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ユーラシア大陸は餃子でつながっている! 中国からヒマラヤを越えてトルコ、ヨーロッパまでご当地「餃子」の旅

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スペインの市場に並んだ揚餃子

こんにちは、ブログ「東京餃子通信」の塚田亮一です。

突然ですが、皆さん餃子好きですよね? 日本の家庭では平均して年間で700個以上が消費されているというデータでもわかる通り、餃子は日本を代表する国民食の1つといっても過言ではありません。

そんな餃子ですが、もとを正せば中国から海を渡ってやって来たことは周知の事実。しかし、わざわざ海を渡って伝わるほど魅力的な食べ物ですから、陸続きの地域でも放っておくはずがありません。実際に長い歴史のなかで、東は日本や朝鮮半島、西はスペインまで、餃子はユーラシア大陸全般に広がっています。

今回は、実際に私が世界各地を訪れたり、日本の各国専門料理店で見つけた餃子を紹介しつつ、ユーラシア大陸を横断する餃子のつながりをご案内したいと思います。

まずは餃子の発祥地、中国から行ってみましょう。

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中国の餃子といってもいろいろあるぞ

中国から渡ってこなければ、日本で餃子が普及することはありませんでした。

それに敬意を表して、そして日本で独自進化した国民食「ギョーザ」をアピールするため、このTシャツで北京を訪問してきました。現地の人からも「ドンチンチャオズ(東京餃子)」と声をかけられるなど、餃子を通じたちょっとした国際交流です。

北京オリンピックのメインスタジアムにもなった国家体育場(鳥の巣)と筆者

お祝いにも欠かせないモチモチの水餃子

さすが本場! 中国の水餃子は、量が多い(写真は北京のレストラン「大食客」にて)。一斤(約600グラム)単位での注文なので、これで一皿。

もともと中国の北部ではお正月に家族で集まって餃子を食べるなど、お祝いには欠かせないおめでたい料理。このため大人数で食べるのが基本です。

手延のモチモチ皮にニラと豚肉、白菜の餡が目一杯に詰まっていて、とてもジューシーでした。

北京のオリンピック公園近くのレストラン「大食客」の水餃子

中国流の焼き餃子「鍋貼」のお味は……

中国の焼き餃子は水餃子の残り物を翌日焼いたものだという説もありますが、実は「鍋貼」という鉄板の上で焼いた餃子があります。某有名餃子店で店員さんの隠語になっている「イーガーコーテル」の「コーテル」の語源です。

日本の焼き餃子に比べると細長く、端は閉じていなかったりします。皮も少しゴワゴワしていて、ジューシーさも今ひとつ。中国では美味しい焼き餃子に出会うことはできませんでした。

中国の焼き餃子「鍋貼(コーテル)」

他にも、中国では南にくだっていくと、雲呑や点心(蒸し餃子)など餃子の仲間がたくさん見つかります。

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朝鮮半島のマンドウは、北朝鮮で独自進化?

続いて、日本のお隣の朝鮮半島に行ってみましょう。中国の東北地方で生まれた水餃子は、日本に辿り着く前に陸続きの朝鮮半島に伝わりました。

韓国では、餃子は「マンドウ」と呼ばれます。餡は豚肉や牛肉のミンチが中心で、キムチが入っていることもあります。スープに入れて煮込むのが一般的な食べ方ですが、蒸して食べることもあるそうです。

韓国の餃子「マンドウ」

さらに北朝鮮で、独自進化した餃子に出会うことができます。私は北朝鮮に行ったことはないのですが、北京にある北朝鮮政府直営というレストランで、北朝鮮の餃子を食べることができました。

北京の北朝鮮政府直営レストラン

北朝鮮の餃子の特徴は、なんといっても黒い皮。真偽の程は定かではありませんが、凍らせたジャガイモを粉にして皮にしているのだとか。もっちりした皮の中にはキムチが詰まっていました。それほど辛くもなく、とても素朴な味の餃子でした。

北朝鮮の餃子

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モンゴルの餃子は羊入り

朝鮮半島と同じく陸続きのモンゴルにも、当然ながら餃子は伝わっています。ツァガーン・サルと呼ばれるモンゴルの正月には、家族が揃って餃子を食べるのが習わしです。

モンゴル餃子の代表格は「バンシ」で、いわゆる水餃子です。モンゴル帝国の勢力が大きかった時代に、中国から取り込んだものらしいです。餡には豚肉ではなく、羊肉を使うのが特徴。モンゴルでは羊肉が最も人気があるので、餃子にも羊が用いられるようです。

モンゴル餃子「バンシ」

もう1つ、小籠包のような形をした「ボーズ」と呼ばれる蒸し餃子があります。小籠包に比べて、かなり厚めの皮を使っています。こちらも餡に使われるのは羊肉です。

モンゴル餃子「ボーズ」

モンゴルの人は本当に羊肉が好きでたまらないようで、羊を余すところなく食べます。豚足のように足の先まで食べる(左)なんて序の口で、驚いたのが羊の頭。頭蓋骨ごとテーブルに出てきました(右)。

羊を足まで食べる羊の頭

頭がまるまる蒸し上げられているのですが、意外とクセもなく美味しく食べられました。これだけ羊が好きなのですから、餃子の餡も羊になりますよね。

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餃子はヒマラヤを越える!

餃子の魅力は、世界最高峰のエベレストを擁するヒマラヤ山脈をも軽々と乗り越えてしまったようで、ユーラシア大陸の南の方にも伝播しています。

幸福の国ブータンの「モモ」

まずは、幸福の国として注目されているブータンから。

ブータンの餃子は「モモ」と呼ばれます。蒸して食べるのが一般的なようです。餡は豚肉と玉葱で、「エヅェ」という唐辛子味噌のようなものを付けて食べるのが特徴です。

このエヅェがとにかく辛い。ブータンでは、唐辛子は主食の1つに挙げられるほどで、とにかく唐辛子をたくさん食べるんですよね。

こちらは代々木上原のブータン料理専門店「ガテモタブン」のモモです。

ブータンの餃子「モモ」

ネパールで小籠包+カレーな「モモ」

次に、ネパールに移りましょう。中国とインドに挟まれたネパールには、この2つの食文化が交わったような餃子があります。ブータン同様に「モモ」と呼ばれるのですが、形状や味付けはかなり異なります。

小籠包のような形状をしていて、皮も厚く、モンゴルのボーズに近いです。餡には、羊や鶏肉がよく使われていて、多くの香辛料を使って味付けがされています。このジューシーなモモを、カレーソースに付けて食べます。

こちらは、恵比寿のネパール料理専門店「クンビラ」のモモです。

ネパールの餃子「モモ」

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トルコからヨーロッパに上陸する餃子

ヒマラヤ山脈を越えた餃子は西に進み、ヨーロッパへと渡ります。

アジアとヨーロッパの接点でもあるトルコにも、独自進化をした餃子があります。「マンティ」と呼ばれる水餃子です。韓国の餃子がマンドウでトルコでマンティというところにも、つながりを感じますよね。

もともとはカッパドキアの中心都市、カイセリの郷土料理だったらしいのですが、最近ではイスタンブールにも多くの専門店ができるほど人気が出ているようです。

トルコの水餃子「マンティ」の専門店

マンティの特徴は、1つのサイズが非常に小さいこと。そして餡には羊肉が使われることが多いです。この小さなマンティをドサッとお皿に盛り、ニンニクで香り付けしたヨーグルトソースと唐辛子オイル、そしてトマトソース、さらにはドライミントをかけて食べます。

トルコの水餃子「マンティ」

こんな小さなマンティですが、1つ1つ指先で摘んで作っていました。とても根気のいる作業ですよね。

水餃子「マンティ」を作る

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ビールとソーセージのドイツにもスープ餃子

トルコからヨーロッパに上陸した餃子は、ヨーロッパ全土に広がっていきます。意外なところではドイツでも見つけることができました。ドイツといえばビールとソーセージのイメージが強いのですが……

ドイツといえばビールとソーセージ

実は餃子も存在するのです。ドイツの餃子は「マウルタッシェ」と呼ばれ、南部のシュヴァーベン地方の郷土料理として定着しています。近隣のミュンヘンなどでも食べることができます。

豚ひき肉とほうれん草、玉葱などを生地に入れて茹でたもので、肉を禁止されている修道院の修道士がこっそりと肉を食べるために皮に包んだのが始まりという説もあります。

ソースをかけたり、スープに入れたりして食べます。

ドイツの餃子「マウルタッシェ」 1

こちらはソースをかけて食べるマウルタッシェです。

ドイツの餃子「マウルタッシェ」 2

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ユーラシア大陸の西端のスペインへ

餃子のつながりを辿る旅も、ついにユーラシア大陸西端のスペインまでやって来てしまいました。スペインにも餃子のような食べ物があると聞いていたので現地を調査したところ、市場でずらっと並んだ揚餃子を見つけることができました(記事冒頭の写真)。

これは「エンパナーダ」という食べ物で、ぱっと見はミートパイに近いです。肉もあればツナもあり、野菜もありとさまざまな餡を選べます。かなり大きいのですが、皮がパイやパンのようには厚くないので、揚餃子と呼んでもギリギリセーフでしょうか。

スペインの揚餃子「エンパナーダ」

もう少し街を探索したところ、「エンパナディージャ」という食べ物も見つけました。こちらは「小さなエンパナーダ」という意味なんだとか。エンパナディージャは形も大きさも食感も、スペインの揚餃子と言い切れるものでした。

スペインの揚餃子「エンパナディージャ」

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さて、中国から始まり、朝鮮半島、モンゴル、ヒマラヤ、トルコ、ドイツと巡って、スペインまで至る餃子の旅でしたが、いかがでしたでしょうか?

今回は紹介できませんでしたが、この他にもユーラシア大陸一帯には多くの餃子が広がっています(この他の世界の餃子をご存知な方がいたらぜひ教えてください)

餃子
インド サモサ
イタリア ラビオリ
ロシア ペリメニ
ポーランド ピエロギ
リトアニア コルデゥナイ
ウクライナ ヴァレーニキ
ウズベキスタン マントゥイ
イスラエル クレプレヒ

このように、ユーラシア大陸は餃子でつながっています。餃子に出会うために世界を旅するのも楽しいと思いますよ!

著者:塚田亮一 (東京餃子通信 編集長)

東京餃子通信 編集長 塚田亮一
餃子食べ歩きブログ「東京餃子通信」の編集長。「餃子は完全食」のスローガンのもと、おいしい餃子を求めてどこまでも。首都圏はもとより、宇都宮、浜松、福島などの餃子タウン、さらには世界中の餃子風料理を日々食べ歩く。「マツコの知らない世界」「お願い!ランキングGOLD」「ヒルナンデス」など、TV、ラジオ、雑誌の餃子特集への出演・執筆多数。