帰省時、手土産を持っていくかどうか、さらに何を持っていけばいいのか悩んでいる人も多いのでは。渡す相手とシチュエーションによってベストなお土産は変わってきます。今回はプロである甲斐みのりさんに、間違いない選び方のコツを教えていただきました。
はじめまして。普段はWeb系のエンジニアっぽい仕事をしつつ、たまに記事を書いたりしているさくらいです。
夏の帰省シーズンに、首都圏と実家のある島根を行き来するようになって早十数年。帰省時に渡すお土産にはいつも悩みます。結局いつも似たようなものになりがちですが、たまにはちょっと変わったものを渡してみたい! せっかくなら珍しがってもらいたいし、それ以前においしくなくては。
「誰に渡すか」と「食べてほしいシチュエーション」によって全然違ってくるので、考え始めると意外と迷うものです。
大人数で食べたいもの、子供がいる家庭向けのもの、暑い夏を乗り切るためのもの、甘いもの、お酒に合うもの……
実家、そんなに会わない親戚、よく会う友達、久々の友達、お世話になった人……
想定できるパターンは無限大……!!
そんな「帰省土産の悩み」を解決すべく、“お土産選びのプロ”こと甲斐みのりさんに話しを聞いてみました。
甲斐みのりさん
文筆家。1976年静岡県生まれ。旅や散歩、お菓子や手土産、クラシック建築やホテル、雑貨や暮らしなどのジャンルに精通しており、多数の書籍や雑誌で執筆しているほか、講演やイベント出演なども行っている。主な著書に『地元パン手帖』(グラフィック社)『全国かわいいおみやげ』(サンマーク出版)、『気持ちが伝わるおいしい贈りもの』(大和書房)など。
甲斐さんはとてもお土産に詳しいとのことで、今回は、いろんなシチュエーションに適した帰省お土産の選び方を教えてもらいました。
せっかくなので、一生分のお土産の迷いをこの場で解決させるつもりで……
……と意気込み、「誰に渡すか」「食べてほしいシチュエーション」のありとあらゆるパターンを想定し、甲斐さんに質問しまくった結果、有益過ぎる情報をたくさん聞くことができました。「お土産選びにもこんなノウハウあったんだ!」と目からウロコがボロボロ落ちまくり……!!
ぜひこの情報をみなさんと共有するとともに、「お土産選びに迷ってる人におすすめを提案してくれるツール」のひとつでも作らねば……
という流れでできたのがこちらの「YES・NOチャート」です。
もう帰省土産選びに悩まない! YES・NOチャート
こちらが「帰省土産選びのためのYES・NOチャート」。シチュエーションや贈りたい相手を想像しながら、質問に「YES」「NO」で答えていくと、おすすめのお土産のジャンルなどをサジェストしてくれます。
このチャートは、甲斐さんに伺ったお話を元に作ったのですが、その中でも特に参考になったのが、「大人数が集まったときに適したお土産の選び方」でした。
仮に「帰省先に子供からお年寄りまでが集まっているような『夏休みあるある』な状況」を想定して、選び方のポイントを聞いてみました。
「帰省先で大人数が集まるときにピッタリなお土産」の選び方
- 子供からお年寄りまで、みんなに楽しんでもらえるお土産ってありますか?
- いろんな世代の人がたくさん集まるときは「みんなが好きなものを選べるお土産」がおすすめです。例えば「irina(イリナ)のロールケーキタワー」なんてどうでしょう?
- わー、これは女子っぽい。かわいい……! これ、味が25種もあるんですね。
- たくさんの選択肢の中から、みんなが自分の好きな味を選べるだけで楽しいですし、会話が広がったりしますよ。ジャンケンで勝った人から好きなものを選ぶ、といったゲーム感覚で決めたりするのも楽しいですね。タワーを作るときに、フルーツやクリームを乗せてアレンジするともっとかわいくなりますよ。
- 帰省先に子供がいるような状況に、かなりマッチしそうですね。タワー作りは小さい子供でも参加できそう。あ、これタワーの組み立て方の説明書まで入ってるんですね、すごい親切!
ゲーム感覚にくわえて工作っぽさもある。デコレーションするのは子供たちに任せたら本人たちも楽しいし、食べるときはおじいちゃんおばあちゃんたちも一緒に……と夏休み要素満載な妄想話でいつの間にか盛り上がっていました。
次は「大人数で楽しめる」に加え、「珍しがらせたい」という要望を聞いてもらいました。そこで教えてもらったのが、山形県の名物「からからせんべい」。
- 「からからせんべい」は、山形県の庄内地方に江戸時代からある黒糖味のせんべいです。割ると、中からいろんなおもちゃが出てきます。
- どんなものが入ってるんですか?
- 竹とんぼや手まり、紙風船のような昔懐かしいおもちゃが出てくることがあれば、ボタンを押すとピカッと光る懐中電灯風のおもちゃもありますよ。
- え、それって電池が入ってて光るってことですか!? すごい現代的!
- あとはヘアゴムとか……とにかくいろんなものが入ってて、みんなで好きなせんべいを取って、一斉に割ると盛り上がるんです。「割る」というアクション自体が、子供からお年寄りまで楽しめるので。前に、100人ぐらいが参加したお茶会の場で一斉に割ったときは、「夢」って書いてあるちっちゃい色紙が出てきて……お金が出てきた人もいました。
- えっ!? お金??
- 5円玉が出てきたんです。紙に包んであるので衛生的には問題ありません。
- 一番いいものってどんなものなんでしょう?
- みんなが一番喜ぶのはこけしです。でも100人開けてひとりぐらいしか出ない、かなりレアなアイテムなんですよ。なので、こけしだけが入った「オリジナルのからからせんべい」を作ってしまいました。中のおもちゃはオーダーができるので、引き出物などにも利用されているんです。
甲斐さんオリジナルのからからせんべい
そんな訳で、「帰省先で大人数が集まるときにピッタリなお土産」を選ぶときは、
● 味やバリエーションが豊富で、それぞれの好みに合わせて選べるもの
● 子供と大人が一緒に作業するなど、「食べる」以外の楽しみがあるもの
この2点を押さえると、喜ばれるようです。
住んでいる場所のものを「帰省土産」にすべき?
ところで先ほどの「からからせんべい」は、山形県の名産品。今や通販などで日本各地のものを買うことができるけど、行っていない地域のものをお土産にするのはちょっと躊躇(ちゅうちょ)します。
- 例えば東京に住んでる場合、「東京のものを買わなければ」と思いがちになりませんか? 「全然違う地域のものを買うのってアリなんだろうか?」と迷うんですが……。
- 気にせず「いいと思ったものを渡す」のが一番だと思いますよ。よく観光地で売られているお土産は、箱に「○○に行ってきました」と書いてあっても、そこで作られたものじゃないことが多いですし。
- 確かに「どこどこへ行ってきました」感が必要なのって、旅行土産の場合だけで、帰省土産ではそんなアピールいらないですね……!
- 私は、帰省土産に関しては、産地より「どうしてこれを買って贈ったのか」という気持ちの方が大事で、そこに意味があればいいと思っています。「その人に食べてほしい」とか「おいしそうで、食べてみたくって」みたいなエピソードが添えられるのが一番いいなって。
そんなわけで、帰省土産では産地は気にしなくてもいいようなので、甲斐さんに自由に選んでもらったお土産をいくつか紹介します。
お酒が好きな人には、瓶詰めピクルスがオススメ
- 帰省土産でお酒を買う方、多いと思います。でも、お酒の好みって人それぞれで、かなり親しくないと分からないですよね。ワイン派なのか、ビール派なのか、日本酒派なのか……そういうときは、お酒の“つまみ”を贈るのがいいですよ。おすすめは、ラベルがかわいい瓶詰めのピクルスです。
- 私も飲む方なので、「このピクルスがつまみなら何を飲もう?」と、お酒を選ぶ楽しみもできます。こういうのって、自分じゃなかなか買わないからもらったらうれしいですよね。
- 「自分じゃ買わないけどもらったら嬉しい」というのは、お土産として絶妙ですよね。お酒のつまみとしてだけじゃなく、おかずとしてアレンジもできます。百貨店やちょっといいスーパー、アンテナショップなどに置いてあるものは見栄えがいいものが多いので、プレゼント用にぴったりなんです。種類も豊富ですよ。ピクルスなら日持ちしますし。
実家に贈るなら「ミーハー」さ、義実家には「堅実」さを
- 実家だと贈った本人も食べると思うので、テレビや雑誌などで見かけて気になってたけど、買ったことがないもの、いわゆる「ミーハー」なものを帰省のきっかけに買うのもおすすめです。私もこの前、気になりつつ買い逃していたマダムシンコの「マダムブリュレ」を買ってみたんですが、すごくおいしくて……! こういう「切り分け系」のお菓子って、人に渡すと「面倒くさがられるかも」とか思ってしまいますが、実家だと遠慮なく渡せますよね。
- はやりものって若干抵抗があるんですけど、地方に住んでても「テレビで見たから知ってる!」となるから、分かりやすいですよね。あと、みんなが買うだけあって、やっぱりおいしいですし。
- 逆に義実家や、ちょっと縁遠い親戚に渡す場合は冒険をせず、これであれば間違いないという「老舗や定番のもの」を贈るのがベターですね。私のおすすめは「資生堂パーラー」の焼き菓子です。
- 老舗のちょっといいものって間違いないですよね。ここは、お土産に個性を出す場所じゃないんですね。
相手の好みを知らない場合も「ミーハー」に寄せる?
- 渡す相手の好みを把握していると、選びやすいですよね。例えば、コーヒー派であればドリップパック、紅茶派であればハーブティーがおすすめです。最近はカフェや雑貨店などがこだわりのドリップパックコーヒーを販売しているのですが、お湯を注ぐだけで会社でも家でも気軽に飲めるし、お値段も手ごろ。ハーブティーは「美容にいい」や「疲れに効く」など、効能のバリエーションが豊富なので、相手に合わせて選ぶことができます。
- これも自分では買わないけど、もらったらうれしい! ……逆に、相手の好みを把握してない場合はどうしたらいいですか?
- 話題のもの、貴重な感じがするものは、やっぱり万人ウケしやすいと思います。さらに「ちょっとオシャレ」「知る人ぞ知る」というようなものだと、久しぶりに会う相手や好みが分からない人にも、「この人、気が利いてるな」と思ってもらえるかと。例えばまだまだ店舗が少ない「PRESS BUTTER SAND」や「BAKER'S CUSTARD」はどうでしょう。行列ができて、話題になってるようなものですね。
- 人気店ってほんと並んでますもんね。並んでるのを見て、人気なのか!? ってなって、さらに人が増えたり。なんとなく実家の「ミーハーに寄せる」に似てますね。
贈る相手を驚かせたいときは
- 帰省土産がマンネリ化したときや、相手に驚いてもらいたいときは、カラフルな「虹色ラムネ」がいいですよ。これ、瓶に色が付いているんじゃなくて、ラムネ自体に色付けされているんです。着色料は野菜や花から抽出した天然由来のものを使っているので、そういったことを気にされる方にも贈りやすいです。
- あれ? これ、大分の醤油屋さんが作ってるんですね。意外! 見た目がきれいっていうのはいいですよね。ピクルスもでしたけど、置いとくだけで絵になるというか。
- 贈った相手からよく「こんなきれいなラムネがあったんだ!」と驚かれますね。ラムネの色がより際立つよう、白いコップに注ぐのがおすすめです。あと、これ天然色素なので、光にあたると少しずつ色が消えちゃうんです。そういう虹のような儚さから「虹色ラムネ」と名付けられたみたいですよ。
- へぇー! よく考えられてますねぇ。
- もうひとつおすすめなのが、葛(くず)でできた「くずシャリシャリ」というアイスですね。静岡の名物で、葛でできているから普通のアイスより溶けづらくて、形も崩れにくいんです。食感ももちもちでとってもおいしいですよ。
- これ、すっごい食べてみたいです! 和風だからお年寄りも喜びそうだけど、丸ごとだと大き過ぎるので、もう少し小さいサイズもあればいいなあ……。
- くずシャリシャリのいいところは、溶けづらいから、串を抜いて包丁で切り分けて食べられるところなんです。みんなでシェアしあって食べられますよ。
- あ〜〜、今年これにしようかなぁ……。
お土産のプロは、どこでも「お土産」を探している
- ここまで、さすがお土産のプロ! とうなるセレクトの数々でした……。甲斐さんは普段、どうやってお土産を探しているんでしょう。
- 「お土産を買うぞ!」と思って探しているというよりは、普段から「お土産に良さそうなもの」を見つけたら買っておくという感じですね。例えば、成城石井や明治屋など“ちょっといいスーパー”って、ラベルやパッケージがかわいいものが置いてあったりしますし。あとは、雑貨屋さんに行ったときに、珍しいマスキングテープがあったら、とりあえず買っておいたりしますね。
- マスキングテープ?
- 友人が2〜3人集まるときに手土産として10個くらい持っていって「好きなの2個取っていいよ」と言って渡すと、すごく喜ばれるんです。今、マスキングテープっていろんな柄があって、私もよくもらうんですが、手持ちのバリエーションが増えるとその分選ぶ楽しみも増えるので、もらってもあまり困らないんですよね。ほかにはポストカードや、ミュージアムグッズを渡すことも多いです。面白いものや珍しいものを見つけたら、ちょっと多めに買っておきます。
- なるほどー。いわゆるバラマキ土産の一種ですよね。こういうものって、どんな年齢の人にあげても喜ばれますか?
- もちろんものによりますけど手ぬぐいは用途が幅広いので、どの世代にも喜ばれますね。あとはクリアファイルも誰がもらっても困らないかと。私、自宅に1,000円くらいの細々したものを入れる「ちょっとしたプレゼント用かご」を作っていて、珍しいものを見つけたら買ってそこに置いておくんです。お土産が必要になったときに付け焼刃で探すと「いいものがない!」と困ってしまいますから。
- 「珍しいものをあげたいのであれば、普段から買っとけ」と……!
「さすがプロ……!!そんなに常にお土産のことを……」と、感心しきり
おまけ:帰省土産を実家に贈ってみた
世間はそろそろ帰省シーズンということで、私ももうすぐ帰省します。そこで、甲斐さんから教わった情報をもとに、フライングでお土産を送ってみました。
「情報をもとに」と言いつつ、結局選んだのは一番気になってた「くずシャリシャリ」。「自分で買わないけどせっかくだから食べてみたい」という動機だけど、「いいと思ったものを渡すのが一番」と甲斐さんも言ってくれていたし!
冷凍された状態で実家に届いた「くずシャリシャリ」の写真が送られてきた。カラフル……!
どアップ! シャリっとナイフを入れてもらった
早速両親に食べてもらいました。父は「抹茶味」、母は「小倉味」。どちらも和風の味を選んだようです。食べた感想はというと、
- 元々くずのお菓子が好きだからうれしい(母)
- 元々小豆の棒アイスも好きだからうれしい。密度が濃い小豆バーみたい(母)
- けどこれ、アイスが溶けてくずになる必要ある?(←そういうどっちも好きな人には、ひとつで両方味わえるから得なんだってば!!/娘つっこみ)
- 歯ざわりがググっとくる! 普通のアイスよりこっちの方が好き(父)
- 何度も噛めて良い。アイスではなく食べ物を食べてる感じがある(父)
- くずのお菓子として食べるときには、冷蔵庫でゆっくり解凍させたほうがよさそう(母)
- 「小倉味」は溶けると水ようかんみたい(母)
- 「抹茶味」は溶けるとムースみたいにトローンとしてる。抹茶の味も濃くて良い(父)
珍しい食感だからか、なんだかものすごく細かく食感を伝えようとしてくれている……! とはいえ、やっぱり実際食べないとピンとこないかなぁ。けど味の濃厚さと食感の新鮮さは伝わってきました。期待しつつ帰省までしばらく楽しみに待つことにします。
そして帰省お土産に迷っても、迷ってなくても、チャートで遊んでるうちに意外な結果に導かれるかも……!? 帰省土産だけでなく、いつもの手土産選びにも使えるので、こちらもお暇なときにぜひどうぞ~。
著者:さくらいみか
普段はWeb系のエンジニアっぽい仕事をしつつ、たまに「デイリーポータルZ」等で執筆。地元ネタ、工作ネタ、食べ物ネタが多め。手編みの覆面、編みぐるみ、グッズ製作などもしています。好きな果物はスイカ。将来は忍者屋敷に住みたい。
個人サイト:それにつけてもおやつはきのこ Twitter:@skrimk0218
今回紹介した商品
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