こんにちは、無駄なものを作っている藤原麻里菜です。
私は、あんまり必要とされない“無駄づくり”な発明を工作し、完成したらニヤニヤする生活を送っています。今まで作ったものは、「お金で頬をぶたれるマシーン」や「クーポンをかっこよく出すマシーン」など、200個以上にのぼります。
ものを作るということは、最高の趣味です。誰も作ったことのないものを作り出す喜びは、何にも変えがたく、崇高なものです。友達がいなくても楽しめるしね……。
これは、4年前に作った「一人でパイ投げができるマシーン」です。パーティーゲームの定番(らしい)パイ投げを一人で楽しめるすごいマシーンです。見返してみると、こんなものを作ってないで部屋を掃除しなさい、と言いたくなる写真ですね。
でも、工作を極めると、誰かがいないとできないことさえ一人でできちゃうのです。すごいでしょ。みんな、工作やりたくなるでしょ。
これを踏まえて、今回は「ドッジボールを一人でできるマシーン」を作りたいなあと思いました。スポーツというのはだいたい誰かがいないとできないものですが、工作の力を借りれば、一人でスポーツを楽しむことができるようになるはずです。
- 「ドッジボール盤」をつくる
- 完成
- 一人でドッジボールをやってみる
- おわりに
「ドッジボール盤」をつくる
ドッジボール。小学校の休み時間にクラスのリーダーに言われるがまま、体育館に集合させられた記憶がみなさんにもおありでしょうか。
私は運動音痴なのですが、逃げるのだけが得意だったので、ずーっと逃げ続け、だいたい最後の一人になっていました。みんなと対等にやり合って残っているわけではなく、逃げ続けた結果の生き残り。なんだか、今の人生にもつながってくるような気がします。涙がこぼれ落ちそうだ。
そんな泣けるワンシーンを卓上に蘇らせるべく、野球盤ならぬ「ドッジボール盤」を作っていきます。
まず、設計図を書きました。
仕組みとしては、小さなピッチングマシーンを作ってそこからボールを飛び出させ、飛び出してきたボールを避ける操作をできるようにしていきます。
モーター(灰色の物体)にタイヤをつけたものを2つ用意します。これがピッチングマシーンの代わりになります。
「Arduino(アルドゥイーノ)」という基板にプログラムを入れ、このモーターの動きを制御します。一つは正回転、もう一つは反回転させることで、真ん中にものを入れると跳ね返って飛び出る仕組みをつくることができるのです。
奥に見える黒っぽい基板がArduinoです。名前からしてちょっと難しそうですが、実は電子工作が簡単にできるすごいやつで、使い方もネットにたくさんあるので気になる方はぜひ調べてみてください。
モーターを使うには、モータードライバというパーツを間に入れなくてはいけませんが、これもネットで検索したらすぐに仕組みを理解できます。ネットってすごいな。
ちなみに、Arduinoは3,000円ほどで購入でき、パーツは数百円くらいで手に入ります。電子工作は、それほどお金がかからない最高な趣味なのです。
サーボモーター(青色の物体)を3つ用意しました。サーボモーターとは、角度を制御できるモーターです。「90度曲がる」というプログラムを入れることで、その指示通りに動かすことができるのです。
サーボモーターの回転部分を組み合わせることで、前後、右左、上下などに回転させる仕組みをつくることができます。すごいでしょ。
操作は、「光センサー」ですることにしました。下が赤くなっている円柱型の物体に2本の足が付いたようなやつがそれです。
これは、光の量を感知することができるセンサーで、手や指で丸い部分をふさぐことで、光の量が変わり、その数値がArduinoに送られ、その数値の変化で先ほどのサーボモーターを自在に動かすことができます。小さいのにすごい。
動く仕組みはなんとなく出来上がりました。あとは、臨場感を演出するためのあれこれをしていきます。
まず、ネットでドッジボールをやっているフリー素材をプリントアウトしました。これを切り抜いてピッチングマシーンの前に貼ります。
続いてネットで体操服のフリー素材を検索して自分の顔に合成した画像をプリントアウトしました。
それをサーボモーターにつけて……。
「ドッジボール盤」完成!
「ドッジボール盤」の完成です。実際の野球盤の数倍の大きさになってしまったけれど、ご愛嬌ということで……。
動いていなくてもめちゃくちゃ躍動感がありますね。
ただ、全く体操服が似合っていません。
なんとなくビジネス本の横に置いてみました。お部屋にもマッチして、最高ですね。最高だよね?
一人でドッジボールをやってみる
では、一人でドッジボールをやってみましょう。箱の中にいる自分を操作するの、なんだか緊張します。
作るのがめんどうでボールを投げる人と私しかいないせいで、めちゃくちゃ怖い構図に見えてしまいます。でも、実際は私が内野にいる最後の一人。私がボールに当たってしまったら、チームが負けてしまうのです。逃げ切るしかねえ……。
「がんばれ、まりな!」
頭の中でクラスメイトが私の”逃げ”を見守っている。ボールをキャッチできる運動神経はないから、それは外野のみんなに任せるとして、私は逃げる……。逃げることに全神経を集中させます。
ボールが出てきました。思いのほかスピードが速すぎて見えない! こんな速さでボールを投げてくる小学生はいない! 私の小学校では強くボールを投げたら反則だった! そして、それに応じてすごい速さで逃げる私。逃げている自分も速すぎてよくわからない! これは、すごい戦いだ……。
ボコンボコンとボールがドッジボール盤内を跳ね返ります。なんかあれだな、DVDプレイヤーのロゴがボヨンボヨンなるやつみたいだな。 ※ボヨンボヨンの参考動画
「まりな! すげえよ! ボールがDVDプレイヤーのやつみたいになってるぜ!」
私の頭の中にいるクラスメイトの一人が歓喜の声をあげました。やった! 逃げられたよ私!
今ならどんなボールがきても、
避けられる自信がある。
そして聞こえる
歓喜の声が……。
側から見ると一人ぼっちで何をやっているのだ、という感じですが、頭の中ではたくさんのクラスメイトたちの声が聞こえているので大丈夫です。全くさみしくありませんから……。
「まりなは一人じゃないよ!」
みんなのためにも頑張って逃げるしかない。
ONE for ALL、ALL for ONEだ。
一人はみんなのために、みんなは一人のために。クラスのスローガンの意味が当時は全く理解できませんでした。この“みんな”の中に私は含まれていないような気さえしていました。でも、今は違う。私も、みんなの一員だと、胸を張って言えます。
あっ。
いやだ……。
避け切れなかったし、箱の中にいる自分がすごい角度で曲がっているし、この胸の痛みはなんの花に例えられるのでしょうか……。
やっぱり投げ禁止のコロコロドッジボールが一番平和的だったな……。
おわりに
悔しい……。
悔しい思いはしたけれど、卓上にしたことでドッジボールに楽しみが生まれました。マシーンによって私の運動神経は数億倍になり、普通じゃ見られないドッジボールの攻防戦を作り上げることができたのです。
小学生の時のあのトラウマめいた体験も、このマシーンによって、塗り替えることができたような気もしなくもないです。一人でドッジボールをすることで、ドッジボールの新境地に達した気もしなくも……ない……です。
やはり、一人というのはすばらしいことです。一人でしかできないこともたくさんあるし、それをもっと増やしていきたいですね。
なんだか、久しぶりにドッジボールをやりたくなってきました。次は、実際にドッジボールができるように友達ロボットを10体くらい作ろうと思います。
著者:藤原麻里菜
頭の中に浮かんだ不必要なものを何とか作り上げる「無駄づくり」を主な活動とし、YouTubeを中心にコンテンツを広げている。2016年、Google社主催の「YouTube NextUp」に入賞。2018年、「無用發明展- 無中生有的沒有用部屋in台北」を開催。総務省異能vation採択。でも、ガールズバーの面接に行ったら「帰れ」と言われたことがある。
Twitter:@togenkyoo
ブログ:藤原麻里菜のブログ
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