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『フルーツバスケット』は単なるラブコメにあらず! 「心の闇」に迫る、大人こそ読むべき名作

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推し活をしている人が「これ良い!」と思ったものを紹介しています

フルーツバスケットトップ画像

仕事終わりのほっと一息つく時間に、そして休日のくつろぎ時間に、ゆっくりと漫画を読みたいという方も少なくないでしょう。

とはいえ、すでに巻数を重ねている作品を今から読み始めるのは大変だし、新作も数が多過ぎて選ぶのが大変だし。「自分の好みに合う作品」をどう選ぶかは悩ましいところです。

そこでソレドコでは、季節やイベントにからめたさまざまなテーマごとに「今読むべき作品」を紹介していきます。そうそうこういうのが読みたかったの……! という作品がきっと見つかるはず。

紹介してくださるのは、漫画をこよなく愛するライター、藤堂真衣さんです。

今日の推し漫画はコレ!:『フルーツバスケット』

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今回のテーマ:ソレドコ編集部より
年度末のバタバタから解放される休日。時間もできそうなので、じっくりと時間をかけて読める「名作」ありませんか?

📗

こんにちは! ライターの藤堂真衣と申します。昔から漫画やアニメが大好きで、大人になった今も少しの暇を見つけては漫画を読み漁る日々を送っています。

▼ソレドコでは「推し活」に関するインタビュー記事も書いています
推し活は“本気の遊び”。「ファン研究」の大学教授に聞く、持続可能な推し活

本連載では、そんな私がこれまでに読んだ漫画のなかから季節やその時々のテーマに合ったもの、さらに注目が集まる話題作など「ぜひ今読んでほしい!」と思う“推し漫画”を紹介します。

今回のテーマは「じっくりと時間をかけて読める『名作』」ということで、高屋奈月先生の『フルーツバスケット』をピックアップさせていただきました! もしかしたら読んでいた人もいるかも…?な、少し懐かしい作品です。

クラスメイトの男女が“奇妙な共同生活”

『フルーツバスケット』は、高校1年の主人公・本田透(とおる)が、クラスメイトで“学校一の王子様的存在”である草摩(そうま)由希の家の秘密を知ってしまったことからなぜか草摩家に居候することになり、家人たちの心に触れていく……というストーリーの作品です。

透は素直で優しい心の持ち主ながら、やや天然なところがある女の子。両親を亡くし家を失い、手ごろな山でテント暮らしをしようとするくらいに天然です。でもこの山が由希の家の私有地だったことで、奇妙な共同生活が始まるんですよね。

由希の自宅には由希の他に、家主の紫呉(しぐれ)がおり、後から同じく草摩家の人間である夾(きょう)が転がり込む……など、なかなかの乙女ゲーム展開。透は家事全般を引き受ける代わりに、屋敷の一室を間借りして住むことになります。

フルーツバスケット
©高屋奈月/白泉社

コメディと思いきやシリアスな展開へ

草摩家には、ある秘密があります。それは、草摩家に生まれた子どものうち12人が「十二支の呪い」にかかっていて、異性と抱き合う(抱きつかれる、なども含む)と、それぞれの十二支の動物に変身してしまうこと。

フルーツバスケット
©高屋奈月/白泉社

由希は「子(ねずみ)」の呪いにかかっていて、透はその秘密を知ってしまったことから危険な人物であると見なされ、その記憶を消されそうになります。しかし、透が由希に「…記憶が消されちゃっても またお友達になって下さいね……っ」と伝えたことが、家の呪いにとらわれてきた由希の心を動かすきっかけになります。

フルーツバスケット
©高屋奈月/白泉社

透はその他、十二支から外れた「猫」の呪いにかかっている夾や、「卯(うさぎ)」の呪いにかかっている紅葉(もみじ)とも出会い、まっすぐに彼らと対話することで、その自覚はないながらも彼らの心の奥に沈んでいる悲しさ、寂しさを引き出し、心の枷を外していきます。

草摩家の当主・慊人(あきと)が登場してからは、それまでコメディ色の強かった物語がどんどんディープな展開を見せます。慊人は若いながらも草摩家を支配する存在。過去には慊人によって怪我を負い、命を落としかけた親族もいるほど……。

さらに、草摩家の呪いの正体に近づくにつれ、高屋先生の筆はそれまで天真爛漫だった透の心にも踏み込んでいきます。由希や夾と透の過去のつながり、そして伏線が回収されていく終盤は目が離せません。

嫉妬、執着…人間の「業」にも臆せず切り込む

私が最も印象に残ったエピソードは、コミックス2巻に収録されている「はとり」さんのお話です。

はとりも十二支の一人で、草摩家で医師として働いていますが、恋人・佳菜との結婚を慊人に許されず、心を病んだ佳菜の記憶を慊人の指示によって消したという暗い過去を抱えています。

そのため、草摩家の外からやってきた透に対しても最初は警戒していましたが、透の言動がたまたま佳菜との思い出と重なったことから彼女に少し関心を持つようになり、何気なく、佳菜がかつてはとりに投げかけた言葉である「雪が溶けたら何になると思う?」という問いを透にも投げてみます。

フルーツバスケット
©高屋奈月/白泉社

すると透は、突然の問いかけにやや戸惑った後、やっぱりまた佳菜と同じ答えをはとりに返す。かつてはとりを草摩家の呪いからすくい上げてくれようとしていた人の姿が、透にも重なった瞬間でした。

当時このくだりを読んだ中学生の私はひっくり返りました。それからすっかり、『フルーツバスケット』のファンというわけです。

人間の情の深さや美しさだけでなく、嫉妬や執着といった醜さにも臆せず切り込んだ名作『フルーツバスケット』。重過ぎるストーリーですが、透の明るさと一生懸命さに、どこかほっとさせられるところもたくさん。じっくり大切に読める漫画として、おすすめです!

高屋奈月先生の最新作『かくも小さき世界にて』がマンガParkで連載中。
広くて窮屈な世界の、お隣さんラブストーリーです。

藤堂真衣 SNS:@mai_todo
漫画やアニメ、声優を愛するオタクのフリーライター。好きな作品は『Free!』。圧倒的夜型。