやりつつ、中火・短時間で表面をカリッと焼きます。あまりにも崩れやすくて裏返すのは不可能なので、上の面にはフライパン上で熱せられているバターをスプーンですくってかけましょう。



北欧風の付け合わせといえば、クリーミーなマッシュポテト。材料は、茹でたてのじゃがいも、バター、すり下ろしたパルメザンチーズ、牛乳、塩少々と白胡椒です。

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これをハンドブレンダーでガーッと混ぜると、簡単にクリーミーなマッシュポテトを作ることができます。コツは熱々のうちにやること。バターが溶けやすくなります。

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クリーミーなマッシュポテト、軽く茹でてからオーブンでローストしたビーツに低温調理したサーモンをのせ、フライパンに残ったバターをかけます。全体に胡椒をふり、ディルをたっぷりあしらえば、サーモンのソテーの完成です。



表面はカリッと香ばしいのに、中は芯までしっとりふんわり。肉厚のサーモンを焼くときにありがちな、生焼けを恐れて焼き過ぎたせいでパサパサになるという現象とは無縁でした。おいしかった。

バリエーション~サーモンのソテーのオープンサンド~



バリエーションとして、オープンサンドに仕立ててみました。今回はくるみパンをスライスして、バターとマッシュポテトを塗った上に、一口サイズのサーモン、ローストしたビーツ、ディルをあしらって胡椒をふっています。食べやすいのでおもてなし料理にもよさそうです。

低温調理の注意点も忘れずに

ここまで長い記事にお付き合いいただき、ありがとうございました。既にお気付きかもしれませんが、今回のレシピはどれも、下味をつけて低温調理する→表面を焼く→盛り付けるというシンプルな工程の繰り返しです。

シンプルな工程でおいしくできる、いいことずくめに見える低温調理ですが、低温で長時間加熱するという調理の特徴から、いくつかの注意点があります。



肉や生食用ではない魚の切り身には、食中毒の原因となる細菌や寄生虫等が付着している(素材によっては内部まで汚染されている)可能性があるため、素材ごとに適切な温度と時間で加熱殺菌し、リスクを低減しなければなりません。厚生労働省によると、豚肉を販売する際の加熱殺菌の基準は「中心部について63度で30分以上または75度で1分以上」とのこと。これは、豚肉を安全に加熱するためのひとつの目安になります。

また、低温調理(55度から68度)は高温調理(80度〜)よりも細菌が繁殖しやすい温度帯を長く維持することになり、細菌の繁殖による食中毒を防ぐためには、通常よりもさらに衛生管理に気をつける必要があります。

具体的には、細菌などに汚染されている可能性の高い食材(鮮度がよくないものや流通経路が不明確なもの)は使用しない、調理器具は清潔なものを使い必要に応じて熱湯消毒をする、ジップ付きポリ袋は再利用しないなど。最後に表面だけ高温で焼いて、表面に付着しているかもしれない細菌を加熱殺菌するのも有効です。

§ § §

低温調理のポイントは、適切な温度と時間での加熱塩分濃度そして衛生管理。これらをきちんと押さえれば、シンプルな工程でもおいしい一皿に仕上げることができます。準備の面で少々ハードルが高い印象はありますが、肉や魚の塊をおうちで調理する際の奥の手として、ぜひ一度お試しいただきたいと思います。その際にこの記事が少しでも役に立つことがあれば、とてもうれしく思います。

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著者:ぶち猫 (id:buchineko_okawari)

buchineko_okawari

ぶち猫二匹と暮らしています。趣味は料理、お菓子作りと写真。主に食べ物にまつわるあれこれをブログに綴ったりもしています。

ブログ:ぶち猫おかわり

*1:2016年9月8日 15:15追記:サーモンは必ず生食できるものを選んでください。なお記事中で使用しているのは、寄生虫対策済みの冷凍サーモンです。

『山と食欲と私』(信濃川日出雄)の「炊きたてご飯のオイルサーディン丼」を山で再現してみた【マンガ食堂それどこ店 1品目】

「マンガの料理を再現する」という趣味を持ち始めてから8年、私の台所は一変しました。

少ないモノで暮らす生活にあこがれていたはずなのに、かつお節削り器、パスタマシン、カクテルシェーカー、仕出し用の重箱……。今や戸棚の中は、普段ほとんど使わない道具がひしめく“リトルかっぱ橋”状態です。

そんな私が、今回「それどこ」で始める連載のテーマは「キッチンツール」。

マンガに登場する調理道具にスポットをあて、それを使いこなしながら料理を再現するというものです。台所の魔窟(まくつ)化がさらに進む予感がしつつ、未知なる道具との出会いが楽しみであります。

今回再現するのは、山メシマンガ「山と食欲と私」

(C)信濃川日出雄 2016/新潮社

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登山ブームと連動し「山メシ」がひそかに盛り上がっていることは知っていたけれど、超インドアの自分には永遠に縁のない世界だと思っていました。このマンガを読むまでは。

Webマンガサイト「くらげバンチ」で連載中の「山と食欲と私」。普段は会社員として働く主人公・日々野鮎美(27歳)は、「単独登山女子」を自称し、週末になるとひとりで山に出かけ、ひとりで調理をして「山メシ」を食べます。

登って、食べて、下りる。ただそれだけのストーリーなのですが、見慣れないアウトドアグッズ、山という限られた環境下でアイデアを駆使する調理シーン、そして自然の中でおいしそうに食べる描写に引き込まれます。あと、主人公の鮎美ちゃんがとにかくかわいいです。食マンガのヒロインらしからぬコミュ障ぶりやこじらせた性格に、親近感が湧きます。

この作品の中から、今回再現するのは、11話に登場する「炊きたてご飯のオイルサーディン丼」!


(C)信濃川日出雄 2016/新潮社

主役となる道具は、スウェーデン・トランギア社の飯ごう「メスティン」です。

メスティンに漂う「山のル・クルーゼ」感


(C)信濃川日出雄 2016/新潮社

飯ごうといえば、日本ではこういう(↓)形のものがおなじみですが(ちなみにこれも、以前再現用に購入したもの)、「世界最小の飯ごう」と言われているメスティンは、まるで弁当箱のよう。携帯性と熱伝導に優れており、ご飯がおいしく炊けるそうです。

アウトドアに詳しくない自分はまったく知らなかったのだけど、山メシ愛好家の間では、流行を経て今や定番のアイテムとのこと。作中でも、鮎美ちゃんが登山先でメスティンをいそいそと取り出すも、隣の山ガールとモロかぶりしてしまうシーンが描かれています。


(C)信濃川日出雄 2016/新潮社

目新しいデザインと機能性、北欧生まれという「なんかオシャレ」なイメージから、数年前にフランス生まれの鍋「ル・クルーゼ」や「ストウブ」が日本のキッチンを席巻したときのことを思い出します。メスティンは「山のル・クルーゼ」、と言ってしまっていいのかもしれない。そういえば、ル・クルーゼでご飯を炊くのも流行りましたよね。

と、下調べをしたところで「それどこ」編集部さんから今回のミッションセットが届きました。


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こちらがメスティン。アルミ製で、思っていたよりも軽いです。取り外しできる取っ手の作りも簡素で、この「そっけなさ」が逆にそそります。

購入したばかりの状態はフチの処理が甘く、バリ(加工の際などに発生する突起)でギザギザしているため、まず紙やすりで「バリ取り」をします。手で触ってみたところ、確かにフチが引っ掛かるような感触。ケガをしないよう、紙やすりで数回しごいておきました。


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こちらは、スノーピークのシングルバーナー「ギガパワー ストーブ地」。作中に何度も出てきたアイテムなので、思わずひとりで「おおお」と盛り上がりました。五徳にあたる部分は取り外しできるようになっています。

どうせならマンガと同じ場所(=山)で炊きたい

道具を触っているうちに「どうせなら屋外で炊きたい」という気持ちがむくむくと湧いてきました。さらに欲を出すなら、鮎美ちゃんが実際に登った山に登りたい。

(C)信濃川日出雄 2016/新潮社

作中には「海辺の低い山」「富士山と江の島が一緒に見える」という立地の描写がありますが、どこかは分からなかったため、思い切って「それどこ」編集部さん経由で「くらげバンチ」編集部さんに尋ねたところ、モデルの山が判明しました。

その場所とは、神奈川・葉山の「仙元山」。三浦アルプスの一部で、標高118メートル。……思っていたよりも、低い、低いぞ。

私のまともな登山経験は小学校の遠足で登った近所の山が最後ですが、それが300メートルくらいだったから、余裕じゃないだろうか。低山でもナメてはいけないということで、一応ザックと雨具は用意しましたが、この時の私は正直ナメくさっていました。

とはいえ、登山前日は4話に登場する「カーボローディング弁当」を再現し、体調を整えました。

カーボローディングとは、運動に必要なエネルギー(グリコーゲン)を一時的に筋肉にため込むため、摂取する栄養をコントロールすること。鮎美ちゃんは週末の登山に備えて、金曜日のランチに炭水化物を多く摂取するのが恒例になっているそうで、ナポリタンスパゲティ、たまごサンドイッチ、おにぎりというわんぱくメニューを食べていました。


(C)信濃川日出雄 2016/新潮社

糖質制限ダイエットをしている人が見たら激怒しそうなメニューです。そもそも標高118メートルにこの大量エネルギーは必要なのか疑問ですが、こっちは生粋のもやしっ子なので、万全を期します。

いざエピソードの舞台、仙元山へ

決行日当日は晴天。仙元山へはJR逗子駅から山手回りのバスに乗り、「風早橋」で下車します。

バスを降りたら、ハイキングコースの入り口がある葉山教会へ。目指すは「仙元山山頂」です。

さっそく想定外だったのが、葉山教会までの心臓破りの急坂。ちょっと油断すると後ろに転げ落ちそうな角度で、脚にかつてない地球のG(重力)を感じます。教会までの道のりがこのハードさ、超試されてる……。

この時点で引き返したくなりながら、3話で鮎美ちゃんが急坂を「ジグちょこ歩き」で突破するシーンを思い出し、さっそく試してみたりしてなんとか登り切りました。ほい。ほいっ。


(C)信濃川日出雄 2016/新潮社

ハイキングコースの入り口は、教会の横道にありました。さあ登るぞ!

…………………標高118メートルというスペックだけ見て完全にナメていましたが、初夏の山は初心者には地獄でした。

山道の雑草は伸び放題で獣道化しているし、梅雨の合間なのでぬかるみも目立ちます。ここ数年かいたことのない大汗をかき、息切れをしながらただただ無心に登ります。

30分ほどかけてなんとか登り切ると、山頂で待っていたのは、マンガと同じご褒美ビュー! わー、これは気持ちいい。


季節的に富士山までは見渡せませんが、江の島ははっきりと見えます。

そして、マンガの中で鮎美ちゃんが座っていたのは、おそらくこの写真手前の席。

しかし到着時は先客の女子2人組がこの席で何やら語りあっており、隣でひとり飯を炊く女がいては気が散るだろうと配慮し、さらに奥に進んだ場所にあるベンチに陣取ることに。

いよいよ、メスティンでご飯を炊いてみる

一息ついたら、さっそく道具と材料を出して調理開始です。今回の材料は以下の通り。

  • 生米(1合分)
  • オイルサーディン缶
  • レタス(保冷剤と一緒に持参)
  • しょうゆ

まずはメスティンに生米を入れ、水を容器内側の“ポチポチ”の半分くらいまで注ぎます。

「♪はじめチョロチョロ 中パッパ」のアレンジ版として鮎美ちゃんが編み出した「メスティン炊きの歌」にあわせて、火にかけます。


♪はじめマックス
(バーナーを最大火力に。メスティンの上にはオイルサーディン缶を乗せ、温めておく)


♪ププッと吹いたらグッとこらえて15分
(吹きこぼれたら超弱火にして15分)


♪まもなくチリチリおどろいて
(メスティンから「チリチリ」と音がしたら、火を止める)


♪火から飛び降り10分ムラムラ
(火からおろし、タオルでくるんで10分蒸らす)

蒸している間は景色をゆっくり眺めたり、風や鳥の音に耳をすましたり、贅沢な時間が過ぎていきます。

そして10分後。いざ、フタを開けます。

炊けてるー! ちゃんと、おいしいご飯が炊けたときにできるらしい「カニの穴」的なものも!

まずはご飯だけ味見してみました。芯は残っていないし、粘りはあるし、なかなかいい炊き加減。とぎ洗いしていない生米からの炊飯なので、ぬかの匂いが心配でしたが意外に大丈夫でした。気になる人は無洗米で炊く方がいいかも。

(炊けたご飯の1/3はラップにくるんで、下山用のおにぎりにしました)

「炊きたてご飯のオイルサーディン丼」を作る

ここから、炊けたご飯にひと手間。


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ちぎったレタスをご飯の上にのせて、温めておいたオイルサーディン缶を開け、

そのままご飯の上に乗っけます。


しょうゆを回しかけて、よく混ぜると……

「炊き立てご飯のオイルサーディン丼」完成! さっそく、食べてみます。

イワシのオイルがご飯にいい感じになじんで、こってり混ぜご飯風に。レタスのシャキシャキした食感が口直しになって、絶妙なバランスの山メシ丼でした。


(C)信濃川日出雄 2016/新潮社

鮎美ちゃんのように、取っ手をこうやって持ちながら食べました。メスティンならではの楽しいスタイル。うまかぁ。

ごちそうさまでした。外で作って食べると、食欲が1.5倍くらい増幅されるような気がします。

カンカン照りのなか、ひとり山頂で飯を炊く女はかなり不審度が高いはずですが、すれ違う登山客の方々が「こんにちはー」と声をかけてくださり、これが登山マナーとして知られるあれかー、と心が洗われました(何人かは目が警戒モードだった気もしますが……)。


無事再現できたので、片付けをして下山……と思ったのですが、エネルギー源も入れたことだし、勢いで三浦アルプスの縦走コースへ進みました。なぜなら下調べしている際、下山口の近くにプリンが有名なお店「マーロウ」があるとわかったからです。作中で鮎美ちゃんも言っていたけれど、「大人はご褒美がないと頑張れない」生き物なんです。


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途中、コース一番の難所とされる250段の階段が待ち受けていたり、ぬかるみで盛大にコケたりと色々ありつつも、鬱蒼(うっそう)とした山中を進むうちに、静かにアドレナリンが湧いてくるのがわかりました。まさか自分の人生で山に登って「気持ちいい」と思うことがあるなんて、考えてもみませんでした。

思い返せば、これまでの登山はみんなのペースにあわせて歩き、みんなにあわせて休憩するというものでした。自分のペースで進む山行が、こんなに自由で楽しいものなんて知らなかった。山メシのおいしさだけでなく、鮎美ちゃんのポリシーである「単独登山」の魅力にも気づいた一日となりました。

インドアな自分には考えられない感想ですが、まずはトレッキングシューズでも買ってみようかなと思います。

「炊きたてご飯のオイルサーディン丼」の再現を動画でも

今回再現した「炊きたてご飯のオイルサーディン丼」の調理手順は、動画でも公開しています。「作ってみたい!」という方は、ぜひ参考にしてみてください。

著者:梅本ゆうこ

梅本ゆうこ

1979年大阪府生まれ、関東在住。 会社勤めのかたわら、2008年よりブログで漫画に登場する料理(マンガ飯)の再現に取り組む。2012年にリトルモアより書籍「マンガ食堂」を刊行。
ブログ:マンガ食堂 Twitter:@pootan

鉄のフライパンで簡単に絶品レシピ!? 「鉄鍋伝道師」おすすめのフライパンを体験

こんにちは、OKPと申します。私は毎日、朝・昼・夜の3食を自炊しています。そんな中、以前からずっと気になっている調理器具があるんです。それは「鉄のフライパン」

ずっと利用しているフッ素樹脂加工されたアルミのフライパンも使いやすいのですが、どんなに丁寧に使っていても徐々に表面が傷ついて、数年で買い換えを迫られてしまいます……。

一方で、鉄のフライパンは「丁寧に使えば一生モノ」なんて話もよく聞き、洋食屋の厨房に吊された、使い込まれて黒光りしたフライパンに憧れております。

だけど、鉄の調理器具は「くっつきそう」「サビそう」「手入れが大変そう」というイメージもあって、なかなか手を出せないのが正直なところ……。

そんなときに、鉄鍋(鉄のフライパン)の魅力を教えてくれる心強い人がいると聞き、今回は神奈川県三浦半島の葉山までやってきました! 葉山の閑静な住宅街の一角にある「COOK&DINE HAYAMA(クック&ダイン葉山)」です。

鉄鍋伝道師が語る鉄鍋の魅力

COOK&DINE HAYAMAは古い倉庫を改装して作られた、オシャレなキッチン&アウトドア雑貨のお店。

天井の高い開放的な空間にフライパン、ダッチオーブン、スキレットといった各種鉄鍋をはじめ、さまざまなこだわりのクッキングツール、そして面白そうな調味料や食材が所狭しと並べられています。

薪ストーブの取り扱いを体験できるスペースや、珈琲やビールを楽しめるカフェも併設されていて、一日中過ごしていられそうなステキ空間。

■ 脱サラしてまで鉄鍋にハマり店をオープン

こちらがCOOK&DINE HAYAMAの店長・山口壮一さん。「鉄鍋伝道師」の二つ名を持つ鉄鍋のプロであります!

もともと百貨店に勤めていた山口さん。鉄鍋との出会いはその百貨店時代のことでした。

担当していた事業で、アウトドア料理で使われる蓋付きの分厚い鉄鍋「ダッチオーブン」を取り扱ったことがはじまりだったようです。そして、そのときに受けた「鉄の鍋に食材を放り込んで、火を付けただけで何でこんなに美味しいの!?」という衝撃から鉄鍋にどハマりしていったのだとか。

百貨店を退職し、やがて楽天市場に食材や調理器具を販売するWEBショップ「三浦半島まるかじり クック&ダイン」をオープン。そして、念願のリアル店舗「COOK&DINE HAYAMA」をこの葉山にオープンさせたのが今から4年前でした。

「自分が心底惚れ込んだ道具を、お客さんに直接説明でき、実際に喜んでもらえることは本当に嬉しい」と熱く語ってくれました。

■ 鉄鍋の魅力は鉄特有の熱伝導性、蓄熱性、火の当たりの柔らかさ

山口さんが鉄鍋の魅力として教えてくれたのが、我々が使い慣れているフッ素樹脂加工されたアルミ製フライパンとの違い。

もっとも大きな違いは、鉄という素材が持つ「熱伝導性と蓄熱性」。そして「火の当たりの柔らかさ」なのだそうです。

アルミのフライパンは熱伝導性が良いため、火にかけたらすぐ温まり、食材を入れると温度が下がりやすい特性があります。それに対して、鉄のフライパンは鉄特有の「熱しにくく冷めづらい」という特性があります。

火にかけてもアルミのフライパンのようにすぐ温まらない代わりに、一度持った熱はなかなか冷めずに一定の温度をキープし続けます。そんな分厚い鉄板(鉄鍋)が火と食材の間に挟まることで、じわじわと熱が伝わって保たれるので「火の当たりが優しくなる」のだそうです。

もちろん道具としての寿命の長さも鉄のフライパンの大きな魅力。フッ素樹脂加工のフライパンは購入時が性能のピークなのに対して、鉄のフライパンは時間をかけて油を馴染ませ、徐々に育てていく道具なのだとか。

じゃあ、どれがいいの!? 鉄鍋伝道師オススメの鉄のフライパン

COOK&DINE HAYAMAではダッチオーブンをはじめ、さまざまな鉄のフライパンが売られています。これだけたくさんのフライパンが並んでいると、私などは何を選べばいいのか悩んでしまいます……。

山口さんによると「通勤と登山の両方に使える鞄がないように、フライパンも用途別に最適な選択肢があるんですよ」とのこと。なるほど!

■ 間違いない! 鉄鍋入門には「LODGE(ロッジ) スキレット」

山口さんが鉄鍋の入門として一番にオススメするのがLODGE製のスキレット。溶けた熱い鉄を型に流し込んで作る鋳物(いもの)で、手に持つとズッシリとした重みがあります。最初はその重さにビックリしてしまう人も多いそうですが、中華鍋のように振って使うものではないのですぐに慣れるようです。

そして、この分厚い鉄板こそが、アルミ製フライパンとの違いをもっとも分かりやすく体験させてくれるのだそう。

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サイズがたくさんある中、山口さんのイチオシは「10・1/4インチ」のスキレット。少々大きめですが、取っ手の反対側に持ち手が付いているので扱いやすいそうです。

さらにスキレットには別売りの蓋があります。この蓋を組み合わせて使うことで、ダッチオーブンのような無水調理、蒸し焼きが可能になります。詳しくは後ほどの実践編にてご紹介します。

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さて、鉄のフライパンと聞いて、お手入れとともにハードルが高いと感じるのが、使いはじめの「シーズニング(慣らし作業)」ではないでしょうか。

しかし、このLODGEのスキレットはメーカーでシーズニング済みなので、買ったらすぐに使いはじめることができるとのこと。お湯を流しながら「亀の子束子」でゴシゴシと洗ってあげるだけでOK。洗剤を使う必要もありません。


■ 肉料理にこだわりたいあなたは「プロ・アルテ グリルパン」

もう一つオススメを紹介してもらいました。こちらは南部鉄器の波形グリルパン。見るからに肉を美味しく焼けそうな雰囲気です。

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このグリルパンのキモは波形の溝に落ちた油から上がる、煙が生み出す味の良さだとか。ちょうど焼き鳥屋の炭火焼きと同じ効果ですね。肉を焼くことに特化したフライパンです。

実際に体験してみました

今回は特別に鉄鍋を使った調理を体験させていただくことになりました。使用する鉄鍋は入門にぴったりという「LODGEのスキレット」です。山口さんいわく「鉄鍋を使うことで、余計な調味料を使わずに素材の味を引き出すことができ、より料理が簡単になる」のだとか。

はじめる前から「今日で人生変わると思いますよ」と、鉄鍋へのハードルを容赦なく上げていく山口さん(笑)。なんて揺るぎない、鉄鍋への信頼と自信でしょう。

調理はCOOK&DINEの厨房をお借りしました。家庭にあるガスコンロと同じような環境で、ということでカセットコンロで調理しました。

素人の私でも、自宅で簡単に再現できそうなメニューばかりでしたので、皆さんもぜひ試してみてくださいね。

■ シンプルな料理だからこそ違いが歴然「目玉焼き」

まずは、もっともシンプルな目玉焼きからスタート。超単純な料理だからこそ、スキレット調理の実力が分かるのだそう。

スキレットに限らず鉄鍋を使う際の唯一で最大のポイントは「食材を入れる前にしっかり加熱しておく」こと。これさえ守れば、食材が鍋にくっ付くことはまずないそうです。

鍋の温まり具合を確認しやすいよう、火を付ける前に油を入れます。鉄鍋を温める際の火加減は「中火」が基本

鍋が温まり油が広がってきましたが、まだ食材は入れません。うっすらと湯気のような白い煙が上がってきたころが食材を入れるベストなタイミング。

「白い煙」というと焦げた様子を想像してしまうかもしれませんが、うっすら立ち上る薄い油の湯気です。写真には写らないようなレベルなので、よく鍋を見ていてください。

湯気のような煙が上がったら火を「弱火」に。これで食材投入の準備完了。この予熱作業はどの調理でも基本となるので、忘れずに覚えてくださいね。

それでは、卵を割っていきます。これは毎朝手慣れた作業なので自信を持って(笑)。

ジュワ〜〜〜〜♪

心地よい音とともに、鍋に触れた白身が瞬時に固まっていきます。瞬間的にタンパク質を凝固させることで、くっ付かない調理が可能になるそう。

ここから蓋を被せて約3分。重たい鉄の蓋による密閉具合と、当たりの柔らかい火により、卵の水分がスキレット内でゆっくり蒸発して蒸し上げる無水調理となります。

蒸発した水蒸気が蓋から落ちてパチパチとハジける音がしたら、そろそろ完成です。

うーん、いい感じに焼き上がりました。塩を軽く振ったら、ターナー(フライ返し)で剥がしてお皿へ。

見て下さい、この裏面の美味しそうなパリパリ具合。実際に食べてみると、白身の旨味にビックリ。裏側がサクサクしてて、白身の味も濃く感じられます。

私が毎朝作っている目玉焼きとは明らかに違う味。素材の味を引き出す鉄鍋の力、いきなり見せつけられました。

■ 材料を入れて混ぜるだけでおいしい「スペイン風オムレツ」

続いて「ロクスキ」こと6・1/2インチサイズの小さなスキレットを使って、枝豆とベーコンをたっぷりと入れたスペイン風オムレツに挑戦します。

スキレットといったら、このミニサイズを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。この料理でもスキレット専用の蓋が活躍します!

最後に卵が膨れるので、スキレットの8分目ほどの卵を使います。6・1/2インチサイズのスキレットでは、卵5個でちょうどです。

味付けは塩と醤油を少々、これだけです。実にシンプル! 今回も油を流したスキレットを、中火でよーく加熱していきます。

スキレットの上の方まで卵液を流し込むので、側面にもしっかり油を馴染ませていきましょう。この際、持ち手が熱くなるのでミトンを使うことをお忘れなく!

まずは、皮をむいた生の枝豆とベーコンを炒めて塩を振ります。これだけで十分おつまみになりそうですが、もちろんこれはまだ下準備。

ちなみにベーコンは山口さんの自家製。そのままでもめっちゃオイシイのですが、今回は贅沢に具材として使います。

ベーコンに火が通ったのを見計らって、卵液を流し込んでいきます。

ここから周囲の固まった卵の壁をゆっくりと箸で内側に崩しながら、卵をかき混ぜていきます。

ここで鍋肌に卵がくっ付かないのは、蓄熱性のおかげ。卵液が触れてもスキレットの温度が下がらないからです。

半熟の親子丼のようになったら蓋をして、しばらく固めていきます。時間は5分くらい。特にひっくり返す必要はありません。

はい、焼き上がりました。すぐには取り出さず、火を止めて温度が下がるのをしばらく待ちましょう。


* * * 20分後  * * *

スキレットとオムレツが冷めてくると、こんな感じで周りから自然に剥がれてきます。あとはスキレットを逆さにして取り出すだけ。

どうでしょう、この美味しそうな焼き色。こんなに分厚いオムレツだというのに、全く焦げていません

しっかり中まで火が入っていますし、味はもう間違いなし。味付けは塩と醤油だけですが、ベーコンの塩気と旨味、枝豆の風味が引き出された、もの凄く豪華な一品になっています。

こんなのホームパーティでお客さんに出したり、バーベキューで披露したら絶対に喜ばれるに決まってます!


■ あのカリカリ食感を味わえる「チキンソテー」

まだまだいきます。続いてはチキンソテー。使うのはもちろん鶏のもも肉。そして、調味料は塩のみでコショウも必要ありません。「ちょっと多いかな?」と思うくらい、肉の両面にしっかりと塩を振っておくのがポイント。

スキレットがしっかりと加熱されたタイミングで、もも肉の皮面を下にして焼いていきます。写真の10・1/4インチのスキレットなら、一度で2枚焼くことが可能です。

ここでミートプレスが登場。このステンレス製のズッシリした円盤を肉の上に載せることで、焼けた肉が反ることなく、端から中心まで均一に火が入ります。

【楽天市場】ステンレス鋳物(キャスト)製・ミートプレス:三浦半島まるかじりクック&ダイン

蓋をしてしばらく蒸し焼き状態にすると、一気に熱が回ります。たまにミートプレスをズラして、肉の焼き面がしっかりスキレットに触れるようにするのを忘れずに。

もも肉をひっくり返して再度ミートプレスを載せて焼きます。蓋はもう外してしまってOK。

もも肉に火が通った頃合いを見て、最後にもう一度皮面を焼きます。こうすることで、鶏皮がパリパリに焼き上がるのです。

火の通り具合は、肉の一番厚みのある部分に爪楊枝を差して10秒待ち、この爪楊枝を唇に当ててしっかり熱くなっていればOKのサインです。ぬるいようならまだのサイン。

見てください、このパリパリの皮面。まさにクリスピー!

もちろん火加減はバッチリ。あの「皮はパリパリ、身はジューシー」の究極がここにあります。

そして絶妙な塩加減。他の調味料は一切使わずに、鶏と塩、そしてスキレットのみで、今まで食べたこともない絶品チキンソテーが完成してしまいました!

調理中に山口さんから発せられた「“塩コショウ”がミニマムな味付けではない」という名言が頭に響きます。

■ 栗のような甘味と食感。入れて待つだけの「焼き枝豆」

続いて山口さんイチオシの焼き枝豆です。この料理では油を使いません*1

枝豆を水洗いして、予熱したスキレットに広げたらOK。あとは蓋をして弱火で10〜15分くらい待ちます(写真の量なら10分程度)。途中何度かかき混ぜてあげましょう。

焼き上がりはこんな感じ。やや焦げ目が多めですが、特に問題はありません。最後に塩を振って完成です。

これは、何と言えばいいのでしょう……? 普段食べている茹で枝豆とは全くの別物です。甘味が強く、食感は“ホクホク”で栗でも食べているかのようです。焦げ目による香ばしさも特筆ポイントです。

■ 自宅で高級店のクオリティ! グリルパンで焼く「葉山牛のステーキ」

ここまでのスキレット料理でも、十分に鉄鍋の力は見せてもらいましたが、ラストはいよいよ本日の主役……地元葉山で育ったブランド和牛! 葉山牛のもも肉を使ったステーキです。使用するフライパンは先ほど紹介した、波形のグリルパンです。

ここまでは山口さんからアドバイスをいただきながら私が調理をしてきましたが、このお肉の調理に限っては山口さんに全て委ねることとしましょう。

調理前の味付けは一切なし! 和牛のようなサシ(脂身)の多い肉の場合、焼いているうちに脂とともに塩が流れてしまうことがあるのだとか。

ということで、焼き上がりに塩で味を整えるのみ。当然、今回もコショウは登場しません。ちなみに赤身のお肉の場合は、最初に塩で下味を付けてしまってもいいそうです。

グリルパンとスキレットとの大きな違いは、加熱は中火でなく「強火」で一気に温めること。波形形状によりフライパンの表面積が広がり、放熱の効果も高いのが理由だそうです。

火が入ったらそのまま肉を焼きはじめます。ここでもミートプレスが活躍。

見てください、この素晴らしい焼き目。グリルパンを使う目的は煙の効果であり、焼き色は副次的なもの……とはいえ、やはり食において見た目も重要であることがよく分かります。

これだけ分厚いお肉なので、サイドにも焼き目を付けていきます。立ち上る煙、これが美味しい肉をさらに美味しくするのです。

真剣にステーキを焼き上げていく山口さん。思い出してください、使っているのはどこの家庭にもあるカセットコンロです。決して特殊な厨房で作られている料理ではありません。

……ゴクリ。

うわあああああ……。

ちょうど近くにいたお客さんからも歓声があがります。見事なミディアムレアの焼き上がりは、もはや芸術品です。

ここで初めてお肉に塩を振っていきます。塩は山口さんこだわりのイタリア産海塩です。

(ひと口食べて)…………。

言葉にならず、その場で黙ってしまった私……。

本当に美味しいものを口にすると、人間は思考能力が極端に低下して「すごい」「やばい」のような単純な感嘆詞しか出ないんですね。しまいには笑い出してしまう始末。グルメレポート的には最低ですが、これが真実です。

もちろん最高の食材を使っていることもありますが、その食材を最低限の味付けで、極限まで旨味を引き出す鉄板の力。そして、これぞ鉄鍋伝道師の実力。本当にお見それしました。

使用後のお手入れも超簡単

最後に使用後のスキレットのお手入れについて、教えていただきました。

一連の調理で、鉄のフライパンは予熱さえしっかりしておけば、くっ付かないことがよく分かりました。あとは「使用後の処理が面倒でないのか」「どうしたらサビないのか」です。

まず、お湯を流しながら亀の子束子で表面の汚れをよく落として、再度火にかけて表面の水を飛ばしてあげましょう。洗剤は使いません。

続いて使うのが、使わなくなったシャツなどのボロ布。それらを細かく切って用意しておくといいそうです。

ボロ布にオリーブオイルを含ませて、乾いたスキレットに塗っていきます。鉄鍋は蓄熱性が高いので、水を飛ばしてしばらく経っても表面は熱いことがあります。火傷には注意してくださいね。

鍋の内側から薄ーく伸ばすように。酸化しにくいオリーブオイルをスキレットに塗ることで、錆止めの効果があるのです。

鍋の裏側や蓋も、同様にオイルを刷り込んだらそれでおしまい。手間がかかりそう……と勝手に思い込んでいたスキレットのお手入れは、実際に体験してみると思ったよりも簡単です。

スキレットを使う度にこの作業を繰り返すことで、徐々に鉄板にオイルが馴染み、黒光りする自分だけのスキレットへと“育って”いきます。ボロ布は一度で使い切りにせず、汚れるまで数回使ってOKですよ。

鉄鍋初体験の私の感想〜ミニマムな調理方法と味付けの衝撃

鉄鍋伝道師による導きで実際にスキレット調理を行い、その味を体験した私。思った以上に扱いが簡単で、実際にどの料理も最高に美味しかった。

しかし、なにより衝撃だったのが「調理方法と味付けのシンプルさ」です。山口さんが鉄鍋にハマっていった際の魅力として語ってくれた「料理がどんどんシンプルになっていった」という言葉。その意味を、ここまで分かりやすく体験できるとは思いませんでした。

オムレツは、塩と少しの醤油。目玉焼き、チキン、枝豆、ステーキは全て塩のみです。ずっと塩味の料理が続いたら飽きてしまいそうなものですが、どの料理も素材の旨味が驚くくらいに引き出されていて、同じ塩を使っていても全て別の味として楽しむことができました。

「シンプルに素材の味を引き出す」そんな基本的なことの大切さを教えてもらい、実際に私もマイ鉄鍋を“育てて”みたくなった、そんな鉄鍋体験でした。

現在我が家でもスキレットの導入を検討中。実際に自宅でマイ鉄鍋を“育てて”みて、満足のいく鉄鍋料理を作れるようになったら、また葉山を訪ねて鉄鍋伝道師にお礼を伝えるのが目標です。

山口さん、今回はありがとうございました! そしてご馳走様でした(笑)。

※今回は特別に厨房をお借りしました。通常は利用することができませんので予めご了承ください

著者:OKP

OKP

東京在住のフリーランス編集者/主夫。アウトドアと音楽、6年前に始めたカメラが趣味のアラフォー。ブログ「I AM A DOG」では、カメラや登山、日々の食事について書いてます。

Twitter:@iamadog_okp

「COOK&DINE HAYAMA」の紹介動画、公開中!

*1:使用して間もないスキレットの場合は少量の油で予熱します

珍しい品種のジャガイモで、カラフルなポテトサラダを作る

目は口ほどに物を言うし、なんなら飯も食う。

聞くところによると人間は情報の83%を視覚から得ており、味覚からはわずか1%しか得ていないそうです。「舌よ、もうちょっと仕事しろ。喋るだけが君の役割じゃないだろう?」なんて思わなくもないですが、確かに彩り豊かな料理を見ると食欲がわくものです。盛りつけや色合いって、ひょっとしたら塩や砂糖と同じぐらい大事な調味料なのかもしれないですね。

そんな訳でどれぐらい視覚が味覚に影響を与えるのか、カラフルなポテトサラダを実際に作って検証してみましょう。

子どもも大好き大人もぞっこんな国民食にして、給食から飲み屋街まであまねく広がる日本のソウルフードことポテトサラダ。キッズたちの健やかな成長から新橋のお父さんたちの財布まで守る頼もしい奴です。最初は「適当に食紅で色でも着けるべぇか」と思っていたのですが、せっかくだから他に何か良い方法がないか色々と探していたところ、面白そうなものを見付けました。はい。それがこちら。

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おぉ、見たことのないカラフルなおイモさんたち! 小さいころスーパーでロマネスコやらエンダイブやら見たことない野菜を見付けては、買ってくれと親にせがんで断られていた僕の幼少期のルサンチマンがいまやっと解消されようとしています。自然と胸が高まりますね。

で、さっそくポチっとして3日後には届きました。

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まずはお馴染みの「インカのめざめ」。小粒で甘くて黄色い品種。アンデスでハレの日にしか食べられない高級ジャガイモ「ソラナムフレファ」種を日本向けに改良したものだそうで、日本でもスーパーなどで見掛ける機会が増えてきました。これ美味しいんですよねぇ。

 


お次は「ノーザンルビー」。アントシアニン(ポリフェノールの一種で抗酸化物質。ブルーベリーにも沢山含まれていて、目に良いそうです)がたくさん含まれており、栄養価が高いのだとか。綺麗なピンク色が素敵ですね。

 


そして真打ち「シャドークイーン」。すごい色ですね。ノーザンルビーと同じくアントシアニン由来の色だそうで、生いも1gあたり8.16mgも含んでいるそう。これ1個食べたらブルーベリーのサプリとか飲まなくてもいいのでは……。

 

それにしてもジャガイモと同じくアンデス出身のアルパカさんも「なにがはじまるんやこれ」と若干驚くぐらいの量ですね。同居中のカノジョ(糖質制限ダイエット中)には怒られましたね。お前はアタシを太らせる気か、と。農家のお父さん、たくさん送ってくださってありがとうございます。それにしても希少種の農作物がワンクリックで買えるなんてホントに良い時代になったもんですねぇ。

 

さて、調理に取りかかる前にまず「加熱しても色が変わらないか」「味はどうなのか」などを確かめるために、1個ずつ茹でて食べてみたんですが、何よりインカのめざめの美味しさに愕然……。これ、ジャガイモというよりもサツマイモとか栗とかの甘さだわ。舌触りもねっとりしてるし、色も綺麗。ポテサラにしないでそのまま食べたい。

ノーザンルビーとシャドークイーンはともにアッサリした味で、ほくほく感は少なめでした。たぶん形も似てるし色以外はメークインと近いのかな。加熱調理してもしっかりと色が残るようなので、色を活かす感じで料理したいですねぇ。ヴィシソワーズにしても良いかもですね。でも今回はポテトサラダを作ります。

 では調理を開始しましょう。材料はこちら。

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【材料(6〜8人前)】

  • インカのめざめ   4個
  • ノーザンルビー   4個
  • シャドークィーン  4個
  • クレソン      1束
  • パプリカ      1個
  • ムラサキタマネギ  1個
  • キュウリ      1本
  • ミニトマト  1/2パック
  • ソーセージ   1パック
  • ハム     1/2パック
  • 玉子        2個
  • ツナ缶       1缶
  • 牛乳        200cc
  • 酢      大さじ1杯
  • マヨネーズ  大さじ10杯
  • マスタード  小さじ3杯
  • 塩・胡椒       適宜

【手順1】ジャガイモを茹でる

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“レンチン”や、さいの目に切って茹でるなど、ジャガイモを茹でるにあたって皆さん色々とこだわりやライフハックがあるようですが、今回は丸々茹でることにしました。なんとなく色がよく残りそうですし。既にこの時点でそれぞれの品種の個性がうかがえて楽しみですね〜。茹で上がったらインカのめざめとノーザンルビーは荒く潰しておきます。

 

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ノーザンルビーはこんな感じ。うん、春らしい色合い。潰し過ぎると色が薄くなりそうだったので、粗めにしたんですが、これくらいちゃんと色が残るなら意外としっかりマッシュしても大丈夫かもですね。

 

で、シャドークイーンは茹で上がったら皮を剥いて……あれ、どこいった?


シャドークイーン『こんにちは。茄子です』

すごいな、コレ。茹でたらむしろ色が濃くなったような気がする。

【手順2】具の下ごしらえ

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ムラサキタマネギは3/4をスライサーで薄切りにして、塩を振り水分を抜く。残りの1/4はみじん切りに。スライスしたタマネギひとつまみ分を油で揚げてフライドオニオンを作る。同じくキュウリも薄切りにして塩を振り、水分を抜く。ソーセージは輪切りにして軽く炒めて脂を落とす。プチトマトは半分にカット、クレソンは洗ってぶつ切り、ハムは1cmの短冊にカットで。牛乳は酢大さじ1を入れてレンジで2分加熱してザルとクッキングペーパーで絞り、カッテージチーズを作る。玉子は熱湯で8分茹でて殻を剥く。

【手順3】タルタルソースを作る

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手順2でみじん切りにしたムラサキタマネギに、マヨネーズ大さじ4杯とマスタード小さじ1杯を合わせてタルタルソースを作る。このソース、お手軽だけど美味しいんですよ。唐揚げにかけてモリモリ食いたい……。

【手順4】具材を混ぜ合わせる

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インカのめざめはソーセージと合わせて皿に盛り、上からざく切りにした茹で玉子を散らして塩・胡椒。仕上げにタルタルソースとフライドオニオンをかけて黄色いポテトサラダが完成。

 

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ノーザンルビーは、クレソン、プチトマト、ハム、マヨネーズ大さじ3杯、マスタード小さじ1杯を合わせてざっくりと混ぜる。半分にカットしたパプリカに盛って、カッテージチーズをかければピンクのポテサラの完成。

 

で、滑らかなタイプのポテサラを目指すべく、シャドークィーンはフードプロセッサーで混ぜてペースト状に……あれ、感触がおかしいな……。なんか…お餅みたいに……粘度が…やべぇ……すごい……。

シャドークィーン『こんにちは。お餅です』

どうやらフードプロセッサーを使うと物凄く粘りが出るようなので、文明の利器は使わずに手で細かく潰すようにしたほうが良いみたいです。で、細かくマッシュした後は水切りしたキュウリとタマネギ、ツナ缶とマヨネーズ大さじ3杯、マスタード小さじ1杯と混ぜ合わせて、シャドークィーンのポテトサラダも完成。

はい、それではお皿に盛りつけてカラフルポテトサラダのできあがり。


左:インカのめざめ、中央:シャドークィーン、右:ノーザンルビー

さて、実食してみましょう。ŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”(๑´ㅂ`๑)ŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”

インカのめざめ

うん。やっぱり味でいうとインカのめざめが抜群に美味しいですね。甘くてほくほくしてて、タルタルソースなしでも食べれられる。実は試しに食べたときにインカのめざめが美味しすぎたので、なるべくイモそのものの味がわかるように他の調味料とあまり混ぜ合わせないレシピにしたんですが、正解だったようです。このジャガイモずるいなー。美味しいわ。

ノーザンルビー

お味は普通だけど、うすピンクのポテトサラダってやっぱり見た目のパンチ力がありますね〜。残ったポテサラを翌朝に見たら、何故かより色が濃くなってたのでお弁当の彩りに使うとキッズも大喜びじゃないでしょうか。

シャドークィーン

フードプロセッサーで犯した痛恨のミスが響いて、ちょっと重たい舌触りに……。ちゃんと手でマッシュするとカラフルで美味しいポテサラになるのではないでしょうか。それにしてもどのジャガイモでもフードプロセッサーを使うとあんなに粘るのかしら。それともこの品種だけ? だとしたら面白い調理法もありそうですね。

それにしても予想以上に色が鮮やかに残るのでびっくりしちゃいました。お子さんが居る家庭なんかだと、こういうジャガイモを使って料理してるところを見せたら喜ぶんじゃないかなぁ。話題づくりにもなるし、ホームパーティーのお持たせなんかにもよさそうですね〜。

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よく健康のために一日30品目食べましょうって言いますけど、何というか、それと同じぐらい食べたことがないものを食べるって大事だと思うんです。身体の健康のためにも、心の健康のためにも。行ったことのない場所に出掛ける、はじめて会った人と話す、聴いたことのない音楽を聴く、知らない作家の本を読む、食べたことないものを食べる。そういう色んな「はじめて」を繰り返していって、少しずつ幅が広がっていくんじゃないかなぁと思うのです。なので、ロマネスコやらエンダイブやらに興味を持ったお子さんがスーパーで駄々をこねたら、世のお母さんがたはなるべく買ってあげてくださいね。たまには変わったジャガイモでポテサラのひとつでも作ってみてくださいね。

著者:那珂川廣太 (id:koutanakagawa)

koutanakagawa

雑誌の編集とライティングをしつつ、ポテトサラダを作っています。

ブログ:ポテトサラダ研究所

チタンクッカーを使って職場で贅沢ごはん。昼休憩とは楽しむことと見つけたり

こんにちは、スラム尼崎と申します。アウトドア製品を使ったごはんの紹介が中心の「色々」というブログをやらせてもらっています。

みなさんは日々の休憩時間をどのような形で楽しまれているだろうか。休憩時間といえば、おそらく多くの方が昼休憩を思い浮かべるだろう。社会人、学生問わず、誰もが待ち望むうれしい時間だ。「昼ごはん」という愛すべき存在が、私たちに究極の癒しを与えてくれるのだから。

コンビニ弁当やカップ麺といった食事でも、昼休憩という魔法のスパイスが加われば、その味は格別なものとなる。手作り弁当であればなおさらだ。

もちろん気の合う仲間とにぎやかに過ごすのも楽しい。しかし、昼休憩の最大の楽しみといえば、やはり「昼ごはん」ではないだろうか


そこで今回は、私の昼休憩において最大の楽しみである「昼ごはん」を紹介しよう。要となるのは「チタンクッカー」というアウトドア用の小型鍋だ。昨年秋に偶然手に入れたのだが、これが私のたるみにたるんだ昼休憩に、革命的とも言えるほどの大変化をもたらした。

今回は、きれいな状態で撮影したかったため、新品を購入した。
https://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/2fc72398.58aefc49.2fc72399.c12cb078/?pc=https%3A%2F%2Fitem.rakuten.co.jp%2Fauc-odyamakei%2F1003524%2F%3Fhb.afl.rakuten.co.jp

丁寧な梱包が本当にうれしい。最近、物を買わない「ミニマリスト」なる生活スタイルが各方面で紹介されているが、私はその真逆を突き進む物欲の塊「マキシマリスト」である。このように丁寧な梱包で届くと、製品の箱を開ける前から、物を買う喜び、物を使う喜びをマックスに感じとれて幸せな気分になる。

さて、このチタンクッカー、本当にいい品物なのである。

給料泥棒、サボり奉行と呼ばれる私も、このアイテムを手にしたとなれば話は別だ。有り余る力、その全てを昼休憩に注いでやろうではないか。

弁当男子に代わる、次なるブームの先駆けとなるか!? なんていうバカバカしい夢を見つつ、慣れない手つきで料理に挑む私の昼休憩を、とくとご覧いただこう。

安・近・短!? 豪華な焼き肉どんぶり

正午のチャイムが鳴り、昼休憩に入ると、私の職場のデスクは「厨房」へと様変わりする。今回の材料はこちら。

この日購入した肉は7枚入りの豪州産で、お値段なんと317円。国産の半値くらいだろうか。TPPが始まると、さらに安く入手できるというから驚きだ。


まずは炊飯。出社してすぐに水に浸けておいた。米は最低でも30分は浸水させておきたい。

チタンクッカーで炊飯する場合、通常だと熱伝導を助ける網や板をクッカーの下に敷いたり、メシ袋を使う方法がある。しかし、そのようなことをしなくても、中火から始めて、湯気が出はじめたら弱火で7分。その後、火から下ろして10分蒸らすと、普通に炊ける。

あくまでも私流の方法だが、チタンクッカーでの炊飯が上手くいかない方は、ぜひ自分なりの炊き加減を追求してみてはいかがだろうか。

米が炊けるまでの時間を利用して、肉のタレを作る。貴重な休憩時間だ。1秒たりとも無駄にはできない。

まずはニンニクと生姜をすり下ろす。

それに醤油、ハチミツ、豆板醤(トウバンジャン)、甜麺醤(テンメンジャン)、ごま油を加えてタレの完成。このタレを肉にかけて味を染み込ませておく。

そうこうしている間に米の加熱が終了。クッカーを逆さまにして蒸らしに入る。

バーナーが空いたので、次は肉を調理する。クッカーの蓋はフライパンとしても使える便利仕様なのだ。

1回で全てを焼けなかったので、2回に分けて焼いた。随分焦げているように見えるが、全く問題ない。むしろこの焦げが肉の香ばしさをより一層引き立ててくれる。

肉を全て焼き終え、時刻は12時26分。撮影などが入ったので今回は少々手間取ってしまった。

火から下ろして10分以上経った米だが、まだ熱々の状態を保っている。チタンクッカーは熱伝導率が悪いのだが、言い方を変えれば、これは保温性があるということだ。あくまでも個人的な感想だが、アルミクッカーよりチタンの方が炊飯に向いていると感じる。

米に残ったタレを染み込ませ

肉を乗せたら「焼き肉どんぶり」の完成。いただきます!

私はこのようにして、毎日できたての昼ごはんを楽しんでいるというわけだ。自炊することで食費も抑えることができるし、何といっても自分好みの味付けがとにかく旨い。「安・近・短」というよりは「安・近・旨」というところか。

これが俺流! チタンクッカー攻略法

さて、アウトドアの経験が少しでもある方の中には、この記事に疑問を感じる方もいらっしゃるだろう。どういうことかというと、「米を炊き、肉を焼く」という行為が、チタンクッカーにおいては不向きな調理だと言われているからだ。

チタンは、一般的なクッカーに使用されているアルミやステンレスといった素材に比べて焦げつきやすく、焼き調理には向いてないとされている。

焦げつきの原因は「熱伝導率」にある。チタンはアルミなどの素材と違い、熱伝導率が低い。つまりコンロから出る炎の熱が、鍋全体に伝わりにくいのだ。伝わらない熱は1箇所にとどまり続けるので、そこだけがどんどん熱くなって、異常なほどに焦げつく原因となってしまう。

上の写真を見ていただければ分かりやすいだろう。中央周辺にある3つの青い模様が炎の当たった場所なのだが、そこだけが異常な高温になって変色している。たった一度取り扱いを誤っただけでこれだ。


焦げるなら、弱火で加熱すればいいのでは?

そう思った方もいらっしゃるだろう。しかし、ただでさえ熱が伝わりにくいので、弱火では食材を軽く温めるだけにとどまり、もはや加熱調理とは言えない残念な結果となる。強火でもダメ、弱火でもダメ。「チタンクッカーは湯沸かし程度の使い道しかない」と言われているのはそのためだ。


しかしちょっとした工夫で、チタンクッカーのダメなところが一気に解消する。

次の写真のように、加熱の際にゴトク(チタンクッカーを置く金属台)には乗せず、炎から10cmほど浮かせておくだけでよい*1。こうしてやることで、チタンクッカーでも通常の鍋やフライパンと同様に、肉も焼けることが今までの経験で分かった。もっとも、これは私流のやり方であり、誰もができるという保証はないのでご注意いただきたい。

また、私流の加熱方法を用いてできた焦げつきなら、簡単に落とすことができる。

ご覧のとおり、スポンジと中性洗剤だけで事足りる。熱によるチタンの変色も最小限に抑えられていることがお分かりいただけるだろう。


焦げよさらば。頑固な焦げへのレクイエム

チタンクッカーの表面は、ミカンの皮に似た凹凸がある。この隙間に入り込むほどの頑固な焦げつきが出た場合は、中性洗剤はもちろん重曹を用いても完全には落ちない。ではどうするのか?

チタンを使い始めてから3ヶ月にも及ぶ修行を経た結果、私は1つの答えを導き出した。

ナイフの先端を微妙な力加減で“ツンツン”してやるのだ。

丹念に“ツンツン”を繰り返し、ご覧のとおり。時間の都合で焦げの全ては落とせなかったが、除去できているのが見えるはずだ。

メシのためなら “ツンツンツン”
金属工場の 昼休み
聞こえてくるよ あの歌が

慣れてくればお手のもの。鼻歌まじりで焦げを落としていると、まるでチタンクッカーを育てているような感覚になる。そしてチタンクッカーへの愛着がさらに増すのである。

母ちゃん見てくれこのチタン、メシのためなら“ツンツンツン”。

机上の伊論、傍若無人のペペロンチーノ

家から食材を持って来ていない日はどうするのか。そんなときの私の昼ごはんは、自動的にペペロンチーノになる。

ニンニクは、さっさと使い切って新しいものと入れ替えたいので、ありったけ使う。真っ昼間からニンニク祭り。後のことなどお構いなしだ。

クッカーの蓋をまな板代わりにしてニンニクを刻む。この日はベーコンを切らしていたのが残念である。

クッカーにオリーブオイルと刻んだニンニクを入れ、火を通す。また、今回は鷹の爪ではなく、輪切りの唐辛子を入れた。これをパスタに絡めるまで置いておく。

次はパスタを茹でるのだが、ご覧の有り様。

強引に押し込んで……

ここまでくればひと安心。

パスタの茹で汁はフリーズドライのスープにも利用する。これでメインのほかにもう1品完成というわけだ。

ニンニクを炒めた後のクッカーをそのまま使うので、スープにニンニクとオリーブオイルの香りが移っていい感じに仕上がる。

あらかじめ火を通しておいた、ニンニクとオリーブオイルにパスタを絡めて炒めれば、ペペロンチーノのでき上がり。

ちなみに、私はペペロンチーノという食べ物を店で食べた経験がない。オリーブオイルとニンニクを使っておけばイタリア料理っぽくなるんじゃね? という机上の空論ならぬ、机上の伊論(伊=イタリア)を展開しながらいつも作っている。しかし、これが意外と人に出せば「うまい!」という言葉が返ってくる。自分でも驚きである。

街角でよく見かける、おなじみのポーズで記念撮影。1束分だが、こうして見ると結構なボリュームだ。


* *

職場飯店のチンジャオロースー定食

あれは昨年の秋ごろだろうか。

職場の薄暗い一角に、小さなメシ屋ができた。


その名は「職場飯店」。中華料理屋である。

毎日昼の12時になると店に灯り(あかり)がつき、ジュージューという音と香ばしい油の匂いが立ちこめる。

オープンキッチンスタイルとは、随分とシャレた店じゃないか。

材料からすると、今日の定食はチンジャオロースーで決まりと見た。

タケノコは中国産かぁ。

安全性の面からチャイナフリーが叫ばれる昨今だが、あえて中国産を使うことで、本場の味を楽しんでもらおうという店主の心意気。

ニクい、ニクいねぇ(間違えて買っただけである)。

肉と野菜のコントラストが実に素晴らしい。

卵焼きもあるのか。いいねぇ。

……ん? ちょっと待て、あれはチタンクッカーじゃないのか!?

チタンで卵を焼くと焦げつきが激しく、焼くのは不可能とさえ言われているはずだ。おいおいオッサン、大丈夫なのか?


「おまちどうさん。今日はチンジャオロースー定食だ。米も炊きたて、冷めないうちに食べて行きな」

……う、うまい!!

チタンで焼くのは禁じ手とされている肉と卵をここまで仕立て上げるとは!

この店主、ただもんじゃねぇ!!

あの日、私はあまりのうまさに我を忘れ、一心不乱になってメシをかき込んだ。ああ、次の昼休憩が待ち遠しい……。

この記事を見た全国の未来ある若人達が、いつの日か「職場飯店」の名を掲げ、方々でその腕を振るう時が訪れることを願って、締めくくりたいと思う。

ごちそうさま!!

著者:スラム尼崎 (id:eyezonly)

スラム尼崎

猫とヘヴィメタルが大好きな関西人。そして自称、酔拳の使い手。酔えば酔うほど気が大きくなり「ええでええで。ここはワシの奢りや」と言って金を使い、翌日になって後悔する技を得意とするファミコン世代。


ブログ:色々

*1:米を炊飯する場合はゆっくり、じっくりと熱を伝える。ゴトクにチタンクッカーを乗せ「中火から始めて、湯気が出はじめたら弱火で7分。その後、火から下ろして10分蒸らす」のがおすすめ。

料理ビギナーでもできる「30分で一汁三菜夕飯」のススメ

こんにちは、OKPです。

結婚して6年になる私ですが、夫婦共働きということもあって家事の負担は基本的に半々。例えば夕飯の準備なら、先に帰った方が買い物&調理。後で帰った方が後片付け、みたいな感じです。

ですが、仕事が忙しい時期は2人して帰宅が遅くなるので、夕飯の準備はなるべく早く済ませたい……。そんな、結婚してから日々の料理を作るようになった私(アラフォーおっさん)が、必要に迫られて身に付けた「お手軽夕飯のコツ」をせんえつながら紹介してみることにします。

最初から全て身に付けようとするとかえって気疲れしたり、混乱します。なので、すぐにできそうなこと、自分のライフスタイルに合うものだけを断片的に取り入れてみてくださいね!

「料理はちょっと……」という共働き家庭の旦那さんも、たとえ簡単な料理でもパートナーさんには喜んでもらえるはずですよ。

* *

料理の前に考えておきたいこと

目標は30分で「一汁三菜」の食卓

今回提案する料理時間の目安は、炊飯器の早炊きモードでご飯が炊きあがる20分ちょい+蒸らしを入れた“30分”。このくらいなら大した負担になりませんし、逆に30分すら惜しいときは、素直に外食やテイクアウトに切り替えてしまいます。


食卓の構成は、ご飯に汁もの、主菜1品、副菜2品の「一汁三菜」。これを意識して作ると、栄養価なども比較的バランスの取れた食卓になります。「炭水化物(ごはん)」「主菜でタンパク源」「副菜で野菜」とふんわりイメージしておくといいかもしれません。

副菜の片方を主菜の付け合わせ(定食風?)としてカウントするのも今回はOKとしましょう。完成イメージはこんな感じですね。



30分のタイムテーブルを考えながら調理

続いて「調理の時間配分」について考えます。

料理を始めたばかりの頃は、「1つのメニューを完成させてから次」といった手順になりがちです。しかし、料理は下準備から完成までの間に、しばらく手の離れる時間が結構あるんです。


例えば「主菜」の下準備から仕上げまでの空いた時間。

この時間を利用して副菜を作り、その後に主菜の仕上げをすれば、時間短縮になるだけでなく「温かいごはんとおかず」という食事を楽しむことができるでしょう。



これはあくまで一例ですが、このようなイメージで手順を効率化させつつ、さらに合間合間に調理で出た洗い物や片付けをする癖を付けておくと、食後の後片付けも楽になります。

もちろんいきなり「なにがなんでも30分」を目指す必要はありません。最初のうちは40分以上かかってしまうかもしれませんし、それは慣れていないので仕方のないこと。日々の実践を積み重ねることで、徐々に調理の手際はよくなります。

* *

料理のバリエーションを広げるには

では、手際よく調理しつつ“いろんな料理”を作れるようになるには、どうすればいいのでしょうか。

私がオススメするのは、「まずは定番メニューを覚え、組み合わせでバリエーションを増やす」スタイルです。その様子を、我が家の食卓を例に「主菜」「汁物」「副菜1品目」「副菜2品目」と順番に見ていきましょう。

「主菜」は簡単な料理を覚えて、そこからバリエーションを増やす

まずはメインとなる主菜について。

慣れないうちは、レシピを見なくても作れる「定番メニュー」を数品身に付けることから始めます。なるべく「焼くだけ」「炒めるだけ」といった単純な手順の料理が最初はオススメです。単純な主菜でも汁物や副菜との組み合わせで変化はつきますし、調理に慣れてきたら同じ手順の料理でも味付けや素材を変化させることで、そのバリエーションは無数に広がります。


例えば我が家でもよく作る「豚しょうが焼き」。 (※冒頭写真)

この「豚しょうが焼き」を軸に、ロースの1枚肉を使ったポークジンジャー風のものであったり、細切れや薄切りのバラ肉を使ったものもできます。

これらは同じ味付けでも、別の料理といっていいでしょう。しょうがの代わりにニンニクを使えばまた別の味。ソース味にしたポークソテーも結構イケます。


続いて、お手軽なのは「焼き魚」。

調理自体は魚をグリルで焼くだけです。魚の種類を変えればバリエーションは無限ですし、塩焼き、照り焼き、西京焼きなど味付けも豊富です。我が家は週の半分魚でもOKなくらいなので、塩鮭や干物は常に数種類、冷凍庫で常備してます。


こんなふうに1つの定番メニューを軸に、いろんなメニューを作ることができます。以下は、実際に我が家でよく登場するメニューです。

  • (例1)「豚しょうが焼き」からのバリエーション
    • バラ肉や豚コマのしょうが焼き or ロース1枚肉のポークジンジャー
    • 玉ねぎ、ピーマン、ニンニクの芽などの野菜を加えたバリエーション
    • しょうがの代わりにニンニク味、ソース味にしてみる
    • しょうが焼き用のロース肉を塩コショウでソテーしてスライスチーズを乗せる

などなど。肉の焼き方に慣れればチキンソテーなども簡単に作れることができます。

  • (例2)「焼き魚」からのバリエーション
    • 塩鮭、さんま、塩鯖
    • 干物
    • 照り焼き
    • 西京漬け、味噌漬け
  • (例3)「炒めもの」のバリエーション
    • 肉野菜炒め、レバニラ炒め、肉ニラ炒め
    • 八宝菜、回鍋肉
    • 麻婆豆腐、麻婆茄子(味付けにCook Doなどを利用するのもアリ)


その他、難しそうな唐揚げやフリッターといった揚げ物も、慣れればポリ袋を使って粉付け&味付けができるので、さまざまなメニューを楽しめます。

定番メニューを覚えるなら……

ここまで「定番メニュー」を軸としたメニュー展開についてお話してきましたが、肝となるその「定番メニュー」の作り方はどうやって覚えればいいのでしょう。

今はレシピの投稿サイトなど便利な情報がたくさんあります。しかしベーシックなレシピを覚えるために私がオススメするのが、NHK「きょうの料理」で放送されたレシピがアーカイブされている「みんなのきょうの料理」です。


※レシピ検索をする際は、ひとまず「投稿メニュー」などは表示させず「きょうの料理」「ビギナーズ」などに絞って検索するといいでしょう。

まずは基準となる作り方を身に付けることで、迷いがなくなります。1つのレシピをきちんと身に付けてから、応用してバリエーションを増やしていくとよいでしょう。

プロの料理家レシピ満載【みんなのきょうの料理】-人気料理家のおいしいレシピを簡単検索!


「汁物」は具材や簡単スープのもとを使ってメニューの幅を広げる

汁物といったらやはり味噌汁。

味噌汁も定番具材をいくつか決めてしまうのがいいですが、特に簡単なのが「あおさ」や「お麩」「乾燥わかめ」などの乾燥食材。さらに、ねぎを刻んで入れれば、あっという間に美味しい味噌汁が完成。いろんな味噌汁を楽しめます。

ちゃんとだしを取るか、だしパックや顆粒だしを使うかはお好みで。

最初は簡単なところから始めて、余裕が出てきたら少しずつこだわりたいポイントを増やしていくのがいいでしょう。

我が家でも使っている「茅乃舎だし」というだしパックを使うと、かなり本格的で美味しいだしが取れます。

また、味覇(ウェイパー) や鶏ガラスープのもとはお湯に溶くだけで中華スープが完成。乾燥わかめや溶き卵、いり胡麻を足してあげると、かなり本格的な中華スープになります。

その他、野菜くずを煮込んでコンソメやブイヨン、塩コショウで味を調えるだけでも十分なスープになります。ウインナーやベーコンを入れると肉のうま味も出てさらにグッド。仕上げにケチャップを少し加えると甘みや酸味が加わります。

キャンベルなど「濃縮タイプの缶スープ」は、水や牛乳を加えて温めてあげればすぐに本格的なスープが完成します。これらもうまく活用してあげるといいでしょう。

とにかく汁物にはあまり時間をかけず、調理の合間にささっと作るイメージです。

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「副菜1品」はサラダが簡単

私が生野菜好きというのもあるのですが、できれば毎日サラダを食べたい。

火を使わずに済みますし、レタスなどをちぎるだけでほぼ8割完成というのもありがたい。トマトやパプリカなどがあれば彩りもよくなりますし、ハムやツナ、チーズなどを添えてあげると食も進みます

レタスは時期によって価格の変動が激しい野菜ですが、「サニーレタス」「グリーンカール」「サラダ菜」「ロメインレタス」など、その時もっとも安いレタス系の野菜を手に入れるといいでしょう。最近は野菜が高い時期にも、コンビニで意外と安く売ってたりするので、コンビニに入った際に野菜の価格に注目してみるのもオススメです。


ちなみにサラダの準備は「主菜の下準備が終わった段階」が目安。サラダスピナーを使うと野菜の水切り作業もスムーズです。


※「サラダスピナー」は水切りはもちろん、少しくたびれた野菜を水にさらしておくことでシャキっとさせる用途や、玉ねぎの辛み抜きなどにも使えます。

その他、「肉料理の日はサラダでなく付け合わせにキャベツの千切り」「野菜炒めの日はサラダは作らなくてもOK」など主菜に合わせたルールを決めておくといいです。

キャベツはレタスに比べると比較的日持ちしますが、頻繁に使わないなら千切りのキャベツをスーパーやコンビニで買ってしまってもいいでしょう。

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「副菜2品目」は既製品を使った小鉢メニュー

最後に副菜もう1品。もちろん1品調理できる余裕があればいいですが、初めのうちは既製品を活用することをオススメします。

  • 卵豆腐
  • めかぶ
  • もずく酢
  • 明太子
  • しらす(大根おろしを添えて)

などは、小鉢に盛り付けるのみで成立してしまう素敵食材。

納豆や豆腐なら、パックから小鉢に移して、刻みねぎやあおさを添えてあげるだけで1品完成。食卓に変化と彩りが生まれます。

ひと手間かける余裕がでてきたら、このあたりも時短準備が可能な小鉢メニューです。

  • 厚揚げ/油揚げをトースターで焼いて、ねぎとしょうがを添える
  • ほうれん草のおひたしに鰹節
  • 枝豆の塩ゆで
  • エノキとオクラを刻んでレンチン。醤油やぽん酢で味付け
  • インゲンの胡麻和え
  • 茄子を素揚げしてめんつゆをかける(揚げ浸し風)

* *

忙しいときは遠慮なく手抜き

以上の組み合わせで比較的簡単に「一汁三菜」の食卓を作ることができるようになるはずです。

ただし初めにも書きましたが、今回紹介したような調理すら面倒に感じるときは、どんどん手抜きをしてしまいましょう。

週に1〜2度は外食だっていいですし、パスタとサラダのみという夕飯だってOK(我が家ではパスタの夕飯は定番です)。

他にもカット野菜やインスタント食材、冷凍食品を使うこともいとわない。今はコンビニのフライヤーや惣菜も充実しているので、ときには主菜、副菜をそれらで賄うこともアリだと思います。

ちなみに「ご飯は炊かずに冷凍ごはんをレンチン」「下準備済みの冷凍常備菜を作っておく」などのテクニックもありますが、今回はあくまで「その場で準備ができる料理」を前提にしてみました。それに、週末にそのような準備をする時間があるなら、私は出掛けるか寝ていたいタイプなので(笑)。

こだわりの調味料や料理道具があると料理が楽しくなる?

システマチックに料理をこなしていると、どうしてもルーチンになってしまいがちです。そこでちょっとしたところに、自分なりのこだわりを持っておくと料理に対するモチベーションが上がります。

例えば私の場合だと「茅乃舎だしや、お気に入りの調味料を使う」「自分専用の包丁を使い、定期的に手入れする」などでしょうか。

家庭料理って人に見せるものじゃないですし、端から端まで気を回す必要はありません。かといって徹底的に合理化してしまうのでなく、自分なりのこだわりを見つけられると続けることが楽しくなります。「食べる人の喜ぶ顔を想像しながら作る」これだって立派なモチベーションの原動力になります。


最後に……実は、最初に1つ嘘を書いてしまいました。

我が家が共働きだったのは昨年の6月までのこと。私が会社を退職したため、現在は主に妻が働いて私は専業主夫のような生活をさせてもらっています。いつまでも、こんな手抜き料理ばかり作っていてはいけませんかね……(苦笑)。時間に余裕があるときは少しこだわってみる、時間がないときは手軽に作る。皆さんも自分のライフスタイルに合わせて、料理を楽しんでみてくださいね!

著者:OKP (id:OKP)

OKP

アウトドアと音楽を愛するアラフォーおっさん。紙媒体の編集者から主夫(無職)に華麗なる転身を遂げたばかり。東京の多摩で料理作ったり写真撮ったりしてます。

ブログ:I AM A DOG
Twitter:https://twitter.com/iamadog_okp

『3月のライオン』(羽海野チカ)モモちゃん考案の「サンダル錦玉羹」を再現してみた

普段は「マンガ食堂」というブログで、好きな漫画に出てくる料理を勝手に再現しています。

せっかく寄稿の機会をいただいたので、今回は長年作ってみたかった『3月のライオン』(羽海野チカ/白泉社)5巻に登場する「サンダル錦玉羹(きんぎょくかん)」に挑んでみました。

ファンの方はご存じだと思いますが、そもそもどんなものかというと……。
本作の主要登場人物は、主人公で高校生プロ棋士の「桐山零(れい)」と、彼が世話になっている川本家の3姉妹「あかり」「ひなた」「モモ」です。川本家の祖父は和菓子屋「三日月堂」を営んでおり、たびたび彼女たちに「新作和菓子」のアイデアを募っています。

よく夏になると、金魚や鮎をあしらった涼しげな寒天の和菓子「錦玉羹」が出回りますよね。「夏の和菓子」のアイデアを求められた3姉妹も錦玉羹(作中では「水辺シリーズ」として紹介)を提案。「何が浮いていると楽しい?」と聞かれた末っ子のモモちゃんは、こんなアバンギャルドな錦玉羹を考案します。


(C)羽海野チカ/白泉社

水底に沈む片っぽだけのサンダル。水面からワイルドにのぞく水草と葦(あし)。こんなに「夏の夕暮れ」の郷愁を感じさせる風景があるでしょうか。ベテラン職人の祖父も驚愕の発想力です。
作中では商品化はされなかったようですが、もし実現すれば日本の自然や四季を表現してきた和菓子の歴史に新たな1ページが刻まれる……かもしれません。

設計

必要な材料やレシピを整理するため、いったん紙に書き出してみます。
イメージ図を見る限り寒天は2層になっているので、上部は透明な錦玉羹、下部(水底)は小豆羹に。サンダルと水泡は、色をつけた練り切りで再現します。水底の小石は大徳寺納豆、水草と葦はバランと乾麺で……と、書いているうちにイメージが固まってきました。

材料

設計が終われば、次は道具や材料を集めます。

錦玉羹用の型は、浅草の合羽橋で水紋の模様がある丸い容器を購入しました。右の白い容器3つはみんな同じに見えますが、それぞれ微妙にサイズや模様が違います。

しかしどれもお猪口くらいのサイズで、思ったより小さい。果たしてこの容器内にサンダル+水草+葦+小石、という盛りだくさんな世界は表現できるのだろうか……と心配になり、店員のおじさんに「もっと大きなサイズはないか」と聞いてみるも「和菓子は小ぶりが上品なんだから!」と一蹴され、妙に納得しました。

和菓子に使うおもな材料は、新宿の製菓材料店で買いそろえました。粉寒天、こしあん、白こしあん、白玉粉、食紅各種、水あめ。

水底の小石に見立てる大徳寺納豆は、中華食材の豆豉(トウチ)によく似た発酵大豆です。独特の塩味とうま味があり、和菓子のアクセントとして使われることが多いそう。

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水面から飛び出たワイルドな水草と葦は迷った末、お弁当用のバランと素麺(乾麺)で表現してみることに。

練り切りで作るサンダルの見本として、ネットでリカちゃん人形のシューズセットも購入。こんなニッチな商品が一発で手に入るなんて、ありがたい時代ですね。写真のストラップシューズが、作中のサンダルに近いデザインでした。小さくても、なかなか精巧です。

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和菓子作りはほとんど初めてなので、勉強用に参考書籍も買ってみました。
『決定版 和菓子教本』(誠文堂新光社)は全国和菓子協会が監修した本格的な教本。『道具なしで始められる かわいい和菓子』(講談社)は書名の通り、初心者向けのわかりやすい内容でした。本をぱらぱら眺めるだけでも、和菓子ってビジュアルアートの世界だ、と実感しました。洋菓子と比べて材料や製法に制限があるなかで、職人たちはアイデアと技巧を競ってきたんだろうなあ。そう考えると、今回のサンダルも和菓子界を照らす光明になるのかもしれない……。

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作り方

まずは練り切りから作ります。白玉粉、砂糖、水を「1:2:2」の配分で作るのが基本らしい。

耐熱容器に白玉粉(2g)、水(4g)を入れてよく溶き、グラニュー糖(4g)を加えてさらにかき混ぜる。電子レンジで20~30秒かけて、透明な餅状の求肥(ぎゅうひ)を作ります。

混ぜながら火にかけ水分を飛ばした白こしあん(100g)に、上記の求肥を加え、全体がまとまるまでよく混ぜます。

まとまった後は、熱が抜けるまでよく揉みます。ここで空気を含ませることで、生地が白っぽくなり着色映えするそう。完成した生地は乾燥を防ぐため、ラップにくるんでおきます。

次は着色です。生地を小分けにして、それぞれに赤、ピンク、水色の食紅を少量ずつ入れて練り上げます。

これはサンダル用。パン作りなどで使う「スケッパー」で練り上げると、こんなに鮮やかな色に。

水色とピンクは水泡用。これで3色の練り切り生地ができました。

リカちゃんシューズを傍らに、赤い生地でサンダルを作ります。あまり凝った細工にすると寒天に入れたとき潰れて見えてしまうので、サンダルと分かるレベルのシンプルな形状でOKです。(一度失敗しました……)

続いて寒天を作ります。鍋に水(300cc)と粉寒天(4g)を入れて火にかけ、ヘラで混ぜながら数分沸騰させる。火を止め、グラニュー糖(200g)と水あめ(100g)を入れてよく混ぜます。和菓子、イメージと違って全然ヘルシーちゃう……とビビるほどの砂糖の量ですが、透明度の高い錦玉羹を作るにはこのくらい入れる必要があるようです。

水底の部分は、上記の寒天を別の小鍋に1/4ほど取り分け、こしあん(大さじ1~2)を溶かして作ります。

透明な寒天液を型の1/4程度注ぎ、半止まり(液が固まりかけの状態)で小さく丸めたピンクor水色の練り切りを入れます。

続いて寒天液を型の2/3程度まで入れたら、同じく半止まりの状態で練り切りのサンダル、大徳寺納豆を入れます。最後に容器をひっくり返すので、天地逆になるよう注意。一番手前の黒い型にリカちゃんシューズがそのまま突っ込まれていますが、気にしないでください。(そういえばリカちゃんの靴は、子供が誤飲しないように苦い味がすると聞いたことがあります)。

最後にこしあんの寒天液を注いで、固まるまで常温で待ちます。

いよいよ、完成

固まったあと、ひっくり返したのがこちら。

仕上げに水草(お弁当用のバラン)、葦(素麺をオーブンで焼いたもの)をあしらえば、モモちゃんの「サンダル錦玉羹」完成です。

フラッシュをたいて撮影したら、ちょっぴり不穏な感じに……。見た目はかなり個性的ですが、安心してください。味はノーマルな錦玉羹と変わらないので、おいしく食べられます。大納言納豆の塩気がいいアクセントになりました。

ちなみに、モモちゃんの考えた和菓子には、ちゃんとキュートなものもあるんです。

アヒルをあしらった錦玉羹。

アヒルが沈没した錦玉羹(キュ、キュート……)。

モモちゃんの水辺シリーズ、オールスターズです。


「3月のライオン」に関しては、アニメ化と実写映画化が決まっています。三日月堂のお菓子も登場するのかもしれないと思うと、キャストと合わせて今から楽しみです!

著者:梅本ゆうこ

梅本ゆうこ

1979年大阪府生まれ、関東在住。
会社勤めのかたわら、2008年よりブログで漫画に登場する料理(マンガ飯)の再現に取り組む。2012年にリトルモアより書籍「マンガ食堂」を刊行。

ブログ:マンガ食堂
Twitter:@pootan