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池めぐり三十余年。全国七千の水辺をめぐった私の「池の沼」を語ろう

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「全国の池や沼をめぐる」という趣味にはまり、その様子を紹介するブログ『水辺遍路』を運営している市原(@cippillo)です。

この記事ではここまではまることになった「池の魅力」と、「池めぐりを楽しませてくれる『道具』」を紹介します

池にはまったのは「釣り具」愛がはじまりだった

ライフワークとしてめぐってきた池の数は、北海道から沖縄まで7千を越えました。もっとも日本には溜め池だけで21万あると言われていますので、これでもほんの一握りにすぎません。

私が本格的に池めぐりをするようになったのは、中学生のとき。もともとは「釣り具」に魅せられたことから始まりました

父親が建設省の河川畑の転勤族だったため、長くても2年ほどで転校。本州・四国・九州の小中学校を渡り歩き、ちょうど少年のマニア魂が芽生える年ごろに、日本一の溜め池密度を誇る香川県に住むことになりました。

池天国である香川の男子中学生にとって、野池でのルアー釣りは、趣味というより共通するファッションのようになっていました

横文字キラキラのリールやルアーの話題で熱く盛り上がり、放課後はデコトラ顔負けのセミドロップハンドルの自転車で、気の合う友人と近くの池にくり出したものでした。

ダイワ、シマノ、アブガルシアといったメーカーのベイトキャスティングリールや、ガングリップタイプのワンピースロッドがみんなの憧れで、私も一生懸命、小遣いを貯めました。ワンピースロッドまでは買えなかったので、中学生定番のパックロッドを使っていました。

そのころお札を握りしめて買いに行ったリールは、40年近くたった今でも部屋にあります。

中学生のとき買った実際のリール。パックロッドスタイル当時の憧れだった上位機種のリールとワンピースロッドを大人になってから再現したもの
左は中学生のとき買った実際のリールとパックロッドスタイル。右は、当時の憧れだった上位機種のリールとワンピースロッドを大人になってから実現したもの。ベイトキャスティングリールといえば太鼓形だった時代に、スピード感のある流線型のフォルムは衝撃的だった。それでも当時の中学生には粋な輩もいて、オールドスタイルな太鼓型にこだわっている人も(画像クリックで拡大)

釣りのための池に、逆に釣られる

さて池めぐりです。

当初は愛する釣り具で魚を釣り上げたいというモチベーションが強かったのですが、次第に未知の池に向き合い、ルアーという分身を使って池にコンタクトする体験がもたらす悦びが大きくなりました。

釣果を考えると効率は極めて悪いのですが、まだ知らぬ池、さらに遠くの池へと開拓の足を広げていきます。こうなってくると、もはや一緒に来てくれる釣友はいません。多くの釣友にとって、池は魚さえいればよく、わざわざ遠くまで出向く必要はないのですから、当然といえば当然です。

一方、私の「野池」探索熱はヒートアップし、県境の山向こうや、ダム湖にまで思いを馳せるようになります。

そして中学二年の初夏のこと、愛用のリールとパックロッドを背負って、深夜に自転車で出発するというスタイルを確立しました。

コンビニもなく、わずかな街路灯とセミドロップ自転車の電飾をたよりに、池の密集する田園を抜けるときの、あの濃密な水の気配と匂い。カエルの合唱が大音響サラウンド。

視覚がないだけに、密集する池たちの強烈な存在感に魂を撃ち抜かれた感じがしました。

池の水の色は、さまざまな自然条件のオーケストラ:alt=池の水の色は、さまざまな自然条件のオーケストラ
池の水の色は、さまざまな自然条件のオーケストラ。池が造られた場所の土質、水の深さ、水源域の鉱物、有機物の有無が複雑に絡み合う。そして、そんな全てを一気に変えてしまう指揮者は「空」か。結局どんな水質であれ、池は空を映す鏡で、空の表情が池を明るくも暗くもする

単独深夜行軍では、野犬の群れにしつこく追われたり、軽トラにひかれそうになったり、そもそも親がよく許してくれたなあと思いますが、いかにもヌシが潜んでいそうな池にたどり着き、そっとルアーをキャストする瞬間の痺れるような法悦感は、何ものにも替えがたいものでした。

さらに、高校時代に移住した茨城県は、いわくありげな大小の沼が周辺にたくさんあり、釣り竿を背負って自転車で池めぐりするにはうってつけの土地でした。例によって深夜に出立し、千葉県の印旛沼のあたりまで足をのばしているうち、疲れ果ててしまったこともあります。

香川県の野池茨城県の野池
左は香川県の野池、右は茨城県の野池。こう見ると、好きな池というものは、どこか構成要素が似ている(画像クリックで拡大)

大学生になると、自転車がオートバイに変わり、池めぐりも全国区に。結婚して子どもが小学生になってクルマの免許を取るまで、ずっとオートバイで走り回っていました。

池めぐりを楽しませてくれる道具たち

デジタルカメラで池の表情を捉える

オートバイに乗るようになったころから、釣り具だけでなく、カメラも池めぐりアイテムに加わります。まだフイルムの一眼レフカメラ。ケータイ電話も普及していない、バブルの時代でした。

そして、デジタルカメラの登場。池めぐりにおいて、大きなインパクトがありました。それまでは高価なフイルム代と現像代を気にして「これは!」という絶景と会えたときにしかシャッターを切れなかったのですが、デジカメはそういったコストを気にせず、ひとつひとつの池を惜しみなく撮影できます。

水面から飛び立つ野鳥を、フイルム代を気にすることなく連写できることに、喜びで鳥肌が立ったものです。うれしくてムダ打ちもずいぶんしました。

ミラーレス一眼レフのDC-GH5

愛用しているミラーレス一眼レフのDC-GH5
【楽天市場】 DC-GH5 ミラーレス

現在の撮影機材は、動画撮影も視野に入れて、コンパクトなミラーレス一眼レフのDC-GH5を主機材としています。

池の動画撮影では、いい表情を捉えるために雲待ち、風待ち、あるいは晴れ待ち、風止み待ちするしかありません。

重厚で信頼感のあるお気に入りの三脚「Sachtler(ザハトラー) Ace」を開き、カメラを据えてセッティングする時間も至福。ACEは映像プロの世界で定番のロケ用三脚「ザハトラー」の廉価モデルですが、パン棒をそっと触ったときのシルキーな動き。触るたびにハートを撃ち抜かれます。


そんなこんなで動画撮影は手間もかかりますが、焦っても仕方ないので、じっくり時間をかけてひとつの池と向き合うしかないところが良さでしょうか。

私にとっては撮れ高がどうではなく、ただ池とのんびり向き合う大切な道具なのかもしれません。そんなことのために「金のムダ!」と思われるかもしれませんが、触るたびに突き抜ける悦びに包まれるのですから、これも幸せのひとつのカタチでしょう。

池めぐりのなかには、こんな変わった池も:alt=池めぐりのなかには、こんな変わった池も
池めぐりのなかには、こんな変わりダネの池も
呉大和池(広島県呉) - 水辺遍路

ドローンで知った「空撮」という新しい楽しみ方

たまたまキャンプ場に隣接する池について調べていたときに、その池を空撮した映像に度肝を抜かれました。ヘリコプターによる空撮と違い、池の岸や周辺地形を舐めるように捉えており、これぞ池の究極の情報、いや鳥の目だ、と打たれました

新しい道具に打たれやすいのは認めますが、これが後に「ドローン」と呼ばれるマルチコプター(複数のプロペラのあるラジコンヘリの総称)との出会いでした。

ドローン DJI MAVIC PRO

DJI社製のドローン「MAVIC PRO」を使用
【楽天市場】 ドローン DJI MAVIC PRO

揺れを軽減するジンバルは当時、高価でインストールできず、やはりデビューして間もないアクションカムの先駆けであるGoProを直に装着したものです。

今ではジンバルもカメラも付いた空撮機材がリーズナブルな価格で入手できるようになりました。現在はDJI社製のMAVIC PROというハイアマチュア向けの機材を愛用しています。マルチコプター時代からすると、ほんとうに信じられないぐらいの性能と価格。


GoProも進化しました。最新のHERO7は手ブレ補正が素晴らしく、空撮できない場所では3メートルのマイクブームの先に付けて高所撮影したり、オートバイでの池めぐりのオンボード映像、はたまたカヤックからの水中映像などで活躍してくれています。

和歌山県の加太港から渡船で渡る友ヶ島には、大蛇伝説の残る2つの池がある:alt=和歌山県の加太港から渡船で渡る友ヶ島には、大蛇伝説の残る2つの池がある
和歌山県の加太港から渡船で渡る友ヶ島には、大蛇伝説の残る2つの池がある。この島は戦時中は紀伊水道を守る砦として数々の砲台が設けられ、「ラピュタみたいな島」として近年、若者にも人気

撮影できないときは、スケッチブックと絵の具で記録

せっかく池の近くまで行ったのに、立入禁止などで池に会えないこともしばしばあります。そんなときに心強かった空撮機材ですが、航空法の制約や、地理・気象要因などで飛ばせないときもあります。

ビジュアルなしで池の記事を作るのもさびしいので、そんなとき、やけくそで地図や航空写真をもとに鳥瞰図を描いてみました

カメラを持ち込めない池では、絵が有効な表現手法:alt=カメラを持ち込めない池では、絵が有効な表現手法
世にもめずらしいダブル「ダム穴」を持った滋賀県の青土ダム貯水池の鳥瞰図。作成にはドローンで撮影した写真が役立つ。この絵は鳥瞰図で全国の池の魅力を紹介する著書『日本全国・池さんぽ』(仮題)に掲載予定。

やけくそみたいな絵でも、伝えたいという思いがある分、伝わるものは伝わる気もしました。

カメラを持ち込めない池では、絵が有効な表現手法:alt=カメラを持ち込めない池では、絵が有効な表現手法]
愛知県の荒池では、池畔の露店風呂から池をひとり占めした気分に浸れるのだが、カメラを持ち込めないため、絵が有効な表現手法になる

イラストに愛用しているのは、マルマンの定番スケッチブック。なんと60周年の今年はコラボモデルが販売されています。

マルマンのスケッチブック]

60周年記念コラボモデルのマルマン・スケッチブック。いつかはスーパーカブで池めぐり! そんな思いを胸に今日も池の鳥瞰図を描く
【楽天市場】 マルマン スケッチブック

絵の具は今のところはもっぱら手軽な固形の透明水彩で、ホルベイン製を使っています。

ホルベイン 透明水彩 絵の具]

どこにでも持ち運びできて、パレットも水筆も一緒に運べるサイズですが、けっこう高価なので自宅用として使っています
【楽天市場】 ホルベイン 透明水彩 絵の具

各色のボックス(ハーフパン)がマグネット式で配置替えでき、追加・削除も自由なところが素晴らしく、ラウニーやウィンザーといった海外憧れのブランドのハーフパンも勝負カラーとしてしっくり納まっています。

地形的、歴史的なものと切り離せない池の魅力について、時空を越えて一枚に凝縮した鳥瞰図を、いつか描きたいものです。

池めぐりに合わせて道具を最適化する

池めぐり遠征から帰ってくると、毎回、道具たちを並べて反省会をします。その道具がどれくらい活躍したか、容積・重量のわりに稼働率が低いものはないかと検証し、次の遠征までに持って行く・行かないを判断します

バッグでもクルマでも同じですが、道具をパッケージングするときには、スキマを重視します。パツパツに詰め込むのではなく、あえて道具を少なくして稼働率を上げる考えです。

たくさん詰め込んだはのいいけど、現場で出し入れが面倒くさくなったり、どこに入れたか忘れてしまったり、ひどいときには持ってきたことさえ忘れていたり……なので、日々・月々・年々、モノを厳選することを目指しています。

シンプルな道具は、汎用性も高く、アイデア次第でいろいろな応用が効きます。ベランダストッカーRVボックスなどと呼ばれる、樹脂製ボックス類はその好例。

ベッド、テーブル、椅子、脚立……組み合わせでいろいろな役割をしてくれますし、状況に応じて組み替えできるところが気に入っています。例えば、オートバイを車載するときは60センチ幅で一列に並べてちょっとタイトなベッドに、折りたたみ自転車しか車載しないときには縦2列で80センチ幅のゆったりしたベッドに。

手軽にリーズナブルに手に入るコンテナボックス
手軽にリーズナブルに手に入るコンテナボックスは、組み合わせとアイデア次第で無限のパッケージングデザインの可能性を秘める(画像クリックで拡大

結局シンプルであること、汎用的であることは、モノに縛られない自由な生き方につながる。なんて言うとちょっと大げさですが、樹脂製ストッカーをひとつの単位として活動をパッケージングしていけば、どんな移動でも、極端に言えば夜逃げさえ、スタイリッシュになるかもしれません。

池めぐりの入り口はいくらでもある

池めぐりを始めた中学二年生から、35年がたちました。深夜に一人で出発し、眠りについた町を抜け、はるばる池に会いに行く、という行動様式はずっと変わっていません。あの夜、闇の中で立ち上ってきた野池の濃厚な気配と匂い……今でも胸が高まります。

考えてみれば、私にとって長年の池めぐりは、釣りにはじまり、自転車、オートバイ、カメラ、空撮機材、カヤック、そしてスケッチブックと、愛してやまない道具たちを活躍させる、かっこうの道場めぐりみたいなところも、あったのかもしれません。

私の試算では、全国の池や湖沼のうち実に99パーセントは、

  • 何らかの目的でゼロから人の手で造られたか
  • 自然を改造してできたもの

です。それだけに、どんな小さな池にも、誰かが長い年月をかけて守ってきた歴史があります。

昭和26年に埋め立てられた浅草六区の瓢箪池と、関東大震災で崩落した浅草十二階
昭和26年(1951年)に埋め立てられた浅草六区の瓢箪池と、関東大震災で崩落した浅草十二階。今は池の痕跡さえも残っていない土地に行って、昔は多くの人たちが行き交い、水面を見つめたであろう池の気配を妄想するのも楽しみのひとつ

池には必ず、そういう人の思いと歴史がたまっています。そんな痕跡をたどりつつ、妄想まじりに思いを馳せることが、最近では大きな楽しみになっています。

池の場合は高みを目指すというより「低みに下る」と言うんでしょうか。「百名山、制覇!」のように金銭的・体力的な敷居が高いわけでもなく、気が乗らなければ引き返すのもやぶさかでなし、そんな気楽なところも、長く続けてこれた一因だったと思います。

私の活動を見て「池の底には土器が眠っていることも多いんですよ」とコメントをもらったときは、まさか池が土器や古代遺跡の保存場になっていたとは! と驚きましたが、土器はマニアックだとしても、魚や野鳥といった動物や、周囲の植物から入るもよし。山の池・里の池・お城の池・お寺の池・離島の池……と自分なりのテーマを設定してみるのも、池めぐりをおもしろくするコツでしょう。

全国に20万以上、平地から山岳高所までどこにでも池はありますから、誰でもお気に入りの水辺を見つけられるのではないかと思います。「水は低きに流れる」と言いますが、池めぐりもまた「低き」を目指す道のりなのかもしれません。

著者:市原 千尋

水辺遍路さん

14歳から30年余、池や湖沼に惑溺し、ライフワークとして全国の湖沼をめぐりその数は七千を超える。現在、鳥瞰図で全国の池の魅力を紹介する『日本全国 池さんぽ(仮)』(三才ブックス刊)を今夏発売予定で鋭意制作中。
ブログ:水辺遍路
Twitter:@cippillo
Webサイト:ニッポン池さんぽ

この記事で紹介した道具など

【楽天市場】 DC-GH5 ミラーレス
【楽天市場】 ザハトラー Ace 三脚
【楽天市場】 ドローン DJI MAVIC PRO
【楽天市場】 GoPro HERO7
【楽天市場】 カヤック
【楽天市場】 マルマン スケッチブック
【楽天市場】 ホルベイン 透明水彩 絵の具
【楽天市場】 ベランダストッカー
【楽天市場】 RVボックス

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