仕事終わりのほっと一息つく時間に、そして休日のくつろぎ時間に、ゆっくりと漫画を読みたいという方も少なくないでしょう。
とはいえ、すでに巻数を重ねている作品を今から読み始めるのは大変だし、新作も数が多過ぎて選ぶのが大変だし。「自分の好みに合う作品」をどう選ぶかは悩ましいところです。
そこでソレドコでは、季節やイベントにからめたさまざまなテーマごとに「今読むべき作品」を紹介していきます。そうそうこういうのが読みたかったの……! という作品がきっと見つかるはず。
紹介してくださるのは、漫画をこよなく愛するライター、藤堂真衣さんです。
今日の推し漫画はコレ!:『カラオケ行こ!』
画像参照元:楽天Kobo電子書籍ストア
今回のテーマ:ソレドコ編集部より
みんなで話題を共有して盛り上がれるタイムリーな作品を読みたいです。欲を言えば、実写化された作品だと、話が膨らんでなおありがたいのですが……。
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こんにちは! ライターの藤堂真衣と申します。昔から漫画やアニメが大好きで、大人になった今も少しの暇を見つけては漫画を読み漁る日々を送っています。
▼ソレドコでは「推し活」に関するインタビュー記事も書いています
・推し活は“本気の遊び”。「ファン研究」の大学教授に聞く、持続可能な推し活
本連載では、そんな私がこれまでに読んだ漫画のなかから季節やその時々のテーマに合ったもの、さらに注目が集まる話題作など「ぜひ今読んでほしい!」と思う“推し漫画”を紹介します。
今回は「みんなで盛り上がれるタイムリーな作品」ということで、まさにピッタリ! だと思ったのが和山やま先生の『カラオケ行こ!』です。齋藤潤&綾野剛という豪華キャスティングで2024年に実写映画化され、SNSで「ヤバい……」「すごい……」と語彙力を失ったオタクを量産しました。なんで今実写化したん? 最高か。
ヤクザと中学生が「歌の練習」を通して交流
『カラオケ行こ!』は、中学校の合唱部部長・岡聡実(さとみ)がヤクザの成田狂児(きょうじ)に請われて歌のレッスンをする……という、キャラクターのぶっ飛んだ組み合わせが光る作品です。
物語は、中学生の合唱コンクールに訪れた狂児が聡実の歌声に惚れ込み、「歌のレッスン」を依頼することから始まります。
なんでも、狂児の属する組では組長の誕生日に組員総出でのカラオケ大会が催され、そこで「歌ヘタ王」に選ばれると組長に刺青を彫られるのだとか。しかも組員本人の大嫌いなモチーフを……しかも組長は絵心がゼロで仕上がりがう〇こレベル……と、自分で説明していても「いやだからなんで?」となってしまいそうな設定なのですが、本当です。
それにしても、一介の中学生がヤクザと一対一でカラオケボックスに行く展開はだいぶ心配になります。
ただ、はじめは警戒心をあらわにしていた聡実が狂児の人柄や生い立ちに触れ、少しずつ心を開いていくハートフルな一面も……あるはず。
淡々としたボケとツッコミに見え隠れするギャグセンス
和山先生の作品といえば、こちらも話題作となっている『女の園の星』でもいかんなく発揮されている「ギャグセンス」。ドカンと爆発する面白さではなく、淡々と繰り広げられる会話のなかに忍ばせた「素朴なツッコミ」がなんともいえず笑いのツボを押してくるんです。
組長に刺青を彫られるのがいかに恐ろしいかを、笑いまじりに語る狂児。それに対して「どこで笑えばいいですか?」とまっとうなリアクションを返す聡実。
狂児が歌う十八番『紅(X JAPAN)』の、たっぷり42秒の前奏をへての「紅だーッッ!!」というシャウトを聞いて(前奏の間に逃げられたな……)とうっすら後悔する聡実。
映画でもその面白さはしっかり描かれていて、劇場内も「フッ……」「ドゥフッ……」と笑いに包まれる場面は多かったのですが、これはぜひ漫画でも味わっていただきたい!
それから、聡実と狂児の関係性の変化にも心動かされるものがあります。
終始マイペースに聡実を振り回しているようにも見える狂児ですが、聡実にレッスンのお礼としていちごを買ってきたり、聡実がヤクザだらけの場所に迷い込んで絡まれていれば拳をふるって助ける。サラっと優しいし最強なところ、めっちゃかっこいいんですよね……。
クライマックスとなるカラオケ大会のシーンでは、聡実が狂児に対してどんな思いを抱いているのかが感じ取れて、もう、なぜかウルっとしてしまうほど。
ヤクザである狂児におびえながらも「狂児さんが歌いやすい曲」をピックアップしてきてくれるなど、聡実の素直さも随所ににじみ出ていて「いい子だな……」とほっこりしてしまいます。それだけに狂児につかまってしまったのが気の毒でもある。
『カラオケ行こ!』の4年後を描いた『ファミレス行こ。』も連載中
『カラオケ行こ!』には続編の『ファミレス行こ。』があって、こちらも『月刊コミックビーム』で連載中&単行本化されています!
『ファミレス行こ。』は『カラオケ行こ!』の4年後、大学に進学・上京した聡実と、狂児を含めそこに出入りする人々を描いた群像ドラマのような構成。
再会を果たしてしまった聡実&狂児の“続き”の日々を堪能できるので、こちらもぜひ読んでみてくださいね!
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絶妙なギャグセンスと、ツボを押さえたキャラクターで読者を引き込む和山先生の作品。小気味良いギャグでクスッと笑いたい時にはピッタリです。
藤堂真衣 SNS:@mai_todo
漫画やアニメ、声優を愛するオタクのフリーライター。好きな作品は『Free!』。圧倒的夜型。