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心温まる人間ドラマに寒さを忘れる。『ホテル・メッツァペウラへようこそ』で読む北欧

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推し活をしている人が「これ良い!」と思ったものを紹介しています

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仕事終わりのほっと一息つく時間に、そして休日のくつろぎ時間に、ゆっくりと漫画を読みたいという方も少なくないでしょう。

とはいえ、すでに巻数を重ねている作品を今から読み始めるのは大変だし、新作も数が多過ぎて選ぶのが大変だし。「自分の好みに合う作品」をどう選ぶかは悩ましいところです。

そこでソレドコでは、季節やイベントにからめたさまざまなテーマごとに「今読むべき作品」を紹介していきます。そうそうこういうのが読みたかったの……! という作品がきっと見つかるはず。

紹介してくださるのは、漫画をこよなく愛するライター、藤堂真衣さんです。

今日の推し漫画はコレ!:『ホテル・メッツァペウラへようこそ』

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今回のテーマ:ソレドコ編集部より
また急に寒くなってきたので、寒さがほんの少し和らぐようなハートウォーミングな作品を読んでみたいです!

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こんにちは! ライターの藤堂真衣と申します。昔から漫画やアニメが大好きで、大人になった今も少しの暇を見つけては漫画を読み漁る日々を送っています。

▼ソレドコでは「推し活」に関するインタビュー記事も書いています
推し活は“本気の遊び”。「ファン研究」の大学教授に聞く、持続可能な推し活

本連載では、そんな私がこれまでに読んだ漫画のなかから季節やその時々のテーマに合ったもの、さらに注目が集まる話題作など「ぜひ今読んでほしい!」と思う“推し漫画”を紹介します。

今回のテーマは「寒さがほんの少し和らぐようなハートウォーミングな作品」ということで、福田星良先生の『ホテル・メッツァペウラへようこそ』をピックアップさせていただきました! 北欧・フィンランドにある小さなホテルが舞台の作品です。

新人ホテルマンの成長物語

『ホテル・メッツァペウラへようこそ』は、フィンランド北部のラップランド地方にある小さなホテル「ホテル・メッツァペウラ」で働く三人の男性と、そこを訪れる宿泊客たちとの交流を描いた作品。

ホテル・メッツァペウラでは支配人のアードルフと料理人のクスタ、そして突如そのホテルに現れて成り行きでホテルマンになった日本人・ジュンの三人が働いています。

お客さんとして訪れるのは、オーロラの観測客や「思い出のホテルだから」と毎年決まったタイミングで顔を出す常連客、さらにクスタの娘などさまざま。

ジュンが、そうしたキャラクターたちと交流を深めながらホテルマンとして成長していく展開が物語の軸となっています。

2024年2月現在、単行本が4巻まで刊行されていますが、基本的に「冬の期間」しか描かれていないので、ページをめくってもめくってもひたすら雪! そして白夜の日々! 寒さが伝わってきます。

小さなホテルで交差する人間ドラマ

物語のはじまりは、大雪の日にあやしげな男(=ジュン)がホテルの前に現れ、心配して様子を見に来たアードルフとクスタの目の前で倒れてしまい、一時保護されるものの、そのまま従業員としてメッツァペウラの一員となる……というエピソード。

ジュンの手荷物は日本のパスポートに財布、イニシャル入りの小さなナイフ、少しのお菓子と飲みかけのジュース、そして古ぼけたぬいぐるみだけ。

背中から手足にかけては、まるで極道のような立派な“刺青”が。

そんな中、「施設育ちで頼れる親がいない」というジュンに対してクスタは寝床を用意します。

そして、「誰でも受け入れる」というホテルのポリシーのもと、アードルフたちはジュンを受け入れ、そのホテルマンとしての資質(主に見た目の端正さ)に目をつけて従業員として雇うことに。

とはいえ、まともな接客業の経験がないジュンは、ベッドメイクもままならないレベル。それでも自分が役に立てることを少しずつ探し、ホテルマンとしての仕事に目覚めていきます。

物語が進むにつれてジュンの日本での暮らしぶりや、アードルフとクスタの過去新人ホテルマン時代のエピソードも明らかになり、各キャラクターにどんどん「奥行き」が出てくるのも面白いところ!

特に印象的なのが、7~8話のエピソードです。

ホテルで急遽ウエディングパーティーが開かれることになり、招待客の一人としてクスタの娘・ファビーが訪れます。ファビーはパーティーで新郎新婦に贈るための「椅子」を用意してきていました。

フィンランドでは新郎が花嫁のために椅子を送る古い風習があり、「わたしの家にあなたの居場所を作りました」という意味なのだとファビーはジュンに教えます。

実はファビー自身も施設育ちで、クスタとは義父と養女という関係。養子として迎えられたものの、新しい家への不安でいっぱいな上に、養父となるクスタは超がつくほどの強面……。

ですが、そんなファビーを迎えたのは、クスタが用意してくれていた彼女専用の椅子でした。新しい家には居場所が必要。そんなファビーを温かく迎え入れたいというクスタの愛情が垣間見えるエピソードです。

同じく施設で育ち、家族を知らず、母の記憶もおぼろげにしか持たないジュンに、家族や親子のあり方について考えるきっかけを授けます。

他にも、亡き夫との思い出のホテルであるメッツァペウラを一人で訪れる女性や、北欧の冬の陰鬱さに自殺願望を募らせる男性など、さまざまなバックグラウンドを持つ人々がホテルを訪れ、ジュンに悩みを打ち明けます。

ホテルマンという仕事を通して、喜びや悲しみ、切なさ……などさまざまな感情が喚起される、ドラマ性のある作品でもあります。

サウナにサルミアッキ、サンタクロース……フィンランドカルチャーに浸れる

もう一つの見どころは、作品の随所で紹介されるフィンランドの文化です。

描かれている季節が冬ということもあり、「外から帰ったらサウナ」をはじめ、トナカイの肉サルミアッキトゥルニジュースといった北欧ならではの食べ物、そしてかわいくてあたたかみのある家具に雑貨……!

何より、フィンランドはサンタクロースの故郷と言われており、クリスマスシーズンのエピソードもおすすめです。日本のように派手なイベントではないけれど、家族や大切な人とともに穏やかな時間を過ごすクリスマスがそこにはあります。

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ほんのひとときだけ交わる人たちの居場所であるホテルを舞台にした、少し心が温かくなる『ホテル・メッツァペウラへようこそ』、ぜひ読んでみてくださいね!

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藤堂真衣 SNS:@mai_todo
漫画やアニメ、声優を愛するオタクのフリーライター。好きな作品は『Free!』。圧倒的夜型。