初めまして、実践料理研究家の岩木みさきと申します。「生産と消費のサイクルを紡ぐ」をテーマに、これまでレシピ考案や撮影を中心に、料理教室の主宰やメディア出演などさまざまな活動をしてきました。
数年前から日本の伝統調味料である味噌に目覚め、今では家の味噌専用冷蔵庫には全国各地160種類以上の味噌たちが集合しています。
今回は、そんな私が味噌を使った大定番料理「味噌汁」のレシピをご紹介します。
在宅ワークが続き、当初は楽しんで自炊に取り組んでいた方も、最近は少しお疲れではないでしょうか? そんな方に向け「おかず味噌汁」のレシピを紹介したいと思います。
おかず味噌汁とは、汁物でありながら、しっかりと食べごたえのあるお味噌汁のこと。ごろっとした具で食べごたえがあるので、あとはごはんだけあればOK。平日いそがしい時などにきっと役立つと思いますよ。
これさえ覚えておけばOK! 味噌汁づくりの基本
味噌汁は料理初心者にも取り入れやすい料理ですが、作り過ぎたり、味が濃くなり過ぎたりといった失敗も起こります。
まず覚えておいていただきたいのは、味噌汁の水分量約150mlに対して、使用する味噌の基本量は大さじ1杯ということ。この基準を守れば、味が濃過ぎて食べられないなんてことはなくなります。
もう一つが、食事するときに食べるぶんだけつくること。というのも、味噌汁は再加熱すると、味噌汁に溶け込んだ味噌のたんぱく質の粒子が変性し、塩味が強調されてしまうと言われているためです。
毎回作るなんて大変と思うかもしれませんが、1杯分の味噌汁であれば沸騰するのも一瞬ですし、思ったほど手間になりません。それでも作り置きしておきたいという方は、調理過程では加熱し過ぎず、食べる直前に温めるようにつくるのがポイントです。
- 味噌汁1杯は水分150mlに対して、大さじ1杯の味噌が基本
- 味の劣化を防ぐためにも、味噌汁は食べるときに食べるぶんだけつくるのがベスト
それではレシピのご紹介に移っていきましょう。
おかず味噌汁のレシピ
焼き油揚げとしらすの味噌汁
油揚げを焼き色が付くまでこんがり焼くと、それだけでおいしそうな見た目になります(油を使わなくても、焼き色が付きます)。
しらすなら手軽に取り入れられるので、普段魚をあまり食べない方はカルシウム補給としても積極的に取り入れてみて下さい。しらすと味噌の旨味を含んだ油揚げが、口の中でジュワッとする感じがたまりません。
材料(1人分)
- 油揚げ:1/2枚
- しらす:20g
- 貝割れの菜:1/4パック
- 出汁
- 水:150ml
- 和風顆粒だし:小さじ1/8
- 味噌:大さじ1
作り方
2. 鍋に油揚げを並べ、焼き色が付くように中火で2~3分両面を焼く
3. 出汁としらすを加え、弱火で1分煮たら、味噌を溶き、仕上げに貝割れを加える
このレシピにおすすめのお味噌
米味噌(黄~赤)・麦味噌などで、麹歩合(※原材料として使われている大豆に対する麹の割合。麹の割合が高いほど甘味が増す)の高い甘味のある味噌がおすすめです。
- 石孫本店「五号蔵」
- マルカワみそ「未来」
- 井伊商店「麦味噌」
マーボー味噌汁
タッパなどの耐熱容器に材料を入れ、電子レンジで加熱して作れる中華風の味噌汁です。
包丁が苦手な方は、挽き肉を活用するのがおすすめ。豆腐は大きなスプーンで食べやすい大きさにすくい、青ねぎはハサミで刻んでも良いです。
長期熟成の味噌は中華調味料の甜麺醤(てんめんじゃん)のように使えるので、このレシピにはおすすめ。ピリ辛の味付けと相性抜群で食欲をそそります。
材料(1人分)
- 〈a〉豚挽き肉:30g
- 〈a〉酒:大さじ1
- 〈a〉おろしにんにく:小さじ1/2
- 〈a〉おろししょうが:小さじ1/2
- 〈a〉豆板醬:小さじ1/4
- 〈a〉水:150ml
- 〈a〉鶏ガラスープの素:小さじ1/2
- 〈a〉味噌:大さじ1
- 絹豆腐:100g
- 青ねぎ:1/2本
作り方
2. 食べやすい大きさに切った豆腐を加え、さらに1分加熱する
3. お椀に盛り、刻んだ青ねぎをちらす
このレシピにおすすめのお味噌
米味噌(赤)・豆味噌など、長期熟成の旨味のある味噌がおすすめです。
- 和泉屋商店「安養寺味噌」
- カクキュー「国産大豆 八丁味噌 銀袋」
- まるや八丁味噌「有機八丁味噌」
豚のしょうが焼き風味噌汁
定食の定番、豚のしょうが焼きをお味噌汁に。豚肉にたっぷりのおろししょうがで下味をつけると、汁だけでなくお肉もおいしく食べられます。ごはんがすすむ、おかず味噌汁の代表です。
使用するのは、加熱しても柔らかく仕上がる豚しゃぶ肉がオススメ。盛り付けも意識すると、豚のしょうが焼き感が増します。
材料(1人分)
- 油:小さじ1
- 豚肉:60g
- 〈a〉おろししょうが:大さじ1/2
- 〈a〉酒:大さじ1/2
- 玉ねぎ:1/8個
- キャベツ:1/4枚
- 出汁
- 水:150ml
- 和風顆粒だし:小さじ1/8
- 味噌:大さじ1
作り方
2. 鍋に油をひき、玉ねぎを中火で1~2分炒め、下味を付けた豚肉を加えさらに1分炒める
3. 出汁を加えひと煮立ちしたら、キャベツを加え味噌を溶く
このレシピにおすすめのお味噌
米味噌(黄~赤)など、辛口の味噌だと味が決まりやすくおすすめです。
- ヤマト醤油味噌「かなえ」
- 服部醸造「舞」
- ヤマカノ醸造「登穀味噌」
親子丼風味噌汁
丼からイメージした味噌汁は、保存の効く缶詰を活用することで調理工程も簡単に。
今回は焼き鶏缶のたれ味を使用していますが、多種多様なおつまみ缶詰やハーブ味などの変わり種を使用すれば、一層バリエーションが広がります。
焼き鶏缶のタレで甘みが出るので、卵との相性も良い1杯です。
材料(1人分)
- 焼き鶏缶(たれ):1缶
- 卵:1個
- 長ねぎ:5cm(10g)
- 三つ葉:2本
- 出汁
- 水:150ml
- 和風顆粒だし:小さじ1/8
- 味噌:大さじ1
作り方
2. 鍋に出汁・焼き鶏缶・長ねぎを入れ、中火にかけしっかりと沸かし、溶き卵を流し入れる
3. 三つ葉を加え、味噌を溶く
このレシピにおすすめのお味噌
米味噌(黄~赤)・合わせ味噌など、甘味と塩味のバランスが良い味噌がおすすめです。
- マルコメ「プラス糀 無添加 糀美人」
- 上久「合わせみそ」
- ヤマキ醸造「玄米みそ」
鮭と白菜のシチュー風味噌汁
白みそを使えば、牛乳やバターを使ったようなコクが出るので、洋風のスープアレンジにも活用できます。とろみを付ければ、よりシチューのような仕上がりに。
甘みの強い白味噌は濃い目の出汁や少量の塩で引き締めると味が整います。
材料(1人分)
- オリーブオイル:小さじ1
- 鮭:1尾
- 薄力粉:小さじ1
- 白菜:1/4枚
- コーン:大さじ1
- 〈a〉顆粒コンソメ:小さじ1/4
- 〈a〉水:150ml
- 白味噌:大さじ1と1/2
作り方
2. 鍋にオリーブオイルを引いて熱し、鮭に焼き色が付くように中火で2~3分焼く
3. 〈a〉と白菜を加えひと煮立ちしたら、コーンを加え味噌を溶き、弱火で3分煮る
このレシピにおすすめのお味噌
米味噌(白)は洋風にもアレンジしやすく、ちょい足しも楽しみやすくおすすめです。
- 佐野みそ「最上 京都白みそ御所」
- 本田味噌「西京白味噌」
- 石野味噌「懐石白味噌」
ここまで5つのレシピを紹介してきました。もし味に飽きてきたときは、アレンジを加えるのがおすすめ。具材の大きさや切り方を変えたり、柚子胡椒・すりごま・練りごま・スパイス・レモンやライム・バターなどをちょい足ししても新たな味わいを楽しめますよ。
そもそも味噌とは何か? 原材料と色の疑問と、その歴史
レシピの紹介は以上になりますが、ここでもう少し「味噌」について説明させてください。
米味噌、麦味噌……麹により味噌の種類は変わる
そもそも味噌とは、「大豆」「麹」「塩」の3つの原材料からつくられる発酵食品です。麹の種類が変わると味噌の種類も変わります。
- 米麹を使うと「米味噌」
- 麦麹を使うと「麦味噌」
- 大豆の麹を使うと「豆味噌」
「合わせ味噌」は、それら数種を合わせたもの。全国に流通している味噌の約8割は米味噌と言われており、麦味噌は九州で、豆味噌は東海地方で多く生産されています。
熟成期間により味噌の色は変化する
レシピで紹介してきた味噌のなかにも、色が白っぽいものから赤っぽいものまでさまざまあります。
この味噌の色は、たんぱく質と糖分が反応する「メイラード反応」によりつくられます。基本的には熟成期間の短いものは色が薄く、熟成期間が長いものは色が濃くなります。
熟成期間が短い味噌は味があっさりしてしまう分、麹の量を増やして甘みと旨味のバランスを取るように工夫され、熟成期間が長い味噌は旨味が強くなる傾向にあります。
気を付けていただきたいのは、「色が濃い=塩分が高い」ではないということ。塩分を控えたいから色の薄い味噌を買ったのに、実は塩分が高かったなんてこともあるので注意が必要です。
下:米味噌(白)・米味噌(黄)・米味噌(赤)・麦味噌・豆味噌・合わせ味噌
実際のところ、味噌の塩分は5%~13%ほどと幅があります。最近は塩分が高いものは敬遠されがちですが、塩分の高いものは保存性が高く、調理に使うと味が決まりやすいという特徴があるので覚えておいてください。
戦国武将も愛した? 味噌汁の歴史
そんな種類もさまざまな味噌。実は歴史が長く、戦国時代の武将達にも愛されていました。
豊臣秀吉の部下であった増田長盛などは、ごぼう・だいこん・にんじん・かつお節を入れて煮詰めた味噌汁を乾燥させ、戦国時代のインスタント味噌汁を発明したとも言われています。
ほかにも武田信玄率いる武田軍では、出陣前に煮大豆をすり鉢でよくすって麹と塩を加え丸め紙に包んだものを兵士達に渡していたと伝わっていますし、健康に人一倍気を使っていたとされる徳川家康はとりわけ味噌を好んだことで知られています。
江戸時代の『前橋旧蔵聞書(まえばしきゅうぞうききがき)』という文献には、「焼き味噌を焼いてお湯に溶かしてから飲めば1日中食事をしなくても少しの飢えも感じない」と訳せる文章が記載されているそうです*1。
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これまでよく味噌汁をつくっていた人も、そうでない人も、味噌汁の懐の深さを感じていただけたでしょうか。今回ご紹介したしょうが焼き風味噌汁や親子丼風味噌汁のように、定食や丼からイメージを広げてみるとアイディアが浮かんできやすいと思いますので、是非いろいろ試してみてくださいね。
著者:岩木みさき(いわきみさき)
拒食症・過食症・ひどい肌荒れを経験し、食生活を見直し-10kgと肌質改善に成功。“生産と消費のサイクルを紡ぐ”をテーマに、日本各地の現地取材、レシピ考案・撮影、ラジオやTV等のメディアにも出演。料理教室misa-kitchenを主催。
“みそ”に魅せられ日本各地のみそ蔵約60ヶ所100回以上を訪問。木桶仕込みのみそを「ガチみそⓇ」と名付け、日本の伝統調味料みその魅力を伝えたいと活動中。
2020年2月「みその教科書」出版。
HP:実践料理研究家 岩木みさき オフィシャルサイト
みそ探訪記:岩木みさきのみそ探訪記【公式】
Instagram:@iwakimisakimiso
今回紹介した商品
*1:『みそ文化誌』(中央味噌研究所)参照