こんにちは、@narumiと申します。個人のブログでグルメネタの記事を書いていたら、今回こちらでお肉の話をさせてもらうことになりました。僕のブログには「肉」カテゴリというのがあって、長く読まれているものが多いです。例えば、肉のエアーズロック、大木屋や、肉のヒマラヤ、焚火家(たきびや)といったお店訪問記事などなど……。お肉をドッカンドッカンと食べる行為には、如何(いかん)ともしがたい魅力があるのです。
そして焼肉。太古の記憶なんでしょうか、目の前で炎が揺れ、肉が焼けるのを見ていると何ともいえず気分が高まるんですよね。だからこそ個室での焼肉デートは盛り上がるでしょうし、あるいは同僚と仕事後に疲れた体で行く普段の焼肉屋さんは元気が戻る。
で、みなさん、焼肉屋に行くといくらくらい使ってます?
これにはいろんな意見があると思います。「1人5,000円くらいでそこそこ美味しく食べたい」とか、「とにかく美味ければ2万円くらいは出すよ」とか。ほんと人ぞれぞれでしょう。
僕の場合はそのラインを「1人8,000〜9,000円」あたりに置いてます。これくらいで美味しい焼肉がたくさん食べられれば大満足。きっと何度も通うと思います。
でも、ちょうどいいバランスの焼肉屋を探すのは難しい。肉の質に値段が比例するので美味しいものを食べようと思ったら、必然的に値段は高くなる。「安くて美味しい店というのはそんなにない」というのが結論です。
僕が普段行くときに「8,000〜9,000円」にラインを引いてるのは、それ以上だと「すごく美味しいけど普段使いにはオーバースペックかなぁ」と感じてしまうし、それ以下の価格で満足できるお店もあることはあるけど、そのコスパの良さから数カ月待ちの人気店であることが多いから。
代表的なのが東京都練馬区・富士見台駅にある「焼肉問屋 牛蔵(ぎゅうぞう)」というお店。ここは1人5,000円台で、他のお店なら1万円はするだろうなという質・量の肉が食べられます。だからこそ激混みで、数カ月先まで予約が取れません(当日に入り込む方法もあるけどちょっと面倒)。
「だったらプラス3,000〜4,000円くらい多く払うので今日・明日にでも行けるお店にしようよ」と、いつも8,000円くらいの焼肉屋に行くわけです。
ここでもう1つの可能性がある。家で焼くのはどうよ?
仕事の会食とか、好きな人といい雰囲気になりたいとか、めちゃくちゃ大人数とかだと無理ですが、気心の知れた友人と「うまい、うまい」と言いながら淡々と焼いて食べるなら、雰囲気なんかどうでもいいわけで。だったら、家で焼けばいいじゃん、と。スーパーで普段は買わないような高いお肉を買っても、きっとお店で食べるよりは安くなるはず。
そんなわけでこの記事は普段「1人8,000〜9,000円くらい」で美味しい焼肉を食べている37歳・男性が、その半分程度の予算でいつもと同じくらい満足できる焼肉を家で食べてみようという内容です。
グラムあたりの価格を調整すれば、普段の焼肉予算が僕と違う人にも応用できると思う。
まず用意したいのが焼肉グリル「やきまる」
家で肉を焼くときに必須アイテムと思うのが、このイワタニの「やきまる」という焼肉グリル。一時期は品薄となっていたほどの人気だったそうだが、その最大の理由が「煙が少ない」というもの。
家で焼肉をするときの最大の課題は煙である。普通のホットプレートだとかなり煙が出るし、それが壁やカーテンなどにうつると、しばらくは臭いが消えない。やきまるはそのニーズに対応した商品として大ヒットした。
煙が少ない秘密は内部構造(下の写真の通り)にある。火が出るのは中央部で、そこを囲むように溝があり、水を入れられるようになっている。肉から出た脂が火に当たらず、この水に落ちる仕組みになっている。
水を入れたらプレートをセット。表面の溝とスリットが脂を落とす穴につながっているなど、ここにも細かい工夫がある。
家焼肉なら、1人前=「100gで1,000円のお肉」を300g
さて、肉である。普段8,000円で焼肉を食べるとき、そのうち2,000円はお酒やサイドメニューで、お肉だけなら実質6,000円くらいと想定。だいたい1人で300gくらい食べてるとして、お店では100gあたり2,000円のお肉ということになる。
というわけで今回はその半額くらい。100gで1,000円前後のお肉を300g、1人あたり3,000円でめちゃくちゃ美味しい焼肉は食べられるのかを検証してみたい。
実際、スーパーに行ってみると、100g1,000円のお肉ってそんなにたくさん売っているわけではない。ボリュームゾーンは300円とか400円くらいなので、一般的にはかなり高い部類に入る。それでもなんとかバランスを取って選んだのがこちら。2人分だ。
左上から時計回りに
- 「米国産牛タン」156gで1,060円(680円@100g)
- 「黒毛和牛イチボ」196gで2,116円(1,080円@100g)
- 「黒毛和牛肩ロース」220gで1,980円(990円@100g)
- 「黒毛和牛ミスジ」142gで1,533円(1,080円@100g)
- 「ニュージーランド産ラム」229gで636円(278円@100g)
合計すると943gで7,325円。
スーパーでこの価格帯の肉を大人買いしたことなんかないので、思わずテンションが上がる。予備のために1人あたり3,500円分くらい買おうとしたら、だいぶオーバーして1kg近くになってしまった。全部は食べきれないかもしれないが、いつも一緒に焼肉を食べに行く友人と2人で943gのお肉を美味しく食べて、7,325円だったら十分満足できるはずだ。
タレは高級そうな「叙々苑 焼肉のたれ」と。
パッケージがなんとなくいい味出してる「スタミナ源たれ ゴールド中辛」を選んでみた。
さあスタート。まずはタンを焼く。
グリルに火をつけて牛脂をなじませ、タンを焼くと「ジュウウ……」といい音。
火力も申し分なく、さっと焼けます。煙がほとんど出ないため、室内でも全然気にならない。
塩とレモンでいただきました。これが美味い! 100gで680円とは思えない。あれ、お店でいつも食べるのもこれくらいだよね?って思った。全然あり。
しばらくタンを食べてビールを飲んで次はミスジ。100g1,000円超えのエリートだけあって、見た目からして期待できる感じ。
あーこれは絶対美味いやつだ。さっとふんわり焼いて、良質な脂の味を堪能したい。
もはや美しい。こんなの家で食べたことはなかった。
やばい。これはとろける。和牛ならではのめちゃくちゃ上品で柔らかい肉質に、旨味をたっぷり含んだ脂が溶け出してきて、なんかのドリンクかよってくらいの肉汁が口のなかを駆け巡る。
ミスジは完全にクリーンナップです。3番、4番を打てる選手。もし下位打線にいたら胃もたれして食べられなくやるやつ。こういうのは最初のほうに片付けないといけない。
これ142g1,533円で買ったけど、お店だと1皿2,500円とかするんじゃないかと思った。やはりこのレベルのを焼くと、お店と遜色ない感じ。
気がついたら、ビールからワインに。これはチャールズ スミス ワインズの「ブーン・ブーン シラー」なる1杯。ブラックチェリーを思わせるリッチな香りと、ハーブのようなスパイス感が、旨味の強いお肉にも負けていない。自分なりに「これはぴったり合うはず」と思うお酒と一緒に焼肉が食べられるのは家焼肉の大きなメリットだ。
そうはいってもそこそこ煙は出る
ただここでちょっと問題が……。派手にサシが入ってるお肉だけにモクモク煙が立ってきた。もしかしたら普通のホットプレートよりは少ないのかもしれないけど、目に見えてモクモクしてるし。
念のために近くに置いておいた空気清浄機が「ぶおおおおおおん!」といきなり頑張りはじめた。タンを焼いたときはこんな感じじゃなかったのに。
あわてて黒毛和牛肩ロースに切り替えるも、煙の量は同じくらいか。やはりそれなりに出てくる。相対的には少ないのかもしれないが、出てることは出てるわけで……。
タンくらいなら対応できるが、上質な脂の多いクリーンナップのバッターを打席に迎えるとさすがに「無煙」とはいかない。ここは強力な味方(換気扇)のいるキッチンに移動。
というか、よく考えたら最初からここで良かった気もする。なぜならこんな感じで非常にコンパクトにスペースを使えるのでいろいろ便利なのだ。
キッチン焼肉にはこんなメリットがあることに気付いた
- 取り皿などの食器がすぐに出せる
- 使い終わった食器をそのまま食洗機につっ込む
- 飲み物や薬味なども後ろの冷蔵庫に入ってる
- 煙が出ても、脂がはねても一切気にならない
- 狭い空間の立ち食いがけっこう楽しい
- フライパンで焼くより断然美味しい
意外だが、リビングのテーブルで焼くよりも断然楽だった。準備の段階でテーブルの上に何枚もお皿やお箸を並べて、飲み物などを出してきて、それなりにモクモクして、最後に全部片付ける手間を考えたら、すべてをキッチンのなかで終わらせるほうが理にかなっている。
というわけで、突然だが「やきまるはキッチンの一角で使うのがベター」という結論に至った。だって正直、けっこう煙が出てるんですよ(笑)。 さすがに換気扇ないとこれは気になるっていう人いると思う。
ただしこれは使い方次第だろう。脂が多く、サシが入ったような上質な肉を焼くと、どうしても煙が出るが、普段買うような赤身多めのお肉だったら、もっと煙は少ないのではないか? 「美味いものを食べる≒手間がかかる」というのはある意味、納得である。
そして味は申し分なし。このプレートの構造上、余計な脂は落ちるし、焼き具合もばっちり。フライパンで焼いたものと比べると仕上がりが全然違うという感想で参加者の意見は一致した。
変わったお肉なら、安くて美味いラムがおすすめ!
父親が北海道出身なので、子どもの頃の家焼肉といえばジンギスカンがお決まりだった。昔は普通のホットプレートで煙もくもくのなか焼いていて、しばらくは家中煙たかったなあと思い出しながら、ラム(仔羊)も焼いてみた。
これが柔らかくてさっぱりしててめちゃくちゃ美味い。和牛の美味しいところを食べながら、たまにラムも食べられるのが家焼肉のいいところかもしれない。食べたいものがあったら、欲望のままにとりあえず買ってきて焼けばいいのだ。
特に仔羊はクセもないし、本当に食べやすいと思う。これをジンギスカンっぽく食べるために、スタミナ源たれに漬け込んでみた。あとで焼いてみる。
立派なイチボのステーキだって焼ける
その間に最後のクリーンナップ、「イチボ」を焼く。これも100gあたり1,000円を超える完全ないい肉だ。
やきまるの火力ならステーキ肉だってしっかり焼ける。表面に焼き色をつけて、ちょうどいい火の入り具合になるのを待つ。
そろそろ完成。
できた。すごくいい匂い…。
うわーーーーーーー。これは絶対に美味いやつだ。
わさびと塩でいただいたら、もう旨味がすごい。熟成肉かよ! ってくらい肉の味が濃くて、それがまったく外に流れ出ずに肉の中に閉じ込められている。ちょっとの塩味とわさびが肉の旨味と甘味を全力で引き出してくる。このイチボステーキ、お店だったら2,000円じゃないだろうなあと思う。
もう完全にお腹いっぱいになってるのでだらだらと残りのタンを焼いたり、アスパラを焼いたり。
締めに厚揚げをさっと焼いて、ショウガ醤油でつまみつつ、ハイボールを飲んだり。楽しい時間を過ごした。「キッチンで焼肉って全然ありだね」「お店の半額くらいで、8割くらいの美味さはあるよ」といった感想が自然と出てきて、そろそろ終了へ……。
と思ったら、これを完全に忘れてた。タレに漬けておいたラムである。
一気に焼いてしまう。お腹はいっぱいだけどタレの香りがすごいそそる。これは周りにもやしを敷き詰めたら完全にジンギスカンだ。
めっちゃ美味い。タレがしみ込んでいてご飯やビールがすすみそう。結局あっという間に2人で943gのお肉を食べきってしまった。
とにかく片付けが楽なのがいい!
食器やグラスはそのまま食洗機へ、ゴミはゴミ袋へ。このコンパクトスペースならではの片付けやすさは、はっきりいって魅力だ。お腹いっぱいで苦しいなか、ほぼ動かずにキレイにできるのは素晴らしい。
たぶんこれから焼肉を食べるときは専門店のほかに、「キッチンでやきまる」というのも選択肢に入ってきそう。値段的には半額くらいで満足できることが分かった。
気分を盛り上げたい特別な“ハレの日”の焼肉があれば、仲の良い友人ととことん落ち着きたい焼肉もあると思う。家焼肉の魅力はまさに後者にあると思う。キッチンに立ってやたら美味い肉を自分好みに焼きながら食べるって意外とありだ。
そんなときにいつものフライパンじゃやっぱり気分が出ないから、焼肉ロースターは1個持っておくといいですね。
おうちでごちそう食べるなら、この記事も参考になりそうです
著者:narumi
コンビニとチェーン店と肉を愛するブロガー&編集者。
ブログ「Blog @narumi」では主に都内の美味しいお店について書くことが多いですが、コンビニで気軽に買える食べ物でダイエットに成功する本「やせたいならコンビニでおでんを買いなさい」(日経BP社)も発売中。